キリストが生まれた(紀元前4年)ころの世界の人口は、凡そ現在の日本の人口の約2倍、2
億5千万人と想像されている。
この人口が倍になったのは17世紀半ばであり、つまり5億人になるまでには1,600年以上
もかかっているのである。ところが科学技術の進歩につれて人口増は急速に伸びていく。 5
億の倍の10億人になるのには、2世紀もかからない19世紀初頭、その倍の20億人には驚く
なかれ1世紀で達成してしまうのである。ことほど左様に30億人を突破するには、1960年、4
0億人は1974年、そして1987年にはついに50億人となった。
1998年の国連人口推計では、2010年;68億人、2030年;81億人、2050年には89億
人になると推定しているほどである。
問題はその食糧とのバランスがどうなるのであろうか。食料があるから人口が増えるのか、
人口が増えるから食料が増産されるのか、「ニワトリと卵」のはなしのような話だが、18世紀後
半 から19世紀末にかけて起こった産業革命あたりからの人口増に対しての急速な耕地拡
大、それが急速なる森林破壊につながった。
イギリスを例にとれば、もともとイギリスは森が多かったのであるが、逸早く始まった18世紀
後半のイギリスの産業革命では、高炉が国内の森林を食いつぶし、破壊しつづけた結果、現
在イギリスの森林は国土の9%という有り様である。
講師の話は「食物の話」だとばかり思っていたら、いきなり人口問題から始まった。世界の人
口問題はさて置き、「日本は人口減少社会に入りつつある」と口火を切った。
日本の総人口は、中位推計で2006年から、低位推計では2004年から減少に転ずるとさ
れている。そして生産年齢人口(15〜64歳)については、1995年より減少しており、年少人
口(0〜14歳)も減少を続けている、と日本の将来推計人口の精表をしめした。
配布された日本および世界の人口と将来推計人口表をじっとみていると、まず世界の人口
は国連の推計であるが、‘50年から今日までの世界人口の単純延長のように見事に一直線
である。開発途上国の発展過程を考慮していないようにも考えてしまうが、先進国の人口低減
を充分配慮した信用される表とも見える。講師は人口の伸びを楽観的に話されたが、筆者の
私見としては(別に理論はなく傍観的思惟からだが)突破するのではないかと危惧するのだが
…。
日本の人口は、‘85年までは世界人口を上回る上昇で、そのあと、2010年までは横這い、
そのあと‘50年まで一挙に下降、ほぼ‘50年の水準まで戻る数字になっている。
‘50年といえば、まだ戦後やっと5年経った頃であり、やっとマ元帥から「日本国憲法は自衛権
を否定せず」との声明が出たほど昔話の頃である。吉田茂総裁で自由党が結成され「池田勇
人蔵相が「中小企業倒産もやむなし」と放言されたのを思い出す。また警察予備隊創設、第2
次シャウプ勧告発表、千年札が発行されたのもその頃である。
人口上昇から横這いに転じた‘85年は、科学万博(つくば)の年、中曽根首相以下全閣僚が
靖国神社に公式参拝した年だった。それから今日まで人口はほぼ同じ、2010年の下降に転
じる時はどんな社会になっているのであろうか。
講師は、ここで人口と食糧における最も緊切なる連鎖について、本日の主題はまさにその問
題を中心に、特に日本を中心にお話する旨を話し始めた。
まず、昭和16年には生活必需物資統制令公布、6大都市で米穀配給通帳制・外食券制が
実施され、17年には食塩の通帳配給制、衣料・味噌醤油切符制が実施されるのと同時に、食
糧管理法が制定された。それが平成7年に至るまで一応生きていたのには驚きであったが、
同年にやっと改定され新食糧管理法が出来た。世に三大ざる法といわれたのは、@ 売春禁
止法、A 公職選挙法、B 食糧管理法、であったが、事ほど左様に、食糧管理法も法解釈の
杜撰さと実施の不徹底は半ば常識化していたほど権威のないものと化していたことは否めな
い。
先ほどの人口問題と食糧需給問題との乖離は遠慮近憂と思われるのだが、未だに世界的
規模での適切な見通しも立っていない現状を愁えるものである。
日本は海外からの食料輸入が目立って多い国である。先進国での食糧問題はあらゆる観点
から非常に重要であるが、自給率が40%(国内で作られている比率)というのは、ありふれた
話であるが、先進国中では一番悪い。配布された「食料自給率の推移」では、6カ国中では最
も悪い、列記してみると、フランス;141%、米国;132%、ドイツ;100%、イギリス;78%、ス
イス;60%、で、日本は;実に40%、である。
この表を、1970年を起点、1998年を終点としてその勾配でごく大雑把に上昇率を計算し
てみると、仏;0.7%、米;0.9%、独;0.7%、英;0.6%、瑞;0.8%、日;-1.5%、
なる。しかし各国とも90年を頂点として(米国は80年)逓増、それ以降は世界の食糧事情傾向を
反映して横這いとなっているが、日本だけは極端な下降直線(90年も無関係)の一途をたどって
いる。これをどう見ればよいのだろうか。恐らく穀物ベース(カロリーレス)で弾いてみると27%位
しかないのではないだろうか。
当然輸入に頼るしかない。今の日本は金持ち国であり、輸入で何とかなりたいのだが、足ら
ない国を考えれば金で解決は出来ず、国際的には大変な問題に派生しかねない。
米だけをとれば今の日本は自給で余りあるが、しかし不思議なことに米は輸入している。こ
れは、1955年のウルグアイランド協定で毎年4%から〜8%まで輸入することが国際的約束
となっているのである。
(38万トンから〜74,5万トンまで)
足りない穀物とはトウモロコシ、大豆、小麦である。日本では主食としては米と小麦が欠かせ
なく、その小麦の消費は600万トンだが、其のうちの560万トンは輸入に頼っており、国産品
は僅かに60〜70トンしかない有り様だ。
蕎麦はカナダから輸入しているが、少ないが信州で出きるものには質のよいものがある。
とうもろこしは1,600万トン、大豆は600万トン、すべて輸入であり、納豆、豆腐、の原料は
殆どがアメリカ、昔は中国の輸入が多かったが、今は輸出力が低下しており、この有り様であ
る。小麦は消費の88%も輸入している。
米も、60〜61年までは台湾から輸入しており、また、55年頃までは低所得者にいくほど麦飯
が食べられていたが、米軍占領下の影響もあり、また食生活の豊かさが実感されるようにな
り、食の洋風化が浸透してくるに随って、米に移り、小麦に移るようになって、米離れの風潮に
なる。
そもそも文化人類学ではないが民族の食を語ろうとすると、例えばデンプン質の主食におか
ずを添えるというアジア的な食と、パンはあくまでも食卓の一皿に過ぎないという西欧的な食に
分類したり、デンプン食を大きく、小麦、稲、雑穀、いも類に分けたり、またそれぞれの調理方
法を地域別に比べたりということになるであろうが、あるいは乳や乳製品、発酵食品、香辛料、
酒などの種類や分布もテーマになるし、どうという結論は出しにくい。まだまだ色々な分別の方
法はあろうが、主食・副食という観点から述べれば、日本人は主食として米、副食としてオカズ
といった食文化を持っている。欧米人などは概していえば、主食・副食といった概念は希薄で
あろう。
日本人については、前述の食生活の進歩あるいは洋風化につれて、若年層を中心にパンが
好まれるようになり、随分変ってきた。
配布された科学技術庁の蛋白質・脂質・炭水化物の供給熱量割合(日本人の栄養摂取比率)
を見ると、ここ38年の推移は、脂質(油)が2.5倍に増え、次いで蛋白質が少々増えている、
それも窒V5年からは殆ど変わっていない。炭水化物はごく緩やかな弧を描いて24%ほど減っ
ている勘定だ。
平均値で見れば、個人的に油に偏った食生活となっており、特に若年層に顕著である。望まれ
る適性比率は、蛋白質;12〜3%、脂質;20〜30%、炭水化物(米・小麦中心);57〜8%、
の比率と考えられているようだが、まずまずの数字といえよう。
「油脂は健康によくない」と考えられているが、それも一概にはいえないのは、学生など運動の
激しい連中では必要量の摂取ということで、決して不健全ということではない。
子供の食生活を見ると、先ず「三度の食事」が崩れてきつつある。「何時でも、何処でも、好
きなものを食べることが出来る」、「決まった時間に食べる習慣が崩れる」など、コンビニ文化
の影響もあつてリビングスタイルに変化が起きており、決していい傾向ではない。