【 四十八の歌 】 

  「 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな 」
     


          風をいたみ・・・・・かぜをいたみ
            岩うつ波の・・・・・いわうつなみの
              おのれのみ・・・・・おのれのみ
                くだけてものを・・・・くだけてものを
                  思ふころかな・・・・・おもふ(う)ころかな
    


          作者:源重之(みなもとのしげゆき)
     
     清和天皇のひ孫で、父は源兼信。清和源氏をいわれる家すじ。
     九州から東北まで全国各地に赴任し、各地で歌をたくさん残している。
     最後は赴任先の陸奥で没す。三十六歌仙のひとり。



     


   <歌の背景、意味>

  (重之)この風のはげしさは、まるでわが恋心のはげしさのよう・・・

      岩うつ波は、砕け散る

      打ち寄せ打ち寄せしても

      岩はびくともしない

      砕け散る波はわたしのこと

      きみは岩
 
      きみの心は、あの岩のようにびくとも動かない

      苦しい恋の思いに心がくだけ乱れるこのごろです。
                 


    荒い海風で大きな岩に波が砕けて散るように、心動かぬ女性に激しい思いを寄せる恋のやるせなさを詠った歌です。
    哀感がただよっています。

    朴訥で無口な、それだけに内面にはげしい情念を持った青年のイメージが浮かんできます。


  「風をいたみ」・・・風がはげしいので
  「岩うつ波」・・・「岩」はつれない女性に、「うつ波」は激しく燃える恋心にたとえている。
  「おのれのみくだけて」・・・わたしだけが心乱れて。