【 三十九の歌 】

「 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか
人の恋しき 」
浅茅生の・・・・あさぢ(じ)ふ(う)の
小野の篠原・・・を(お)ののしのはら
しのぶれど・・・・しのぶれど
あまりてなどか・・・あまりてなどか
人の恋しき・・・・・ひとのこひ(い)しき
作者: 参議 等(さんぎひとし)(源 等:みなもとのひとし)
平安初期の歌人。嵯峨天皇のひ孫にあたる人で、
50歳をすぎて参議となる。
歌人としては、あまり知られていない。
< 歌の意味 >
○
好きだ、すきだ、・・・・。
もうがまん出来ない。じっとしのんできたけれど・・・・。
どうしてこうも、あの人が恋しいのだろう。
○
そうだ、この気持ちを歌にしてあの人に贈ろう。
「 浅茅生の 〜〜〜 」
・ 浅茅生の
・・・「浅」は丈が低い、まばらに生えるということ。
丈の短い茅(ちがや)。生は生えているの意。
・ 小野の篠原・・・小野の小は、接頭語。篠原は、篠竹(細い竹)の生えている原。
・
あまりて・・・思い余ってあふれるほどに・・・。
・ などか・・・どうして(自分自身の心の動きを不可解に思う
いらだち)
・
人の恋しき・・・「人」は恋する相手。
恋しい相手とは・・・人妻なのか、高貴な女なのか・・・。
いずれにしても、世間に知られてはまずい人。忍ぶ恋。
自分ひとりの胸のうちに閉じ込めておかねばならぬ恋。
その孤独に堪えられぬいらだち。
抑えようにも抑え切れない感情・・・。
それを歌に詠んで相手に贈り、心中を訴えたのです。
恋というのは、忍びこらえようとすればするほど、身体の底から
湧きおこってくるものらしい。
それを「あまりてなどか・・・」で表現しています。