【 四十二の歌 】  

    「 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは 」
     


         契りきな・・・・ちぎりきな
           かたみに袖を・・・かたみにそでを
             しぼりつつ・・・・しぼりつつ
               末の松山・・・・・すえのまつやま
                 浪越さじとは・・・・なみこさじとは
     


         作者: 清原元輔(きよはらもとすけ)
  36の歌の作者、清原深養父の孫で、清少納言の父。
  三十六歌仙のひとり。
  清少納言は元輔が50歳をすぎてからの子で、元輔はこの孫のような娘
 を溺愛していたようで、父親の明るいユーモラスな性格が彼女に影響している。
  仲の良い父娘の、うらやましい光景が目に浮かぶ。
    


   
      この歌の詞書(ことばがき)に、「心変りはべりける女に、人に代りて」とあり、女性に裏切られた男性から、元輔が依頼されて代作したものとされています。


    (男性) −−−しゅん−−−
            
    (元輔) どうした、元気ないな。彼女にふられたのか?
             それなら、歌をつくっておくったら・・・。

    (男性) 歌はにがてだ。
             たのむ、かわりにつくってくれ・・・・。

    (元輔) はあ・・・・。
             よし、なんとか君のくやしさを伝え、彼女の気持ちを もどしてやろう。


    < 歌の意味 > 

        あのとき固く約束したよね。おたがい涙でぬれた袖をしぼり ながら、あの末の松山を波が越すことがないように、わた したちの気持ちもぜったいに変わらないと・・・・。

        固く愛を誓い合った相手が心変わりしてしまったのを恨む 心を詠んだ歌です。

           
   
     「ちぎりきな」・・・約束したよね。                      
     「かたみに」・・・・たがいに
     「袖をしぼり」・・・涙でぬれた袖をしぼる。
     「末の松山」・・・・歌枕で、宮城県松島の近く。