<や・ら・わ>
矢口敦子 矢野龍王 山口雅也 山田風太郎 山田正紀 山本周五郎 湯川薫 夢枕獏 横溝正史 横山秀夫 吉村昭 吉村達也 米澤穂信 連城三紀彦 若島正 若竹七海 和田誠

矢口敦子 家族の行方 矩形の密室
『家族の行方』

データ:

 発行:東京創元社(創元クライム・クラブ)
 ISBN:4-488-01267-1
kamanoeさんの感想:
 これなかなか良いです。全然知らない作家さんだったけど。
 受賞は逃したものの、第五回鮎川哲也賞の最終候補になった作品だそうです。結局「何がどうなったのか」起こった事の真相というものは、はっきりしないんだけど。
 一組の親子が、穏やかな、そして微妙な緊張感のある関係に落ち着くまでを描いていて、この親子のこれからが楽しみな、そんな気持ちにさせる本です。

03.12.31
『矩形の密室』

データ:

 発行年   1998.5
 発行所   徳間書店(ノベルズ)
 ISBN  4-19-850419-9
あっちゃんの感想:
 本書も以前から気になっていた作品だった。読んでみて思ったのは「惜しいな」ということだった。一種のメタミステリーだが後半失速感があった。どうも結末が落ち着かないのだ。棒高跳び、バーを超えたのはいいが着地に失敗してずっこけたような感じがするのだ。
 そこら辺がうまくいってたら傑作だっただろう。

06.1.4

矢野龍王
『極限推理コロシアム』

データ:

発行年   2004.4
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-182366-3
備考    第30回メフィスト賞受賞作
あっちゃんの感想:
 そんなに悪くはない。しかし肝心な14人が拉致され監禁された二つの建物の謎が最後まで明かされないというのと結局は暗号解読がメインになってしまった点が悔やまれる。筆力はあるしミステリーの造詣もあるみたいなのでもっと高みを目指してほしい。

06.1.4

山口雅也 奇遇 キッド・ピストルズの冒涜
『奇遇』

データ:

 出版社:講談社
 価格:2400円
yobataさんの感想:
 あらすじなんて書きようが無いので省略。
 感想なんて書きようがないので省略。
 まああらすじはともかく、やっぱり感想はちょっとだけ。
 「偶然」をテーマにしてミステリを書こうとしたみたいだが、ちょっと消化不良気味。あらゆるところに「サイコロ」が登場して、偶然を強調しているが、それが鬱陶しく感じられて却って不自然。密室トリックに至っては麻耶雄嵩「翼ある闇」の方がまだ信じられるくらいで、あっけにとられた。可能性があるものは起こりうるっていわれてもねえ。
 かなり長い作品なんだけど、奇偶教団の筮一とか、シルフィーとか、「中途半端な重要人物」と「解決の無い事件」がいっぱい。もっと書きようがあった気がします。
 あえて云うならば「山口雅也版流水小説」か?

02.11.6

あっちゃんのres:
 かなりインパクトのある装丁の本でそれだけでもミステリー魂を揺さぶられています。山口雅也版流水小説」ならば僕ならばOKかな?

02.11.7

yobataさんのres:
 私自身は、偶然と思われていた事件が、実は誰かの意思によって...という展開を期待していたのですが、ちょっと違ったので肩透かしだったなあ、という感じです。山口雅也自身が、この作品で何を書きたかったのかも私にはよくわからなかった点もマイナスでした。「生ける屍の死」以来ともいえる書下ろし長編で、期待していたんですけどね。他の方の感想もぜひ聞いてみたい作品ではありますね。値の張る本なので、買うのは勧めませんが(^^)

02.11.12
『キッド・ピストルズの冒涜』

データ:

 発行年  1997.2
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN 4-488-41602-0
あっちゃんの感想:
 このシリーズ何となく敬遠していたが読んでみると何とミステリーマインドに溢れていることか、しかもガツンとくる批判精神、第2話「カバは忘れない」は特によかった。

04.6.26

山田風太郎 甲賀忍法帖 幻灯辻馬車 眼中の悪魔 忍法忠臣蔵 十三角関係 厨子家の悪霊 伊賀忍法帖 夜よりほかに聴くものなし 室町お伽草紙 忍法八犬伝
『甲賀忍法帖』

データ:

 発行年   1998.12初刷り
 発行所   講談社(文庫)
 初出    1959.11光文社刊(単行本)
 シリーズ  山田風太郎忍法帖 1
 ISBN  4-06-263944-0
あっちゃんの感想:
 ようやく読みはじめることになりました。この講談社文庫の山田風太郎忍法帖シリーズでは以前角川文庫で「魔界転生」を読んだだけで後は全くの未読でした。ただ周囲から「文句なしにおもしろい」という噂が入ってきていて
読みたいなあと思っていたわけです。日曜日にWOWOWで「Xメン」放映していたんですが忍法帖に出てくる忍者の面々と「Xメン」のミュータントがダブって感じられました。本書に出てくる忍者はもはや人間を超えています。まさにミュータント、特撮番組の好きな僕にはこの作品の波長は合っていました。この分量じゃあもったいないなと思えるぐらいのキャラクターでした。そしてほろりとさせるドラマもよかった。

02.2.28

『幻灯辻馬車』(上・下)

データ:

 発行年    1997.6初刷
 発行所    筑摩書房(文庫)
 シリーズ名  山田風太郎明治小説全集 3,4
 収録作品 「幻灯辻馬車」、「明治忠臣蔵」、「天衣無縫」、「絞首刑第一番」

あっちゃんの感想:
 読む前は長いなあと思ったが読み始めるとおもしろくてすらすら読
んでいけた。光の部分が強調される明治維新だがこの作品集、いずれもそんなイメージをせせら笑っている。特に表題作は長編だけに余すことなく明治史の様々な側面を見せてくれる。そして最後の方で明かされるミステリー的な手法、うなってしまった。陰惨なシーンもあるが全体的にはユーモアがあってテーマやそういうシーンの暗さを和らげている。短編3作もそれぞれ味わいがあってこのシリーズ読んでいくのが楽しみである。

02.9.12
『眼中の悪魔』

データ:

 発行年   2001.3初刷
 発行所   光文社(文庫)
 ISBN  4-334-73121-x
 シリーズ  山田風太郎ミステリー傑作選 1
あっちゃんの感想:

山田風太郎の短編集はハルキ文庫で揃えていましたが「黒衣の聖母」がなかなか見つからなくてより多くの作品を網羅している光文社文庫の本シリーズで揃えていくことにしました。短く収録作についてコメントを
「眼中の悪魔」、「虚像淫楽」・・・ネタは木々高太郎に似ているなと思いました。だけど後味が全然違いますね。山田は後味悪いです。でもそれが山田の味なんでしょうね。
「厨子家の悪霊」・・・読むのは2度めですが推理が二転三転していくおもしろさがありました。
 「笛を吹く殺人」・・・作中作の一種でしょうか。効果的でした。
 「死者の呼び声」・・・複雑な人間関係、そして入れ子状態の構造、おもしろかったです。
 「墓堀人」・・・怖い話しでした。
 「恋罪」・・・作者が絡むというのがおもしろかった。
 「黄色い下宿人」・・・噂のホームズのパステーシュ作品、こういう話も書いたんですね。
 「司祭館の殺人」・・・トリックがちょっとわかりにくかったですけどストーリーそのものはよかったです。
 「誰にも出来る殺人」・・・構成的にもミステリーとしても上出来の連作短編でした。

02.10.22
『忍法忠臣蔵』

データ:

 発行年  1998.12初刷り
 発行所  講談社(文庫)
 ISBN 4-06-264503-3
 シリーズ 山田風太郎忍法帖 2
あっちゃんの感想:
主人公無明綱太郎の造形がいいですね。また能登組十人衆、能登九の一6人衆、赤穂浪士の面々と登場人物一人一人の描き方がとてもいい。物語自体も忍法も荒唐無稽だが人間の描き方がすばらしいので変なリアリティさえ感じてしまう。不思議な作品だった。

03.1.26
『十三角関係』

データ:

発行年   2001.3初刷
発行所   光文社(文庫)
シリーズ  山田風太郎ミステリー傑作選 2
ISBN  4-334-73122-8
あっちゃんの感想:
 探偵役の荊木歓喜がユニークな設定だった。でもとても好感が持てる。
どれもが良くできた出来だったがやはり圧巻は表題作だろう。陰惨な出だしとそれぞれの証言、出てくる新事実、荊木の推理、読み応えがあった。

03.9.16
『厨子家の悪霊』
くれい爺さんの感想:
山田風太郎の珍しい本格もの。
「厨子家の悪霊」「殺人喜劇MW」「旅の獅子舞」「天誅」「眼中の悪魔」「虚像淫楽」「死者の呼び声」の7編。
短編ということでトリックの骨格が剥き出しのような印象も受けるが、これは短編の短所であもあるが長所でもある。
推理が二転三転する「厨子家の悪霊」が面白い。
「殺人喜劇MW」はパロディ的で、著者も楽しんでいる。
「天誅」の奇想は山田風太郎の面目躍如的な発想で、一時期の島田荘司に通ずるものがある。
「眼中の悪魔」は本格として非常に優れていて、最後の結論に無理がない。
「虚像淫楽」は心理という謎を解いていく過程が面白い。
「死者の呼び声」は作中の手紙、手紙の中の手紙といった構成の複雑さに面白みがある。
一読の価値有り。

03.9.18
『伊賀忍法帖』

データ:

発行年   1999.1初刷
ISBN  4-06-263988-2
シリーズ  山田風太郎忍法帖 3
あっちゃんの感想:
 主人公が普通の忍者(?)なので敵側も少し弱い設定だがそれでも充分楽しめた。特に主人公笛吹城太郎と右京太夫の関係は何と澪いいようない哀しさがある。ロマンティズム溢れるしかも凄惨な作品だった。

04.3.20
『夜よりほかに聴くものなし』

データ:

 発行年  2000.5
 発行所  光文社(文庫)
 ISBN 4-334-73157-0
 シリーズ 山田風太郎ミステリー傑作選 8(サスペンス篇)
あっちゃんの感想:
 参りました、山田風太郎は只者じゃありません。13作全て傑作ですがやはり第一は表題作でしょう。10話全部最後が同じセリフ、しかしそのセリフにいたる物語の幅はすごい。

04.8.6
『室町お伽草紙』

データ:

発行年   1994.9
初刊    1991.7
発行所   新潮社(文庫)
あっちゃんの感想:
「忍法帖」ものほどのハテレンさはないが設定も人物描写も展開も
楽しくおもしろかった。玉藻が使う妖術何かユーモラスだし結構陰
惨な話ではあるが妙に明るいしよかった。

04.12.5
『忍法八犬伝』

データ:

 発行年    1999.2
 発行所    講談社(文庫)
 ISBN   4-06-254513-0
 シリーズ名  山田風太郎忍法帖 4
あっちゃんの感想:
 八犬士のキャラがいいですね。奇怪な忍法合戦も相変わらずの楽しさですがこれに主人公たちののドラマというか立ち振る舞いが花を添えていました。敵の女忍者8人衆もなかなかのものでした。

05.6.19

山田正紀 SAKURA 六方面喪失課 螺旋の月 ミステリ・オペラ 長靴をはいた犬 機神兵団7 ブラックスワン 機神兵団 8 金魚の眼が光る
『SAKURA 六方面喪失課』

データ:
 出版社:徳間書店(トクマノベルス)
 価 格:¥800
 出版日:2000/01/31初刷
(EGGさんの評価:87点)

内容:
 警視庁六方面管区 綾瀬署にある失踪課の面々は、どうしようもないクズばかり。
ひねくれ者や役立たず、警察のお荷物のような男たちに、ついたあだ名は失踪課ならぬ「喪失課」。
そんな彼らが偶然に出会った小さな事件の数々は、実は大きな陰謀につながっていたのだ。
ある夜、突然町が消滅!?
裏で暗躍する謎の男「SAKURA」の目的は、いったい何なのか。
国中がバブルに浮かれていた一九九〇年日本の、ほんとは起こっていたかもしれない物語。
山田正紀が描く、洒落たスタイルのネオ・エンタテイメント。
(カバー折り返しより)
EGGさんの感想:
 とっても好きです、こういうの。
山田正紀は『ミステリ・オペラ』のような、幻想文学っぽい小説より、小味なミステリーのほうが似合う。この人の書くSF冒険小説のどんな部分と、このタイプの小説が「同じ感じ」に思えてしまうのか謎でしたが、ともかく(あ、山田正紀が帰ってきた)と確信してしまったのです。
 それぞれの短編のミステリ的アイディアも、うまく物語と溶け込んでいて、私のミステリ趣味と山田正紀の感覚がはじめて(^^;一致したという、誠にめでたい、記念すべき一冊となりました。

 ところで、プロローグの右ページにこんな文章が載っていまして、これがまた格好いい。

>    この物語は虚構である。
>    平たく言えばデタラメである。
>    だが、この物語に登場する男たちが、
>    しっかり、その手に
>    握りしめている虎の子″だけは
>    虚構ではない。
>    その虎の子″を正義″という。

いいな、いいなぁ。
このフレーズについては、あるTVドラマの引用であると、後書きで触れています。残念ながら「虎の子作戦」などという番組は記憶にありませんが、山田氏の言うB級の潔さ、というのは私にもいろいろ思い当たる節があり、(そうか、B級つながりだったのね)というのが、今回の結論でした。

02.4.10
『螺旋の月』(上・下)

データ:

 発行年   1998.12初刷り
 発行所   角川春樹事務所(文庫)
 ISBN   上:4-89456-480-7
        下:4-89456-481-5
 初出    1989 早川書房刊「宝石泥棒U」改題
あっちゃんの感想:
 評価     B−(マイナス)

 この作品の前作に当たる「宝石泥棒」は自分にとっては山田正紀SFのベスト5にはいるほどの傑作でした。さて本書を読むに当たって「宝石泥棒」を読み返すかどうか迷いました。「宝石泥棒」を読んだのは10年以上も前ですし読み返したほうが展開が分かりやすくなるには違いありません。しかし僕は読み返しませんでした。結果的にはそれでよかったと思っています。もしこの作品が「宝石泥棒」の続編として書かれていなかったらもっとおもしかっただろうと思います。作品としては完結していた「宝石泥棒」の続きを書いてしまった時点で本書は失敗作といわざるを得ません。
結局上・下本という分量がありながらジローの物語としても緒方次郎の物語としても中途半端になってしまったのです。ジローvs緒方次郎の決着はどうなったのかよく分かりません。「あとがき」で作者自身触れていますが「サイバーバンク」の台頭という時代で山田正紀のSF作家としての迷いの時代だったのでしょう。その迷いを突破するために「宝石泥棒」の設定を借りたのでしょうが・・・残念です。

 ここからは「螺旋の月」の感想ではありません。解説にも書かれてありますが本書以降に山田正紀はいくつかのSFシリーズを書いています。この中で僕が読んでいるのは「機神兵団」だけです。(それも途中まで)「僕のミステリー遍歴」でも書きましたが本書の単行本刊行された1989年は僕がSFマガジンの購読をやめSFから遠ざかって行った頃です。山田正紀は現在はミステリー作家として活躍していますが(今日の朝刊に山田正紀が第2回本格ミステリー大賞を受賞という記事が載っていました。)一方では「このミス’02」ではSF復帰宣言をしていましたし僕も山田正紀の未読SFを読んでいく事にしましょう。まずは「機神兵団」を読み終えることから・・・

02.5.18
『ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件』

データ:

発行日: 2001年4月30日 初版発行
著 者:山田正紀
発行所:株式会社 早川書房

くれい爺さんの感想:
 「ワトソン君、ぼくが自分の評価を過信したり、作品に対して正当な骨折りを惜しんだりして、目につくようなことがあったら、ぼくの耳もとへ『ミステリ・オペラ』とささやいてくれたまえ」と言うべきか、 「ワトソン君、ぼくが読む価値もない作品に金と時間を無駄に費やそうとしていたなら、ぼくの耳もとへ『ミステリ・オペラ』とささやいて
くれたまえ」と言うべきか。
 広げた大風呂敷をただ畳んだだけ、というのが印象かな。
 山田正紀は凄い数の謎を提示して、それなりにその謎に解答を与えているのだけど、それだけなんですよねえ。
 それに、読みにくい。
 現在と過去、作中作にその作者の手記、主人公の記録などが入り乱れて、流れを把握するのに一苦労。
 これを高評価はできないんですがねえ。

02.6.23

『長靴をはいた犬』

データ:

 著者名  山田正紀
 発行年  1998.9初刷り
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182039-7
 シリーズ 神性探偵・佐伯神一郎
あっちゃんの感想:
 評価が難しい作品です。ミステリーとしては「神曲法廷」よりも出来がいいと思います。犬男伝説に関しては僕が民俗学の方で興味を持っている「異人殺し」などともリンクしていておもしろく思いました。ただこの作品、大きな問題があります。というか僕がキリスト者であるからこそ引っかかった点があります。神父夫妻などという初歩的なミス(30年以上のベテラン作家である山田正紀がこんなミスを犯すこと自体はそれはそれで問題ですが・・・)はさておき物語の核心に関係ある部分で大きな事実誤認があります。キリスト教には一切のタブーは存在しません。自殺もタブーではありません。ですから読んだ人にはお分かりになると思いますが物語の根底から崩れてしまうものです。詳しいことは書きませんがそういった意味ではもう少し生身のキリスト教に触れてから書けとあえて厳しく言っておきましょう。
 それでもなおかつこの作品はおもしろかったです。これもまた正直に書いておきましょう。

02.7.18
『機神兵団7』

データ:

 発行年  2000.6初刷り(ノベルズ:中公ノベルズ 1993.3)
 発行所  角川春樹事務所(文庫)
 ISBN 4-89456-713-X
あっちゃんの感想:
久々の「機神兵団」、そしてターニングポイントの第7巻、ここまでのストーリーはあくまでもロボットもの。ところが次からの展開はいかにも山田らしいというか楽しみです。

03.5.19
『ブラックスワン』

データ:

 発行年  1999.3初刷(定本:1992刊講談社文庫)
 発行所  角川春樹事務所(文庫)
 ISBN 4-89456-506-4
あっちゃんの感想:
 真相解明の直前までメインのトリックがわからなかった。ほとんどの部分が手記になっていて底を注意深く読め場もっと早く分かっていたかもしれない。山田正紀のミステリーは長ければ長いほど釈然としない箇所があるのだが本作品はそんなこともなくよくまとまっていた。

03.9.16
『機神兵団 8』

データ:
 発行年  1993.10
 発行所  中央公論社
 ISBN 4-12-500254-1
あっちゃんの感想:
 ちょっと前作を読んでから間が開いてしまって忘れていた部分もありますが・・・全10巻のうち第8巻になってようやく起承転結のに入ったと言う感じだ。ここから後2巻で怒涛のクライマックスを迎えるんだろうな、楽しみです。

04.8.6
『金魚の眼が光る』

データ:

発行年  2003.4
単行本  1990.9
発行所  徳間書店(文庫)
ISBN 4-19-891876-7
あっちゃんの感想:
 前作「人喰いの時代」を読んだのは随分前のことなので探偵呪師霊太郎についての記憶はほとんどない。そんな状態で読んだわけだがよかったです。見立て殺人というのは絵になりますし限定された関係者の中から犯人を推理していくと言うのもよかったです。飄々とした感じの呪師霊太郎も
好感が持てました。

04.11.3

山本周五郎 おごそかな渇き 日日平安
『おごそかな渇き』

データ:

 出版社:新潮社(新潮文庫)
 収録作品:「蕭々十三年」「紅梅月毛」「野分」「雨あがる」「かあちゃん」「将監さまの細道」「鶴はかえりぬ」「あだこ」「もののけ」「おごそかな渇き」
くれい爺さんの感想:
 この本を手にしたのは「雨あがる」が映画化されたから。
 原作もよいが、原作を読むとあの映画の良さがさらにわかる。
 原作は短編なだけに、あいそのなさ(読者に対しての)が幾分感じられるかな。
 映画はいたれりつくせりの傑作でしょう。

 「鶴はかえりぬ」や「あだこ」のさわやかさがすばらしい。

 山本周五郎の視線はあくまで低い。
 庶民の、それも悲しいほどに貧しく、幸薄い人々の中に輝く、本当に美しいものを描き出す。
 このところテレビでも「柳橋物語」や「さぶ」といった作品がドラマ化されているのも、そういうところがいつまでも愛されているのでしょうね。
 解説に取り上げられている著者の言葉、
「私の書くものはよく『古風な義理人情』といわれる。(略)私は自分の見たもの、現実に感じることのできるもの以外は(殆ど)書かないし、英雄、豪傑、権力者の類にはまったく関心がない。人間の人間らしさ、人間同士の共感といったものを、満足やよろこびのなかよりも、貧困や病苦や、失意や絶望のなかに、より強く私は感じることができる」
に言い尽くされていよう。

 「『野分』は軍部に阿諛追従する当時の文壇風潮に一矢を放った」とある。
 たぶん菊池寛らのことでしょう。
 そういう彼の生きかたが各賞の辞退につながっているのかもしれない。

 話は変わるが、山本周五郎は「直木賞」も辞退しているのだが、いま直木三十五の作品ってどれくらい読まれているのでしょうね。
 はっきりいって小生は直木三十五の作品を1行も読んでいない。
 もっとも菊池寛の作品も読んだことがないのだが。
 直木賞作家っていうのは直木三十五の作品くらいは読んでいるのだろうか。
 小生はそういう賞というのをほとんど信用しないのだが、このところの辻仁成バッシングやペログリ知事行状などを聞くと芥川賞作家というのはどんなろくでもない人間か、奇人変人の類かと思わざるをえないのだが。
 もちろんそういう思いというのは芥川賞作品なんて「面白くない作品」の代名詞というような“食わず嫌い”的な考えですが。
 山本周五郎にも「山本周五郎賞」というのがあるのだが、小生はその賞はいいというのではなく、むしろ賞など似合わないんじゃないかと思うのである。
 周五郎作品というのはただ読み継いでいくだけ、小生もこれからも読んでいきたいと思っている。

02.9.8

あっちゃんのres:
 山本周五郎の作品はほとんど読んでいませんね。直木三十五ならなおさらです。僕も一行も読んでいません。直木三十五はまさに直木賞で名前を残したといえるのかな。最近、ミステリー作家が直木賞を取っていますが僕はそのこと自体にはあまり意義は感じません。ミステリーとしてのおもしろさと直木賞の基準は微妙に違っていると思うからです。最もどんな賞でもそれをを取っていようがいまいがおもしろいものはおもしろいしつまらないものはつまらないですけどね。

02.9.9
『日日平安』
くれい爺さんの感想:
 しっとりとした人情、ぬくもりを感じさせるヒューマニズムと、周五郎の魅力を十二分に味わえる短編集。
庶民やどちらかというと下層の人々を描いて秀逸な著者の作品は、小生としては少々暗いかなという印象も持っていたのだが、“滑稽もの”といわれる分野に属する作品もあって、人情、ヒューマニズムをじわっと感じさせてくれます。

03.8.11

湯川薫
『Dの虚像』

データ:
 出版社:角川書店(カドカワエンタテイメント)
 出版日:00.12.25
 価 格:\1100
  ISBN :4-04-788154-6

あらすじ:
 黄昏時の靖国神社――女の叫び声が闇を引き裂いた。巨大な男が少女を連れ去ろうとしている。次の瞬間、二人は時空の裂け目に落ちたかのごとく、この世から忽然と姿を消した……。道行く人々の目前で繰り広げられた誘拐事件。捜査に乗り出したのは、パソコンを駆使するサイバー探偵・橘三四郎。三四郎は少女の父親宛に送られてきた、DNA暗号を用いて書かれた脅迫文を見事に解き、少女を無事救出した。
 しかしそれは、プロローグにすぎなかった。昆虫学者である少女の父親が密室で串刺しにされるという異様な死体が発見されたのだ。そして、事件の鍵を握る「D」とは?
(表紙折り返しより)
kikuchiさんの感想:
 物理学の博士号をもつ筆者が生物学に挑戦した一作、なのですが、この人は生物学については(その博覧強記ぶりはともかくとして)、いまいちかな〜、と思いました。だって、秋葉村に秘められた驚愕の秘密については、いくらなんでも無理筋でしょう。生物の進化というのは、そんな風には絶対いかないと思います。太古の生命の発生当時ならともかく、現代でそれをやっちゃあ……。あと、せっかくジェイ・グールドの名前を出すなら、IQの話なんかより進化論の話をしないでどうする!
 この人も井沢元彦同様、フィクションよりノンフィクションの方がおもしろいというのはどうなんでしょう。

01.1.15

夢枕獏 キマイラ昇月変 涅槃の王3 陰陽師 陰陽師 飛天ノ章 涅槃の王4 新・魔獣狩り 餓狼伝13 黒塚

『キマイラ昇月変』

データ:
 著者名  夢枕獏
 発行年  2002.3初刷
 発行所  朝日ソノラマ(文庫)
 ISBN 4-257-76964-5
 シリーズ キマイラ・吼 16

あっちゃんの感想:
 このシリーズを読み始めてはや20年、まだまだ終わらない。この作品はそれだけの分量を必要とするのだ。物語には落下地点というか到着地点というものがあると思うしそれは大体予想できるしそういう楽しみもある。
だがこのシリーズだけはどこに向かおうとしているのか、いまだに曖昧もこととしている、未来かなた、進化の果てに向かっているのだろうか。

02.8.28
『涅槃の王 3』

データ:
 発行年   2000.9初刷り(ノベルズ1992.3,1994.4)
 発行所   祥伝社(文庫)
 ISBN  4-396-32796-x
あっちゃんの感想:
 前巻を読んだのは約1年前、読み始めの頃はあらすじを思い出せずにとまどっていましたが読んでいくうちにどんどん引き込まれていきました。776ページの分量を全くだれることなく読めたのはまさしく夢枕の力量です。早く最後の第4巻を読みたいです。

02.10.22
『陰陽師』

データ:

 発行年  1991.2初刷り(単行本:1988.8)
 発行所  文藝春秋(文庫)
 ISBN 4-19-752801-0
あっちゃんの感想:
 読むのは2回目です。最初読んだ時にはそんなにおもしろいとは感じませんでした。今回読み返すとなかなかよかったです。安陪清明と源博雅というコンビもいいし悲しみを帯びた話が多いのもよかった。「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」と「鬼のみちゆき」が印象的でした。

03.4.26

『陰陽師 飛天ノ巻』

データ:

 著者名  夢枕獏
 発行年  1998.12初刷り
 発行所  文藝春秋(文庫)
 ISBN 4-16-752804-5

あっちゃんの感想:
 いいですね。絶妙なコンビ、清明と博雅、恐い話、悲しい話そして何となくユーモラスな話、このシリーズ癖になりますね。悲しい話の筆頭は「鬼小町」でしょう。鬼となった女性の悲しみがよく出ていました。ユーモラスと言えば「露と答えて」でしょうか。とにかく楽しめました。

03.5.31
『涅槃の王4』

データ:

 発行年  2000.12初刷(ノベルズ:1996)
 発行所  祥伝社(文庫)
 ISBN 4-396-32824-9
あっちゃんの感想:
まさに夢枕にしか描けない若い日の仏陀の物語、そのクライマックスの見事なことよ。多くの登場人物がまさにこの瞬間に集結しラストにになだれ込む、いいですねえ。

03.12.15
『新・魔獣狩り』

データ:

 発行年    2003.5初刷
 発行所    祥伝社(ノベルズ)
 ISBN   4-396-20762-X
あっちゃんの感想:
 物語はいよいよ佳境に入ってきていますね。どんどん謎が解明されていくのでしょうね。その最終巻を楽しみに待ち続けます。

04.5.8
『餓狼伝13』

データ:

 発行年  2003.3初刷
 発行所  双葉社(ノベルズ)
 ISBN 4-575-00724-2
あっちゃんの感想:
 冒頭から痛い描写が続き物語の時制も視点も変化しながら物語は読むものをひきつけていく。「強さ」を追求する男たちの熱い物語、どこまで行くのであろうか。

04.5.8
『黒塚』

データ:

発行年   2003.2
単行本   2000.8
発行所   集英社(文庫)
ISBN  4-08-747541-7
あっちゃんの感想:
 何ともいえない作品だった。また普通に考えればクロウが主人公だがラストになってある人物がとてもいい役で出てきて印象深い。

05.1.24

横溝正史
『迷路の花嫁』

データ:

 発行年  1997.6初刷り
 発行所  春陽堂書店(文庫)
 ISBN 4-394-39522-4
あっちゃんのの感想:
 薬子殺しの犯人はアンフェアっぽい気はするが金田一を脇役にして一種の義賊物語仕立てにした展開はなかなかよかった。横溝の代表作はほとんど読んでしまったがなお未読の仲には本書のようなユニークな作品もまだまだあるんだろうな。

03.7.2

横山秀夫 半落ち 第三の時効 動機
『半落ち』

データ:

 出版社:講談社
 価 格: 1700円

内容紹介(講談社BOOK倶楽部より)
自首。証拠充分。
だが被疑者は頑なに何かを隠している。

実直な警官が病苦の妻を扼殺。捜査官、検察官、裁判官…6人の男たちは事件の“余白”に迫っていった。
警察小説の旗手、初の長篇

「人間50年」――
請われて妻を殺した警察官は、死を覚悟していた。
全面的に容疑を認めているが、犯行後2日間の空白については口を割らない「半落ち」状態。
男が命より大切に守ろうとするものとは何なのか。
感涙の犯罪ミステリー。
yobataさんの感想:
 「動機」で第53回日本推理作家協会賞短篇賞を受賞した著者の、初めての長編です。長編とは云っても、妻殺しの警察官の犯行後2日間の空白を軸に、章ごとに刑事、検事、記者、弁護士、判事、刑務官と主人公を変え、それぞれが短編としても読める連作長編的な作品に仕上がっています。
 空白の2日間については勘の良い読者には大方予測がつくと思いますが、「人間50年」なぜタイムリミットを設けて生き続けるのか、その理由に思わず涙することでしょう。

02.9.26
くれい爺さんの感想:
 一言でいえば面白い。
小生は各賞とともに“このミス”も“文春ミステリーベスト”も信用していないが、双方で1位というのは、その面白さの評価なのだろう。
さて、直木賞審査委員の指摘だが、一般の読者にはそれは分からないだろう。
小生も知らなかった。
が、そのことがこのミステリーを根幹から否定してしまうほどのこととは思えない。
一般の読者が知らなかったことは、作中の人物も知らないということもあるわけで。(笑)
むしろ、受刑者の人権云々が叫ばれるいま、実際の社会のほうがおかしいような気もするのだが。
作品のほうはたしかに面白いのだが、少々キャラが濃すぎるところが小生の好みからちょっとはずれるかな。

03.6.1
『第三の時効』

データ:

 出版社:集英社
 価格:1700円
 
内容紹介:集英社のHPより
 F県警捜査第一課が遭遇する難事件の数数。あやふやなアリバイこそ
が実は鉄壁のアリバイになりうるという、容疑者の仕掛けた狡猾な罠に
挑む「沈黙のアリバイ」等、警察小説の白眉!

収録作品:
 沈黙のアリバイ、第三の時効、囚人のジレンマ、密室の抜け穴、ペルソナの微笑、モノクロームの反転
yobataさんの感想:
 今年7冊の刊行が予定されているという横山秀夫の短編集。雑誌に掲載された物をまとめた作品集ですが、F県警捜査第一課の面々の活動を連作で描いています。どの作品も60ページそこそこの長さながら、無駄を削り落とした文章で、説明的にならず、濃密な物語が紡ぎ出されています。「陰の季節」や「動機」に勝るとも劣らない傑作短編集。やはり表題作が特に秀逸でしょうか。

03.3.8
『動機』
くれい爺さんの感想:
 「半落ち」の前に書かれた作品。
平成12年の日本推理作家協会賞短編部門の受賞作。
四つの短編「動機」「逆転の夏」「ネタ元」「密室の人」からなるが、そのどれもが主人公の心理描写でもって展開をサスペンスフルに感じさせる手法で読ませる。一読して「うまい!」という印象。中でも「逆転の夏」は発想のユニークさで、非常によく出来ていると思う。

03.8.11

吉村昭
『天狗争乱』

くれい爺さんの感想:
水戸藩の尊皇攘夷過激派は幕府に訴え攘夷決行を迫ろうとするが、逆に反乱軍として幕府に追われる。
彼らは朝廷に訴えようと京都への道を歩むが...
狂気か熱病か、水戸藩にあった尊皇攘夷思想の過激派が組んだ徒党は天狗党と呼ばれて怖れられた。
しかし、彼らが京都への苦難の道を歩む中で見せるのは武士としての、あるいは人間としての純粋さではなかろうか。
主観を省いて、天狗党の歩みの記録を克明に表した吉村昭の手法は、小説というフィクションで表す文章の上での物語より、実際に天狗党が歩んだ道のりのほうがよほどドラマチックな物語性を持っていることを語っているようだ。
最後に天狗党が辿った運命は“幕府に人無し”という印象を与えるし、それは作品中の大久保一蔵(後の利通)の日記「この非道な行為は、幕府が近々のうちに滅亡することを自らしめしたものである」という言葉からも印象深く余韻を与える。
幕府がその後辿った道は歴史からも明らかだが、水戸藩の門閥派が辿った運命にも最後に言及しておいて欲しかった。

03.2.22

吉村達也
『「北斗の星」殺人事件』

データ:

 発行年  1994.3初刷り
 発行所  徳間書店(文庫)
 ISBN 4-19-890097-3
 備考   1991.12刊「雪と魔術と殺人と」リニューアル版
あっちゃんの感想:
 弱ってしまった。今まで吉村の作品、ほとんどが期待外れだった。作者の意気込みに反してどうも効果が上がっていなかった。かっては吉村達也を呼んで生きたいと思っていたのが見切りをつけた。ただ朝比奈耕作シリーズの初期の3作は読んでおこうと思っていた。その3作目、これで吉村ともお別れだと思っていた。もちろん期待もしていなかった。だが僕の予想は外れた。面白かったのだ。雰囲気は阿井渉介の「不可能犯罪シリーズ」に似ている。あの島田荘司の「本格ミステリー」の定義がそのまま当てはまるような作品だった。奇怪な出来事が連続して起こりそれが連続殺人事件に発展していく。また朝比奈耕作が****であったというのも面白いおちだった。そして冒頭の「弱った」という思いにつながっていく。見切りをつけようと思っていた吉村達也、もう少し付き合ってみようかな、ああ、また読む本が増えていく。

02.2.22

米澤穂信 氷菓 愚者のエンドロール さよなら妖精 春季限定いちごタルト事件
『氷菓』

データ:
 角川スニーカー文庫
 H13/11/01
 ¥457

内容:
 いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない"省エネ"少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞
EGG三の感想:
4冊まとめ読みをしましたが、そのなかで一番バランスのいいのがこれ。
作者の語りたい事と、ミステリの小ネタと、キャラ小説の楽しさが丁度いい具合。
作者が1978年生まれと聞いてちょっと驚く。(古典部の過去の事件は、我々の青春を思い出させる、懐かしいような心苦しいような感情を呼び覚ますから)

でも、作者の特質はそこにはない。ぎゃくに主人公の高校生の男の子が、ノスタルジーや現代性を超えたところにいる、そしてそのどことも知らぬ時空間で自分のことや周りのことを飄々と考えている、というところが実にユニーク。これは4冊共通にいえることで、ジャンルにくくればライトミステリーか日常ミステリーに入ってしまう物語たちが、この米澤さんの手にかかるとふしぎな香りと重さを持った何でかわからない心地よさを持った小説に変わってしまう。(いや、オレだけなのかも)
とにかく後を引きますねぇ。

05.5.3
kamanoeさんの感想:
 面白いねぇ。見事にハマルと言うか、上手く捕まれた感じ。しかし、申し訳ない。言葉の意味、知らなかったです。ああ、高校時代は、はるか彼方……(辞書で引かないと分からないなんて……。この「氷菓」とは一切関係ないが、映画のタイトルはそういう意味だったのね)

 スニーカー文庫ということなのか、若干幼く感じる高校生ではありますね。また、出だしの文章が硬いと感じました。ジュブナイルらしいなぁ、と思ったんですが、キャラクタが浸透してくると、実にしっくりくる。が、「千反田える」は、ちとやりすぎか。

 最初の手紙のあと、二話ほど短編風の話だったので、「連作短編、最後の話に全てが収束」というスタイルかと思ったが、そうでもなかった。主人公の能力を示し、他のキャラクタの紹介をした後、本題の謎に取り組む、という感じか。本題の謎は、主人公に手掛かり(それぞれが集めた資料)が提示された時点で、ある程度推測できるのが、デビュー作の甘さ?。

 腕試しのような最初の三問(?)は、閃き型(?)でちょっと呆然とするのですが……

 折木奉太郎は、なかなか気に入りました。省エネ少年って良いね。徹底しきれていない点が面白いわけだが、灰色に疑問を感じてしまうところは「どうかな〜」と思う。薔薇色が良いわけでもないという最後の手紙が、正直ほっとさせてくれますねぇ。
 とは言いつつも、単なる灰色ではない、ところが良いのか。「能ある鷹は爪を隠す」タイプか。但し自覚していない。これで自分を否定する方向に行けば、それはそれでウンザリしてしまうので、微妙な線で琴線に触れる、ってか。オオゲサナ

05.12.30
『愚者のエンドロール』

データ:

 角川スニーカー文庫
 H14/08/01
 ¥533

内容:
 「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。
EGGさんの感想:
 我々ミステリマニアが、一番ニヤリとしそうなのがこの本。本人いわく『毒入りチョコレート事件へのオマージュ』だそうです。うーん、ていうか「いわゆるミステリ」ってなんなのさ、という雑談かも。期待しないで読むと結構面白いッス。ただし第二弾なので、必ず『氷菓』から読むべし!スニーカー文庫廃止で2冊とも手に入りにくいそうです。図書館か古本屋でどぞ。そのうち角川文庫で再刊される、(6月には第三弾も出る)のを待ってもいいし。
エピローグを読んで、もうこれはシリーズ化決定を確信しました。もうズーッと読みたい。彼らが卒業するまでのエピソード全部。奉太郎の姉ちゃんにも帰ってきてもらって、いま以上に無理難題を押し付けてもらいたいの。(わら)

05.5.3
『さよなら妖精』

データ:

東京創元社 ミステリ・フロンティア
 2004/02/25
 ¥1500

内容:
 1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるやって来た少女、マーヤ。謎を解く鍵は記憶の中に…。余韻あふれる出会いと祈りの物語。
EGGさんの感想:
 現実に起きたユーゴスラヴィア崩壊とその後の内戦が背景になっているので、ファンタジックな題名に似ず、まともに青春小説になっています。作者のミステリ好きな性格からマーヤの出生地を推理する話が骨格にはあるのですが、それよりも彼女の真剣な生きる(=知恵を身につける)姿勢に共感させられます。とてもいい物語です。いまのところ、これが代表作ということになるでしょう。

05.5.3
『春期限定いちごタルト事件』

データ:

 創元推理文庫
  2004/12/24
 ¥580

内容:
 小鳩くんと小佐内さんは恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係を持つ高校1年生。今日もふたりは手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、今日もふたりの前にはおかしな謎が現れる。
 学校内で消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト最中に割れた小瓶、盗まれた自転車。名探偵面をして目立ちたくない、地味に生きてゆきたいと願う小鳩くんは、果たして空にひっそりと輝くあの小市民の星をつかみ取ることができるのか?
EGGさんの感想:
 互恵関係というのがなんとも米澤さんらしい....。小佐内さん、いいです。もう、かぁいい(ハート)。古典部のお嬢様、千反田えるも捨てがたいけど、猫かぶりの小山内さんに一票! 主人公ふたりとも小市民、なんてうそっぱち。小鳩くんだってコナン=慎一のように推理したくてしょうがないんだから。いわゆる普通のミステリマニアにはこの一冊がお薦め。黒後家蜘蛛の会を彷彿とさせるココア事件と、「三マイルは遠すぎる」のような自転車乗り捨て事件は、一読の価値あり。

05.5.3

連城三紀彦 黄昏のベルリン 夜よ鼠たちのために 人間動物園 明日という過去に 流れ星と遊んだころ 美女
『黄昏のベルリン』

データ:
 出版社:講談社(講談社文庫)
あっちゃんの感想:
 今年からこのミス’88から国内ベスト20でまだ読んでいない作品を読んでいこうと考えています。その第一弾でした。ナチス関連のミステリーは国内でもいろいろと書かれていますがサスペンスものとしてはこれが初めてでした。ある意味で連城三紀彦らしくなくそこがまたよかったです。

02.2.3
『夜よ鼠たちのために』

データ:

 発行年   1986.4初刷(単行本:実業之日本社1983.3)
 発行所   新潮社(文庫)
 ISBN  4-10-140502-6
あっちゃんの感想:
 旧エンターティメント交差点のOLT(懐かしい言葉です。)中だったか
本書の名前が出てきました。それからずっと本書を読むのを楽しみにしていました。さて僕にとって連城三紀彦は評価が難しい作家です。
 「運命の八分休符」のような傑作もあれば「私という名の変奏曲」のような失敗作としか言いようがないものもあります。(ま、あくまでも僕の評価ですけどね)さて肝心の本書ですがややアンフェア気味な作品もあるとはいえおもしろかったです。「過去からの声」、「奇妙な依頼」、表題作、「二重生活」などはあざやかな手腕でした。特に「二重生活」は思いもよらない結末で楽しめました。

02.8.19
『人間動物園』

データ:

 出版社:双葉社
 価格:1700円
 備考:このミス2003第7位

あらすじ:双葉社HPより
 数十年振りの大雪であらゆる都市機能が麻痺した中、献金疑惑の渦中にある大物政治家の孫娘が誘拐された。被害者宅に仕掛けられた盗聴器に現場に一歩も踏み込めない警察。降りしきる雪と共に操作は混乱の一途をたどり……。連載ミステリーの真骨頂。
yobataさんの感想:
 私がよく行く書店は、結構充実したミステリの棚があるのですが、連城三紀彦作品は私が滅多なことでは足を運ばないブンガクの棚にあったため、この作品も存在すら知りませんでした。幻影城出身の作家なんだがな〜 で、作品の方ですが、連城ミステリ健在を見せつける、二重底三重底の展開、読む者の不安を煽る文体と、かなりの力作です。結末がちょっと陳腐かな〜という気もしますが、堪能しました。

03.1.9
『明日という過去に』
くれい爺さんの感想:
 矢部綾子、野口弓絵。二十年あまり姉妹のように信頼し合ってが、弓絵の夫が癌で死んだのを契機に二人は愛憎をあらわにする。
たがいの夫との深い交わりと、心の惨劇をつづる手紙のやりとり。
そこに書かれた酷いまでの嘘と感情が、恐るべき愛の正体を伝える。
一人の男の死を突破口に、人間存在そのものの謎を描ききった感動の傑作長編小説」という裏表紙の謳い文句に嘘はない。
“薔薇の名前”とつぶやいてケーンは死んだ。
“薔薇の名前”とは何を意味するのか、を捜し求めて「市民ケーン」は始まった。
“明日”という言葉を残して自殺した男の、“明日”を巡ってこの往復書簡は始まる。
“言の葉を紡ぐ”という表現があるが、まさしくこの小説にぴったり。また“ミステリーじゃなく小説として読む”なんて表現もこの小説なら納得がいく。
そして真実という縦糸と、嘘という横糸で紡がれた布が作品という着物に仕上がったとき、そこに描き出されたものは驚愕の模様だった。書簡体で書かれた作品は、言葉が非常に研ぎ澄まされた印象を受ける。それは優れた書簡というものが持つ、折々の季節の挨拶から末尾の挨拶まで長年の間に洗練された印象のゆえかもしれないが。
また、朝日新聞紙上で大江健三郎が外国の著名人との往復書簡を連載していたが、その内容の濃さというのはあえて形として与えられたからこそであり、現在の現実の書簡がどれだけ言葉が研がれているかは疑問である。
ゆえに、この作品に描かれた書簡も、小説世界ゆえの言葉の研磨という、作り物の印象は拭えない。
しかし、この小説が往復書簡体として描かれたのには意味が有り、それゆえのどんでん返しが用意してあり、その伏線もきっちりと示されていたのだ。
ラストの印象もさわやかで、傑作といってよい。

03.3.12
『流れ星と遊んだころ』

データ:

くれい爺さんの感想:
 年間ベスト〜では案外評価されていたらしいが、はっきりいってつまらなかった。
そもそもこれはミステリーなのかという疑問もあるが、まあ作者の仕掛けもあるのでそういうことにしておこう。
しかしこういう仕掛けはリアリティがなければならない。
そう、この話にはリアリティが感じられないのだ。
詐欺にはリアリティがなければ誰も引っかからないだろう。

04.8.14
『美女』

データ:

 発行年   2000.7
 発行所   集英社(文庫)
 ISBN  4-08-74213-2
 単行本   1997.3
あっちゃんの感想:
 連城三紀彦の作品はあまりにも超絶技巧のために分かりにくいのがちょっと難だがこの作品集にもそのような作品があった。「喜劇女優」がそれだった。しかしそれも含めてその意欲は大変評価できる。

05.2.27

若島正
『乱視読者の帰還』

データ:

くれい爺さんの感想:
帯に「B級ミステリからナボコフ、ジョイスまで、若島正はあらゆる小説を貪り食う。その味わい方は知的でありながら官能的、論理的に精緻であるとともにすこぶる人間臭い。この本を読んだら、あなたの小説の読み方はーそして世界の見え方はーもう二度と元には戻らない。」と柴田元幸の書評が書いてある。
小生はちょっと斜め読みしただけなので、感想というのもおこがましいのだが、読もうという気力が失せたので、ここでちょっと一言。
読書の仕方は人それぞれなのだが、こういう読み方って楽しいのかなという気がした。
ナボコフでいえば、小生は作品を読んでいないので何とも言えないが、読むとすれば自慰小説としてであろうか。
それでよいとも思うし、また、それだから読まないとも思うのだ。
クリスティーの「そして誰もいなくなった」が検証されているが、こちらももういいかなっていう感じだ。
若い頃は小生も本格推理小説をこんなふうに読みたいと思っていたのだが、歳を経るにしたがってこういう読み方が無為に思えてきた。
それにしたがって、ミステリを読むのも、ハードボイルドや警察小説などの比重が大きくなってきていると思う。
本格推理も含めて、ミステリ、いや小説や本というものを感性、あるいは感覚で読んでしまってよいのではないかと思うようになってきた。
「そして誰もいなくなった」でいえば、犯人探しの論理よりも、作者の設定した全体、マザーグースの歌にしたがって連続殺人が起こるという設定そのものに魅力を感じる。
つまり、論理の緻密さというのには、それほど魅力を感じなくなってきている。
ゆえに、たぶん好きな作品の中に有栖川有栖の「双頭の悪魔」やほとんど触れられることない森真沙子の「放課後の記憶」や本岡類の「鎖された旅券」、綾辻行人でいえばみなさんに散々だった「霧越邸殺人事件」などが入ってくるのだろう。
論理も含めて、作品全体に感じるものがあるかどうか。
論理の正確さも感覚の域での正確さでよいのではないかとも思う。
林真理子などに指摘された「半落ち」の欠点も、作品全体の構成から考えれば、そう大きなものと思えなかったのも、そんなところからなのだ。
そして若島正には若島正の読み方、楽しみ方があるのだ。
が、小生の読み方も変わらぬであろう。

06.5.22

若竹七海
『英国ミステリ道中ひざくりげ』

データ:

 著:若竹七海 &執事/小山正
 発行:光文社
 定価:3,300円(!)
 ISBN:4-334-97349-3
kamanoeさんの感想:
 タイトルにあるように、若竹さんが知人と英国のミステリスポットを回った旅行記。(小山氏は若竹さんの旦那さん)
 作家のプラーク(銘板。建物などに著名な作家が生まれた・住んだ・死んだ事が書かれているとのこと)を巡り、ミステリに出てきた通りを歩く。ガイド本やツーリスト・インフォメーションで手に入れたパンフを片手に、気ままに歩き回る旅。気まますぎて、予定のポイントを見逃すことも。(笑)
 結構楽しい本です。
 もっとも、私の知っている(読んでいる)作家があまりにも少ないので、忸怩たる思いも。オイ
 C・C・ベニスンの作品も出てきます。(バッキンガムではないが)それで頭に残っていて、本を買ったんですね。

 しかし、小説の舞台になった場所って、覚えていないものですね。ニューマーケットに立ち寄る時間がなかったのが残念ですが、「本命」(著:ディック・フランシス)に出てくるパブのモデルとなったパブなんて、記憶から消えてました。(ので、「本命」を再読) 「女には向かない職業」(著:P・D・ジェイムズ)も読んではいたが、ケンブリッジが出てくるのは忘却の彼方に……
 オックスフォードでのコリン・デクスター作品のスポット散策などもあり、ファンには楽しい本かも。
 とにかく、たくさんの作家・作品の舞台を、旅しています。

 しかし、高い…… (古本屋で買いました(汗))

05.12.28

和田誠
『物語の旅』
くれい爺さんの感想:
中学生の時に映画にはまって、高校、大学、社会人の始め頃まで映画雑誌「キネマ旬報」の愛読者であった。
そのころに連載されていたのが和田誠の「映画の名セリフ お楽しみはこれからだ」で、小生はこの連載のファンだった。
単行本もそろえて、いつか映画の中の名セリフを言ったみたいと思いながらも、そんな情況とは程遠い生活を送っている。
しかし、和田誠の話は本当に面白い。
書評の評者の一人が、和田誠の本は幸せにしてくれるというようなことを書いていたが、まったくそのとおりだと思う。
この本は本の感想というより、読書遍歴のエッセイという感じだが、小生も常々こういう話を書いてみたかった。
もちろん、和田誠だから売れるのだろうが。
いつも和田誠に感心させられるのは、「映画の名セリフ お楽しみはこれからだ」のときもそうだったが、記憶力の良さである。
2,3ヶ月前に読んだ本のことも忘れてしまう今日この頃の小生には、まったくうらやましい限りである。
題名は「物語の旅」というのだが、日本人ほどいろんなものを“旅”にたとえる民族はいないのではないか。
生まれるも“旅”、死するも“旅”、これは日本民族が誕生していく段階で旅をしてきた人々の記憶が遺伝子の部分で残っているのではないかと。
師の受け売り。

03.3.10

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