■  cerastes      


 世界は長い戦争で病んでいた。
 西の果ての都市・ウータイとこの星の経済的実権を握っている一大企業・神羅カンパニーが戦争を始めて、既に五年近く経っていた。しかし、未だ決着の道は開けず、睨み合いは続いていた。
 神羅カンパニーは、元は「神羅製作所」と呼ばれており、主に兵器開発・製作で急成長を遂げた、社長・プレジデント神羅が一代で築いた会社だった。現在では、宇宙開発にも着手し、試作の繰り返しにより完成した、「神羅26号」ロケットの打ち上げも間近に迫っていた。
 急成長の影には、かなりあくどい手を使っていたが、プレジデントは紳士的なイメージを崩さない狡猾さで、それを否定し続けている。
 今では、軍隊を持つまでに至り、その中でも最強を誇るソルジャーになりたいと、熱望する若者は後を経たなかった。ソルジャーの中でも、クラス1stのソルジャーともなると、給与も待遇も遥かに違ってくる。
 これといった産業が、発達している都市の少ないこの星の若者を魅了するのに、神羅カンパニーは、その中でもソルジャーという職業は、金も時間もかける必要がなかった。
 富や名声を手に入れる為に、厳しいソルジャー試験に合格し、神羅カンパニーに入社することが、若者達の間では一種のステータスにもなっていた。
 特に彗星のごとく現れ、瞬く間に「ソルジャー中のソルジャー」、「英雄」と呼ばれ、人々の羨望の眼差しを浴びるようになった、セフィロスの存在は過大だった。
 『ソルジャー』。
 神羅カンパニーがウータイと戦争を始めた頃、偶然に発見された「魔晄」を浴び、人間の未知の能力を導き出された人工の戦闘員または、それらの人物で構成された部隊の名称である。
 表沙汰にはされていないが、クラス3rdなどのランクが低級のソルジャーの中には、魔晄中毒により、精神に異常を来たしている者もいた。
 このソルジャー開発にも一役買った「魔晄」は、先の宇宙開発の「神羅26号」ロケットにも利用され、この程、一般家庭レベルでの使用の実用化の目処がついたのだった。
 ミッドガル周辺にも多量の魔晄が存在することが判明し、老朽化した神羅カンパニーの新社屋建設計画に伴い、ミッドガルを改築することとなった。
 その重役会議の席で、十代前半の副社長は事も無げにこう言い放った。
「住民を移動させる必要はないよ。その上に造れば良いんだ」
 重役の一同は皆、息をのんだ。
 まさか飾りだけの、子供の副社長からそんな言葉が出てくるとは…。

cerastes

ルーファウスが神羅カンパニーを手に入れるまでの過去話。私のFFVII感の原点。
ツォン×ルーに見えないけど、実はツォン×ルー。うちの2人はやはり、ラブラブだわ……。


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