【 三十八の歌 】

「 忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の
惜しくもあるかな 」
忘らるる・・・・・わすらるる
身をば思はず・・・みをばおもは(わ)ず
ちかひてし・・・・ちかひ(い)てし
人の命の・・・・・ひとのいのちの
惜しくもあるかな・・を(お)しくもあるかな
作者: 右近(うこん)・・・生没年不明
平安時代中期の女流歌人。父の官職から右近と呼ばれた。
醍醐天皇のきさきに仕え、藤原敦忠をはじめ、多くの上流貴族と恋を重ね、
恋の歌をたくさん残した。
< 歌の意味 >
● 右近、あなたが好きだ。一生あなたを離さないよ。
神に誓って約束する。信じておくれ。
○ 敦忠さま・・・・。
●
右近・・・・・。
こうして右近は、敦忠の愛を受け入れました。
・・・ところがある日。
○ えっ、敦忠さまがほかの女の人のところへ通っているって?
・・・そういえば、ここいくにちもきてくださらなかった。
でも、わたしはうらんだりしません。
ただ・・・・・・。
(神様の誓いを裏切ったために、神様の罰を受けて命をなくさ
れてしまうことだけが心配でなりません)
自分のことよりも、男の命の方を惜しむとは、なんと可愛い女性ではありませんか。
ところが、この歌には二通りの解釈があって、もうひとつは、裏切った男に対する皮肉とからかいの歌との解釈です。
ここでは、素直に「貞女のこころ」をとりたいと思います。