Go Go テッサ♪



Phase 3



※お酒は二十歳になってから飲みましょう、でも飲み過ぎは良くないです♪



青い空が一杯に広がって桜の花が満開なここ神代高校の裏山で、宗介達一行はお花見に来ていた。
普通ならこの時期お花見など普通の事なのだが、テッサがまだしたことが無いので折角日本に居るのだから
やってみないとかなめが誘った。
もちろんテッサは大喜びでいそいそと前日の夜からお弁当作りに精を出したのは、言うに及ばすである。
言い出したかなめもこの機に乗じて自分の気持ちをアピールするために、気合いと気持ちをたっぷり込めた
豪華絢爛なお弁当を用意していた。
ちなみにその二人が作った大きな弁当を持つのは二人の意中の相手、相良宗介その人である。
最初は宗介とテッサとかなめと恭子の四人だけのはずが、いつのまにやら倍近く人数が増えていた。

「俺も花見をやってみたかったんだぁ〜♪」

今日はいつもの戦闘服じゃなくて普段着でギターを担いだクルツが楽しそうに言った。

「そうね、私も初めてかな?」

こちらもラフな格好のメリッサが相づちをしながら桜の花を眺めていた。

「それならば、今日は存分に日本の風情を楽しむのも良いでしょう」

いつの間にか裏山に来ていた林水敦信生徒会長が持っていた杯に、桜の花びらを浮かばせて花見酒としゃれ込んでいた。

「どうして林水センパイがここにいるんですか?」

かなめはそう言いながら、うさんくさそうな目つきで林水を睨んだ。

「俺が誘ったのだが何か問題でもあるのか、千鳥?」

いつものむっつり顔で当然のように胸を張って答える宗介に、かなめはずっこけた。

「あんたねぇ〜どーして余計なことすんのよ!」
「むっ、しかし日頃お世話になっているのでどうかと思い誘ったのだが……」
「私が居ては何か拙い事でもあるのかね、千鳥くん?」
「べ、別にそう言う訳じゃ無いんですけど……」

実際、本当にジャマだと思っているかなめは心の中で舌打ちして唇の端を噛んでいた。
(全く……これじゃ下手に宗介に迫ったりしたら弱みを見せちゃう様で後でなにされるか分かんないわ)
と、横目でライバルと言うべきテッサを見ると、ちょっと顔を赤くして宗介に寄り添うように座っていた。
(くっ……こっちはこっちで遠慮が無くなってきたわね……う〜む)
当初の思惑と違ってテッサの意外な積極さにかなめの心は穏やかじゃなくなってきた。

「はいサガラさん、沢山作りましたからどうぞ♪」
「はい、それでは頂きます」

山盛りになった取り皿を受け取ると、宗介はがつがつと勢いよく食べ始めた。
その食べっぷりを幸せそうに見つめるテッサに対抗して、かなめは自分の作ってきたお弁当からおかずをこれまた
山盛りに乗せて、食べ終わったばかりの宗介の前に差し出した。

「はいソ−スケ! あたしのも食べてね♪」
「あ、ああ、もちろん頂くぞ」

自分の分を食べる宗介をちょっと顔を赤くして見つめるかなめの姿に、テッサは彼女の心の中を読み取っていた。
(かなめさんも少しは本気になった様ですね、でも私負けません!)
不意に二人の視線が交差した瞬間、火花が散ったのを見逃さなかったのは宗介を除くここにいる全員だった。

「なあ姐さん、テッサもかなり積極的に行動しているみたいだけど?」

飲み食い品柄もテッサの様子をデジカメに収めつつ隣で飲んでいるメリッサに呟く。

「いいのよ、あれでもまだ弱い方よ……もっと強引にいかなきゃ!」
「姐さん酔ってるな……」
「酔ってないわよ〜♪」

一升瓶片手に顔を真っ赤にしていて酔っぱらって無いと言っても全然説得力も無く、クルツは序でにとメリッサの
酔っぱらった姿を写真に納めた。






最初は普通の花見だった。
しかし誰が進めたのかいつしかテッサとかなめのコップにはジュースでもウーロン茶でもないアルコール飲料が
なみなみと次がれていた。

「こら〜そこのメガネ! あんたムカつくのよ〜!」
「千鳥くん、未成年の飲酒は拙いと思うのだが……」
「うるさうわねぇ〜何さこの変態メガネ……ヒック♪」

理性のたがが外れたのかそれとも日頃溜まっていた不満が爆発したのか……いや単なる八つ当たりかもしれないが、
かなめは酔っぱらって林水に絡んでいた。

「ち、千鳥、その辺で止めた方がいいと……」
「何?」
「いや、邪魔して済まない」
「ふん!」

宗介は自分なりにかなめを心配して注意をしたのだが、目が座った彼女の迫力に自分の意見が聞き入れて貰えないと
判断しすぐに撤退した。
何故だかわからんが、今日のかなめはもの凄く怖い……宗介の背中に冷や汗が流れる。

「サガラさん」
「はい、何でしょうか?」

自分の横でコップを両手で包み込む様に持っていつの間にかお酒を飲んでいるテッサは首まで真っ赤に染まっていた。
そしてニコニコしながらちょっと潤んだ目で宗介の顔を見つめている。

「サ・ガ・ラさん♪」
「はい」
「くすくす、呼んでみただけです♪」
「は、はぁ……」

持っていたコップを呷り中身を飲み干すし急に表情を引き締めて俯くと、小さく肯いてから顔を上げて
酔っている割にはしっかりとした口調で宗介の顔を見つめながら話し出す。

「サガラさん、聞きたいことが在るんですけど……答えてくれますか?」
「はい、自分の解ること事ならお答えします」

宗介の返事を聞いたテッサは見つめたまま思っていた事を口にした。

「どうして何もしないんですか?」
「はっ?」
「むぅ〜っ!」

いつかのようにほっぺたをぷく〜と膨らませて怒っている様であるが、如何せん可愛さが先行してちっとも怖くない。
しかし本人はかなりご立腹なのでさっきよりもキツイ視線で宗介に襲いかかる。

「だからぁ……どうして私に手を出さないんですか?」
「いえ……その、あの……むっ」
「私ってそんなに魅力がないのですか?」

顔が赤いまま瞬間泣きそうな顔になりはしたが、それでも真剣に宗介の顔をじっと見つめた。

「そ、そんなことは……その、無いのですが……」
「むぅ〜っ……解りました」

煮え切らない宗介の返事にすっかり酔いが回っているテッサは、ブラウスのボタンを一つ二つと外すと胸元を開けると
そこにある白いレースの下着に包まれ、アルコールの所為でピンクに染まった二つの膨らみを見せつけた。

「私、メリッサみたいに大きくないですけど……」
「は?」
「でも、形は良いと思っています!」
「……」

いくら宗介でも間近でこんな物を見せられて意識しないわけにはいかなく、狼狽えて顔を赤くしてしまった。
その様子を見ていたかなめはおもむろに側にあった一升瓶を掴むと一気に煽り飲み干してしまった。

どん!

「ぷはぁ〜……人の水着姿を見て何も感じなかったくせにソースケの奴ぅ……」

夏休みにみんなで海に行った時、ちょっとは自慢のボディにそれなりに奮発した水着を宗介に見せたのだが
見向きもしなかった事が在った。
それがちょっと下着姿の女の子を見ただけで顔を赤くしている宗介に激しいいらだちを覚えた。
おまけに宗介にそんな顔をさせたテッサに、かなめの心に激しい嫉妬の炎が燃え上がった。
……しかし、口元を拭ってあぐらをかいているかなめはどこから見ても酒癖の悪いおやじだった。

「千鳥くん、飲み過ぎは体に良くないとおもうのだが……」
「はぁ? 何か言いましたか?」
「いや、明日頭痛で苦しむことがないようにと助言をしただけだが……」
「それはどうも……でも大丈夫です! このぐらい全然平気ですから……」
「そうか、では自分なりに健康に注意してくれたまえ」
「へいへい〜」

林水の忠告を犬を追い払うように手のひらを振りながらコップの中身を飲み干すと酒臭い息を吐いた。
嫉妬に燃えるかなめの体内ではアルコールが吸収される前に燃焼してしまい、それがエネルギーとなって
さらに彼女をヒートアップさせているらしい。
次から次に手酌でコップにお酒をつぎ足すと、一気に飲み干してしまうかなめを親友の恭子は心配そうに見守っていたが
決して自分から止めようとはしなかった。
誰だって自分の命が惜しいと思うのはけして恥ずかしい事ではなく、それを望む彼女が見て見ぬ振りをしても
攻められることは無いはずである。

「おやじ臭いよ、カナちゃん……それにそれじゃあ完全にテッサちゃんに負けているよ」

親友の情けない姿を横目で見ながら恭子は一人舞い散る桜の花びらを見つめて本当の花見に逃避していた。






「おうおう、とてもテッサとは思えない攻撃にさすがの宗介も逃げ場無しだな……」

ニヤニヤしながらそれでも手に持っているデジカメのシャッターを押すことを忘れないクルツの横で
メリッサはその様子をじっと見つめた。

「……甘いわね」
「はぁ?」
「まだまだ甘いって言ったのよ!」

ファインダーから目を外したクルツが見た物は……飲み干した酒瓶に囲まれ目が座りきったメリッサだった。

「どうしてそこで一気に行かないのよ!」
「姐さんそれぐらいで止めた方が……」
「あに? なぁんかぁいったかなぁ〜んんっ?」
「いえ、俺も姐さんの意見に賛成だな!」
「そうっでしょ〜う♪ ヒック〜」

かなめよりも、数段上の迫力で睨まれたクルツはあっさりと方向転換してメリッサの手下に成り下がった。
残っていた一升瓶の中身を一気に飲み干すと立ち上がり、メリッサは自分の妹分に向かって拳を突きだし叫んだ。

「やるのよ、テッサ!!」
「姐さん下品……」

しかしメリッサの勢いもそこまでで、そのまま後ろに倒れると大の字になってあられもない姿で寝てしまった。
これはチャンスと言わんばかりに、クルツはニヤニヤしてメリッサの姿を何枚もデジカメで撮りだした。

「これは後で何かの役に立つかもしれん、いや役立ててみせるぜ!」

別の意味で稼げると頭の中で算盤勘定していたクルツが、メリッサにしめられてしまうのはそれからまもなくなのは
お約束に近い物があった。
ちなみにメリッサに応援されたテッサはと言うと……頬をピンク色に染めて可愛い顔して寝ていた。
それでもあぐらをかいていた宗介の膝の上に偶然かどうかは解らないが倒れ込んでしまってた。
更にそれをみたかなめがブチ切れて、やけ酒なのかメリッサのように一升瓶を飲み干して轟沈した。
結局、宗介は花見と言う宴会がお開きになるまで一歩も動くことが出来ず、帰る間際青い顔した宗介はトイレに
駆け込んでいった。
それから潰れてしまったテッサを宗介が、かなめを恭子と林水が、メリッサをクルツが担いで帰ることになった。

「それでは会長、恭子、かなめのことよろしくお願いします」
「うむ、決してその辺に捨て置かぬから安心するように」
「冗談でもカナちゃんにそんなことしないで下さい!」
「では失敬」
「お休み相良君」
「おやすみ」

担がれているかなめを見送っていると、後ろからクルツが宗介の肩を叩いた。

「それじゃ俺らも行くとするぜ」
「うむ、メリッサをよろしく頼む」
「おまえこそテッサをしっかりと介抱してあげろよ」
「全力で善処しよう」
「なんならそのまま襲って……」

宗介が自分に向かっていきなり銃を構えたので、クルツは黙り込んで踵を返して走り出した。

「それじゃな!」

振り返ってそれだけ言って背中の感触を楽しみながら、クルツは合流ポイントに向かって夜の中に消えていった。
残された宗介はテッサを背中に担ぐと起こさないように静かに歩き出した。





桜が舞い散る中を家に向かって歩いている宗介の背中で、テッサはほのかな暖かさを感じていた。
それは小さい頃の父親におんぶされた時の様に広くガッチリとしたそれでいて暖かく安心できる場所だった。
自然とテッサの寝顔には微笑みが浮かび、幸せそうな雰囲気を醸し出していた。
それを察しているかどうか解らないが、宗介の足運びはスムーズかつ足音をたてない歩き方だった。
むっつり顔の少年と微笑んで眠る美少女の姿は桜の花と相まってちょっとした幻想の様な世界を作っていた。
程なくしてマンションに着くとテッサを気遣いながら部屋まで運びベッドの上にそっと降ろそうとした時、
彼女はぱちりと目を開いた。

「起こしてしまいましたか?」

しかしそれには答えず微笑んだテッサは宗介の体を意外な程強い力で引っ張ると、ベッドの上に引き倒した。

「テ、テッサ?」

どういう訳かテッサの下に宗介が組み敷かれている状態になってしまったようである。

「そ・う・す・け・さん♪」
「は、はい?」

潤んだ瞳で自分を見つめるテッサになぜか体が硬直してしまい、指一本動かすことが出来なかった。

「うふふ、宗介さん♪」

テッサは嬉しそうに宗介の体を抱きしめると、そのまま宗介の首に自分の鼻先を擦り付ける様に何度も顔を動かした。

「宗介さん……」

酔いの為かすっかり宗介と呼んでしまっているテッサは、大好きという気持ちを溢れ出していた。

「ん……宗介さん、好き……」

最後にそう言って寝てしまったテッサだったが、彼女の本当に小さい呟きを宗介の耳は聞き逃さなかった。

「こ、光栄であります」

などとちょっと呆けた答えをこれまた呟いた。
それが聞こえたのかどうか定かではないが、テッサの顔は確かに嬉しそうに微笑んでいた。
しかし宗介は眠ることが出来ずそのまま朝日を拝むことになった。






翌日、二日酔いの為寝込んでしまったテッサの看病のため学校を休むとかなめに電話を掛けたところこちらも
二日酔いで不機嫌な大声が受話器から聞こえてきたが、自分の声でノックダウンしてしまい結局無駄になった。

「あの……ごめんなさい、また迷惑掛けてしまったようです」
「いえ、何か有りましたら遠慮なく言ってください」

布団で顔を隠して恥ずかしそうに宗介を見るテッサは、朝目が覚めたら昨日の事を何も覚えていなかった。
お陰でなぜこんなにも頭が痛く気持ちが悪いのか解らず困っていた。
そこで宗介は冷静に昨日の状況を事細かく説明してあげたのだが、話を聞いている間テッサの顔はそれは見事に
真っ赤になりしばらく布団から顔を出さなかった。

「あの、サガラさん……」
「はい、何でしょうか?」
「その……手を良いですか?」
「はぁ」

宗介は素直に手を差し出すとテッサも布団から手を出すとおずおずと宗介の手をそっと握った。

「このまま、握っていてくれませんか?」
「は、はい、了解しました」
「ありがとう、サガラさん」

その日一日ほとんど宗介と手を繋いだまま過ごしたテッサは、それはもう満足して幸せを感じていた。






「さあ、全部出しなさいよ……クルツ?」
「ゆ、ゆるしてください、姐さん」
「どおうしようかしら?」

クルツのデジカメから自分の恥ずかしいデータとテッサの危ないデータを奪うと、ぐるぐるにロープに巻かれたクルツを
アームスレイブの格納庫に引きずり込んで逆さに張り付けてしばいていた。

「ふっふっふっ……」
「ひぃ〜っ!!」

人気のない格納庫にクルツの悲鳴が響き渡っていた。






つづく。