【 十三の歌 】

  「 筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる 」


  筑波嶺の・・・・・・・つくばねの

   峰より落つる・・・・・みねよりおつる

    男女川・・・・・・・・みなのがは

     恋ぞつもりて・・・・・・こひぞつもりて

      淵となりぬる・・・・・・ふちとなりぬる





作者: 陽成院(ようぜいいん)868−949 清和天皇の皇子。母は在原業平との恋愛関係で知られた、 藤原高子姫(たかいこ)。 9歳の時に父帝が退位し、即位。しかし、脳を病んで乱行が 絶えず、17歳で皇位を追われる。 この歌は、陽成院の妃となった綏子(すいし)内親王に捧げ られた恋歌です。


< 歌の意味 >
−陽成さんは、幼い頃から年上のある女性に好意をもっていました。 その女性は、父帝のいとこにあたる光孝天皇の皇女 綏子内親王 です。 成長するにつれ、それが恋心に変っていきました。

○ 「ふう・・・」 私には、あのお方が必要だ。 昼も夜も、あなたを思いつづけている。 この気持ちを伝えたい。 「 筑波嶺の 〜〜 ・・・・・ 筑波山の峰から流れ落ちる小さな流れも、積もり積もれば 男女川となるのです。 私の気持ちも、ますます高まって、いつしか深い恋の淵と なりました。

・ 恋する者の心が、川の流れのように、しだいにつのっていく 気持ちが伝わってきます。 初々しい恋歌です。
・ 筑波山は、男体女体と峰が分かれていて、そこから発する川 だから、男女川というらしい。
・ そういえば、昔「男女ノ川」という大相撲の力士がいました。 出身が筑波なのでしょうか。