アラッ・カルテ



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アレルギー性鼻炎と咽喉頭炎 (院内情報誌 第11号、1994/06/15)
 アレルギー性鼻炎の3大症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり(鼻閉)です。この鼻水・鼻づまりがクセモノなのです。梅雨に入り、空気の乾燥こそ和らぐものの、何となく暑苦しいというわけで、クーラーをつけたまま寝ることもあるかと思います。ところが、もともと鼻閉があると、夜中ずっと口呼吸となり、乾燥した冷たい空気・アレルギーの原因物質(抗原)・空気中の細菌が口から直接のどへ入ってきます。これが原因で、咽喉頭炎や気管支炎(のどのアレルギーや喘息を含む)を起こすことがあります。少なくとも、普段から鼻の治療をして、鼻づまりをとり、鼻水を減らしておきましょう。
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中耳炎と鼻の治療の微妙な関係 (院内情報誌 第11号、1994/06/15)
 中耳炎(急性中耳炎)は、ほとんどが上気道炎(風邪などが原因で起こる鼻からのどにかけての炎症)のために鼻の奥のバイ菌が繁殖し、耳管(中耳と鼻をつなぐパイプ)を通って中耳に入り込むことによって起こります。中耳の炎症が薬の効果などで治まり、痛みなどの症状が軽快しても油断は禁物です。なぜなら、耳管の機能が完全に元に戻り、鼻の奥のバイ菌の量が減少しないと、中耳炎が再発したり、滲出性中耳炎に移行してしまうことがあるからです。
 中耳炎の治療に、鼻の吸引や噴霧・耳管通気(鼻からゴム球などで圧をかける治療)を行うのは、一見無関係に思われるかもしれませんが、実は大切なことなのです。
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異物あれこれ (院内情報誌 第13号、1994/08/17)
 耳鼻科で異物といえば、魚の骨等の咽頭異物、虫(特に蛾)などの耳の異物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実際に耳鼻科の診察をしていると様々な異物と遭遇します。場所別に例を挙げてみましょう。

 最も一般的なのは蛾などの昆虫ですが、同じ昆虫でも固い虫(こがね虫、かねぶんなど)では、耳が傷つけられるため格別痛むようです。また蛾が入った後、一昼夜経って取ってみたら、耳の中に卵を産みつけられていた話や、ゴキブリ、ムカデなどちょっと信じ難いような異物の話もあります。最近では、女の子の使う匂い玉(何と中高生が耳に入れてきた例もある)や玩具の部品・ビーズ玉、草の種、綿棒の綿などもあり、夏特有のものでは、海水浴やサーフィン後の海水や砂なども比較的多い異物です。

 成人ではほとんどありませんが、小児では要注意。豆類の場合が多いようですが、固い豆類は掴むのに苦労する異物であり、時間が経過すると鼻水の水分でふやけて、出血を伴うこともあります。他に小石や草の種、玩具の部品なども多いようです。

 魚の骨が圧倒的多数。鯛やブリのあら煮の場合は骨の形が複雑で、下咽頭・食道異物になることもあります。歯ブラシの毛が咽頭に刺さることさえ・・・・。小児の場合は、柿の種などの辛味のあるおかき類が喉頭痙攣の、ピーナッツ等の豆類が気管異物となり肺炎の原因となることもあるので、特に2歳未満の子どもでは要注意。最近は比較的少ないようですが、硬貨も比較的多い異物です。9歳の男子がプールで泳いでいるときに口にくわえていた500円硬貨を誤嚥した例もあります。
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スポーツ外傷 (院内情報誌 第17号、1994/12/20)
@耳介血腫(相撲耳・柔道耳)
 主に四つ相撲を得意とする力士や寝技を得意とする柔道家に見られる、耳介のこぶにお気づきの方も多いと思います。これは、相手の頭部や畳に耳介が繰り返し、強く押し付けられた結果、皮下出血を反復し、最後には硬い瘤状になったものです。この瘤のことを、相撲耳とか柔道耳と呼んでいます。
 こぶにならなくても、耳介血腫は寒い時期などに固い家具の角に耳をぶつけたり、落ちてきたものが当たったりしてもなることがあります。外耳の皮下出血で、単に血液を吸い取ったりしても治らない場合があり、なかなか厄介な外傷です。
A外傷性鼓膜穿孔
 剣道で横面を受けたり、相撲の張り手をまともに耳に受けてしまうと、鼓膜の穿孔を生じることがあります。鼓膜はごく薄い膜なので、強い圧が加わると、比較的容易に穴が開きます。普通は、直径数ミリの裂け目ができる程度なのですが・・・・・・・。
 症状としては、受傷直後から音が聞こえにくかったり、耳が塞がった感じがし、時には出血を伴います。感染がなければ、ほとんどの穴は1ヶ月ほどで閉鎖することが多いようです。しかし、耳に水が入ったりして、細菌が穿孔部から中(中耳)に侵入すると中耳炎を併発し、耳だれが出たり、痛みが強まったりします。
 最近では、夫婦喧嘩やいじめで鼓膜に穴が開くケースも見られるようです。まさか、喧嘩やいじめをスポーツと勘違いしている人は居ないでしょうが・・・・・・。
B音響外傷
 運動会のスターターのピストルを耳元で撃たれた場合、射撃競技等で耳栓を忘れた場合などに起こる可能性があります。内耳・聴神経の外傷ですから、特効薬はなく、予防が最も大切です。
C気圧外傷
 スキューバ・ダイビングやスカイ・スポーツで、水圧・気圧の変化に身体がついて行けず、耳や鼻が痛くなることがあります。中耳腔や副鼻腔など人体内の空気の入っているスペースは、外気圧(水圧)とのバランスがうまくとれないと損傷を受けます。ダイビングではこれを予防する目的で、「耳抜き」といって、潜る深度に合わせた水圧に相当する気圧を、予め耳管を通じ鼓膜の内側に送る方法があります。うまくできない人もいますし、鼻の調子によっては失敗することもあるのでご注意を!
D鼻骨骨折
 これから本格的なシーズンに入るラグビー。バスケットなどの身体接触や衝突の多いスポーツでは、かなりの確率で、顔面の打撲や鼻骨骨折が起こります。
 イタリアでプレーしていた頃の「カズ」の例やワールドカップ前の秋田選手の例でもわかるように、サッカー選手にも多くみられるようになっていますが、治療が早ければほとんど後遺症なく治ります。
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いびきと睡眠時無呼吸症候群 (新・院内情報誌 第5号、1996/08/02)
 いびきは睡眠中の異常呼吸音で、特に原因の病気がなくても起こります。低音の振動型いびきは口蓋垂(ノドチンコ)周辺の異常、鼻茸(鼻ポリープ)など鼻・副鼻腔疾患、あるいは喉頭蓋由来で、高音の狭窄型いびきは舌根・咽頭後壁間由来であると言われています。原因となる疾患には下表の病気があげられますが、肥満や飲酒、単なる疲労が原因の場合もあり、必ずしも病的なものばかりとは限りません。
 睡眠時無呼吸症候群とは、7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸を30回以上認めるものを言います。原因により、閉塞性と中枢性とに分類され、閉塞性無呼吸は上気道(鼻から喉頭まで)の形態異常によるもので、口蓋扁桃肥大、アデノイド増殖症、下顎発育異常、咽喉頭の腫脹と炎症が主であり、これに肥厚性鼻炎、鼻中隔弯曲も関与します。
 主症状は睡眠過剰か不眠、睡眠時無呼吸、激しいいびきであり、副症状は肥満、チアノーゼ(唇が青紫色になる)、筋攣縮、右室肥大、右心不全、赤血球増多などです。
 ここまでくると、はっきりと病的なものですから、大きな病院で睡眠中の呼吸モニターなどの検査を受け、手術などの治療を受ける必要があります。
 生理的ないびきはほとんどが病的なものではありませんが、結婚を予定している方や団体旅行に出かける人にとっては、不安の種であることは間違いありません。「飲酒を避け、疲れ過ぎないように!」とわかってはいても、旅行にお酒はつきもの、新婚旅行ともなれば疲れもあるでしょう。また、「いびきは仰向けに寝たときに、舌を前方へ引っ張っている筋肉の緊張が緩み、舌が後方へ落ち込んで、のどが狭くなるために起こる。従って、横を向いて寝れば、いびきはかかない!」と、理屈はわかっていても、「寝ている間の姿勢まで責任が持てない」と思っている方が多いのではないでしょうか。
 いびきでお悩みの方は、まずは勇気を持って、家族や友人に自分のいびきの程度を聞いてもらい、その上で早めに耳鼻科医に相談して下さい。いびきそのものが複合的な原因で起こるだけに、いろいろな対処法があります。時間的に余裕があれば、いろいろな方法を試してみることも可能です。それぞれの方法の効果を、周囲の人に確かめてもらいながら治療を進めましょう。いびきは、自分には聞こえませんから・・・・・・。

      表 いびきの原因となる疾患
☆炎症 鼻茸(鼻ポリープ)、鼻副鼻腔炎
鼻中隔弯曲症、肥厚性鼻炎
☆形態異常 扁桃・アデノイド肥大
口蓋垂・口蓋弓形態異常
喉頭蓋形態異常
☆腫瘍 上咽頭腫瘍、中咽頭腫瘍
☆麻痺性 軟口蓋麻痺、喉頭後筋麻痺 

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耳下腺の腫れと痛み(新・院内情報誌 第13号、1997/07/11)
 @流行性耳下腺炎とはどんな病気か?
 Aおたふく風邪は2度かかるか?
 B反復性の耳下腺腫脹を起こす疾患
@おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、風邪と同様にウイルス感染(ムンプスウイルス)によって起こる疾患です。症状:2〜3週間の潜伏期の後、1〜2日間の微熱、頭痛、食欲不振、全身倦怠などの前駆症状があり、次に急激に耳下腺部(耳の前から下にかけて)が腫脹(片側のみまたは片側の腫脹後2〜3日で反対側も腫脹)し、1〜2日で腫脹が広範囲となり、痛みや開口障害も伴ってきます。小児では10日前後、成人では2〜3週程度で後遺症無く治ることが多いとされています。但し、合併症として顔面神経麻痺、耳下腺以外の唾液腺・睾丸・前立腺・卵巣・乳腺・胸腺の炎症、さらに続発症として、心内膜炎、腎炎、脳脊髄膜炎、神経炎、感音難聴などが起こることがあります。耳下腺の症状よりも、合併症や続発症(後遺症)の方が恐い病気と言えます。
A1回かかると、終生免疫を獲得し、2度とかからないというのが一般的見解です。学術的には過去に流行性耳下腺炎に複数回罹患した症例の報告もみられるようですが、検査法などに問題があり、厳密な意味では疑問があるとの反対意見もあって、確証は得られていないようです。また、「おたふく風邪のワクチンは効かない」とか、ワクチンの接種を受けたのに発症した」という話を聞くことがあります。実は、ワクチンの有効率(抗体獲得率)は、ムンプスウイルスの場合約90%で、10人に1人はワクチン接種後も抗体を獲得できない、つまり免疫を持てないという問題があるのです。従って、こういう状態の人は、1度おたふく風邪にかかっても、終生免疫は獲得できず、2度以上罹患する可能性があると考えられているのです。
B「うちの子はおたふく風邪にかかったことがあるのに、最近また耳下腺が腫れてきました」といって、耳鼻科を受診されるケースがあります。小児に見られるこのような耳下腺の反復性の腫脹は、小児反復性耳下腺炎と呼ばれ、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)に罹患した後などに、耳下腺管の狭窄や末端の拡張が残ったために、唾液の停滞や逆流が起こり、細菌感染を起こすことが原因となります。腫脹や痛みが消失するまで、その都度治療しておけば、成長とともに治癒します。10代後半から成人にみられる反復性耳下腺炎も、細菌感染によるものですが、口腔内の不衛生が原因のことが多いので注意が必要です。唾液腺管内の結石(腺管内唾石)も、反復性腫脹の原因となることがあります。但し、耳下腺は漿液腺といって粘性の低い唾液を分泌していることと唾液管が比較的太いため、同じ唾液腺でも粘液腺で管が細い顎下腺に比べて唾石は少ないようです。他に、乾燥症候群と呼ばれる眼も口も乾いてくる自己免疫疾患などでは、仮性肥大といって機能の低下を容積で補おうとして、耳下腺などの唾液腺が腫れてくる病気もあります。この疾患群は、中年以降の女性に多くみられ、更年期障害の1つのように思われて見過ごされることがありますので、ご注意下さい。
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耳下腺の腫れと痛み 2 (新・院内情報誌 第14号、1997/09/01)
 8月下旬から、突然休診して皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。実は、今年(平成9年)の流行に乗り遅れまいと思ったわけではありませんが、年がいもなく流行性耳下腺炎にかかっていました。今回は、成人の”おたふく風邪”の貴重な経験をしましたので、その経過について書いてみたいと思います。ただし、個人差も大きいと思いますので、誰にでも当てはまるというものではありませんが・・・・。
[初日]
 朝食時、左顎のだるさを感じましたが、持病の左顎関節症のためと思い放置。この時点では、痛みや腫れの症状も発熱もなし。でも後で思えば、これが全ての症状の始まりで、終始左側の症状の方が強かったのです。昼食時にも同様の左顎の違和感あり。それでも、体調にもこれといった変化はなく、夕方6時の診察終了まで、普段通り仕事をしました。左耳下腺の腫脹に気付いたのは、夕食後の入浴中に、髭を剃ろうと鏡を見たときでした。首の上に他人の顔がのっているような変な感じでしたが、耳下腺そのものが柔らかいので、気付くのが遅れたように思います。
[2日目]
 朝から両方の耳下腺が腫れ、痛みも出てきたため、固形物を噛むことができず、液状の栄養剤を飲むだけの状態になりました。この時点でも発熱はありませんでした。
[3〜5日目]
 耳下腺の腫れは、さらに増し、徐々に硬くなってきました。さらに悪いことには、柔らかいものを噛もうとしたり、酸味のある飲料を飲もうとしただけで耳下腺の腫れが一層増し、激しく痛むようになりました。熱やだるさなど全身症状の無いことだけが救いでした。
[6〜8日目]
 朝方から、ついに熱発が始まりました。それと入れ替わるように、耳下腺の腫れは少しずつ軽快し、食事時の痛みや腫れの増強も軽減してきました。発熱や頭痛には、普段あまり悩まされない方なので閉口しましたが、8日目になると食事が普通に摂れるようになり、気分的には早く仕事に復帰したい焦りさえ感じるようになりました。

 以上が、今回のおたふく風邪体験記です。前号の特集でも書いたように、成人の場合は完治するまでに2〜3週かかる場合もあるとのことですが、比較的短期間で症状が軽くなった方だと思います。
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味覚・嗅覚障害(新・院内情報誌 第18号、1998/06/05)  
 味覚(あじ)と嗅覚(におい)は、ヒトの五感の中でも比較的退化している感覚と考えられており、下等な動物ほど鋭いともいわれます。しかし、これらの感覚は、ヒトの情動や感性と深く関わっており、その障害があると生活そのものが味気ない(まさに無味乾燥な)ものになって志まいます。グルメやアロマ・テラピーの流行を見るまでもなく、味覚と嗅覚の持つ力は、ヒトが快適・健康に生活する上で、重要な要素と考えられ、高齢化社会といわれる現代においては、若さと健康を維持するためにも大切な感覚と思われます.

1.味覚(あじの)障害                  
 味覚障害の症例は50〜60歳代に最も多く、男女比では2:3と女性に多い傾向がみられます。年齢別の人口を考えると圧倒的に高齢者に多いといえます。
 味覚障害は単なる症状であり、その原因は様々ですが、薬剤性の味覚障害が最も多く、亜鉛の欠乏によるもの、特発性(原因不明)のものがそれに続くといわれています。
 亜鉛欠乏症によるものはもちろんのこと、薬剤性のものも主に亜鉛が消耗することによる障害であるため、治療としては亜鉛の補充が主に行われています。
 亜鉛はヒトの必須微量元素の1つであり、野菜や海草、魚類などを食べることによって、通常であれば摂取可能ですが、インスタント食品のみを食べたり、極端な偏食があると不足するといわれています。また、利尿薬、降圧薬、抗生物質などの薬剤の中には、身体から排泄されるときに、亜鉛と化学的に結合
してしまうものがあり、結果的に亜鉛欠乏症となることもあります。
 *治療:以前は亜鉛製剤といえば注射薬しかなかったため、静脈注射が行われていましたが、現在は亜鉛を含む内服薬(本来は胃薬または漢方薬)があるので比較的手軽に亜鉛の補充ができるようになってきました。ただし、亜鉛の代謝には他の微量元素も関与するため、これらの薬を飲んでいれば大丈夫というわけにはいきませんし、薬剤性の亜鉛欠乏症では、原因の薬を減量または変更することも必要です。また、舌などの炎症、中耳炎、鼻炎などが原因になる場合もあり、その治療も大切です。

2.嗅覚(ニオイの)障害
 嗅覚とは、化学物質から発生するニオイの分子の刺激を鼻の天井部分(嗅裂)の粘膜にある嗅神経で感知し、脳がどのようなニオイかを正しく判断することをいいます。
 嗅覚障害には大きく分けて、ニオイの分子が嗅裂に届かなくなる呼吸性、嗅神経の萎縮や脳の機能障害による神経性、両者の合併による混合性の3つの型があります。また、嗅覚障害の程度や症状の現れ方による分類では、a.嗅覚脱失:ニオイが全くわからない、b.嗅覚減退:強いニオイはわかるが何のニオイかわかりにくい、c.嗅覚過敏:ニオイが鼻につくほど強くにおう、d.嗅覚錯誤:本来のニオイと違って感じる、e.嗅覚幻覚:実際にはしていないニオイを感じるなどの種類があります。
 ニオイがわからなくなると一般的に味覚も低下することが多く、ガスのニオイがわからないと思わぬ事故につながることもあります。生活の質的向上のためにも、鼻の健康に注意しましょう。
 *治療:鼻づまりが原因となる呼吸性の場合は、鼻炎の治療を行って鼻づまりがなくなれば治癒します。神経性および混合性の嗅覚障害では、鼻粘膜の腫れをとった上で、嗅神経に対する薬物治療(局所のステロイド投与、内服のビタミンB12等)を行います。嗅神経は、他の脳神経には無い再生能力があるといわれ、脳の機能障害による嗅覚障害以外は治る可能性があります。
(耳鼻咽喉科・日常診療の手引き Vol.6 「味覚・嗅覚障害」より 一部改変)
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子どもの病気で受診されたお母さん(お父さん)方へ                 (新・院内情報誌 第22号、1998/12/16) (1) 診察を受ける時 お子さんの様子を十分つかんでいますか? 特に初めて受診される場合は、 @ 一番気になる症状、 A 症状がいつからあったか、 B その他の気になる症状などは、   少なくともお話し下さい。情報が少なかったり、  曖昧だと診断に苦労することがありますから、  不確かな場合は普段そばにいる人(例:おばあ  ちゃんなど)に電話等で確認しておいて下さい。 (2) 待合室では……。  診察前の飲食はできるだけ避けて下さい。診察中に吐いたりする原因になるばかりでなく、 食物のカスが付いたりしていると、診察に支障を来すことがあります。  当院では、電気暖房、空気清浄器の使用などにより、院内空気の花粉や微生物による汚染や 粉塵による空気汚染を極力減らしております。禁煙にご協力下さい。 (3) 入浴・プールと病気   下表は大体の目安です。   

入浴 洗髪 プール
  外耳炎      ×
急性中耳炎  ×
1〜2日
 ×
2〜3日
 ×
約7日
滲出性中耳炎  ○  ○  △
鼻炎(かぜ):発熱なし  ○  ○  ×
      発熱を伴う時  ×  ×  ×
アレルギー性鼻炎  ○  ○  △

   
 ○=特に問題なし       
 △=注意を守って、      
    様子を見ながら      
 ×=許可あるまで、      
    控えて下さい。       
 病気の具合によって、指示が変わりますから、受診された時にご確認下さい。

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耳鼻科領域のポリープの原因(新・院内情報誌 第26号、1999/09/28)

 耳鼻科の日常診療の中で、鼻ポリープ、声帯ポリープというのは、比較的一般的にみられる疾患です。
「鼻ポリープがありますね、鼻つまりの原因はこれですよ。」と説明すると、ほぼ決まって、「原因は何ですか?」と尋ね
られます。声帯ポリープについても同様です。実は、「原因」=「病因」というのは、なかなか一口に説明できません。
何故なら、ポリープは一人一人の患者さんの顔が違うように、個人差があって、その原因(できてくる環境)も違うから
です。一応、これまでにわかっている(考えられている)原因について、以下に書いてみますが、一番の問題である
「それでは、どうやったら予防や大きくなるのを防げるのか」という答えになるかどうか?
A. 鼻ポリープについて:
 以前は、鼻副鼻腔炎(昔は蓄膿症といわれました)に伴うものがほとんどで、細菌性慢性副鼻腔炎にはほぼ100%
鼻ポリープが合併していたとのことです。しかし、最近の統計では20%程度で、全体に軽症化しているとも言われま
す。しかし、代わってアレルギー性鼻炎に伴うものが増加しており、鼻ポリープそのものも、アレルギーから起こっ
たものも存在すると考えらるようになってきました。
 原因としては、細菌やウイルス感染、アレルギーなどが推測されていますが、個々の症例によってそれらの因子が
からみあってできてくるものであろうといわれています。ポリープは、見た目は比較的似通った外観をしており、正
常な粘膜よりは白っぽくて、表面は滑らかで、水々しい感じがして、アレルギー性鼻炎の鼻粘膜にやや似ています。
 病理学的(組織を顕微鏡で観察する)には、浮腫型(組織内に水分が多い)、腺嚢胞型(袋状になっていて、中に
粘液がたまっている)、線維型(コラーゲンのような線維成分が多い)に分類されますが、これもポリープ全体で見
ると、3者が混在していたり、部分によってかなり違うようです。それぞれの型による原因の違いもないようです。
 最新の治療法:
1) レーザー手術;出血が少ないなどの利点があり、外来でできる手術として注目されている。
2) 抗アレルギー療法;原因の一つにアレルギーが考えられるようになり、普及してきている。
     抗アレルギー剤の内服やステロイド剤の点鼻が有効。
3) 他に、ポリープ切除後の再発防止として、ステロイド剤の点鼻、マクロライド系抗生物質の内服、
    漢方薬などが注目されています。
B. 声帯ポリープについて:
 声帯ポリープは、「ポリープ」という名前で誤解されがちですが、「腫瘍性病変」ではありません。例えば、「大腸
ポリープをとってみたら、ガンだった」とか、「胃のポリープがあって、精密検査された」とかいう話を聞かれたこ
とがあると思いますが、これらの「ポリープ」とは性格がかなり違います。声帯の場合、疾患の分類としては、「炎
症性疾患」に属するのです。
 原因として、最も考えられているのは循環障害で、炎症や声の使い過ぎによる充血を起こしているところへ、瞬間
的な激しい音声酷使の機械的な刺激が加わり、声帯の内出血を起こす(私は、よく「血豆」にたとえて説明します)
ということのようです。
 治療法:新鮮例、つまり運動会の応援やカラオケで歌ってから間もない例では、保存的療法(沈黙や吸入、内服などで治ること
もあります。しかし、多くの場合は、手術的に切除する必要があり、また、発声法を改善しないと特に職業性(教師、幼児保育者、
歌手など慢性的に声を使う職種の従事者)のポリープは、再発率も高いと言われていて、注意が必要です。

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西暦2000年(y2k)問題(新・院内情報誌 第27号 1999/12/01)

 巷間、大問題となっている西暦2000年問題については、皆さんも耳にされていることと思います。
コンピュータが2000年1月1日を、1900年1月1日と誤って判断して、起こると予想される様々な問題
を総称して、こう呼んでいます。
 我々の生活がコンピュータによって制御されているということは、頭ではわかっていても、実感
することはあまりありません。すぐ頭に浮かぶのは、銀行のオンラインなど操作が必要なコンピュ
ータぐらいなものですが、現代生活のいろいろな面で使用している電力が、全てコンピュータで制
御されており、それによって動く製造機械や交通機関など、身近な分野にまで影響は及びます。
そのために、一見関係なさそうなこと、例えば「食糧を備蓄しなさい」などという指示が政府から
出されたりするというわけです。私が今、この文章を書くために使っているパソコンは、一応2000
年問題対応済といういことですが、これさえもコンピュータの中に入っているマイクロチップのレ
ベルまで考えると確たる保証はないという状態なのです。
 医療機関のコンピュータについても、厚生省や日本医師会でいろいろな取り組みをされています
が、生命に直結する精密機器ほど、その対応は不明の点がまだまだ多いようです。幸い、当院で使用
している機器については、万が一誤作動を起こしても、検査器械として使えないだけで、安全面の
問題はありません。ただ、会計に使用しているレセプトコンピュータと呼ばれるコンピュータが止
まると、会計業務に支障をきたしますので、1月初旬には少々手間取る(診察終了から会計が済む
までの待ち時間が延びる)可能性はありますが……
 今年の夏に、カーナビや航空機の位置確認に使用していた人工衛星が寿命を終えて更新されると
いうことがありました。この時には、幸いに飛行機の墜落などの事態は避けられたようでしたが、
カーナビのメーカーなどは対応に差があり、問題になりました。今回も、大問題が起こらなければ
良いのですが、「こればかりは、その時になってみないとわからない」という専門家や、「発展
途上国からミサイルが飛び出す可能性さえある」という物騒な予想まであり、予測不能の状態を脱
していません。ひょっとしたら、誰かの大予言より恐ろしいことなのかもしれませんね。

 こういう心配が、全くの杞憂に終わってくれることを願わずにいられません。
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