【 二十二の歌 】  

  
「 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ 」
     


         吹くからに・・・・・・・ふくからに
           秋の草木の・・・・・・・あきのくさきの
             しをるれば・・・・・・・しを(お)るれば
               むべ山風を・・・・・・・むべやまかぜを
                  嵐といふらむ・・・・・・あらしとい
ふ(う)らむ(ん)
    


    作者: 「文屋康秀」(ふんやのやすひで) 生没年不明
        
      この歌の作られた年と、康秀の年齢から見て、作者は康秀の子、
          朝康との説もある。朝康は、これから出てくる37の歌の作者。
          康秀は、ぱっとしないお役人で終わったようだが、一応六歌仙の一人。
          そんな男のエピソード。
          あの小野小町の恋人のひとりともいわれ、康秀が三河に赴任するとき、彼女をさそったそうな。
          はたして彼女はついていったのでしょうか。 多分・・・・。
     


         < 歌の意味 >
         
        「 吹き降ろしてくると、たちまち秋の草木がしおれるので、なるほど、山風を「嵐」と書き、「荒らし」というのだろうか 」
             


           この歌は、文字あそび、ことば遊びのおもしろさがあります。
          山風という文字をひとつにすると、「嵐」という文字になります。また、嵐は草木を荒らすので「あらし」。

          名歌ぞろいの、息苦しくもある百人一首の中で、こんなおあそび的な歌があるのは、うれしい気がします。
          ほっと一息つく歌です。
      



    ・ 吹くからに・・・「吹く」の主語は山風。「から」は するやいなや
    ・ むべ・・・感動詞。なるほど、の意。
    ・ 嵐といふらむ・・・秋の草木を「しをれ」させて荒らすので「嵐」という。また「山風」の文字を一字にすると「嵐」になるとする
       掛け詞。

     


       平安時代は、この歌のように、漢字を分解したりして、ことば遊びの歌を作ることが流行したようです。
       ほかにも、たとえば「古今集」のなかで
 
     「 雪降れば 木毎に花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし 」  (紀友則)というのがあります。
       梅の字を、「木毎」と分解。