【 五の歌 】
 
「 奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きくときぞ 秋はかなしき 」

  奥山に・・・・・・・・・おくやまに
   紅葉ふみわけ・・・・もみぢふみわけ
    鳴く鹿の・・・・・・・・なくしかの
     声きくときぞ・・・・こえきくときぞ
       秋はかなしき・・・・あきはかなしき









作者:「猿丸大夫」(さるまるだゆう) 「古今集」では、読み人知らずとあり、どうも猿丸大夫という のは、実在の人物ではないようです。


< 歌の意味 >

○ あしたは、親王さまのお屋敷で歌合わせがあるのだが、・・・ なかなか歌が出来ない・・・。こまった。
〜〜〜〜(鹿の鳴き声)〜〜〜〜
○ あれは?・・・どこか物寂しげな鳴き声だが・・・・ 牝鹿をもとめて鳴く雄鹿の鳴き声かも知れない。
○ そうだ、この鳴き声を歌に詠もう。 (人里はなれた深い山奥で、一面に散りしいた紅葉をふみわけながら、 妻を恋しがり鳴いている鹿の声・・・。その声を聞くとき、秋の 物寂しさが身にしみて感じられる・・・・。
−−−秋深きころの、何とはないせつない思いが伝わってきます。)

・ 奥山に・・・人里から遠く離れた奥深い山。静寂な風景。
・ 紅葉踏みわけ・・・地面に散り敷かれた紅葉を、鹿が踏み分ける動作。
・ 声聞くときぞ・・・「きく」のは作者自身。

鹿の鳴き声は、まだ聞いたことがないが、情緒深いものらしい。 (奈良の公園にいる鹿は、秋のあわれさを思わせるイメージではないが) 明治の「鹿鳴館」というのは、この歌と関係あるのでしょうか?。