【 二の歌 】

「 春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 」

 春すぎて・・・・・・・・はるすぎて
  夏来にけらし・・・・なつきにけらし 
    白妙の・・・・・・・・・しろたえの  
    衣ほすてふ・・・・ころもほすちょう
     天の香具山・・・・・あまのかぐやま










作者:持統天皇(じとうてんのう)(645〜702年)。
天智(てんじ)天皇の第二皇女。おじの天武天皇の皇后に なったが、天皇の死後即位して持統天皇となり、都を飛鳥 から藤原京(奈良県橿原(かしはら)市)に移し、日本最初 の政治都市を造った女帝といわれています。

歌の意味:(日本最古の首都、藤原京は、奈良盆地の香具(かぐ)、 耳成(みみなし)、畝傍(うねび)の大和三山にかこまれた 風光明媚な地にありました。)
○ 今日は香具山がずいぶん近くに見えますね。
● はい、春がすぎて霞もたたなくなりましたから。
○ ふもとのあたりに、白いものが見えるけど、なにかしら?
● 夏衣を干しているのでございましょう。 香具山のあたりでは、神代のころから、白妙の衣を 干すならわしがあるそうですわ。
○ では、あの香具山にも、もう夏がきたというしるしなのですね

 春から夏にかけて微妙に移り変わる季節の推移を、香具山 の衣によって感じとった歌です。 香具山は、神の宿る山と信じられ「天の香具山」と呼ばれて いました。そこで神事に仕える乙女らの真っ白な衣が干されて いるのを見て、何か新しい力のようなものを感じたのでしょう。 新緑の山と、白い衣の取り合わせが、いかにも初夏らしくて さわやかな歌です

もともと、この歌は「万葉集」巻一に出ている 「春すぎて 夏来たるらし 白妙の 衣ほしたり 天の香久山」 が原歌といわれています。 そういえば、この原歌の方が、頭に残っていて、いいように思います。 なぜ変えたのでしょうか。

・ 夏来にけらし・・「けるらし」がつづまった形。来てしまったらしい。
・ 衣ほすてふ・・・「てふ」は、「と言う」がつづまった形。 衣を干す習慣のある・・・という意味。

☆ 政治・行政の中心都市としての首都は、藤原京以降、平城京、平安京、 そして鎌倉幕府、江戸幕府へと移ってきました。 現在、その首都機能の移転が検討されています。 しかし、移転候補地を選定する審議会が、背後で政治家たちがうごめ いて、なかなか候補地を絞り切れないようです。 藤原京以降の、遷都の歴史に静かに思いをはせる、心の余裕がほしい ものです。