■ ■  月夜に By-Toshimi.H      

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 美しい満月の明かりの中に浮かんだその人は、とても悲しそうな顔をしていた。しかし透き通る様な、病的とも思える青白いその横顔は、とても儚げで美しいと思った。
 今夜の寝床と決めた野営近くの小川に、水を汲みに行く、と言ったきり、なかなか戻って来ないフロドを迎えに来たアラゴルンは、川岸の大きな石の上に座る彼の姿を見て、しばし見惚れていた。
 芯は強い彼の事だ。俯いてはいるが、泣いているのではないだろう。
「フロド」
 アラゴルンの呼び掛けに、フロドの小さな身体がビクリと動き、ゆっくりと顔を向けた。
「遅いから、迎えに来たぞ。あまり長い時間、一人でいる事は感心しないな」
 彼はフロドの据わる岩の側へ歩み寄った。
「すみません。すぐに戻るつもりだったんです。でも考え事をしているうちに……」
 投げ出されたフロドの足の上に置かれた掌には、鎖を通された例の指輪が置かれていた。アラゴルンがそれに視線を移した事を見たフロドは、慌てて指輪を上着のポケットに仕舞った。
 アラゴルンには、この『一つの指輪』を葬るという任務の重圧に、押し潰されそうなフロドの気持ちは痛い程よく判った。それが存在する事が、どれ程危険で忌しいものなのかを、知り尽くしているが故に。
「フロド…。皆んなの所へ戻ろう」
 そう言って、アラゴルンは手を差し出した。
 しかしフロドは、膝を抱えて顔を埋めると、大きく首を振った。
 拒否されては、アラゴルンは差し出した手を、引っ込めざるを得なかった。
 仕方ない、といった様に溜め息を吐く。と、ほぼ同時だった。
「僕は…怖いんです。このまま旅を続ける事が。もしかしたら、誰一人としてモルドールへ辿り着けないのかもしれない」
 顔を上げたフロドの横顔は、より悲しげだった。
「フロド。確かに私達は誰もモルドールへ辿り着けないのかもしれない。だが、きみは誰を犠牲にしても、何を犠牲にしても進まねばならない」
 アラゴルンはフロドに言い聞かせる様に優しく言う。
 顔を向けたフロドと視線が合った。
「私は誓った。命を賭けてきみを守ると。その言葉に嘘偽りはない」
 見上げたフロドの僅かに潤んだ碧い瞳に、吸い込まれそうになるのを感じる。
「だけど…」
 そう言いかけて、フロドは視線を外し、俯いてしまった。
「だけど、僕にはみんなに守って貰う価値はありません」
 岩に上がり、アラゴルンはフロドの横に膝をつく。そして、彼の小さ過ぎる身体を抱き締めた。
 思い掛けないその行為に、フロドは驚いて身を強ばらせた。
「きみは正統な指輪保持者だ。それだけで理由は充分だ」
 アラゴルンの低く優しい声が、耳元で心地良く響く。
「――それに…」
 彼は言いかけた言葉を飲み込んでしまった。そして腕からフロドを解放し、肩に手を置くと、柔らかく微笑んだ。
「そろそろ戻ろう」
 そう言って立ち上がると、フロドに背を向けて野営地へ歩き出した。
「ま…待って下さい!」
 フロドは思わず叫んだ。
 アラゴルンが振り返ると、身を乗り出したフロドが必死の眼差しで見つめていた。
 しかし我に返った彼は、急に狼狽した様に視線を泳がせた。
「あ…あのっ、その…『それに』の続きは…言って貰えない…のですか?」
 最後の方は、消え入りそうな声だった。
 アラゴルンは再びフロドに歩み寄り、腰を落として眼をフロドと同じ高さにした。
「フロド。それは言ってはならない言葉だ。聞けばきっと、きみは後悔する」
 見つめて来るフロドの瞳が、月明かりに揺れていた。
「それでも僕は聞きたいのです。僕を重荷から救って下さい。あなたが居てくれたら、僕はどんな困難も、乗り越えれる気がするから…」
 しばしの沈黙が流れる。
 そして、先に口を開いたのはフロドだった。
「……僕はあなたの事が…」
 アラゴルンの武骨な指が唇を押さえ、静止を掛けられた。
「フロド。それを言うのは私の方だ。今まで口に出してはならぬと、戒めていたが…きみが求めるなら、はっきり言おう」
 そう言うとアラゴルンは、腕を伸ばし、フロドをいくらか乱暴に引き寄せると、その小さい身体をきつくかき抱いた。秘めていた想いを全てぶつけるかの様に。
「フロド…きみを愛している。誰よりも…愛している」
 耳元で囁かれる言葉にフロドは、嬉しさで震えた。
 膝を付いたまま伸び上がり、アラゴルンの首へ腕を回し、しがみつく。
「僕もです。アラゴルン」
 二人はどちらからともなく、唇を合わせた。

「……んっ…あぁ…」
 川辺から芝草の生えた柔らかい場所へ移った二人は、互いの肌を合わせていた。
 フロドの着ているものは、腕が通されているだけのシャツのみで、下肢から全てを取り払われている。その足は大きく開かれ、アラゴルンの腰を跨いで、向き合っていた。
 アラゴルンの方は大木に背を預け、シャツのボタンは外されて胸が覗いている。そしてズボンから取り出された彼の中心は、小さな恋人と深く繋がっていた。
 アラゴルンの唇が、フロドの白い首筋から肩へと降りて行く。
 きつく吸われる度に、フロドは甘い声を上げた。
 左肩に残る忌しい剣の傷跡を、アラゴルンの舌がなぞって行く。くすぐったくて、フロドは身を捩った。
 アラゴルンは不意に行為を止め、顔を上げると、その傷跡を見つめる。
「アラゴルン?」
 不安になったフロドは、愛しい人の名を呼んだ。
「……私はこの傷を見る度に、自分の無力さを感じられずにはいられない。それは、これからもずっと」
 人間の王らしく、いつも自信に満ち溢れたアラゴルンの、初めて聞く弱気にも似た言葉に、フロドは戸惑った。
「そんな事、言わないで下さい。この傷が出来たからこそ、僕はあなたに惹かれたんですから。サムも僕の為に一生懸命に尽くしてくれるけど…」
 フロドはアラゴルンの背に腕を回し、彼の厚い胸板に頬を擦り寄せた。
「――僕が選んだのはあなただ」
「嬉しい言葉だが、コトの最中に他の男の名を口にするのは、許せないな」
 アラゴルンはフロドの顎をすくって、顔を上げさせると、噛み付く様にキスをする。
 深く口付け、舌を絡ませ合う。
「フロド、動くぞ」
 大きな碧い瞳に今にも零れそうな涙を浮かべ、フロドは頷いた。
 ホビット族の中では背が高い方のフロドでも、アラゴルンと体格差は大人と子供である。大きな人の大きく膨らんだものを後ろで銜えたフロドの身体は、彼が動く度に激しく軋んだ。
「ああぁ…ん…あ…んっ…アラ…ゴルン…」
「はぁ…ぁんっ…フ…ロド」
 うわ言の様に繰り返し名を呼ぶフロドの頬を、涙が伝い落ちる。その涙を唇で拭う。
 小さな白い身体も、必死で求めて来る心も、フロドの全てが愛おしかった。
「アラ…ゴルン…いく…もう、我慢…出来な…」
 フロドは限界まで膨らみ、固く勃ち上がった自らのものに、そろそろと手を伸ばす。それは先走りの液体で、充分過ぎる程濡れていた。
「フロド…共にイこう」
 フロドが自分のものを握った途端、それは弾けた。それを見たアラゴルンも、フロドの中で愛蜜を吐き出した。
 そしてぐったりと倒れ込んで来た、愛しい身体を抱き締めた。


久し振りに小説を書きました。しかも、仕事中に携帯に打ち込んでマシタ。たまに顔がニヤけて、アヤシイ人と化していました。きっと。
うちのカップリングは、この2人にレゴラスが絡んで来ます。そのうち書きます。