■ ■ In My Garden by エスカリナータ      


「で、私たちと言うのは、どう言う関係なんだ」
 唐突な一言の前にツォンが言葉を失っていると、ルーファウスは、冷ややかな眼差しでツォンを見ていた。
「恋人、同士なんですよね」
 ツォンは、ほとんど、確認の意味をこめて、聞いた。ルーファウスは、溜息混じりに言う。
「そうなんだろう。世間で言うところの」
 ルーファウスは、淡々とした調子でそういい、用意させていたコーヒーを口にする。
「そうなんだ……って、ルーファウス様、あなたは、私をどう想っているのですか」
 ツォンが聞き返すと、ルーファウスは、上目でツォンを見て、まったく無視していた。
「ルーファウス様」
 ツォンは、目に見えるものが欲しかった。ルーファウスから愛されていると、わかる物が欲しかった。
 ルーファウスが、ツォンに贈るものは、みな形が残らないものたちであった。
 一晩の情事、言葉、冷ややか過ぎる視線……。
 ルーファウスがいなくなったら、すべてがなくなってしまうものばかり与えられていたのだ。
 ツォンは、ルーファウスの方を見つめていた。
 ルーファウスは、そんなツォンの方を見ないで黙々と仕事を続けていた。
 ツォンは、ルーファウスが書類に目をやっている間に小さな小ビンを出していた。蓋をわからないように開けて、付いていたスポイトで、そっと、二、三滴落としていたのだった。
 何も知らないルーファウスは、それを口にしていたのだった。ツォンは、何も言わないでしばらく様子を見ていると、ルーファウスは、顔を上げていた。
「ツォン、おまえ……何かしたな」
「ええ……少し、媚薬が入っていますよ」
「媚薬?」
 ルーファウスが聞き返してくる。ツォンは、椅子の方に行くと、ルーファウスを立ち上がらせていた。
「効いてきたようですね」
「おまえ……こんなことをして、いいと、思っているのか」
「あなたがいけないのですよ。ルーファウス様、私は、変わる事なくあなたを愛していると言うのに」
 そういって、ツォンが軽く唇で触れた部分が、そこだけがたまらなく熱を帯びている。ルーファウスは、そんな自分に顔を赤らめていたが、しかし、感じて来ている事は事実だった。軽く指先で触られているだけでも、たまらないと言うのに、ツォンは、一番感じやすい部分をわざと避けていた。
「どうして、欲しいんですか。さ、言って見てください」
「誰がっ……言うものか」
「頑固ですね。あなたと言う人は。これは、拷問の一種なんですが、それをちょっと現代版にアレンジしたものをあなたに見せて差し上げますよ。元々は、どこぞかの国で、男娼を育てるためにしていたものらしいのですがね」
 ルーファウスは、机に伏せられていた。とても抵抗しょうと言う気がしない。ただ、荒れ狂っている身体の中の火をどうにかして欲しいくらいだった。ツォンにそんなことを素直に言うつもりなど、元々なかった。ツォンは、手慣れた感じで、ルーファウスのズボンのベルトをはずし、ジッパーをおろすと、そのままズボンと下着をずらし、腰を掴んで、少し上に上げた。
 そうすると、ちょうど恥部が丸見えと言う状態になり、ますますルーファウスは、顔を赤らめた。ツォンは、そこに軽く息を吹きかけていた。それだけでも、今のルーファウスには、辛かった。苦しくって、たまらなくって、目に涙さえ浮かべていたのだ。
「本来なら、ここに、羊毛を入れるんですよ。入れられると、どうしても、痒くなるでしょ。それを逆手に取って、セックスを覚えさせたそうですよ」
 次に出してきたのは、見た目は、ペンのようなものだった。ルーファウスは、何がこれから始まるのか、想像付かなかった。
「これは、ローターの一つで、こうして使うものなんですよ」
 ツォンがそういい、そのペンのキャップをはずし、スイッチを入れたものを、秘所の周りに当てていた。
 今は、ちょっとした刺激にも敏感になっていると言うのに、こんなことをされては、ますます感じてしまうのだった。
「あっ……やっ……」
「どうして、欲しいんですか。ルーファウス様、このまま止めておくと言う手もありますけど」
 ツォンは、そういって頬から落ちる涙を舌先で掬って舐めていた。
 ルーファウスは、目を潤ませたままツォンを睨んでいた。
「このままで、いいんでしたら、いますぐ解放しますけど、いいんですか。ここだって、ほら、こんなに硬くなって……」
 ツォンの手が、ルーファウス自身を触り出して、びくっとしてしまった。
「おや……いけませんね。こんなものを出しては」
 ツォンは、ルーファウスのモノの先端から出ていたその液を手のひらで受けていた。
「あ……嫌だ。や……」
 それを指先に付けて、ゆっくりと挿入して行く。指が一本入って行くごとに ルーファウスは、身悶えしていた。
「いつも……そのくらい、素直だと、いいんですけど」
「だ……黙れ」
 ツォンは、クスッと笑っただけだった。押し広げて行き、十分になったところへ、自分自身を入れていた。多少の抵抗は感じていたが、それでも、ルーファウスの中に入ってしまうと、ゆっくりと動き出したのだ。
「あんっ……んんっ」
「ルーファウス様……」
 そう言ってから、そっと耳元で囁いた。
「あなたを愛しています。これからも……ずっと」
「だ……まれ」
「身体は、こんなに素直に私の言うことに従っていると言うのに。気持ちいいんでしょう。素直に応じたら、どうなんですか」
 ツォンは、耳元でそう言ったものの、ルーファウスは、首を横に振っていた。あまりに素直でないルーファウスに対して、ツォンは、溜息を付く。
「どうして貰いたいんですか。あなたは、私とこうしていることも嫌なんですか。それとも、触られていること自体、嫌だとか」
「そんなこと……ない」
「なら、もっと素直に応じてください。私は、あなたを悪いように扱ったりしませんから……」
 ツォンの囁く声を聞きつつ、ルーファウスは、自分が耐えきれないことを知っていた。
「辛いですか」
 次第に訪れる快楽の前に、ルーファウスは、いとも簡単に屈することになってしまったのだ。
「おまえ……絶対に、許したりしないからな」
「そんなことが本当に出来るんですか」
 ルーファウスは、黙ってた。とても出来そうにないのをわかっていた。そして、改めてツォンの方を見るのだ。
「おまえ……こんなこと、他の奴としているのか」
 少し目尻が赤くなっていて、ツォンは嬉しくなりつつ言う。
「いいえ、あなたとだけ、していますとも。私の一番大切な人……なんですから」
 ツォンは、そういって、ルーファウスをそっと抱きしめていたのだった。


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