のどスッキリの話     (ノドの疾患特集)


BGMが流れています。適度な音量に調節をお願いします。
なお、不要な方は■ボタンをクリックして下さい。


目 次



   声帯ポリープ (院内情報 第5号、93/11/15)

     声帯ポリープは、以前は声をよく使う職業の人=歌手・教師・保母・土木作業員・・・・etc.
    の病気と言われていました。もっとも、同じ歌手でもいわゆる「声楽家」といわれるような、
    本格的で理想に近い発声法を身に付けている人よりも、アイドル歌手のように無理な発声を
    繰り返し行っている人に多い病気だったのです。

     ところが、最近この病気の疾病構造(どんな年齢や性別、職業の人がかかりやすいか)が
    変化してきました。民謡ブームさらにカラオケブームが一種の社会現象化したために、今まで
    「中学校卒業依頼、風呂の中でしか歌ったことの無かった」人々が、時にはアルコールの力を
    借りて、堂々と人前で歌えるようになったのです。カラオケなどは、先頃の文化庁の調査によれば、
    国民の4割以上が最近参加した文化活動として挙げているとか。カラオケを文化活動とは言えない
    という愛好者を入れるとこれ以上ということでしょうか。しかし、このカラオケや民謡教室の普及で、
    声帯ポリープという病気が非常にポピュラーな病気になったのです。

     一口に声帯ポリープといっても、色々な形のものが含まれており、その原因も様々です。
    声帯ポリープの全てが、カラオケのために起こるわけではありません。
    ただ、声の出し方(発声法)を変えずに声を出しつづけていると、いくら手術してポリープを取っても、
    また再発するものだということは間違いありません。
    「今日は風邪気味だ」とか「声の調子が悪いな」という時は、無理をせず、のどを休めることが大切です。


★声帯の隆起性良性疾患(広義の声帯ポリープ)
      
声帯ポリープ有茎性
無茎性(広基性)
ポリープ様変性男性に多い
声帯結節女性・小児に多い
声帯嚢胞先天性?




   声帯ポリープU (院内情報 第8号、94/02/18)

     以前は、歌手やアナウンサーの職業病のように思われていた”声帯ポリープ”が、
   一般の人にも広く見られるようになり、その名も「カラオケ・ポリープ」と呼ばれるように
   なってきました。
    人が発声すれば、左右の声帯が触れ合って、振動が起こります。この振動が激しかったり
   長く続くことによって、声帯に内出血が起き、これがコブ状に固まったものが、声帯ポリープです。
    歌い慣れない人が、無理に歌い続けたりすることで起こりやすく、空気の乾燥や汚染も誘引と
   なります。
   特にタバコを吸う中年男性等に多いのは、煙が声帯付近(声門)を通過する時に声帯を乾燥
   させてしまうからです。
    「カラオケ・ポリープ」には、声帯ポリープの他に、声帯が強く擦れ合ってタコができる、声帯結節
   があります。これはもともと高音を発し、声帯の振動数が多い女性に起こりやすく、特に慢性的な
   カラオケ好きは、無理にコブシを回したり、本来出にくい高いキーで歌うことがあるため、注意が
   必要です。
    これらの予防策としては、高速で振動した声帯を休ませることが有効で、最低1分以上の沈黙が
   必要です。この時間を確保するためには、トイレタイムが最適で、この時アメを舐めるとさらに
   効果的です。特にレモン味などの酸味のあるアメは、声帯を潤す粘液の分泌を促すことにもなり、
   またアメが溶けるまでは沈黙を守ることにもつながります。
    カラオケポリープの症状には、「声がかれる」、「のどの異和感」、「今まで出ていた高音が出ない」
   などがあり、これらの症状が3〜4日経っても治らない場合は、専門医の診察を受けられることを
   お勧めします。中でも中高年男性の場合には、同じ症状でも喉頭癌の可能性もあることを忘れては
   ならないでしょう。


                         [参考]:ウィークリー・アイ '94 No.138 「今週の健康」から要約。

INDEX 




    扁桃肥大といわれたら・・・・ (院内情報誌 第12号、94/07/18)

      学校検診、特に内科検診の後、「扁桃肥大」と書かれたカードをもらったお子さんはいませんか?
     扁桃肥大は、それ自体は病気ではありません。また、多くの子どもさんでは中学生ぐらいになると
     のどの成長と扁桃の大きさがやや小さく(見かけ上)なるために問題なくなり、手術も必要ありません。
     扁桃の大きさよりもむしろ扁桃炎の回数や程度、全身的な影響の有無によって手術が必要かどうか
     判断します。ただし例外的に、口を大きく開けた時、両側の扁桃がくっつきそうになっている場合や
     いびきがひどい場合、食事をとるのが極端に遅く(飲みこみにくく)成長まで妨げられている場合など
     に手術の適応になることがあります。


INDEX 



    のどの違和感 (院内情報誌 第16号、94/11/18)

      「のどの違和感」とは、痛みなどの比較的はっきりした症状ではなく、「のどのつかえ感」
     ・「のどが腫れているような感じ」・「のどのイガイガ感」、さらに富山弁で言えば「のどがハシカイ感じ」
     といった感覚の総称と考えてください。のどの違和感があって、耳鼻科を受診された患者さんで、
     訴えの裏付けとなる所見(異物や発赤、腫脹などの炎症の特徴)の認められない場合、
     「咽喉頭異常感症」と診断されることがあります。

      話は少し古くなりますが、昭和30年代の後半、「所得倍増計画」を掲げて華々しく登場した
     池田隼人元首相をご存知ですか?病気を理由に政界を突然引退したのですが、彼の死後、
     病名(喉頭癌)が公表されると、一時的にのどの違和感を訴えて病院を訪れる患者さんが急増した
     という話があります。−−−最近では、勝新太郎さんや立川談志師匠のことがあっても
     それ程多くの人に影響は無かったようですが・・・−−−これは、有名人の病気が明らかになると、
     「自分もその病気にかかったのではないか?」という不安感から、「がん恐怖症」とよばれる
     神経症的状態になって、のどの違和感のほか、捉えどころのない漠然とした体調の悪さなどが
     加わって受診される方が多くなったということのようです。

      最近でも、身内の方や知人が喉頭癌と言われたために、心配になって受診されるケースが
     よくあります。今では、ファイバーとビデオなどを用いた診断技術が向上し、患者さんにも実際に
     のどの中を見てもらいながら説明もできますから、納得していただけることが多くなっています。
     レントゲン写真や喉頭鏡しかなかった時代には、さぞ大変だったことでしょう。

      古い話はさておき、現在でも咽喉頭異常感症は確かに存在し、ストレスに苛まれつつ生活している
     現代人にとってますます気にかかる病気にもなりつつあります。特に心因性の要素が強ければ
     強いほど、耳鼻科医が合理的に病状を説明しても、患者さんの納得が得られなかったり、
     心理的要因の背景(家庭や職場での悩みなど)に医者が安易に立ち入れない場合などもあって、
     なかなか厄介なことも多いようです。

      とはいえ、鉄分不足による貧血や逆流性食道炎のように全身的な状態の把握が必要な場合や、
     喉頭癌のような恐ろしい病気が隠れている場合もありますから、のどの違和感を覚えたら、
     気のせいなどと言わず、耳鼻科医に相談して下さい。


INDEX 




     舌で健康チェック (院内情報誌 第22号、95/05/22)

 異常感じたら診察を!

      舌の異常は身体の状態を的確に知らせてくれるデータバンクのようなもの。
舌がツルツル、白い、真っ赤などの変化があったら要注意!

 舌を出してみると、表面いっぱいに2〜3ミリの白いブツブツの突起が沢山生えています。
これが糸状(しじょう)乳頭で、食べ物を舐める作用をしています。
糸状乳頭の間にあるピンク色の小さなブツブツが茸状(じじょう)乳頭で、
温度の感知や味覚に関係しています。

  

 正常な舌は唾液で潤い、全体にピンク色で光沢があり、糸状乳頭や茸状乳頭が区別しやすい状態です。
健康状態に障害を来たし、新陳代謝がスムーズにいかなくなると、
舌の表面が異常になり、シグナルを送ってきます。
 まず舌苔(ぜったい)。舌の表面が白色の苔で覆われた様な状態。
舌の表面は食べ物を食べることで自然に浄化作用が働き、食べカスなどをきれいに掃除してくれます。
柔らかい加工食品ばかり食べていると、自浄作用が十分に発揮されません。
食物繊維に富んだ野菜をよく噛んで食べ、自浄作用を促進させることが大切です。
舌苔そのものは心配ありませんが、糸状乳頭が異常に長くなると、
舌に黒い毛が生えたような毛舌症(黒毛舌)になり、慢性の胃腸障害などが考えられます。
タバコの吸いすぎ、抗菌剤の副作用、免疫力の低下によって起こる
カンジダ症(口の中のカビ)も要注意です。
 舌苔とは逆に、糸状乳頭が減り、ヒリヒリとやけどを負ったような熱感を伴う場合は、
次のような病気が考えられます。

 [鉄欠乏性貧血] 過激なダイエットや偏食が原因で血液中の鉄分が不足すると、赤血球中のヘモグロビン(血色素)が
     十分作られず、舌に赤味がなくなります。食餌療法や鉄剤投与で改善しない場合は、慢性の胃腸障害による吸収
不全、痔疾、消化管潰瘍からの出血、女性の場合は月経過多などが考えられます。
 [悪性貧血] 悪性貧血を起こすと、舌がただれるハンター舌炎という状態になります。ビタミンB12の欠乏、あるいは吸収
不全が原因で、似たような変化は胃腸障害や慢性アルコール中毒でも起こります。
 [シェーグレン症候群] 中年女性に多い自己免疫疾患。唾液腺が侵され、口中が砂漠のようにカラカラに乾燥します。
目の乾燥、関節炎を伴うこともあります。
 [地図状舌] 舌の表面が赤くて平らな部分と白い部分が入り交じって地図上に広がり、数日毎に変化します。ストレス、
体質異常、遺伝などによると言われています。
 [正中菱形舌炎] 舌のほぼ真中に、やや凹んだ菱形の糸状乳頭の消失した部分があるもの。ほとんど無症状ですが、
ときにヒリヒリ感を伴う場合があります。先天的な舌表粘膜の欠損が原因です

INDEX 




   扁桃炎あれこれ(バカにできない扁桃炎) (新・院内情報誌 第19号、98/08/17)

 
図 のどの扁桃組織(ワルダイエルの扁桃輪)

      

    ☆扁桃の働き

       扁桃は粘膜にある「リンパ組織」で、免疫に関する役割を担っています。表面にはヒダがあって、
      有害物に
対する「抵抗物質(抗体)」を作っています。左図のように、のどの入り口で、輪になって
      集団を作っているのは、
食べ物や空気と一緒に通過する細菌やウイルス類に対して、関所のような
      役割を果たしているのです。

         

☆急性扁桃炎 ☆扁桃肥大
 細菌感染で、急に扁桃が炎症を起こした状態
をいいます。高い熱(40℃前後)と、のどの痛み
や耳の痛みがあり、扁桃は赤く腫れて、表面に
は白いブツブツ(膿)やカサブタがついて見えま
す。
 扁桃の役割が見直されている現在,ただ
大きいというだけでは、手術をしないのが
普通です.余りに大きすぎて、食物が飲み
込みづらいとか、呼吸がしづらいという時に
は、手術を行うこともあります。
☆慢性扁桃炎 ★「バカにできない」のは・・・
 症状は特に無いのに、扁桃が暗赤色をしてい
て、表面に白いブツブツが見えたり,扁桃を押す
と膿が出たりする状態をいいます。この状態にあ
ると、急性扁桃炎を起こしやすく,結局急性扁桃
炎を繰り返すことになるので、習慣性扁桃炎とも
呼ばれ、1年平均3〜4回以上反復する場合は、
手術を勧められることもあります。
 病巣感染といって、蓄膿症や慢性扁桃炎
のように、バイ菌(特に溶連菌)が長い間存在
し続けることが原因で,全身の他の部分に
腎炎、リウマチ熱、心筋炎、皮膚疾患などの
治りにくい病気を起こすことがあります。
これらの病気が疑われる場合,扁桃を手術
的に取らなければならないこともあります。

    ☆治療☆

      抗生物質、消炎鎮痛剤の内服または注射や、うがいを励行すれば、4〜5日程度でほとんどが治癒
     します。
慢性扁桃炎があって、皮膚の病気や腎炎,心膜炎などの病気で、扁桃に原因があるかもしれない
     といわれた
ら、耳鼻科に相談してください。


INDEX 



   のどの花粉症?(新・院内情報誌 第23号、99/04/02)
      例年、スギ花粉症の時期になると、眼や鼻の症状以外に「のどの違和感を覚える」という方は、
     いらっしゃいませんか?以前は、花粉症による鼻水や鼻づまりに伴うカゼ症状と考えられて
     いましたが、最近では花粉による喉頭アレルギーもあるのではないかと疑われてきています。
     また、花粉とは直接関係ないようですが、頑固な咳を伴うアレルギー性の気管支炎(アトピー咳嗽)
     もあるようです。
      下の図は、のど(喉頭)を上から見たところです。花粉症による喉頭の異常がある場合は、
   下図の披裂部粘膜の浮腫(白っぽく腫れた状態)を起こすといわれています。
   気管(気道)と食道の境目の腫脹があるために、「食べ物を飲み込む時につかえる」とか、
   姿勢によっては「何となく息苦しい」といった症状が起こりやすいというわけです。
    治療としては、うがいの励行によって原因物質(アレルゲン)を取り除くとともに、
   ステロイドの吸入などによって局所のアレルギー反応を抑えること、鼻・眼のアレルギーと
   同様に抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤、場合によってはステロイドの内服を行います。
    「痰を伴わない咳が頑固に続く」ような場合は、アトピー咳嗽の場合もありますので、
   耳鼻咽喉科にご相談下さい。
図 喉頭を上方から見たところ

INDEX