カイロプラクティック・オステオパシー・中国整体・心理療法なら日本整体心理学研究所
ジャパン・ヘルスサイエンス専門学院運営機関 日本整体心理学研究所
カイロプラクティック・オステオパシー・中国整体・心理療法
治験例集 卒業論文集
学校案内・入学情報はジャパン・ヘルスサイエンス専門学院をご覧ください。



『内臓マニピュレーションで内臓脂肪を減らせられるか?!』
〜生活習慣病に対する徒手医療家の役割とは!!〜

                                                      平成17年12月22日 提出

                                                          18期生  安井良美

「要旨」
 今回この研究を行うにあたり生活習慣病と呼ばれるものを少しでも予防する'手助け'、または、'きっかけ'を与えることはできないものか、という思いで研究を進めることとなりました。個人的なお話ですが、この学校生活の間に家族をガンで亡くすという切ない出来事がありました。なんとかできないものかと頑張りましたが、無念のまま看取る結果になりました。ガンという病気は進行するとなかなか止めることが難しい病気の代表的なものでありますが、だったら生活習慣病と呼ばれるものならば、その習慣を改めれば予防することができるのではないか?!という単純な発想も加わって今回の調べとなりました。内臓脂肪というものはその最たるものである故、今回私のターゲットとなったのです。
 しかしながら、生活習慣病というだけあって本人の自覚と習慣を変えようとする自力の部分が多く必要になってくるので、手技だけでは非常に難しいという壁にもぶち当たりました。
その中でも患者の自助努力に対してそれを少しでも後押しでき、その相乗効果で患者自身が変わっていけばいいな、と思います。そして、その手助けをすることで患者自身やその家族の幸せが一日でも長く続くのであれば、嬉しく思います。

「緒言」
 本研究の最終目的は"内臓脂肪を減らすこと"(その手助け)でありますが、大まかにその手段、それによる効果の期待を述べます。
先ず、内臓脂肪ですが、主に腸間膜を中心に各臓器の周りに蔓延っています。脂肪に占領された腹腔内においては各臓器の動きが悪くなり、特に腸の蠕動運動が損なわれ便秘や消化不良といった症状が直接的に出てくることになるでしょう。また、脂肪により腹腔内の圧力が高まることで横隔膜が胸腔を圧迫し胸腔内の臓器にまで悪影響を与えることも予想されます。
そこで、腸の蠕動運動を助け、蠕動運動で脂肪が使われることを促したり、腸間膜についた脂肪を流れやすくすることを目的とした手段を用いることによって腹圧を下げる。それにより横隔膜も下げることができるので胸腔内への悪影響や引き続き起こると予想される様々な病気も回避できるのではないか、また、弁の付いていない腹腔内の静脈叢や門脈の流れをよくすることで、うっ滞しがちな老廃物の除去や脂肪の分解が少しでも促進されるのではないかという予測があります。
以下において具体的な説明を述べることとします。
「体脂肪の種類」
一言"体脂肪"と言っても、皮下脂肪と内臓脂肪の2つのタイプがある。
@ 皮下脂肪
文字とおり皮下にある脂肪組織に蓄えられて脂肪で、筋肉などのエネルギーが不足してくると、この皮下に蓄えられた脂肪が血液中に放出されて筋肉などに運ばれてエネルギー源として利用される。一般に、腹部、腰部、大腿上部に多く分布している。簡単に言うと、指で摘むことのできる脂肪がそれである。
A 内臓脂肪
  内臓の周り、特に腹腔内、腸間膜や大網といった腹膜の表面に蓄積する脂肪。消化管 
  の間の脂肪組織とも言える。
まず筋肉のエネルギーとなる脂肪で、皮下脂肪よりも活発であり、蓄えられやすいが、 
燃焼もされやすいという特徴がある。こちらは皮下脂肪と違って、お腹が出てい  
るにもかかわらず、パンッとはって摘むことができないのである。
※脂肪肝はまた違っていて、それは肝細胞に脂肪が蓄積することを言う。

皮下脂肪に比べ、内臓脂肪の蓄積が多くなるほど糖や脂肪の代謝が悪くなり生活習慣病の原因になりやすいことがわかっている。

「体脂肪の役割」
体脂肪は、健康を維持することはもちろん、人間の生存にとって必要で欠くことのできないものなのである。しかし、一般的には、体脂肪はその悪い面ばかりが広く知られていて、体脂肪の良い面、体脂肪の果たす大事な役割については忘れられている。
 身体に脂肪がたまり過ぎると成人病が起こりやすくなったり、体力が低下することは多くの調査によって明らかにされている。ダイエットや運動などによって余分な脂肪を取り除くと、健康や体力が回復することも多くの研究によって明らかにされている。
 このようなことから、体脂肪は少なければ少ないほど健康的であるという考えが広まってしまい、いつの間にか体脂肪の良い面が忘れられてしまっているようである。
 しかし、体脂肪は少なければ少ないほど良いという考えは間違っている。健康な身体を保つ為には、ある程度の脂肪が必要なのです。体脂肪は少ないほど良いという考えは改めなければなりません。
 体脂肪の役割の中で特に重要なことは、エネルギーの貯蔵、体温調節、女性の月経の発現・維持であり、体脂肪が少なすぎることもまた、これらのバランスを崩すことになるのである。

「脂肪細胞はいつ、どのように増えるか」
脂肪細胞数は幼児期から体格の成長と伴に増えていくわけであるが、離乳期と思春期に特に増加する。ところが、離乳期や思春期に脂肪細胞の数が急激に増えた結果、肥満になってしまうことがある。こうした脂肪細胞数の増加による肥満を"脂肪細胞増殖型肥満"と呼んでいる。これを原因とする肥満では、体内の脂肪細胞の総数は正常の3〜5倍にも達することがあると言われており、また、脂肪細胞の大きさ自体が大きくなって肥満になることもある。脂肪細胞の中に脂質が充満することによって脂肪細胞が肥大化するのであるが、これを"脂肪細胞肥大型肥満"と呼ぶ。こちらは成人期に発症することもあるが、女性が妊娠を契機として発症することも多いのである。


「体脂肪の男女差」
○体脂肪量
体脂肪は全身に分布されているが、特に、皮下や腰腹部の内臓の周りに多いと言われる。そして、その分布には男女差が存在する。正確に言うと、思春期まで体脂肪量に男女差はそれほど無く、体脂肪量に男女差が出てくるのは思春期以降だと言われている。
 思春期後には男女共に体脂肪量は増加するが、特に女性における増加は著しく、そこで男女差が発生してくるのである。成人になると、女性は男性の約1,5倍の体脂肪量を持つことになる。先にも述べたように、女性の脂肪量が多くなるのは月経との関係が深く、女性としての役割を果たすために必要な準備だからである。
○ 体脂肪分布
 量もさることながら、体脂肪の分布も思春期以降に男女差がみられる。思春期以降の女性は男性に比べ、臀部、大腿部の皮下脂肪の蓄積が多くなり、女性らしい体つきになっていく。
 特に、肥満の男女差の体脂肪分布の差を比較すると、女性はでは全身の皮下脂肪が厚くなるのに対し、男性では腹部を中心とした内臓脂肪分布が顕著になってくることも調べにより、明らかになっている。それは、男性は女性に比べテストステロンなどの男性ホルモンが関係し、筋肉量が多いことからその代謝に使われるエネルギー備蓄として内臓脂肪が多く溜められるということである。そして女性は女性ホルモンの関係上、または本来備わっている種の保存のホメオスターシスの関係上、骨盤まわり腰、臀部、大腿部に多く皮下脂肪が分布するのである。
 まとめると、皮下脂肪の占める割合は女性に多く、内臓脂肪の占める割合は男性に多いと言える。ただし、個人差があり、女性であっても内臓脂肪が多い人も中にはいる。

「脂肪蓄積のプロセス」
 まず、脂肪を作る材料だが、ブドウ糖と脂肪酸である。口から取り込んだ食物が体内で消化され、作り出されたブドウ糖と脂肪酸が脂肪細胞に取り込まれて脂肪を作る。
○ 糖質(ブドウ糖)
 ご飯や果物、お菓子などを食べると、消化されて、その中に含まれている糖質は小腸から吸収されて血管の中に取り込まれる。血管の中に入った糖質はブドウ糖(グルコース)と言われる。血管の中にあるブドウ糖のことを「血中グルコース」あるいは「血糖」とも言う。
 血中の中を流れるブドウ糖は、血管の外に出て、脂肪細胞の膜に達する。この細胞膜はブドウ糖を自由に通さない仕組みになっているが、これを通すのに必要なホルモンが"インスリン"である。インスリンが膵臓から分泌されるとブドウ糖が脂肪細胞の中に取り込まれ、脂肪細胞に取り込まれたブドウ糖は、そこで脂肪酸とグリセリンに分解されるのである。そして、この脂肪酸とグリセリンを使って脂肪が作られる。
 もう一つの仕組みとして、肝臓でもブドウ糖を材料にして脂肪が作られる。この脂肪は血中に放出され、リポタンパクキナーゼという酵素の働きによって脂肪酸に分解される。分解された脂肪酸は脂肪細胞に取り込まれ、ここで再び脂肪に合成されて貯蔵されることになる。
○ 脂質 
 肉やバターなどに含まれる脂肪は、消化吸収されて血管の中に取り込まれる。血中に取り込まれた脂肪は"カイロミクロン"と呼ばれ、肝臓で作られて脂肪と同様に、リポタンパクキナーゼの作用により脂肪酸に分解される。この脂肪酸が脂肪細胞に取り込まれ、再び脂肪に合成されて貯蔵される。


「脂肪分解の仕組み」
 脂肪細胞は細胞膜と細胞質からできている。
細胞質の中身は液体でできており、それが外にもれないように細胞膜で覆っている。細胞質の中には、核、ミトコンドリア、小胞体、油滴などが含まれている。脂肪細胞が他の細胞と異なっている部分は、細胞質のほとんどが油滴だということである。小胞体の中にはリパーゼという脂肪分解酵素が入っており、脂肪を分解させるには、この油滴とリパーゼが接触することが必要となってくる。この時に必要なホルモンがノルアドレナリン、アドレナリン、副腎皮質刺激ホルモンなどのホルモンである。このように、脂肪分解にはリパーゼと油滴が接触できるようにノルアドレナリンのようなホルモンが必要とされる。
 分解された脂肪の一部はエネルギー代謝に使われ、また残りの脂肪は肝臓に運ばれて、再び中性脂肪に合成され、血液によって脂肪細胞へ運ばれる。
 これらを代謝させるには、有酸素運動などの運動を行うことが最も有効とされるが、
その効果を上げるためにも、血流やリンパの流れを少しでもよい状態にしおく方がよりよい結果が得られるのであろう。


「何故、内臓脂肪が悪者扱いされるのか・・・」
研究が進むにつれ、内臓脂肪は単にエネルギー貯蔵の場所という役目だけでないことが明らかになってきた。それは本来、脂肪細胞は単なる脂肪の貯蔵庫ではなく、レプチン、アディポネクチン、TNF-α、PAI-1(以下、※注釈参照)等生活習慣病に関わる様々なる色々な物質を分泌することがわかってきたのである。レプチンやアディポネクチンは食欲抑制や血糖値を下げるなどの興味深い働きがあり、一見、脂肪細胞が増えれば良い傾向のように思える。しかし、脂肪細胞の肥大が著しくなれば、TNFαなどの悪玉の役目が勝ってき脂肪細胞の善玉としての機能が失われてくるのである。そして内臓脂肪は、皮下脂肪より分泌活動が活発である。このため内臓脂肪が取り立てて生活習慣病に関与するといわれる所以なのである。それが一つ目の理由である。
二つ目の理由として、通常、腹腔内には胃や腸などの臓器がうまく動ける様に空スペースがある。しかし、内臓脂肪型肥満(腹部型肥満)の場合では、その空スペースの中に脂肪が充満しているため、内臓本来の動きができなくなる可能性が出てくる。便秘や消化不良など、腸に起きるこれらの症状も内臓脂肪が溜まり、腸が圧迫を受け、機能低下し始めている傾向でもあるのだ。また、内臓周りに脂肪が沢山溜まり腹圧(内側→前部・お腹、腹腔→胸腔、腹腔→骨盤底筋)がパンパンに高くなると、横隔膜が正常の位置より押し上げられ、その結果、肺が小さくなる。肺が小さくなれば、陰圧が低くなり、自分では普通に呼吸しているつもりでも、正常な胸腔の人よりも取り込む空気の量が少なく、体内に摂取される酸素量が少なくなり、脂肪を効率よく燃やせなくなる。その悪循環が出来上がると、より痩せにくく、太りやすい体質(脂肪を溜め込む)に変わっていくのである。

※ レプチン…  脂肪細胞が分泌するタンパク質で、正常では食欲抑制、エネルギー代 
       謝増大などの機能がるが、肥満者では、視床下部のレプチンレセプタ
       ーの異常や、またはレプチンレセプターそのものの異常でレプチンが増加しても食欲の抑制が効かなく、肥満が促進されるという仮説もある。
 アディポネクチン…脂肪細胞が分泌するタンパク質でインスリンの効果を高めて、血糖値を下げたり、動脈壁の恒常性維持に関与し血管の目詰まりを防ぐ役割がある。痩せすぎて脂肪細胞が少なくなるとこれも不足するが、脂肪細胞が肥大化しても不足するように、バランスのよい状態をとることが大切な分泌物である。
 
TNFα…    腫瘍壊死因子。腫瘍細胞を壊死させる作用のあるサイトカイン。主に活性化マクロファージ(単球)から産生される。マクロファージ以外にも肥大化した脂肪細胞からもホルモンが分泌され、それがインスリン抵抗性糖尿病を引き起こす成因や病態をもっている。
 PAI-1…    脂肪細胞が肥大化すると分泌されるホルモンで血栓を作りやすくし、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす原因になる。


「蓄積された脂肪を放っておくとどうなるか・・・」
先にも述べたように、特に問題となるのは内臓脂肪であり、その溜まった内臓脂肪を放っておくとどのような結果をもたらすかについてここで述べていくことにする。
「内臓脂肪」は燃えやすい性質を持っているのであるが、この時大量に「遊離(ゆうり)
脂肪酸」と言う物質が出てくる。「遊離脂肪酸」は空腹時の大切なエネルギー源なのだが
、余り多すぎると体に悪影響を及ぼすことになる。例えば高脂血症、糖尿病、高血圧など
いわゆる「生活習慣病」の原因になる。例えば、糖尿病をとっても、その死亡率は正常体
重者の約4倍にもなると言われている。糖が分解されてできるブドウ糖は筋肉を動かす大
切なエネルギー源だ。エネルギーとして利用された余りのブドウ糖は血液を通じて肝臓や
脂肪細胞に蓄えられる。ブドウ糖が過剰に蓄積されすぎると、それを分解する役目である
インスリンというホルモンが膵臓から分泌され、血糖値を下げる。しかし、そのような高
血糖状態が続くと、膵臓のランゲルハンス島B細胞が疲労し、インスリンの分泌量が減少
することになる。それにより糖尿病が引き起こされるのである。最近では糖尿病が狭心症
や心筋梗塞、脳梗塞を促進させることも明らかになってきている。


「整体の観点からみた、脂肪(肥満)による※腹圧増加により起こると予測される症状」※内側→前部(お腹)・下部(骨盤底筋)・上部(横隔膜や胸腔)

○脂肪による内臓下垂や鬱血(骨盤内・下肢)
○内臓下垂によるウエスト増加
○お腹が前方へ突き出すことによる腰痛
○骨盤内や内臓の鬱血によるむくみ、乳酸増加による腰痛
○女性生殖器の位置異常による生理痛や不妊
○便秘
○静脈還流量減少による心臓ポンプへの負担増大
○関係する内臓反射の領域に対する部位の凝りや張り
○横隔膜の影響により僧帽筋や斜角筋の凝り
 →また、それによる頭蓋内への血行不良、神経の緊張
○肥大した脂肪にも血液が必要であるため、他の細胞への血流量が減り、老廃物が細胞に溜まりやすくなり、全身的な慢性疲労を起こしやすい

などなど、様々な症状が起こるでしょう。


「内臓脂肪を減らす手助けとしての治療法と目的」
@ 内臓マニピュレーション
・ 横隔膜、骨盤隔膜の解放
・ 内臓脂肪が付着する腹膜、腸間膜にアプローチし、腸の可動力テクニックなどを用い、蠕動運動を活発にさせ。
・ 肝臓での脂肪代謝を活発にさせるため、肝臓の可動力、自動力テクニックを用いる
(目的)
  腸の蠕動運動を活発にすることにより、蠕動運動で内臓脂肪を利用するようにする。また腸間膜に溜まった脂肪をできるだけ排除させる。腹腔内の静脈叢や門脈の流れをよくし、脂肪の代謝を促進させる。また動きの悪くなった腹腔内臓器の動きをよくすることでうっ滞した血流をよくする。
A 自宅でも行える簡単な体操
 腹式呼吸を利用し、身体を前後屈させる簡単な体操
(目的)
横隔膜の可動をよくさせる。横隔膜の柔軟性を取り戻すと同時に吊るされた腸を動かすことも目的とされる。

〜上記の施術を施すことにより内臓脂肪が減少するとして予測される現象〜
○ 腹腔内に少しずつゆとりができてくる
○ 腸の蠕動運動が改善され、便秘がちの人がそれも改善するだろう。またその蠕動運動に微量ずつではあろうが、内臓脂肪が使われプラスのサイクルに変わっていくと良い
○ 腹腔内にゆとりができることで腸以外の臓器も本来あるべき位置に戻る傾向に向かうだろう。単純発想ではあるが、それにより各臓器において全体的にホメオスターシスが向上すると思われる
○ 腹圧→胸腔圧へのプレッシャーが減ることにより、圧迫されていた肺が可動性を増し、呼吸が回復され、より多くの酸素が確保される。それにより、血中酸素濃度が増し、脂肪燃焼に繋がる


「内臓脂肪量の目安測定法」
○内臓脂肪の測定方法
 正確に測定するためにはCTスキャンを用いて腹部の断面像を撮影しないとわかりません。
 そこで今回、一般の人でもある程度の測定可能な方法として、二つの基準を用いることにした。
@ 通常のウエストサイズからどれだけお腹をへこますことができるか??
これは、まず、リラックス状態でウエスト(お臍の周り)を測定し、次にお腹をへこませてもらう、という測定方法。
例)通常ウエスト80cmの人が、へこませると72cmになるとすると…
  80cm  →  72cm
       8cm減(10%減)ということになる。
★ この何%減少したか、ということがポイントなのである。
というのは、先に述べているように、内臓脂肪が多い人は腹腔内がギュウギュウ詰めになっており、横隔膜をも押し上げている為、お腹をへこませようと思ってもへこますことができないのである。
あくまで目安であるが、男性ではへこみ率10%未満、女性では8%未満だと、皮下脂肪だけでなく、内臓脂肪が多くついている可能性が高いといえるのである。
また、現在の医療分野ではウエスト周り、男性85cm、女性90cm以上であれば肥満だと定義されている。

(※この測定法は茨城キリスト教大学 医学博士 板倉弘重教授 研究によるもの)

A 市販の体脂肪測定器による内臓脂肪レベルの測定
こちらはメーカー基準で測定され、1〜30までの数値で内臓脂肪の割合が評価される仕組みになっている。
・ 標準・やや値が高い・高い、など3段階でも評価される。
(内臓脂肪レベル「10」は内臓脂肪面積100cuに相当し、日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会の報告によると、100cuを超えると肥満が原因で起こってくる生活習慣病が一段と増加してくるとのことである。)
※これら2つの測定法は、あくまでも目安であり、完全なる数値ではありません。
 我々、整体師レベルで利用できそうなもので測定することとした。


「治験例」
今回は3つのグループに分けて実験を行った。
○グループA(4名)
 1回/週 内臓マニピュレーションを行い、それ以外は自宅で体操を行ってもらう
 測定期間 1ヶ月
○グループB(一名)
2回/週 内臓マニピュレーションを行い、それ以外は自宅で体操を行ってもらう
 測定期間 一ヶ月
○グループC(一名)
 2回/週 内臓マニピュレーションのみを行う
 測定期間 一ヶ月


「治験結果と施術後のコメント」
○ グループA
Uさん 52歳/身長 150cm/血圧 120/74 
現在の症状:8年前に子宮摘出の手術をして以来太りだした。今年だけでも7kg体重増加。頚・肩・背中の凝り、右の肩こりが強い時は同時にめまい・耳鳴り・腰痛が起こる、今年2〜3回右の側頭部痛(MRI以上なし)、疲れやすい、息切れがする、胸が苦しい、胸焼けがする、胃がもたれる、心肥大(5年程)、高脂血症ぎみ(今年の健康診断による)、
年月日 ウェスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/11/6 105 99 5.7 67.7 36.6 13
05/11/13 102 98 3.9 67.7 36.5 13
05/11/20 100 91 9 67.1 35.2 12
05/11/27 100 91 9 68.3 36.2 13
<コメント>
・ 下腹部がかなりスッキリした。
・ 施術を受ける前は常に胃の上の方(胸も)がもたれている感じだったが、施術を受けてからはそれが無くなった。
・ 左右の結腸の硬さがなくなり、全体のツッパリがなくなった。
・ 特に右ASIS→R10下角→右肩へのツッパリがなくなってスッキリした。
・ いつも息苦しい感じで、呼吸が浅かったが、だいぶ楽になった。
Kさん 67歳 女性/身長 153cm/血圧 115/73
現在の症状:三年前、片側顔面麻痺が起こり以来禁煙。それから太りだした。
慢性的な便秘(毎日漢方薬服用)、肩こり、腹がはる、腰痛・だるい
      とにかくよく食べてしまう
年月日 ウエスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/11/6 101 98 2.9 61.8 39.2 11
05/11/13 101 95 5.9 61.4 39.5 10
05/11/20 99 95 4.0 62 38.6 11
05/11/27 99 95 4.0 62.3 39.6 11
<コメント>
・ 便秘は完全には解消しないが、だいぶマシになっていることは実感できる。
・ ウエストは2cmしか減っていないが、下腹部がスッキリし、前かがみがしやすくなった。
・ 食欲が増したような気がするが、ウエストが太らなくて良かった

Mさん 39歳 女性/身長 161cm/血圧 128/77
現在の症状:出産後から27kg太った(7年前から)、生理不順(2〜3回/年、若い頃から)
      頚・肩・背中の強い凝り、頭痛、頭が重い、めまい、目が疲れやすい、
      手がだるい・痺れる時がある、手足が冷える、便秘(3日に一回程度)
年月日 ウェスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/11/6 103 99 3.8 79 38.1 12
05/11/13 103 97 5.8 80 37.6 12
05/12/4 100 96 4 78.8 38.3 12
05/12/11 100 94 6 79.4 37.9 12
<コメント>
・ 最初の施術後の3日くらいは便通がよかった
・ 3回目の施術くらいから毎日便通がよくなってきた
・ お腹のマッサージはとても気持ちよく、リラックスできる。肩こりなどはまだあるが、クイックマッサージに行くよりもこの方法の方がリラックスできて、最終的には良い感じがする。
・ ウエストのサイズが少し小さくなったことが嬉しい。が、まだまだ内臓脂肪によるリスクはあるので、自分で何か行おうと思うようになった。

Sさん 40歳 女性/身長 153cm/血圧 太ってきて少し高くなってきた
現在の症状:二年前から太りだした(そえまでは48kg)10年以上うつ病、境界性人格障害、薬のタイプが特に変わったわけではない、耳鳴りがする(左耳聴覚障害)、
      足が冷える・冷えるとつる、腰痛・だるい(重いものを持った時)
年月日 ウェスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/11/6 93 89.5 3.7 69.2 36.9 11
05/11/27 91 86.5 4.9 67.2 36.7 11
05/12/4 91 84 7.6 67.2 35.6 11
05/12/11 90 83 7.7 67.6 35 11
<コメント>
・ 普通に生活していたのに、体重が減ったことが嬉しい
・ お腹のマッサージはこれまでにない心地よさがあった

○グループB
U君 19歳 男性 身長 161cm/血圧 正常
現在の症状:肥満、アトピー性皮膚炎(顔面部)、たまに腰痛がおこる(ピキッと)、
      過敏性大腸炎ぎみ(5回前後/日の排便)
年月日 ウェスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/10/27 93.5 89.5 4.27 82.5 23.8 12
05/11/1 92.5 87 5.9
05/11/4 92 87 5.4
05/11/8 93 86 7.5
05/11/16 91.5 84.5 7.6 82.8 24.4 12
05/11/21 88 81.5 7.3
05/11/25 88 81.5 7.3 82 24 12

<コメント>
・ 自分でも腹部全体がスッキリしたと実感している(特に下腹部)
・ たまに発生していた腰痛がなくなった
・ 体重が変わっていないが、痩せられて嬉しいし、痩せられることがわかった


○ グループC
Tさん 36歳 男性/身長 166cm/血圧 135/90
現在の症状:特になし
年月日 ウェスト
(cm) へこませた後のウエスト へこませ率
(%) 体重
(kg) 体脂肪
(%) 内臓脂肪
05/10/27 87 80 8 74.9 22.5 12
05/11/1 86 79.5 7.5
05/11/4 87 79.5 8.6
05/11/8 86 79 8.1
05/11/16 85.5 79.5 7 74.6 22.5 12
05/11/21 85 78.5 7.6
05/11/25 86 79 8.1
<コメント>
・ 3回目の施術後に大量の便が出た。それがとても悪臭がきつく、宿便が出たのだと思う


「考察」
 今回のテーマである'内臓脂肪'に関しての結果は、体脂肪測定器(市販)の数値的に改善したとは言えないのが事実である。体重、体脂肪共に目立った変化は起こっていない。加えて、U君以外はグループA、Bの人も、何かと理由をつけてはそれほど運動はしていなかったとのことである。
それにも関わらず、数値的に大きく変化している項目がいくつかある。
◎ ウエストサイズがダウン
(お腹をへこませた後のウエストサイズもダウン)
◎ お腹へこませ率がアップ
この3項目においての変化が目覚しい。これらについて分析していく。

◎ウエストサイズのダウン
・脂肪による骨盤内鬱血による浮腫が解消した(体液の循環が改善された)
・内臓の位置が移動した
・腸内のガス、ないしは宿便などが排出され、腹部がスッキリとした
◎お腹へこませ率のアップ
・横隔膜の可動性の増大
・腹腔内における臓器の可動スペースが確保された
・横隔膜の位置が下に下りてきた


☆横隔膜の可動性増大に注目!!☆
 施術前は呼吸による胸郭の膨らみが非常に少ない人が多かった。加えて、肝臓の可動力のマニピュレーションを行う際もほとんどの治験者において胸郭が硬く、注意を払わねばならない状態であった。
 それが、施術を重ねるに従い、胸郭の柔軟性が増大していることを実感し、患者の中には呼吸や行いづらかった深呼吸がしやすくなった、と述べる方もいた。

 今回の'お腹をへこませ率'がアップしている点に特に注目していただきたい。残念ながら、この数値が今回の研究対象である内臓脂肪が減った、ということを直接的に立証できるものではない。しかし、間接的には十分影響しうるものだと考えられるのではないだろうか。
 当初の調べ通り、実際、生理学的に脂肪は運動などを行わないとエネルギーとして燃焼されないのではあるが、内臓マニピュレーションを行ってから、ないしは運動と並行して行うことがより効果が高いと予測される。


 というのも、次の画像を見ていただきたい。


今回の実験において 
・ 常にあった胃もたれ、胸のもたれがスッキリした
・ 呼吸がしやすくなった                      ⇒ 横隔膜の位置が下に降り、可動性が増大した!!
・ 胸郭の柔軟性が改善された

ことを表している。
脂肪により横隔膜が押し上げられた状態では呼吸がしづらく、正常の状態に比べて血中酸素濃度が低いことが予想され、その状態のまま運動を行うのと、少しでも改善させてから運動を行うのとでは効果もおのずと違ってくるであろう。(実際の科学的研究においても、横隔膜の可動性を向上させることが血中酸素濃度を上昇させることが証明されている)
よく太っている人が「運動しているが全く痩せない」ということを口にするのを聞いたことがあるのではないだろうか。それはこれまで述べてきたことを踏まえるとご理解いただけるだろうが、代謝や血流が良くない状態からスタートするのであるから結果が悪いのである。内臓マニピュレーションを事前に行い、体液が下肢から心臓に返っていく通路、特に腹部の静脈叢付近の流れを良くしておくことで代謝率も上がるのである。

最後に余談になるが呼吸、特に深呼吸が身体に及ぼす影響をいくつか挙げておく。
・ 横隔膜が上下することで、ぶら下がっている内臓もつられて動かされ(マッサージ効果)、各臓器の働きが促進される
・ 副交感神経が活性化され、自律神経のバランスがとれる
・ 自律神経のバランスがとれることでストレスを上手にコントロールすることができ、ストレスによる'無駄な食欲'を抑制させる
・ 唾液の分泌が促進され、口からの侵入する外敵に対する免疫力が上がる
・ 腹圧の変化で腸の動きが活発になり、全身的な免疫力が上がる
・ 胃液やインスリン分泌が上がる
・ 腹圧の動きで腹部大静脈が圧迫され、心臓ポンプの負担が軽くなり、心臓循環系も活性化される。また下肢のむくみも改善される
・ 皮膚の毛細血管まで酸素が送られることにより、毛細血管が拡張し、皮膚温が上昇する
・ 腹部内臓鬱血が解消され血流が良くなることにより冷え性改善


「結語」
内臓マニピュレーションで内臓脂肪を減らせられるか、といえば、直接は難しい。
しかし、我々にはできることがある。その準備やきっかけ作りを助けたり、また患者の努力を後押し・代謝を良くする手助けをすることが可能である。「きっかけ」とは今回のように体重や体脂肪率は変化しなかったが、"ウエストが細くなる"これだけでも患者は心が軽くなり、"何か行動を起こせば、自分も変わることができる"という意識を得ているのである。実際、グループBのMさんは「これまでは小学校低学年の子供がいるのでウォーキングに出られない」と言う理由で全く運動をしてこなかった。しかし、今回ウエストが少しでも細くなり"嬉しい"と感じたことで、次は健康に、綺麗になりたいと実感するようになったという。そして、今回の実験後、子供と一緒に家の中でできる運動をテレビを見ながらでも行い始めたと言う。加えて、定期的に今回のような内臓マニピュレーションを受けたいとのことでる。この話からもわかるように、それは今までとは違う'変化'を患者に与えていることであり、変化がおこれば、それ以降も変化の連鎖があるのが世の常である。とはいえ、病気は他力本願で治るものではなく、その多くの部分で患者の『自助努力』が必要となってくるのが現状で、我々の力は微力でしかないのかもしれない。
徒手医療家としては患者に対して、『良くなるきっかけを与えること、手助けをすることが我々に与えられた役割であり、治すのは患者自身なのである』ということは、機会あるごとに先生方から教わっていることであり、病気を治すのも患者自身なのである。そして、その手助けを行えることは喜ばしいことである。 
 とはいえ、今回の研究で得たもう一つの副産物として、『美容に効果あり!!』ということが言えるのではないだろうか。今回の治験者には今までの生活となんら変わらない生活を行ってもらった。食事も運動も取り立ててしていないのに、ほぼ全員ウエストがサイズダウンしている!これは特にビジュアルを気にする女性にとって、メリット大と言えるでしょう。体重が少し減っても、人から「痩せたんじゃない?」と言われない限り、精神的には嬉しくもなく、むしろ体重があまり変わっていないのに「ちょっと痩せた?」と聞かれる方が何故だか嬉しいものである。私事であるが、自分で腸の内臓マニピュレーションを行ったところ、一週間で肌の状態が明るくなり、吹き出物が少なくなってくるという現象が起こったのである。そして、続けていくうちに、毎年悩まされていた冷え性が例年に比べ随分と改善しているように感じる。腸のマニピュレーション以外に行ったことと言えば、'イメージ療法'とでも言うべきものか。身体から排出するものを全てことあるごとに「毒素が出た〜」と思い込んで喜ぶようにした。ため息出さえも喜んでみた。この'イメージ'までやってこそ、いわゆる『デトックス』が成功するのではないか、とも考える。なりたい自分になる'イメージ'が原動力になるのではないだろうか。論点がずれてきたので修正するが、今後、内臓脂肪を含めた脂肪を効率よく燃焼させていくにあたり、次の4本柱を考えていきたいと思う。
@ 運動や食事
A 内臓マニピュレーション
B イメージ療法(カウンセリングも可)
C 美的感覚(特に女性に対するアプローチとして有効)

私自身、自分の家系をさかのぼってみると、脂肪に対しては恐怖を抱かざるをえない昨今である。色々な意味を含めて『なりたい自分=納得のいく、満足した人生』に近いと思い、今回の研究を期にそれに近づく努力をしていきたいという想いが一層強くなった。


謝辞
 今回、卒業論文の題材選びから執筆を行うにあたり、多大なるご協力、助言をいただきました担当の黒岩祥行先生、その他、本学院所長である吉原滋宏氏を初めとし学校生活を通してご指導くださった全ての先生方に感謝いたします。そして、三年間、ジャパンヘルスサイエンス専門学院で共に励ましあい、助け合うことができたクラスメイトの皆さんに感謝いたします。ありがとうございました。

参考文献
標準生理学 第5版 医学書院

内臓マニピュレーション 日本オステオパシー協会

解剖学アトラス 第3版 文光堂

体脂肪−脂肪の蓄積と分解のメカニズム 湯浅景元著 山海堂出版

体の老廃物・毒素を出すと病気は必ず治る 石原結實 三笠書房

腹がすっきりすればすべてが変わる! 長野茂 講談社+α新書

怖い体脂肪をどう減らすか 片岡邦三 河出書房新社

ヨーガ式呼吸法ダイエット 綿本 彰

参考HP
「家庭の医学」生活習慣病の原因は皮下脂肪だけではありません、内臓脂肪を絶て!

肥満の最新医学 

大阪大学名誉教授 松澤佑二教授論文


 


 

日本整体心理学研究所 〒532-0011大阪市淀川区西中島3-11-24 山よしビル7F・8F  TEL:06-6885-3022