【 二十一の歌 】 

  
「 今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな 」



        今来むと・・・・・・・・いまこむ(ん)と
           言ひしばかりに・・・・・いひ(い)しばかりに
             長月の・・・・・・・・・ながつきの
                有明の月を・・・・・・・ありあけのつきを
                  待ち出でつるかな・・・・まちいでつるかな

    


    作者: 「素性法師」(そせいほうし) 生没年不明
        
       12の歌「天つ風 雲のかよひ路 吹きとじよ・・・」の作者、僧正遍昭の子。俗名は良岑玄利(よしみねはるとし)。
           成人して清和天皇に仕えていたが、父親に無理やりに坊さんにさせられてしまったらしい。
      



   < 歌の意味 >
         
        「いますぐ会いにいきましょう」と、あなたがおっしゃったのでその言葉を信じて、九月の長い夜を待ち続け、とうとう
     夜が明けて有明けの月が出る頃となってしまいました。 ・・・ お恨みしています。
          


            すぐに会いに行こうといってよこしたのが、男。
            それを今か今かと待っているのは、女。
            なのに作者は、素性法師という、男。
            従って、この歌は素性法師が、女の立場でよんだもの。
            ということになります。

            素性法師が女の心持ちになって、女の怨みをすらりと詠んで います。
    


    ・ 今来むと・・・「今」は、すぐに。
    ・ 言ひしばかりに・・・「ばかり」には、だけのために
    ・ 長月 ・・・ 晩秋の九月。
    ・ 有明の月 ・・・ 夜更けに出て、明けはじめても残っている月。