
【 七の歌 】
「 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に
出でし月かも 」
天の原・・・・・・・・あまのはら
ふりさけ見れば・・・・ふりさけみれば
春日なる・・・・・・・・かすがなる
三笠の山に・・・・・・・みかさのやまに
出でし月かも・・・・・・いでしつきかも
作者:安部仲麻呂 717年16歳のとき、留学生として当時「唐」と呼んでいた
中国にわたり、政治や経済を学ぶ。 優秀だったとみえて、玄宗皇帝に仕えて高給役人にもなり、唐の
詩人「李白」や「王維」らとも親交を結ぶ。
36年もの月日がたったとき帰国することとなり、親友との送
別会の夜、海辺の月を見て感慨を覚え歌を詠んだ。
ところが、運命の皮肉、仲麻呂らの乗った船は暴風に会い、漂着
して命からがら長安にもどり、再び唐の朝廷に仕え、そのまま
故国の土を踏むこともなく70歳の生涯を閉じる。
結果として良かったのか・・・。「人間万事塞翁が馬」
< 歌の意味 >
−−唐へ来てからはや36年。私の残りの人生も少なくなって
きた。そろそろ日本へ帰りたい−−。
○ 日本へ戻ることを、お許し下さい。
● そうか、残念だがこれ以上ひきとめることはできまい。
いま日本から、遣唐船が来ている。その船で帰るがいい。
○ ありがとうございます。 < 仲麻呂のために
親友たちが餞別の宴を張ってくれました>
● いよいよ明日帰られるのか。名残惜しい。いつまでも
お元気で。
○ ありがとう。 みなさんもいい詩をつくって下さい。
−−−あしたは、あの船で日本へ帰るのか。・・・・
おお月だ! あの向こうに奈良の都がある。 おもいだすなあ・・・・・。
・ 天の原・・・大空のこと。「原」は海原、野原など大きく広がるさま
をいう語。
・ ふりさけ見れば・・・遠くに目をやり眺望すること。
ここでは、はるかに天を仰ぎ見る動作。
・ 春日なる・・・現在の奈良市奈良公園あたりの地名。