ちょっとブラックな短編集3

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高齢化社会の解消2018.5.21NEW

理想的な死2017.8.10

シンデレラの旅立ち2017.8.5

忖度ロース2017.6.26

海の人と山の人2017.1.5

ある若者のつぶやき2016.10.16

ゴヅラ2014.7.31

小さな島2012.10.2

未来の歴史書2012.4.3

天国と地獄2011.1.21

ゲームオーバー2009.11.24

お地蔵さまと魔法の薬2008.2.8

かえるくんの葉っぱ2007.12.4

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高齢化社会の解消

2050年、しばらく前から、日本の人口比率は極端に高齢者が多くなった。医療が進歩し、平均寿命が延び、出生率が下がったのだから当然のことだ。

そこで改正された法律が、自殺ほう助罪の廃止。もちろん、殺人は罪だが、自殺したい人に道具や場所、知識を与えることなどが認められたのだ。ただし、自殺ほう助を受けてよい人の年齢は70歳以上と決められた。

それが決定されるまでにはかなりの論議を呼んだし、倫理上の観点からの反対意見も多かった。しかし、背に腹は代えられない。とにかく高齢者が多すぎて、一人でも減らしたい状況になってしまったのだから。よくよく考えてみれば、倫理などというのも、生きている人間の思い込んだ概念に過ぎないと多くの人が考えるようになり、自殺が、本来してはいけないことであるという認識も薄れた。

自殺ほう助罪が廃止されると、ありとあらゆるアイデアの自殺ほう助ビジネスが台頭してきた。今までは、もう生きていたくないと思っても、楽に死ねる方法がわからない、死んだ後、人に迷惑をかけたくないなどの理由で、自殺に踏み切れない老人も多かった。しかし、痛くも苦しくもなく、楽に死ねる、残された人に何の手間もかけさせないのであればと、自殺を望む老人が続出した。

死ぬ日も自分で決められるし、死ぬ前に、財産などすべての処分は自分で行えるから、遺産相続でトラブルになる心配もない。また、遺体は残さない方法もあるし、骨を残したい人は、望めば、火葬、納骨までをすべて業者がやってくれる。これなら安心して死ねるというものだ。

死後の概念には個人差があるが、死にたいと思った人が、それぞれに納得して自分の死期を決めることができるようになったのは画期的だった。もちろん、生きたい人は寿命の尽きるまで生きればいいのだが、治る見込みが全くない病なのに、痛みや苦しみに耐えながら生きなければならなかった人や、もうすることもないし、生きている意味がないと感じた人が自由に死ねるようになったわけだ。

そして私は今、小さな船の上にいる。先ほど一錠のカプセルを飲んだ。30分もすると強烈な眠気に襲われ、二度と目覚めることはないという。船は別の大きな船にロープで引かれており、沖まで行ったところで切り離され、しばらくして沈没するとのことだ。その後は魚たちが私の体を食べてくれるのではないか。骨は海底で、いずれは砂になるだろう。

50年連れ添った妻とは昨年、死に別れた。一人娘は嫁に行って幸せに暮らしている。私が自殺を選んだことは、自殺ほう助ビジネスの業者の人以外には誰にも言っていない。娘に言えばたぶん止められるだろうから。私がいなくなった後の連絡なども全て業者がやってくれることになっている。

私は死後の世界の存在を信じている人間だが、次に気づくとすれば船上の私の遺体を見ることになるのか、海の中なのか、あるいはまったく別の場所なんだろうか。ああ、急に眠くなってきた。これで瞼を閉じれば、もう…開くことは…ないのでは…ない…か……。

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理想的な死

入院している父に付き添っていた母から電話を受けたのは朝の6時頃だった。私は妻と、車を飛ばして病院に向かった。昨日まで少し話もできた父の意識は既になく、人工呼吸器を付けられ、計器に映った脈拍の波形は乱れていた。

医師と看護師が病室に入ってきた。脈拍は更に乱れ、やがて波形はどんどん小さくなって、一直線になり、数値は0を指した。

その時、父の体に変化が起きた。肉体の見えている部分の色が薄くなってきたのだ。そして枕が顔を通して透けて見えてきたかと思うと、ついに父は消えた。

体に付けられていた器具や、かけられていた布団などは、主を失って力なく落下するなどし、動かなくなった。

私たちは医師と看護師に礼を言い、入院に必要だった荷物をまとめて車に積み込み、帰宅した。入院費、治療費の精算は後日行う。

●●●

この世界では人間の体は死亡すると消える。だから火葬場もなければ墓もない。多くの人は葬式もしなければ法事もしない。

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シンデレラの旅立ち

そのおばあさんはソファに座り、十数人の人に囲まれて話していた。別のソファや椅子に座っている人もいれば、立っている人もいる。赤ん坊から七十代くらいまでの男女。親族の集まりのように見える。

今まで食事会をしていたらしく、食器の片づけをしている人もいるが、おばあさんの誕生日か何かで集まっているんだろうか。しかし、不思議なことにみんな黒い服を着て、男性は黒いネクタイをしている。

おばあさんを中心に、楽しそうに思い出話などをしているようだが、ときどき涙を拭いている人もいる。懐かしくて泣いているのかもしれないが、おばあさんは元気そうだし、病気には見えない。

しばらくすると全員が立ち上がった。誰かの葬儀に行くんだろうか。外に出ると、夜だった。人々は数台の車に分かれ、どこかへ向かった。

着いた先はやはり葬儀場だった。そこには既に数十人の人が集まっており、おばあさんが会場に入ると、拍手が起こった。おばあさんは皆に笑顔を向け、近寄ってきた人とは一言二言交わした。

会場には祭壇が設けられていて、葬儀場の職員らしき数名が忙しそうに動いていた。祭壇の真ん中に飾られている写真を見て驚いた。そのおばあさんだったのだ。

おばあさんは祭壇に近寄り、自分の写真と対面した。そして周りを取り囲むように飾られている花などもゆっくりと見まわした。

時計が真夜中の12時に近づいてきた。おばあさんは、先ほど一緒に家にいた数人の男女に付き添われて、棺に近づいた。そして葬儀場の人が棺のふたを開けると、おばあさんは自分で中に入った。

おばあさんは上半身を起こし、会場の人に向かって笑顔を見せ、手を振った。皆、手を振り返したり、大きな拍手をした。それからおばあさんは棺の中に仰向けに寝ると、胸の上で手を組み、目をつぶった。

時計が12時を過ぎた。白衣を着た、医者であろう人が指でおばあさんの瞼を開け、ペン型のライトを向けて目を覗き込んだ後、「ご臨終です」と告げた。

●●●

この世界では、人の寿命は80歳と決まっている。80歳になる誕生日の夜中の12時に寿命が尽きる。その前に亡くなる人も多いし、この世との別れは悲しくもあるが、80歳まで生きられれば喜ばしいことだし、最長寿となる。

80歳まで生きられそうな人は、悔いのないようにそれまでにやりたいことをやっておこうとする。また、持ち物や財産の処分、分与なども計画的にできる。

葬儀も自分のしたいように準備でき、知人への連絡も自分でできる。残された者は慌てることもなく、後から遺産相続で争うこともない。

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忖度ロース

「ソンタクロースのおじさん、僕のほしいものは……」

「はいはい。君は僕の親友だからうまく取り計らってあげるよ」

「ソンタクロースのおじさん、私は……」

「はいはい。じゃ、お金もあげちゃおうかな」

「ソンタクロースさん、国民が騒いでいます」

「え?僕、なんかだめなことしたかな」

「かもしれません」

「黙ってりゃわかんないんじゃない?」

「かなりばれてるみたいです」

「そうかあ。ソンタククロウスに名前変えようかな」

「とりあえず、私たちが適当なこと言っておきますから、
今はおとなしくしていてください」

「そうだね。みんなそのうち忘れちゃうよね」

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海の人と山の人

むかしむかしあるところに、海と山がありました。海の近くにも山にもたくさんの人が住んでいましたが、海と山はちょっと離れていました。海の人は魚や貝を捕って暮らしていました。山の人は動物を捕まえたり、草や木の実を食べて生きていました。

山の人がときどき海に遊びに行くと、海の人は山の人に魚や貝を食べさせてくれました。海の人もときどき山に行って、動物の肉や草や木の実をいただいていました。

あるとき、山の人が海辺で魚をもらって食べていると、遠くで見知らぬ男がそれを見ていました。男は長い髪をしていました。男は山に帰ろうとする人を呼びとめて言いました。

「ちょっとあなた、食べて帰るだけではいけないんじゃないかい?」

山の人は驚きましたが、男は続けて言いました。

「人にものをもらったら、何か返さないといけないんだよ」

「はあ。そうなんですか」

「そうだよ。今度来るときは何か持ってきてあげなさい」

山の人は次に海に行くとき、肉と木の実を持っていきました。海の人は驚きましたが、ありがたく受け取って、魚を食べさせてくれました。海の人は次に山に行くとき、魚を持っていき、それからお互いを訪ねるときは、何かとれたものを持っていくようになりました。

あるとき、山では動物も草も木の実もとれないことがありました。山の人は海に行きましたが、海の人にあげるものがなくて困ってしまいました。そこへあの髪の長い男がやってきて言いました。

「おやおや、あげられるものがないんだね。じゃあ、これを代わりにあげたらどうかな」

男はきらきら光る硬くて丸いものを山の人に渡しました。山の人は海の人にそれをあげ、魚を食べさせてもらいました。それから、海の人も魚が捕れなかったときは光る丸いものを山に持っていき、肉や草や木の実をいただくようになりました。

そんなことが繰り返されるうち、海と山には光る丸いものがたくさん出回ってきました。そしてだんだん、初めから光る丸いものだけを持っていき、いろんなものと交換するようになりました。それはとても便利なものだと思えました。

海の人同士、山の人同士でも、何かやりとりするときには光る丸いものが必要になりました。でも、光る丸いものはみんなが十分に持てるわけではありませんでした。たくさん持っている人はいいけれども、持っていない人は食べるものや必要なものが手に入らなくなりました。もう、光る丸いものがなければ、生きていけなくなっていました。

暮らしに困った人たちの中には、光る丸いものを奪う人が出てきました。あちこちで泥棒やけんかが起き、海でも山でも安心して暮らせなくなりました。海の人と山の人も仲が悪くなり、殺し合いも起きるようになりました。

髪の長い男はその様子を見て言いました。

「あのバカども、いつになったら気づくかな。昔は幸せだったことに。イヒヒヒヒ」

男が長い髪をかき上げると、とがった耳が見えました。

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ある若者のつぶやき

僕はこの春から軍隊に入って戦場に出る。周りの人は「おめでとう」と言ってくれるが僕は不安だ。母だって本当は心配なんだと思う。だって軍隊では精神をおかしくしたり、死ぬ人だっているんだから。意地悪な上官にいじめられるかもしれない。無理な命令に従わされたり、矢面に立たされるかもしれない。退役するまで無事でいられればいいが、戦争の世の中はいつどうなるかわからない。何のために命を懸けてまでこんなことをしなければならないのか。こんな社会はおかしいと思う。

(語句を一部替えてみます)

僕はこの春から会社に入って社会に出る。周りの人は「おめでとう」と言ってくれるが僕は不安だ。母だって本当は心配なんだと思う。だって会社では精神をおかしくしたり、死ぬ人だっているんだから。意地悪な上司にいじめられるかもしれない。無理な命令に従わされたり、矢面に立たされるかもしれない。退社するまで無事でいられればいいが、マネー戦争の世の中はいつどうなるかわからない。何のために命を懸けてまでこんなことをしなければならないのか。こんな社会はおかしいと思う。

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ゴヅラ

2009年、東洋の島国『ヌッポン』では長年政権を取り続けていたヅミン党が選挙で敗れ、メンシュ党が念願の与党となった。

2011年、ヌッポンで大地震が起き、直後に襲ってきた津波によって多くの人が犠牲になった。また、破壊された原子力発電所からは大気中へ、海へと放射能が漏れ出た。未曾有の事態に電力関係者は「想定外」と繰り返し、メンシュ党は国民の支持率の低下を抑えられなかった。

これに勢いづいたのがヅミン党。2012年の選挙では、以前自分から総理をやめたはずのアへ総裁が復活。元はと言えばヅミン党が作った原発の尻拭いをメンシュ党にさせておいて「メンシュ党の間違った政治」などと堂々と発言。CMまで作って「ヌッポンを取ル戻す」などとはっきりしない口跡でアピール。結局、ヅミン党はめでたく与党に返り咲き、再びアへ政権が誕生した。

その後、アへ政権は、2011年にあれだけの大事故、大惨事を起こしたにもかかわらず原発を廃止しようとしなかった。国民も経済を中心に考える人々は原発を支持した。

そして迎えた20XX年。その日の海は晴天の下で穏やかに見えた。海辺で作業をしていた一人の漁師が水平線が動いたのに気づいた。不自然な盛り上がりを見せた波はどんどん大きくなって岸に近づいてくる。危険を感じ、漁師たちが逃げ始めた瞬間、海の中から激しい波しぶきをあげて巨大な物体が現れた。

「うわああっ!ゴヅラだ!」

ゴヅラは1954年にヌッポンを襲った大怪獣。当時行われていた核実験の影響で生まれたとされ、身長は50メートル。町を破壊し、人々を恐怖に陥れた。その後作られた原発は50メートルの防護壁で囲われ、アへ首相は「完全にブロックされています」と豪語した。しかし、今回現れたゴヅラの大きさは倍の100メートルだった。アへ首相は緊急会見を開いた。

「想定外で……」

ゴヅラは地響きを立てながらまっすぐ原子力発電所に向かった。自分の身長の半分しかない防護壁をいとも簡単に壊し、原子炉格納容器に近づいた。アへ首相をはじめ、ヌッポン国民皆が思った。

(ああ、もうおしまいだ)

ゴヅラは耳をつんざくような咆哮をあげたかと思うと、核燃料を容器ごと一飲みにした。そして、発電所内の核燃料を全て食い尽くすときびすを返して海に帰って行った。ゴヅラは町を破壊することもなく、結局、発電所が壊されただけで、放射能漏れも起きなかった。ゴヅラはその後、ヌッポン全国の原発に現れ、すべての核燃料を平らげると、それきり現れなくなった。人々は口々に言った。

「やはりゴヅラ(GOD-ZLLA)は神だった」

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小さな島

むかしむかしあるところに、海をはさんで二つの国がありました。その海のちょうど真ん中には、小さな島がありました。長い間、それぞれの国の人々は、自分の国の近くで魚をとって食べていましたが、だんだん人が増えてくると、小さな島の近くまで魚をとりに行くようになりました。二つの国の漁師さんたちは、島の周りでときどきけんかをしました。

それを聞いた二つの国の王様は、小さな島は自分の国のものだと言い出しました。どちらも譲らず、二つの国はとても仲が悪くなってしまいました。そのうち、小さな島の周りの海には魚がいなくなりました。漁をする人も来なくなり、やがて二つの国の王様も人々も、小さな島のことなどほとんど忘れてしまいました。

時が過ぎ、二つの国の王様は代がかわりました。ある時、二人の王様は、小さな島の周りでまた魚がとれるようになったという噂を耳にしました。今度の王様は、島はどちらのものでもないので、魚はお互いに必要な分だけとることにしましょうと約束をしました。それ以来、小さな島の周りにはいつもたくさんの魚が泳いでいます。

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未来の歴史書

「しかし、この歴史書を読んでみると、昔の人っていうのはよほど馬鹿だったんだね」
「そうなの?」
「そうだよ。だってさ、交換の手段に金なんて道具を作り出してさ、それに価値が減らないなんて性質を持たせたもんだから、みんなが競争して貯めたらしいんだよ」
「そりゃ、奪い合いが起きるし、貧富の差がつくわなあ」
「だろ?そもそも交換だってする必要がないのにだよ」

「それに、その金のシステムを考えたのはごく一部の人で、その人たちに都合のいいようになってるから、一般の人は奴隷のようなもんだったらしいよ」
「まあ、ばくちは親は負けないからな」
「あはは、だよな。でも、奴隷たちはそれに気づかずに、一生懸命働いて金の奪い合いを続けたっていうよ」
「涙ぐましいねえ。普通なら、騙されてることに気づいてやめると思うけどね」

「それに、極めつけがこれだよ。2011年に日本で起きた原発事故」
「ああ、地震と津波で原発が爆発したやつか」
「うん。あれだけ放射能が漏れだしたのにあの後、日本はすぐには原発をやめてないんだよね」
「他の国は結構やめたんだよな」
「うん。そりゃ、命には代えられないからね。普通に考えりゃやめるだろ」
「それなのに日本は何でやめなかったんだ?」
「まずその、金のためだったみたいだね」
「あはは、なんなんだよ、その金って。命より大切なものなのか?」
「ほんと笑っちゃうけど、その時代にはそう考えてる人が多かったみたいだよ」
「あはははは。腹痛くなってきた。そりゃ、確かに馬鹿だな」

「政府は、原発をやめると電気が足りなくなるって国民を脅したんだってさ」
「原発が必要なほど電気なんか使わなきゃいいのに」
「だよな。でも、金のためにいろんなもんを作らなきゃいけなくて、電気がたくさん必要だったみたいだよ」
「それも金のためなのか。すげえな、その金って代物は」
「ああ、信じられないね。ほんとによかったよ、そんな変なものに支配されてる時代に生まれてこなくて」

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天国と地獄

私は死んだようだ。振り返れば家族や仕事に恵まれ、いい人生だったと思う。そこそこ長生きもできたし、思い残すことはない。これからは天国でのんびり暮らすことになるのだろう。

ドライアイスのような煙の中に、長い行列ができている。みんな死んだばかりの人のようだ。先頭では天使らしき人が、一人ひとりにこれからの行き先を指示している。私も列の最後に並ぶとしよう。

だんだん私の番が近づいてきた。天使の声が聞こえる。
「天国、地獄、地獄、天国、地獄、地獄、地獄……」
結構、地獄行きの人が多いようだな。みんなそんなに悪いことをしてきたんだろうか。
人相はそう悪くなさそうだが。

さあ、私の番だ。私は当然天国だろう。
「地獄」
「えっ?」
「地獄です」
「そんなはずはない。何かの間違いでしょう」
「いえ、間違いありません。あなたは地獄行きです」
「そんな。だって私は悪いことなど何もしていない」
「そうですか?」
「そうさ。まじめに仕事をして、会社も長年勤めあげた」
「あなたがしてきた仕事が、地球の環境をずいぶん破壊しましたよ」
「それは仕方ないだろう、仕事なんだから」
「仕事なら環境を破壊してもいいんですか?」
「それは……。でもお金を稼ぐためにはそうするしかなかったんだ」
「それがいけないんですけどね」
「でも、ちゃんと家族を養った。子供だって立派に育てた」
「自分の家族や子供だけでしょう。そんなのは当たり前です」
「……」
「あなたは地獄行きです。はい、次の方」

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ゲームオーバー

「はい。ゲームオーバーです。すべての人は全財産を出してください」
突然、全世界の上空から大きな声が響いた。

「え!終わりなんですか?全部出すんですか?」
「そうですよ。だから、これはマネーゲームだって言ったでしょ」
「せっかくこんなに貯めたのに?」
「はい、ではあなたは勝ちね。拍手〜パチパチパチ」

「では次のゲームをはじめます。お金は全員に同じ額を配り直します」

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お地蔵さまと魔法の薬(原案:ゆうちゃん)

あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。裏の山には畑があって、おじいさんは毎日一生懸命、畑の手入れをし、野菜を作っていました。
「おうおう、今日もたくさん虫たちが来よったわ。そうかそうか、そんなにおいしいか。でもわしらにもちょっと食べさせておくれ」
おじいさんは丁寧に虫を取ると、少し虫の食った野菜を袋に入れました。

家ではおばあさんが、とれた野菜をゆでたり、焼いたり、スープにしたりしていろいろな料理を作ってくれました。おじいさんはおばあさんの手料理が大好きで、ふたりともとても健康に、幸せに暮らしていました。

隣のうちには若い男が一人で住んでいました。男も裏山に畑を持っていましたが、ほとんど手入れをしないため、あまりいい野菜はできませんでした。
「ちっ、この虫けらめ、俺の野菜を食うんじゃない!」
男はぶつぶつ怒りながら、虫をぶちぶちつぶしました。ふと隣の畑を見ると、おじいさんが楽しそうに立派な野菜を収穫しています。男はとてもうらやましく思いました。
「くそう。あのじじい。あんなうまそうな野菜を作りやがって。きっと何か特別な方法があるに違いない」
男はおじいさんが帰る時に跡をつけました。

おじいさんは山道の途中にあるお地蔵さまのところで立ち止まり、しゃがみました。
「お地蔵さま、おかげさまで今日も野菜がとれました。ありがとうごぜえます」
おじいさんは袋から野菜を一つ取り出して供えると、目をつぶって手を合わせました。お地蔵さまは安らかな顔で微笑んでいます。おじいさんはにっこりし、よっこらしょと立ち上がると袋を抱えて歩きはじめました。木の陰で見ていた男は思いました。
(ははあん。じじいめ、あの地蔵に何かいい方法を教わっていたんだな。自分だけいい思いしやがって。そうはさせるもんか。俺も聞きだしてやる)

男はお地蔵さまのところへ行き、言いました。
「やい、地蔵、俺にもうまい野菜の作り方を教えろ」
お地蔵さまは黙ったまま微笑んでいます。男はしばらく言葉を待っていましたが、何も聞こえてきません。
「おい、野菜の作り方を教えろって言ってんだよ」
男はお地蔵さまの頭をこづきました。でもお地蔵さまは表情を変えず、何も言いません。男は怒って言いました。
「くそう。この役立たずの石の塊め!じじいに何を教えたんだ。このやろう、このやろう!」
男はお地蔵さまの頭をこぶしでガンガン殴りました。さすがのお地蔵さまもこれには顔をゆがめました。
「痛い痛い。乱暴なやつだな。わしは何も教えておらんよ」
男は殴り続けながら言いました。
「うそつけ。うまい野菜の作り方を教えただろう。俺にも教えねえともっとひどい目にあわすぞ」
お地蔵さまは言いました。
「わかった、わかった。教えるよ」
男は殴るのをやめました。
「ほうらな。はじめから素直に教えれば痛い目にあわずに済んだものを」
お地蔵さまは言いました。
「明日の朝、目が覚めたら枕元に、かめに入った魔法の薬があるはずじゃ。それを畑にまくがよい」
男は言いました。
「ほんとだな。そうすれば、うまい野菜ができるんだな。嘘だったらしょうちしねえからな」
男はおじいさんの供えていった野菜を奪い、自分の家に持って帰りました。

その夜、男はなかなか寝つかれませんでした。うとうとしてもすぐに目が覚め、枕元を確かめます。でも、かめに入った魔法の薬はありません。男は、もしお地蔵さまの言ったことが嘘だったら、ただではおかないと思いました。

さすがに明け方近くには男も深い眠りにつき、次に目が覚めたときには日も大分高く上っていました。男は跳ね起きるといちはやく枕元を見ました。そこには本当に、かめがありました。男は喜んで小躍りしました。それから、かめのふたを開け、中を覗き込みました。変な匂いがして、目が痛くなりましたが、男はかめを持って早速裏山に出かけ、薬を畑にまきました。うまい野菜ができなければお地蔵さまの頭からこの薬をかけてやろうと思いました。

しばらくすると、男の畑に立派な野菜ができはじめました。男はうれしくておじいさんに自慢しました。
「おい、じいさんよ、俺の野菜を見ろ。こんなに大きくてうまそうで、虫も一つもつかねえ。じいさんとこのは虫食いだらけだな。はっはっは」
おじいさんは笑って言いました。
「おお、ほんとに立派な野菜じゃな。虫もつかないとは不思議じゃな」
「あはは。特別な秘密があるんだ。教えてやらないけどな」
男はたくさんの野菜を抱えて家に帰りました。

それからしばらく、男の畑では立派な野菜がとれましたが、そのうち、だんだんと収穫が減り、虫もつくようになってきました。薬はまいているのですが、あまり効かなくなってきたようです。男はお地蔵さまのところに行き、こぶしを振り上げて言いました。
「やい、地蔵。お前にもらった薬が効かなくなってきたぞ。もっと強い薬をよこせ。よこさないと殴るぞ、いいか」
お地蔵さまは困った顔をして言いました。
「わかったよ。あまりおすすめはできんが、明日の朝、枕元にもっと強い薬を届けておくよ」

男が翌朝目を覚ますと、確かにかめに入った薬がありました。ふたを開けると前よりもっときつい匂いがしました。
「うひゃ、たまらんな。でもこれは効きそうだ」
男は薬を畑にまきました。そうすると虫もいなくなり、また立派な野菜がとれるようになりました。

しかし、それも長くは続きませんでした。何度やってもだんだん野菜の収穫は減り、より強い虫がつくのでした。男はそのたびにお地蔵さまに、より強い薬をもらいましたが、もう、ちょっとかいだだけで気を失いそうになるほどの匂いでした。男はお地蔵さまのところに行って言いました。
「やい、地蔵。あんなもの畑にまけやしない。どうしてくれるんだ」
お地蔵さまは答えません。男はお地蔵さまの頭を思い切り何度も殴りましたが、お地蔵さまは安らかな笑顔のままでした。男は怒ってお地蔵さまを蹴り倒し、自分の家に帰りました。

夕方、そこを畑仕事を終えて帰ってきたおじいさんが通りかかりました。
「おうおう、お地蔵さま。どうしなすった」
おじいさんはお地蔵さまを抱き起こして元のように立たせ、手を合わせました。

翌日、男はおなかが空いてしかたありませんでした。畑に行きましたが、もう野菜はとれません。呆然と立ち尽くしていると、おじいさんが声をかけました。
「若い衆、どうしなすった」
男は答えました。
「俺の畑が、何もとれなくなっちまった。あの地蔵のせいだ」
「ほう。お地蔵さまが何かしなすったか」
「変な薬よこしやがって。俺はだまされた」
「お地蔵さまがだましたと」
「そうだ。くそう。俺の畑はもうだめだ。腹が減って死にそうだ」
「それはかわいそうに。うちに来て食べたらどうじゃ。虫食いの野菜くらいしかないが」
「いいのか」
「ああ、もちろんじゃ。自然の恵みはみんなで分けんとな」

おじいさんは男を自分の家へ連れて行き、おばあさんの手料理を食べさせました。男は一口食べると目を丸くし、そのまま無言でしばらく食べ続けました。そして大きく一息ついてから言いました。
「こ、こんなにうまいものは食ったことがない」
「そうか。それはよかった」
おじいさんはそう言っておばあさんを見ました。おばあさんもにこにこしていました。

男は言いました。
「なんでこんなうまい野菜ができるんだ。地蔵に何か聞いたのか」
おじいさんは言いました。
「いや、わしはお地蔵さまの声を聞いたことはない。いつも手を合わせてお礼を言うだけじゃ」
「礼?何も聞いてないのに礼を言うのか?」
「そうじゃ。この世に生かしてもらっていること、食べるものを与えてもらっていることにな」
「でも、地蔵がしてるわけじゃないだろう」
「そうかもしれん。でも、わしはそうすることで気持ちが落ち着くのじゃ」
男は黙っておじいさんとおばあさんの顔を見ました。二人ともとても幸せそうでした。そして、男もそこにいると何か暖かい気持ちになるのでした。

男は次の日から、おじいさんの畑仕事を手伝うようになりました。魔法の薬を使うより手間はかかりましたが、これでおいしい野菜が作れると思うと、大変でも楽しいと思えました。うっとうしかった虫たちも仲間のような気さえしてきました。

畑の帰りには一緒にお地蔵さまに手を合わせました。お地蔵さまの声が聞けることはありませんでしたが、その安らかな顔を見ると自分を許してくれているようで、心が休まるのでした。

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かえるくんの葉っぱ(原案:ゆうちゃん)

森がありました。たくさんの動物たちが住んでいました。ある秋のこと、かえるくんは思いました。
(あの高い木の上に生っている柿の実を食べてみたいもんだ)
ある日、かえるくんが柿の木の下を通ると、サルが木の上でおいしそうに柿の実をむしゃむしゃ食べていました。かえるくんはうらやましくてしかたありませんでした。
(うまそうだなあ。でもケチで有名なサルのこと、ただほしいと言ったってくれるわけがない。なんとかしてあの柿の実を手に入れる方法はないものか)

しばらく考えていたかえるくんは、いいことを思いついたというように、舌をぺろっと出して口のまわりをひとなめしました。それから近くに落ちていた葉っぱを1枚拾い、木の上のサルに向かって叫びました。
「おおい、サルくん。おいしそうな柿だねえ」
サルはかえるくんを見下ろして言いました。
「ああ、すごくうまいよ。でもおまえにはやらないよ〜」

やっぱりなと思いながら、かえるくんは言いました。
「あはは。タダでとは言わないよ。今日はいいものを持っているんだ。その柿の実と交換しないか」
サルは言いました。
「いいものって何だよ」
かえるくんは言いました。
「柿の実を持って下りてきてくれたら見せてあげるよ」
サルは枝から柿の実を一つもぐと、するするっと木から下りました。

「さあ、いいものを見せろ。ほんとによくなきゃ取り替えてやんないからな」
かえるくんは、さっき拾った葉っぱを差し出しました。サルは言いました。
「なあんだ。葉っぱじゃないか。こんなものじゃあ、柿の実とは取り替えられないな」
「ははは。サルくん、これはね、ただの葉っぱじゃないんだよ。ほら、ここに星のマークがついているだろう。こういうのはなかなかないのさ」
サルは葉っぱをもう一度よく見て言いました。
「ほんとだ。星のマークがついてる。こんなの見たことないや」
「だろう?じゃあ、柿の実と交換してくれるね」
サルは柿の実をかえるくんに渡すと、葉っぱを受け取り、喜んでどこかに行ってしまいました。かえるくんは思いました。
(ははは、単純なサルめ、うまくひっかかりやがった。俺って頭いいなあ)
かえるくんは柿の実をおいしそうにぺろっと食べました。

かえるくんは思いました。
(そうだ。この手でみんなから、いろんなものをもらっちゃおう)
かえるくんは、たくさん葉っぱを集めました。そして、自分の手をなめると、集めた葉っぱにひとつひとつ、手形をつけていきました。そうです、星のマークはかえるくんの手形だったのです。

かえるくんはそれから、その葉っぱで、いろんな動物たちといろんなものを交換しました。葉っぱと交換するだけでなんでも手に入るのです。なんと楽ちんなのでしょう。かえるくんはどんどん星のマークのついた葉っぱを作りました。

その葉っぱは、動物たちの間で大人気でした。動物たちは、たくさんの葉っぱをほしいと思い、競争で集めました。それから動物たちはかえるくんのように、手に入れた葉っぱと何かを交換することをはじめました。

どうやったらたくさんの葉っぱが手に入るだろう。動物たちは一生懸命、いろんな方法を考えました。そして、葉っぱ集めが上手な動物はたくさんの葉っぱを手に入れました。でも、へたな動物は、なかなか集まりませんでした。

仲のよかった動物たちの関係がおかしくなってきました。たくさん葉っぱを持っている動物がえらくて、持っていない動物はばかにされるようになりました。たくさん葉っぱを持っている動物が、持っていない動物にいろんなことを命令するようになりました。

他の動物の持っている葉っぱを盗む動物も現れました。そうなると安心して森も歩けなくなりました。みんな自分の葉っぱを盗られてはなるまいと必死で守ろうとしました。『動物を見たら泥棒と思え』なんていう言葉もできる始末でした。

森のはずれの方に、まっ白いうさぎがいました。うさぎは草をもぐもぐ食べていました。サルが葉っぱを見せびらかしながら、うさぎに言いました。
「おい、うさぎ。俺はこんなに持ってるんだぜ。すごいだろ」
うさぎは横目でサルをチラッと見ると、また草を食べ始めました。
「おい、すごいだろって言ってんだよ。何かと交換してやろうか」
うさぎは興味なさそうな様子で、相変わらず草をもぐもぐ食べています。
「このやろう、腹立つな。この葉っぱ1枚やるから俺の肩をもめ」
うさぎはうっとうしそうに言いました。
「なんであたしがあんたの肩もまなきゃいけないのよ。そんな葉っぱのために」
サルは顔を真っ赤にして言いました。
「この葉っぱはな、ただの葉っぱじゃないんだぞ。星のマークがついてる特別な葉っぱなんだ。この葉っぱがあればなんでもできるし、すごいんだぞ」
うさぎはあきれたように言いました。
「あほらし。星がついてるからなんだっちゅうの?葉っぱなんかみんな同じよ。土に返さなきゃ肥料にもならないわ。あたしは食事中なの。つまんない話で邪魔しないで」
うさぎはまた、もぐもぐと草を食べ始めました。
サルは言葉を失って、わなわな震えましたが、やがてがっくり肩を落として他の動物たちのところに帰って行きました。

しょんぼりしたサルを見て、動物たちが言いました。
「どうしたサルくん、いつもの元気がないじゃないか。ははあ、葉っぱを落っことしたか?盗られたか?」
動物たちは、ハハハと笑いました。サルは動物たちに向かって言いました。
「いや、うさぎのところに行ったらさ、あいつ、ちっとも葉っぱをほしがらないんだ」
動物たちは言いました。
「ああ、あいつは変わり者だからな。あんなやつのことはほっとけばいいさ。葉っぱの価値がわからないんだろう」
サルは眉間にしわをよせて言いました。
「でもなあ、うさぎに言われて思ったんだが、この葉っぱって、ほんとに価値があるんだろうか」
動物たちは笑って言いました。
「今さら何言ってんだよ、サルくん。葉っぱはいろんなものと交換できるし、葉っぱをやればみんな言うことを聞くじゃないか」
サルは言いました。
「それはそうなんだが。もし、みんながうさぎみたいに葉っぱをほしがらなくなったら、こんな葉っぱ、なんの価値もないんじゃないか」
「ええ、そうかなあ」
動物たちは考えこみました。
「そういえば、前は葉っぱなんかと誰も何も交換しなかったよな」
「そうね。葉っぱがなければ困るようになったのは、つい最近のことだわ」
「この頃は葉っぱのせいで、みんなずいぶん仲が悪くなった気がする」
「考えてみれば、星のマークがついているというだけで、ただの葉っぱだよね」
みんなしばらく黙り込んでしまいました。

突然、サルが大きな声で言いました。
「俺、もう葉っぱ集めはやめる!もう俺のところに葉っぱを持ってきても何とも交換してやらない。でも、俺の持っているものでほしいものがあるなら、葉っぱなんかなくてもやるよ」
「ええっ!」
みんなはとても驚きました。あのケチで有名なサルが、これからは交換するものがなくてもほしいものはくれると言うのです。なんという変わりようでしょう。みんないったいサルが何を考えているのかわからずに呆然としました。

でも、しばらくすると、ひとり、またひとりと、気づいたようにサルと同じことを言い出しました。やがてそこにいた全員がもう葉っぱ集めはやめることにしました。そしてみんなにっこり笑いました。久しぶりに見たみんなの笑顔でした。

そこに、かえるくんがたくさんの葉っぱを持ってやってきました。
「やあやあ、みなさん、おそろいで。ほら、星のマークのついた葉っぱをたくさん持ってきたよ。ほしい人は何か持ってくれば交換してあげるよ」
でも誰も振り向きもしません。かえるくんは言いました。
「あれ、みんなどうしたのかな。ほら、みんなの大好きな葉っぱだよ」
やはり、みんな全く興味を示してくれません。日はだいぶ西に傾き、あたりはだんだん暗くなってきました。動物たちはぽつりぽつりとうちに帰り始めました。かえるくんは慌てました。
「ねえ、みんな。どうしちゃったの?食べ物持ってきてよ。葉っぱと交換してあげるからさあ」
動物たちはどんどん帰っていってしまいます。かえるくんは半泣きになりながら葉っぱを持って、帰ろうとする動物を追いかけました。でも誰一人、相手にはしてくれませんでした。とうとう、かえるくんは一人残されてしまいました。

森には、もう冬がやってくるところでした。葉っぱと交換ばかりしていたかえるくんは、食べ物の捕り方も忘れてしまっていました。力の抜けたかえるくんの手から、たくさんの葉っぱがパラパラと落ちました。葉っぱは冷たい北風に乗って飛ばされていきました。

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