【 三十四の歌 】

「 たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
」
たれをかも・・・・たれをかも
知る人にせむ・・・しるひとにせむ(ん)
高砂の・・・・・・・たかさごの
松も昔の・・・・・・まつもむかしの
友ならなくに・・・・ともならなくに
作者: 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
貫之と同時代の平安時代初期の歌人。
三十六歌仙のひとり。官位は低かったが、当時有数の歌人で「古今集」にはたくさんの歌が入っている。
< 歌の意味 >
○
またひとり、仲の良かった友達が死んでしまった。
・・・・・いまはもう誰もいない。
○
今わたしをなぐさめてくれるのは、高砂の松くらいかも。
ただ、その松も昔馴染みの友というわけではない。
(話相手にはならない・・・)
・「知る人にせむ」・・・知る人:自分のことをわかってくれる友人。せむ:すればいいのか。
・「高砂の松」・・・兵庫県高砂市。長寿の松で知られる。
・「ならなくに」・・・ではないのに。ではないものを。
昔からの友人がつぎつぎに死んでいき、心の通う友人がいなくなった
孤独な老人の嘆き。
高砂というとおめでたい歌のように思うが、寂しい歌。
これは男の老いの歌ですが、そういえば女の老いの歌が前に出てきました。
「花の色は うつりにけりな いたづらに
我が身世にふる
ながめせしまに」(小野小町)