寺原八幡神社の梵鐘
 寺原八幡神社は山県郡北広島町寺原にあり、江戸時代寺原村の氏神であった。この神社の舞殿に吊り下げられている梵鐘の銘文をみていくと、天正2年(1574)に山県郡の某寺の什物として鋳造され、文録・慶長の役で武器鋳造のために廿日市の鋳物師のもとに取り集められたものとみられる。
 集められた梵鐘のうちで武器に鋳替えられず残存していた梵鐘を、寛永16年(1639)廿日市の鋳物師山田広国が銘文を銘切りし、当寺(寺名不明)の中興住持栄順比丘が什物としたのである。以降川尻浦(呉市川尻町)光明寺の什物となり、のちに寺原八幡神社に移り現在に至っている。
 広国の鋳造作品は2ケ所が判明しておりこのうち善徳寺の梵鐘(広島市安佐北区)が現存している。また、ほかに1ケ所の銘切りをしていたことが判明しており、寺原八幡神社のものとよく似た銘切りをしているのである。なお、小稿ではこれら流転の顛末を推定し詳述しているので参照して下さい。
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