【 十六の歌 】
「 たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む 」
たち別れ・・・・・・・たちわかれ
いなばの山の・・・・・いなばのやまの
峰に生ふる・・・・・・・みねにおうる
まつとし聞かば・・・・・・まつとしきかば
いま帰り来む・・・・・・・いまかえりこむ
作者:
中納言行平(ちゅうなごんいきひら)818〜893年
在原行平(ありわらのゆきひら)のこと。
美男で有名な、在原業平(ありわらのなりひら)の異母兄。
風雅の才とともに、政治的手腕もあり、中納言という政界の トップクラスに上る。
文徳(もんとく)天皇の時に、何かの事件に巻き込まれ、自ら 身を引いて、須磨にこもった
とされる。
< 歌の意味 >
行平は、38歳のとき因幡国(鳥取県)の地方官(因幡守) に任ぜられました。
任地に旅立つに際しての、送別の宴で詠んだ挨拶の歌
○ 私は、皆さんと別れ、いよいよ因幡の国にまいります。
因幡の国には、松の名所 稲羽山がありますが、そこの「松」で
は ありませんが、皆さんが私の帰りを「待つ」とおっしゃるならば、すぐにも帰ってまいりましょう。
・ たち別れ・・・「たち」は接頭語で、それ自体とくに意味がない。
・ いなば・・・「往なば」と「稲羽」の掛詞。
上から、「たち別れ往なば」(別れて去ってしまったならば・・)
と続き、下へは、「稲羽の山の・・・」と続く。
・
まつとし聞かば・・・「松」と「待つ」の掛詞。