【 十四の歌 】

 「 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに 」


   陸奥の・・・・・・・みちのくの

   しのぶもぢずり・・・・しのぶもじずり

    誰ゆゑに・・・・・・・・たれゆえに

     乱れそめにし・・・・・・・みだれそめにし

      われならなくに・・・・・・・われならなくに




作者: 河原左大臣(かわらのさだいじん):822〜895 源 融(みなもとのとおる)のこと。 嵯峨天皇の皇子だったが、臣籍に下って源姓となる。 やり手だったとみえて、順調に累進し、左大臣となる。
同時に莫大な富も貯えて、鴨川近くに河原院という豪邸を造り それが評判となり、「河原左大臣」と呼ばれるようになったと いわれている。 宇治の平等院は、彼の別荘とのこと。


< 歌の意味 > −−身分が高く、頭も良くやり手の河原左大臣には、何人もの 恋人がいました。

○ みちのくに、「しのぶもじずり」という染め物があるが、その 乱れ模様のように、私の心は乱れている。 こんなふうになったのは、誰のせいだろう。 私のせいではなく、みんなあなたのせいですよ。・・・・

・ 「しのぶもじずり」・・・「もじずり」とは、よじれ模様のすり衣。 「しのぶ」は、その産地が福島県信夫郡からという説と、 しのぶ草の葉で染めたからという説がある。
・ 乱れそめにし ・・・ 正常の心が、恋ゆえに乱れはじめてしまった。
・ われならなくに ・・・ 私自身のせいではないのに(あなたのせい) の意。

<この歌の 恋の相手は誰なのでしょうか・・・> このへんの事情は、どうもはっきりしません。 そこで、勝手に想像してみました。
1.高貴で、年上の女性
2.高貴な人妻
3.うぶで純真な「娘」
4.まだ恋の意味もよくわからない美少女、幼女

家柄も良く、お金もあって身分が高い申し分のない男の心を 乱す女性とは・・・・ ごく常識的に考えると、1.か、2.かと思いますが、意外と このような名誉も富もある男性は、3、4、 の趣味もあるかも 知れません。 源氏物語の光源氏は、若紫という幼女を強引に連れ去って理想の 女性に育て、自分の妻としました。それがのちの「紫の上」です。 皆さんは、どうお考えでしょうか。