「鼻血」あわてずに (院内情報誌 第15号、1994/10/17)
鼻血の大部分(約85%)は、鼻の入り口に近い粘膜が傷つけられ、血管が切れて出血するものです。
両側が同時に傷つくことは少なく、大抵片方の鼻から出血します。この部分(入り口から約1cm)は、
鼻全体の血管網の集中するところで、もともと薄い粘膜の下を多くの血液が流れている上に、
指(特に爪)が当たり易く、鼻をこすったでけでも傷つくことがあります、子どもでは90%以上が
鼻の入り口からの出血です。
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鼻をいじったために出る鼻血は、春から夏にかけて多いと言われています。
花粉症やアレルギー性鼻炎等、鼻をムズムズさせる病気の症状が出やすいためです。
しかし、秋から冬にかけても鼻炎や蓄膿症など、風邪によって引き起こされる、または悪化する鼻の
病気から、鼻の入り口に鼻汁の塊(痂皮)ができ、これをとろうとして鼻に指を突っ込んだり、
鼻をこすったりして出血することもあるので決して油断できません。
昼間だけでなく、睡眠中に無意識に手が行っていることも多いので、原因となっている鼻炎などの治療を
行っておくことが必要です。
出血に気付いてもあわてる必要はありません。重大な病気(例えば白血病など)の前兆として鼻血が
現れる例はごく少数ですし、検査は止血してから行えば良いのです。まず、落ち着いて血を止めることを考えましょう。
鼻の入り口近くからの出血の場合、自分で血を止める最も簡単、安全な方法は、指で小鼻を押さえること。
綿や紙、ガーゼ等は極力鼻に入れない方が良いようです。また、くれぐれも周囲の人がパニックにならないように!
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さて、同じ鼻血でも外来だけではどうにもならないような厄介な出血を起こすことのある「特発性鼻出血」の多い
シーズンが近づいています。
中高年の男性に多く、両側の鼻からあふれるように出血し、出血する場所がやや奥まっているために、
のどに血液がまわってむせることもあります。冬場の部屋の乾燥、寒暖の差(室内外の温度差)、高血圧、
飲酒等が複合的に作用するようです。外来での応急的な止血だけでなく、点滴などの治療、
さらに1週間程度の入院が必要になる場合が多いようです。
アレルギー性鼻炎の最近の動向 (新・院内情報誌 第7号、1996/10/04)
1.アレルギー性鼻炎の原因の変化
「小児のアレルギー性鼻炎には花粉症はほとんどなく、専らダニ(ハウスダストを含む)が原因である」といわれたのは昔の話。
今でもダニは小児のアレルギー性鼻炎の原因抗原として重要ではありますが、年々花粉抗原に陽性反応を示す子どもが増加
しており、地域や時期によっては、花粉抗原の陽性率の方が高いこともあります。イネ科花粉症は以前からかなり低年齢でも
起こることが知られており、スギ花粉によるアレルギーも次第に低年齢から見られるようになっています。
一方、成人のアレルギー性鼻炎は、色々な原因によって起こりますが、最近の傾向としてはダニやスギ単独に反応するのでは
なく、スギに近いヒノキ花粉にも反応したり、スギに続いてイネ科の雑草、夏から秋の雑草の花粉と複数の花粉によって症状が
長びく患者さんが増加しています。
今年のようにスギ花粉が少ないと、5〜6月になって症状が出たり、秋口に症状が出たりする患者さんが多く見られるのも、
最近のアレルギーの原因の変遷(抗原の多様化)と無関係ではないようです。
2.検査法の変化
a.鼻汁好酸球検査
セロファン紙や綿棒で鼻汁を採り、染色液で染めて顕微鏡で観察する検査で、血液中の好酸球は寄生虫など他の原因で
増加することがあるのに比べ、鼻の中でアレルギー反応が起こっていることを直接診断でき、採血の苦痛もない
(鼻のかゆみや痛みは多少ありますが)ため、簡便かつ明解な診断法として広く行われています。
b.採血による特異的抗原検査
鼻汁好酸球検査では、原因物質の特定ができないため、以前は皮膚テスト(スクラッチ・テスト、皮内注射法)でいろいろな
抗原のエキスに対する皮膚反応をみて、抗原の特定を行っていました。しかし、皮内注射の苦痛や反応陽性の場合のかゆみや
腫れなどの苦痛がひどく、特に多種類の抗原を検査するとなると思う通り掻くこともできない背中に、時には10種類以上の
エキスを注入することになり、患者さんの評判も芳しくありませんでした。
最近では、少量の血液を採取するだけで、抗原の特定ができる検査が開発され、更に検査に要する時間も短縮されています。
症状発現の時期や、生活環境について詳しく話していただければ、抗原をある程度絞り込んで検査することも可能ですから、
診断(原因物質の特定)は非常に容易になりました。
3.治療法の変遷
a.薬物による治療
ステロイド・ホルモンの鼻内噴霧と内服の抗アレルギー剤の組み合わせが、現在圧倒的に多くの医療機関で行われています。
鼻内噴霧液はフロンガスを使用しない噴霧式のものが、内服薬は1日1〜2回の服用で、眠気などの副作用や他の薬物との
相互作用の少ないものが好んで用いられる傾向にあります。症状が強く、これらの薬剤では十分な効果の得られない場合には、
抗ヒスタミン剤やステロイド・ホルモンの内服薬が用いられています。
b.体質改善療法(減感作療法など)
以前は、原因物質のエキスを皮下注射する減感作療法が行われていましたが、週1〜2回通院することが困難な上に、
即効性に乏しく、苦痛を伴うことから、現在でも積極的にこの治療を行っている施設はかなり減ってきました。
副作用の少ない、漢方薬による体質改善療法が徐々に普及してきています。
c.手術的療法
鼻アレルギーは、鼻粘膜の過敏反応によって症状が発現するため、反応の場である鼻粘膜を減量する(部分的に切除する)
ことで症状が軽減することは以前から知られていました。従来は、手術室で局所麻酔(または全身麻酔)下に粘膜を切除する
方法が行われてきましたが、出血量が多かったり、術後の治療のために入院が必要になるなどの問題がありました。
最近、鼻粘膜の表面を電気焼灼したり(高周波療法)、レーザー光線を照射する方法が開発され、外来で表面麻酔のみで
行える手術的治療として注目されています。
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小児副鼻腔炎 (新・院内情報誌 第8号、1996/11/11)
*鼻の病気はうつるの?
昔、感染症の知識に乏しかった頃は、学校のプールで泳ぐだけで副鼻腔炎が蔓延するようにいわれたこともありました。
さらし粉(塩素)消毒が行われていれば、このような心配はないようです。ただし、塩素等薬品の入ったプール水は
鼻粘膜にとっては刺激が強く、粘膜の腫れの原因になり、鼻炎を悪化させることもありますから、特に冬場の水泳教室に
通う場合には注意が必要です。
また、風邪のウイルスと同じ飛沫感染は起こり得るのですが、これも病院など特殊な環境や、乳幼児など感染の
受け手側の抵抗力に問題がない限り、直接”うつる”ということはほとんどないようです。
*鼻の病気は遺伝するの?
今のところ、副鼻腔炎を起こす遺伝子は発見されていませんし、特別な遺伝関係(親が副鼻腔炎だと一定割合で子どもも
副鼻腔炎になるというような相関関係)も認められていません。ただ、親子で顔や体格(骨格)が似ているように、
鼻や副鼻腔の形や粘膜の性質(形質)は似てきますし、特に最近の研究ではアレルギー関連の体質は遺伝します。
さらに、親子であれば、似たような環境で育つことが多く、食べ物の嗜好なども似てくることから、栄養状態にも共通性が
出てきます。
従って、副鼻腔炎になりやすい体質や環境が、ある程度受け継がれていくというのが、最も自然な考え方だと思います。
小児の副鼻腔炎は、成人の場合よりも比較的治りやすいと言われています。最近は、ある種の抗生物質(マクロライド系)
の少量長期投与によって、さらに改善率が上がっています。ただし、一部の抗アレルギー剤との併用による副作用が問題と
なっていますので、注意が必要です。
喘息等のアレルギー性疾患で小児科での投薬を受けている場合は、必ず申し出てください。
抗アレルギー剤の中でマクロライド系抗生物質との相互作用が問題となったトリルダンという薬剤は
既に製造自体中止されており、この2種類の薬剤の併用により心臓等に副作用を生じることはないと
考えられます。但し、体質等によっては予想外の相互作用が生じる場合もありますから、複数の異なる
薬剤を服用する場合は慎重に!
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今年のスギ花粉症 (新・院内情報誌 第16号、1998/01/28)
*今期のスギ花粉飛散量の予測
スギ花粉症の患者さんにとってはまた憂鬱な季節が近づいてきました。既にご存知の方も多いと思いますが、
スギ花粉症の重症度はスギ花粉の飛散量と相関します。今年の花粉飛散数を予測することは、花粉症対策を
決定する上で、大いに参考になります。
最近新聞紙上などでも盛んに取り上げられている「スギ花粉飛散予測」は、実際どのように行われているのでしょうか。
最も早い予測は、前年の夏(7月上旬〜8月上旬)の最高気温平均値と日射量平均値から算出されます。
簡単に言えば、梅雨明けが早く、猛暑の翌年には花粉が多く、逆に冷夏の翌年には花粉が少ないことになります。
昨夏の気象データから算出した結果では、東北から関東で多め、北陸は平年並み、近畿から九州の西日本では
少なめであると予想されました。
一方、スギ花粉は飛散開始まで、葯(花粉袋)の中で待機しており、葯の数が花粉量を決めていることになります。
さらに、葯の数はその元になる雄花の数によって決まるので、スギの雄花のつき具合を調べることによって、
スギ花粉の飛散量をかなり正確に予測することが可能です。スギの雄花は10〜11月頃には準備されていて、
その観察によれば、昨夏の気象データによる予測にほぼ一致しましたが、富山県に関しては「平年の6〜7割程度の少なめ」
(富山県林業試験場の観察による)とのことでした。
以上述べたように、各種データからの今期の花粉飛散量予測は、「少なめ」と言うことになりますが、戦後植林されたスギが
30年を経過して成熟期に入り、10年間の平均値で見る花粉飛散数の平年値が上昇し続けていることから、10〜20年前の
平年飛散数よりは、多く飛散することも考慮しておかなければなりません。
*飛散開始期の予測
スギ花粉の飛散開始期の予測は、1月1日からの最高気温の積算で立てられます。暖冬で、春一番の早い年は飛散開始が早く、
厳冬であれば遅くなるわけです。
今年は、1月前半までは長期予報通りの暖冬・少雪でしたが、1月後半から2月にかけては、平年並みとの予報に変わりました
ので、飛散開始は2月末から3月初旬と考えられます。従って、予防的に薬を飲み始める時期については、2月20日頃が適当と
思われます。また、飛散終了時期についてはやや長め、4月末までという予想が多いようです。
*花粉対策は万全ですか?
室内抗原(ダニ、カビ等)の対策は、掃除機の改良などもあって、かなり進んでいます。以前は、小児の通年性鼻アレルギーの
増加傾向に歯止めがかからず、問題になっていましたが、最近は学校検診でも特に増加しているとは感じられなくなってきました。
しかし、スギ花粉は比較的遠くから飛んできて、直接減らす方法が無かったため、原因となる花粉を水際で防ぐことしか
できませんでした。最近、ようやくイネ抽出物の散布により花芽を減少させたり、花粉の少ない種類のスギの苗木が開発されたり
して、花粉発生源の対策が実用化されてきていますが、実際の効果が出るまでには、10年単位の時間を要しそうです。
これらの新技術の効果が出るまでは、花粉の侵入を防ぐ水際作戦と、副作用の少ない薬によって症状を抑え、自然と上手に
付き合って行くしかないようです。今回は、花粉症対策の実験結果などについて、パンフレットから引用してみましたので、
参考にして下さい。
花粉の産生を減らす試みは続けられていますが、データの捏造等もあり、手間をかけて枝打ちなど森林管理を行う方が
より有効との説もあるようです。
*****花粉対策メモ*****
眼鏡は眼に侵入するスギ花粉の2/3をカットする:さらに、防御カバー付き(ゴーグル型)の眼鏡では、
眼鏡なしの場合の1/9までカットできるそうです。
花粉がよく取れて呼吸が楽なのは、
紙オムツ用の不織布を重ねたマスク:市販のガーゼマスクは安価だが花粉の侵入を十分防げないのに対し、
花粉対策用のマスクは効果は高いが高価である。紙オムツ用の不織布を用いたマスクは市販されていないが、
不織布を用いた花粉対策用マスクは市販されている。ただし、多少呼吸しにくくなる欠点がある。
洋服の素材によって、花粉の付着量が異なる:ウール製品は見た目通り、最も花粉が着きやすい。
化繊や綿、絹製品はウールに比べ付着量が1/3程度と少ないが、静電気が発生すると意外に多くの花粉が付着する。
静電防止スプレー等を試してみるのも良いかもしれない。
窓を1/4開けただけで、屋外の花粉の1/3が室内に侵入する:以前から、「花粉飛散期の窓の開閉は最小限に」と
言われていたが、一旦室内に侵入した花粉を全て除去することは不可能に近い。身体に付着した花粉を持ちこまない
のは当然のことだが、それ以上に窓の開閉による侵入には注意すべきである。
カモガヤ花粉症 (新・院内情報誌 第17号、1998/04/17)
今年のスギ花粉は、比較的飛散量が少なく(昨年の約6割程度)、温暖な気候のために、4月上旬には終息宣言が出され、
ホッとされた方も少なくないと思います。しかし、カモガヤハルガヤ等のイネ科雑草の花粉症はこれからが本番です。
今年は暖冬・少雪であったため、花粉飛散の開始が早く、7月頃まで長期にわたり飛散すると予想されます。
一昨年(やはりスギ花粉が少なかった年)と同じパターンになると、むしろスギ花粉症の患者さんを上回る可能性があります。
カモガヤ花粉症の症状は、スギ花粉の場合と同様に、くしゃみ、鼻水、鼻づまりと目のかゆみ、涙、充血等が出現し、
典型的なアレルギー症状を呈します。スギ花粉症ほど有名でないのと、原因となる草が目立たず、散発的に生育していることも
あるために気付かれないことも多いようですが、ある調査ではスギ花粉症に匹敵する15〜20%にも達する陽性率(カモガヤ花粉
にのみ反応する特異的抗原の陽性率)を示したというデータもあり、決して珍しい病気ではありません。
カモガヤ花粉症もスギ花粉症と同様に、季節前からの抗アレルギー剤の使用が非常に有効です。
「桜の花が散って、スギ花粉の時期も終わっているはずなのに、毎年初夏の頃にアレルギーの症状が出る」という方は、
是非ご相談下さい。
最近の花粉症の動向(新・院内情報誌 第21号、1998/12/16)
10年ほど前には、「スギ花粉症の年齢分布は、30歳代に最も多い一峰性ピークを示すと言われていました。
最近行われた調査では、
@年齢分布は、40歳代に最も多く、10歳代にもやや多い2峰性分布に変化したこと、
A北海道と沖縄を除いて、花粉症患者は増加傾向にあること、
B北海道では、シラカンバ花粉症(本州ではハンノキが近縁種)が多くなっていることなどが
わかってきました。
スギそのものは、今後間伐や枝打ちの予定も立ち、花粉の少ない種の植林や花粉を減少させる無公害農薬の開発などの努力、
更にスギそのもの老齢化していくために、21世紀初頭にはかなり減少する可能性があると言われています。
しかし、大気汚染や環境ホルモンの問題などを考えると、様々なアレルゲンに対するアレルギーが生じてくる可能性もあり、
花粉症そのものが減るというわけにはいかないようです。
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1999年、富山県のスギ花粉飛散予測[富山県林業試験場のデータから]
(新・院内情報誌 第22号、1999/02/01)
スギ空中花粉数は県内観測地によって大きく異なります。これは、主として花粉発生源となるスギ林からの距離が
空中花粉数に大きく影響するためです。スギ林に近ければ花粉数は多くなり、離れれば少なくなります。富山県の場合、
スギ林の多くは標高100m〜600mの山地に集中しています。このため山間部で飛散数が多く、海岸部に近づくにしたがって
飛散数は減少します。
県内を海沿い、平野部、山沿いの3つの地域に分けると、海沿いは黒部市、魚津市、滑川市、新湊市の市街地および
富山市、高岡市の海岸部などで、スギ空中花粉数の比較的少ない地域です。平野部は、富山市、高岡市、砺波市、立山町の
市街地やその周辺地域などで、空中花粉数がやや多い地域です。また、山沿いは、大山町、八尾町、庄川町、城端町、福光町、
小矢部市やその他の山間部で、空中花粉数の多い地域です。 *滑川市および周辺地域をこれに当てはめると、概ね旧国道8号線
以北が沿岸地域、北陸自動車道までが平野部、それ以南を山沿いと考えて良いようです。 11月下旬に県内のスギ林(60個所)を
対象に雄花の着花状況を調査しました。その結果、着花状況を指数化した着花指数は平年値をやや上回りました。
過去の観測結果から、このスギの着花指数と空中花粉総数との間には密接な関係があることがわかっています。
その関係を基に推定した空中花粉数は、海沿いで1,000〜2,000 個/cm2、平野部で2,000〜3,000個/cm2そして山沿いで
3,500〜4,500個/cm2となります。富山県内における過去7年間の空中花粉数の平均値は海沿いで1,200個/cm2、
平野部で2,300個/cm2、山沿いで3,400個/cm2であることから、今シーズンの花粉数はほぼ平年並みといえます。
ただし、花粉飛散の少なかった昨シーズンの花粉数と比較すると約3倍に相当するので、花粉症に対しては十分な注意が必要です。
なお、単位である個/cm2はシーズン期間中(2月〜5月)、広さ1平方cmの平板上に落下するスギ花粉の総数を示しています。
スギ花粉の飛散パターン 例年、スギ空中花粉は、2月の末頃から連続的に観測されるようになります。そして、3月10日をすぎた
あたりから急激に増加し、降水が無く、風の強い日などには、1日に観測される花粉数が平方cm当たり50個以上になることも
たびたびあります。このような傾向は4月上旬まで続き、その後、花粉数は次第に減少し、4月の下旬にスギ花粉の飛散は
ほぼ終了します。
また、空中花粉数は降水、風速および風向といった気象条件によって大きく変化します。スギ花粉予報などを利用して、
花粉の多い日には十分な予防対策をとってください。
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アレルギー性鼻炎あれこれ(新・院内情報誌 第28号、2000/01/21)
@花粉症の予防注射?? 強力なステロイドホルモンを油性の溶液に溶かして筋肉注射すると、徐々に血液中に溶け出して、
少なくとも1シーズンは、アレルギー反応を抑制することが知られています。週刊誌などに「花粉症の名医」と紹介されている
耳鼻科以外の先生方が使用されているようですし、プロ野球の選手などが使用していることで御存知の方もあるかもしれません。
ただ、副作用もあります。ステロイドの大量注射ですから、肥満やニキビの原因になることがあること、他にも全身的に負担を
かける可能性がありますし、スポーツ(一部を除く)選手の場合、ドーピングにかかる恐れもあります。
保険診療として認められていないことから、1回数万円もお金を取っている医療機関もあるとか…。
従って、当院では行っておりません。現在では、副作用の少ない内服薬で、かなりの効果が期待できますので。
A花粉症に対するレーザー治療 入院が不要で、手術時間が短く、出血も少ないため、従来行われてきた鼻粘膜切除術に
替わって、行われるようになって来ました。鼻づまりに対しては80〜100%の効果が期待できる(内服薬はほとんど効果
ありません)点も魅力ですが、レーザー発生装置が高価なため、まだそれほど普及していません。また、照射後1〜2週間後
から効果が現れてくるのですが、照射による粘膜の損傷が修復するまで2〜3ヶ月かかることもあり、スギ花粉症の場合、
できれば前年末までに照射しておく必要がありそうです(残念ながら、今年のスギ花粉の時期には間に合わない?)。
ただ、通年性のアレルギーにも効果がありますので、これから徐々に行う施設が増えると思われます。
B妊娠と鼻アレルギーの関係 「妊娠中、鼻アレルギーの症状が消えていた」とか、「2番目の子どもの妊娠中に鼻アレルギーに
かかった」という話をよく聞きます。経験的に、妊娠と鼻アレルギーに関連性があると思っておりましたが、最近の書籍の中に、
面白い検討結果があったので、紹介しておきます。 アレルギー反応で重要な働きをし、花粉症などでも鼻水の中に遊走してくる
好酸球という白血球の1種があります。この細胞の血管への接着能(血管外に出てアレルギーの症状を起こりやすくする)や
脱顆粒(反応を起こす化学物質を放出)、生存率を性ホルモンが左右するというもので、妊娠中には当然変動が大きくなるので、
影響も大きいのでしょう。まだ治療に応用できるほど解明されてはいないようですが、経験から言われているだけではなく、
科学的な原因が少しずつ解明されている例の一つだと思います。
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年齢 | 副鼻腔(特に上顎洞)の大きさ | 治療法 |
3歳未満 | ほぼ0〜数cc | 点鼻薬・ネブライザー不可の場合が多く、内服薬。 |
3〜6歳(園児) | 1/2小指頭大 | ネブライザーは可だが、点鼻やかむのは苦手。 |
小学生 | 小学生 小指頭大〜母指頭大 | 点鼻薬・ネブライザーの治療可。鼻かみも上手に。 |
中学生 | ほぼ大人と同じ | 点鼻薬・ネブライザーによる治療で改善しない場合、手術も。 |
大体、こんなところでしょうか。で、結論的には、子どもの蓄膿(急慢性鼻副鼻腔炎)は、
特に小学生以下の場合はほとんどの例で治ります。
また、小学生以下では、副鼻腔の本格的な発育前に当たるので、
手術は、特殊な例外を除いて行いません(骨髄炎を起こしたり、
目の合併症があれば例外です)。
小児の膿性鼻汁(黄色い鼻や青っ洟)は、早めに治療を行えば、
特に後遺症もなく治ることが多いので、
積極的に治療を受けるようにして下さい。