<た>
高田崇史 高野和明 高野裕美子 高橋克彦 高見広春 高村薫 谷甲州 田原成貴 陳舜臣 柄刀一
 土屋隆夫 都筑道夫 積木鏡介 天藤真 戸松淳矩 鳥飼否宇

高田崇史 Q.E.D.東照宮の怨 Q.E.D.式の密室 Q.E.D.六歌仙の暗号 試験に負けない密室 試験に出ないパズル Q.E..D.ベイカー街の問題 Q.E.D.竹取伝説 Q.E..D.龍馬暗殺 Q.E.D. ventus〜鎌倉 
『Q.E.D 東照宮の怨』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:01.1.10
 価 格:\840
  ISBN :4-06-182164-4


あらすじ:
 「日光東照宮陽明門」「山王権現」「三猿」「北極星」「薬師如来」「摩多羅神」「北斗七星」そして「三十六歌仙絵連続殺人事件」。東照宮を中心軸とする膨大な謎は、ひとつの無駄もなく線でつながり、時空を超えた巨大なミステリは、「深秘」を知る祟によって見事解き明かされる。ミステリ界に屹立する「QED」第四弾!!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 第3弾ではベイカー街に脱線したQEDシリーズですが、4弾目はちゃんとこっちに戻ってきて、東照宮の謎に迫ります。百人一首、六歌仙が非常によかっただけに、このパターンでどこまでネタ切れせずに書き続けられるかというのがちょっと不安でした。で、第三弾でベイカー街に飛んだ時はさすがに「やっぱり」と思ったのですが、でも本書を見る限りまだまだこういう歴史ミステリでやってくれそうな感じです。歴史の謎解きネタについてはまだまだ引き出しに沢山そろえていそうな様子で、むしろ歴史ミステリに呼応する現代の事件を構成するのに手間がかかっている風にすら思えました。

01.1.15
あっちゃんの感想:
 はっきり言って強引な展開である。日光東照宮を巡る解釈もまた殺人の動機もリアリティがちょっと感じられない。また犯人の内面にしてもあの人を犯人にしたがゆえに掘り下げて描くことができなかった点はちょっと残念。このような欠点は並みの作家だと致命傷になってしまうが高田のすごいところはそれでも読者を納得させてしまうことだ。おもしろかったから全ては許せる。今晩から「式の密室」を読み始めたが実はそれ以上に「竹取伝説」を無性に読んでみたくなっている。困ったものだ。

04.1.8
『Q.E.D. 式の密室』

データ:
 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:02.1.10
 価 格:\700
  ISBN :4-06-182229-2
 備 考:講談社ノベルズ創刊20周年記念 密室本


あらすじ:
 密室で、遺体となって見つかった「陰陽師の末裔」。”式神”を信じる孫の弓削和哉は他殺説を唱えるが……。果たして、崇の推理は事件を謎解くばかりか、時空を超えて”安倍晴明伝説”の闇を照らし、”式神”の真を射抜き、さらには”鬼の起源”までをも炙り出す。これぞ、紛うことなきQED!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 全編が袋とじになった「密室本」という装丁には何か意味があるのだろうか、という根本的な突っ込みは抜きにして、本の薄さも抜きにして、QEDのこれまでのシリーズに遜色ない出来だったと思います。歴史の謎と現代の事件の相関という意味では一番良くできているかもしれません。まあ、密室トリックについては歴史の謎を解説するための「前座」という位置づけ程度のものかもしれないので、相変わらずかなり無理したトリックでしたが、その分「式神の正体」という歴史の謎解きがなかなかに衝撃的でした。これって、高田のオリジナルなのか、それともそういう説がマイナーながらも存在するのか、とういのが気になるところです。QEDシリーズはどれもそうですけどね。
 で、今回の話は学生時代のタタルと小松崎の出会いの話なので、回想シーンが中心に描かれています。なので、事件を追いかける推移というのがなくて、経過説明→推理の披露がストレートに書かれておしまい、という感じ。で、最後に次の事件の前振りみたいな台詞があるところをみると、薄さと相まって、「密室本」企画のためにプロローグを抜き出して1冊の本にした、みたいな気がします。まあ、面白かったらか許すけど、そういう出版社側の都合を優先させて欲しくはありません。

02.1.26
あっちゃんの感想:
 薄い作品だったが内容的にはすばらしかった。陰陽道は昔から興味持っていたし昔読んだ民俗学の本などのことも思い出していた。作中自ら明らかにしているようにタタルが展開している考え方は多くの先人の説に基づいている。にも拘らず高田のすごいところはいつの間にか飛んでしまうところなんもだ。式神の正体はとてもじゃないがだれも考え付かないものであろう。 冷静に考えれば反証は挙げることはできるだろう。しかし読んでいる時には驚きでいっぱいになってしまう。そこがすごいところであろう。

04.1.10

『QED 六歌仙の暗号』

データ:

 発行年   1999.5初刷
 発行所   講談社(ノベルズ)
 ISBN  4-06-182063-X

あっちゃんの感想:
 ようやく2作目、前作よりもわかりやすかった。しかもよだれが出てしまいそうになるくらい魅惑的な謎とその解き明かしでした。ここでタタルが説明したことが果たして一つの学説になりうるのかどうかは専門家でないので分かりませんが肝心なことは説得力があったということです。ただ何点を言えばこれは他の人も言っていることですが現在の事件の方がいろんな意味で今一かなと、歴史上の謎と現在の事件がうまくかみ合えばもっと傑作になっていただろう。

02.10.23
『試験に負けない密室』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 価 格:¥740
 出版日:2002/06/28
EGGさんの感想:
 パズルはちりばめられているものの、どちらかというとミステリーに入るでしょう。でもトリックには感心しなかったし、パズルに狂う千波君も見られなかったし、評価はよくありません。(77点くらい)

02.11.21
『試験に出ないパズル』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 価 格:¥820
 出版日:2002/11/05
EGGさんの感想:
 物語としてもパズルとしても、出来がいいかどうかは難しい判断になると思います。けれど、こういう奇妙な世界を作ってしまったことはすごいと思うのです。一作目の『試験に出るパズル』のうそつき寺の小坊主も相当にシュールでしたが、本書に収録された川渡しのドタバタでは大笑いしました。千波君ってパズルを目の前にすると人格が変わります。極めつけはお正月の6人の爺さん婆さん。私、椅子から転げました。推理パズルにハマったことがある方なら判って頂けるでしょうか、このナンセンス度がどんどん上昇して行くさまは圧巻でした。

02.11.21
『Q.E.D ベイカー街の問題』

データ:

 発行年  2003.9初刷(ノベルズ:2000.1)
 発行所  講談社(文庫)
 ISBN 4-06-273844-9
あっちゃんの感想:
 僕は現在ようやくちくま文庫の「ホームズ全集」第3巻まで読んだところ、こんな状態で果たして本書を十分に楽しめるのだろうかと思ったがいやおもしろかった。モリアティ教授の正体はびっくりしたが現実の事件も無理なく結びついているし日本史がテーマではないが十分に堪能できた。

03.10.6
『QED 竹取伝説』

データ:

発行年   2003.1
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-182295-0
あっちゃんの感想:
 どこまで行ってしまうんでしょうかねえ。こんも「QED」」シリーズも
「ベーカー街」を除くと一連の大きな物語の一部のような感じさえしてきました。僕の中では「式の密室」についでおもしろかった作品です。

04.10.24
『Q.E.D. 龍馬暗殺』

データ:

発行年   2004.1
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-1823-49-3
あっちゃんの感想:
 この「QED」シリーズは僕のお気に入りのシリーズだが本書が出た時は「ベーカー街」ほどではないにしろ随分毛色が違うなと思いました。でも読んでみるとまさに「QED」シリーズ、龍馬暗殺と言うテーマにかくれてと言うか現在の事件の背景にあるものは・・・いやすごい話です。このシリーズ、どこまで行っちゃうのでしょうか。

5.10.24
『Q.E.D. ventus〜鎌倉の闇』

データ:

発行年  2004.8
発行所  講談社(ノベルズ)
ISBN 4-06-182384-1

あっちゃんの感想:
 相変わらず絶好調ですね、今回は地元と言えば地元が舞台なのでよけい楽しめた。高田の視座は自分と波長が合うというか気に入っている。ちゃんと現実の事件も解決してしまうところもうまいですね。

05.11.3
『Q.E.D. 鬼の城伝説』

データ:

発行年   2005.1
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-182409-6
あっちゃんの感想:
 今回は僕の故郷が舞台、楽しく読ませてもらった。桃太郎や温羅伝説の解釈自体は今までのQEDシリーズの延長線上にあるのだからそんなに目新しさは感じられなかったがそれでもおもしろかった。現実の事件はちょっとなあと言う思いもあるが(動悸の面で)それでもそんなに気にならなかった。このシリーズ、取り上げてもらいたいネタはもっともっとあるので今後とも続けてもらいたい。

05.12.23

高野和明
『13階段』

データ:

 講談社
 ¥1600
 2001/11/02 第7刷
 47回江戸川乱歩賞受賞
 評価81点

<作者プロフィール>
1984年  映画・TV・Vシネマの撮影現場でメイキング演出やスチル
     カメラマン等を担当。
1989年  渡米し、映画演出、撮影、編集を学び、帰国して脚本家に。 
主要作品 映画「国会へ行こう」(共同脚本)
     インターネットドラマ「グラウエンの鳥籠」、
     金曜エンタテイメント「児童虐待調査官」

内容:(Amazon.co.jp「BOOK」データベースより)
 無実の死刑因を救い出せ。期限は3ヵ月、報酬は1000万円。喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は、記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすことだった。
 最大級の衝撃を放つデッド・リミット型サスペンス!
EGGさんの感想:
 文章も読みやすいし、テンポもまあまあ良い。探偵役2人の設定も、目新しいし、かなり細かいところまで取材も行き届いている。その上、日本の死刑制度について勉強も出来てしまう。なかなかお得な小説なのは確か。
 特に後半、証拠品が見つかったあたりからの急展開にはわくわくさせられました。

 それなのに何でだろう、読み終わってみると充足感がないのです。結末がすっきりしないのもそうだけれど、人物のディテールがはっきりしていた割りに、深みがなかった、あるいは人物を描写する筆が足りなかった、ということなのだと思います。特に主人公の刑務官・南郷は、退職まぎわ。それなりの年輪を表現してほしかった。終わりのほうで、糸が切れたみたいに弛緩してしまったのは負けたみたいでイヤです。

 また、描写力といえば、クライマックスシーン(犯人との格闘)などは、作者が映像畑の人だから、勝手に映像作って編集しちゃっているのかもしれませんが、読者の私には伝わりませんでした。うーんそうですね、二時間(半)ドラマのシナリオとしては、上出来なのかも。

02.4.16
あっちゃんの感想:
「死刑」と言う非常に重いテーマに真正面から取り組んだ上にストーリーもおもしろい。ラストがちょっと納得いかない感じがしたがそこはそれこそ人それぞれかもしれない。僕はこの作品非常に高く評価する。

05.12.26

高野裕美子
『サイレント・ナイト』

データ:

 出版社:光文社
 出版日:00.3.30
 価 格:\1500
 ISBN :4-334-92316-X
 備 考:第3回(1999年)日本ミステリー文学新人賞受賞作

山本わおさんの感想:
 第三回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作だそうですが、この賞にはあまり馴染みがないので記憶にありませんでした。
 話の方は航空機産業と少年犯罪を絡めたサスペンスっぽいものですが、とても面白かった。
 作者は翻訳を多数やっていたみたいで、さすが文章がプロ並にうまい。ただし個性という点はあまり感じられないので、熱狂的なファンはつきにくいかなあ。それに全体的に地味。題名もイマイチ。

02.7.21

高橋克彦
『パンドラ・ケース』

データ:

発行年  1991.8
単行本  1988.11
発行所  文藝春秋(文庫)
ISBN 4-16-716403-5
あっちゃんの感想:
 はっきり言って高橋克彦は何となく敬遠していた作家だ。以前読んだ「龍の柩」が全く面白くなかったし一連の政治的な発言は僕と正反対の立場だし・・・ただ2作だったか読んだホラーは面白かった。そういうことでミステリーは初めてだったし積極的に読みたいとも思っていなかった。これを読んだのは昨年から始めている「このミスベスト20国内編未読読破計画」としてだった。読んでみてびっくり、非常に面白かった。遅れてきた青春ミステリーと言う感じで人物もよく描けていたし連続殺人等魅力溢れる設定、スリリングな展開、あっと言う真相、どこをとって見ても文句のつけようがない傑作でした。

04.11.14

高見広春
『バトル・ロワイヤル』

データ:

 出版社:太田出版
 出版日:99.4.21(第1刷)
  01.3.16(第45刷)
 価 格:\1480
  ISBN :4-87233-452-3
 備 考:第5回(1998年)日本ホラー小説大賞候補作

あらすじ:
 西暦1997年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。この国では毎年、全国の中学3年生を対象に任意の50クラスを選び、国防上必要な戦闘シミュレーションと称する殺人ゲーム、”プログラム”を行なっていた。ゲームはクラスごとに実施、生徒たちは与えられた武器で互いに殺しあい、最後の残った一人だけは家に帰ることができる。
 香川県城岩町立城岩中学校3年B組の七原秋也ら生徒42人は、夜のうちに修学旅行のバスごと政府に拉致され、高松市沖の小さな島に連行された。催眠ガスによる眠りから覚めた秋也たちに、坂持金発と名乗る政府の役人が、”プログラム”の開始を告げる。
 ゲームの中に投げ込まれた少年、少女たちは、さまざまに行動する。殺す者、殺せない者、自殺をはかる者、狂う者。仲間をつくる者、孤独になる者。信じることができない者、なお信じようとする者。愛する気持ちと不信の交錯、そして流血、、、、、、。
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 どちらかというと戦時中の青春物語のような、極限状態に置かれた少年少女たちの生き方を描いた作品のように思われ、不快感というのは無かったです。というのは、この物語世界の前提となっている大東亜共和国という存在にあまりにもリアリティが無いからで、こういう独裁国家は相当なカリスマ指導者や共通の宗教思想でもない限りあり得ないでしょう。中学生にもバカにされている総統閣下とか、中学生にも簡単にハッキングされる政府のコンピューターとか。だいたいこの「プログラム」って結局反政府テロリストを育成する以外に役に立つとは思えない。そういうリアリティのない設定にどうしようもなく不快感を感じてしまったホラー小説大賞の審査員の方々は、相当ナイーブな感性の持ち主だったようです。
 では印象に残った登場人物など。

杉村弘樹
 この物語の真の主人公。強くて優しくてしかも一途。格好良すぎ。
七原秋也
 この物語の見かけ上の主人公だが、川田や他の人々に助けてもらうだけで、結局自分では何にもしなかった。『ホワイト・アウト』の富樫の役割を振られていながら情けないことだ。まあ、藤原竜也じゃあしょうがないか(笑)。
三村信史
 私が一番移入したのは彼。他の一部の男どもはせいぜい一人の女を守って戦っていたが、彼だけはクラス全員を救うために行動し、友達を守るために戦った。最初に川田と会ったんだから、その時協力していれば・・・。
川田章吾
 こいつと三村が協力して事に当たっていれば・・・。だいたいラストの方法が可能なんだったらもっと違ったやり方でたくさんの命が助けられたと思う。
相馬光子
 カマ持つ美少女という、この上なくホラーっぽい存在。桐山とともに主人公に立ちはだかるボスキャラになるであろうと推測していたんだけどね。
坂持金発
 映画ではたけしが演じたというが、どうして武田鉄矢じゃなかったんだろうか(笑)。田原、近藤、野村、加藤(何故か彼だけ役名)も同様だけど。

 あと、蛇足ですが、これを読んだ後で2ちゃんねるミステリー板の「メフィスト学園・開校です!」スレッド(http://mentai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=mystery&key=999959666)、「あなたのナップザックに入っていた武器は?」スレッド
(http://mentai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=mystery&key=974112179)などを読んだら無茶苦茶笑えました。

01.9.21

高村薫 李歐 リヴィエラを撃て
『李歐』

データ:

 発行年    1999.2
 発行所    講談社(文庫)
 ISBN   4-06-263011-7
 備考     「わが手に拳銃を」を下敷きに書き下ろした
あっちゃんの感想:
 久々の高村薫、基本的な読みごたえは変わりないが微妙にソフトタッチ、主人公の李歐に対する執念は今一わかりずらかったが15年に及ぶ主人公の魂の軌跡は十分い訴えてくるものがあった。咲子が爆死する前後のシーンには感銘を受けた。

04.7.4
『リヴィエラを撃て』

データ:
発行年  1997.7
発行所  新潮社(文庫)
単行本  1992 
あっちゃんの感想:
 高村薫ってどうしてここまで人間の情念を文章に込めることができるんだろうか。僕にはそれがちょっと重い。しんどかったけど読み応えはあった。

05.6.14

谷甲州
『遙かなり神々の座』

データ:

 発行年  1995.4初刷り(単行本:1990.4)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-030505-6
あっちゃんの感想:
 著者の作品は昔「SFマガジン」に掲載された「航空宇宙軍史」シリーズの短編を読んでいただけで、長編も本にまとまったものも初めてでした。
おもしろかったのですが巻頭にあった地図があまり役に立たず主人公たちが何処にいて何処に向かっているのかよく分からなかったのが残念でした。また女性の描き方がやや足りなかったのではと思いました。しかし最後の結末はちょっと皮肉ぽくてよかったです。

03.5.24

田原成貴
『競馬場の風来坊』

データ:

くれい爺さんの感想:
 競馬の予想はするが、競馬にお金を賭けることは年に数度しかしなくなってもう7,8年になる。
著者は覚醒剤所持で競馬会を追放になった元騎手、元調教師である。
彼が1994年から1995年にかけて騎手であった頃、雑誌に連載したエッセイ集。
中で彼は自らを一流半と謙遜しているが、もちろん彼は騎手としては一流であり、あるいはそれ以上かもしれぬ。
騎手の呼び方には名手、名人、豪腕、天才といろいろあるが、小生はむしろ彼の言葉を真似ていえば、彼は天才半ではなかろうかと思うのである。
彼の悲しいところは、福永洋一と武豊という二人の大天才の間の期間にあって彼は天才であることを証明しなければならなかったことかと。
エッセイでは彼の競馬に対する愛情が深くうかがえる。
が、一ついわせてもらえば、ファンへの注文は多くはせぬほうがよい。
彼が騎手としての気持ちを分かってほしいと訴える気持ちも分からぬではないし、競馬記者に対してのもっと勉強しろという注文もわかる。
が、大部分のファンにとっての競馬は所詮ギャンブルである。
そのファンは金を増やしてくれれば神様で、減らすものは屑なのだ。
プロはそれにだまって耐え、結果で示すしかないのだ。
彼もそれは分かっているのだろう。
そしてその結果を示そうとしすぎたのかもしれない。
調教師としても天才であるということの証明を示そうと。
たとえどうなってしまったにしろ、数々の名馬の名と共に、騎手田原成貴の名はファンの中には残っているのだ。

03.5.4

陳舜臣
『秦の始皇帝』

データ:

くれい爺さんの感想:
 どちらかというと悪役のイメージが強い秦の始皇帝だが、近年中国でも評価の見直しがあったとも聞いている。
また映画「英雄(ヒーロー)」では、時代考証や歴史事実が違うといったことで話題になったりもしていた。
著者は秦の始皇帝について書かれた記述がその後の漢の時代に書かれたものであることから、悪意を持って書かれたことを割り引いて考えねばならないとし、始皇帝の行った事実のみを検証して評価すべきとして書いている。
初出は1994年1月から3月のNHKの人間大学での放送。
分かりやすくて入門書としてよいかもしれぬ。

あとがきでの晩年の始皇帝についての記述が面白い。

「またあなたは、人間の弱さを、始皇帝の中に発見できる。自分を絶対者だと思いこむ人の、庶民のじいさんと変わらぬすがたも、そこにいくらも見出せる。

 (中略)

こうして、徐福をはじめ大ぜいの、いかさま師の食いものになるすがたは、いまもむかしも変わりはないのである。」

小生を含めて、世の年寄り諸君、自戒とせよ。

04.4.25

柄刀一 マスグレイヴ館の島 3000年の密室 奇跡審問官アーサー 殺意は幽霊館から 殺意は青列車に乗せて IFの密室
『マスグレイヴ館の島』

データ
出版社:原書房
出版日:00.11.27
価 格:\1800
ISBN :4-562-03364-9
 帯 :”独房”で墜落死した男。
    食べ物を前に餓死した男――
    海を隔てて岬と館で起こった
    連続怪死事件を
    「わたしが解いちゃうんでしょうか?」

あらすじ
 内と外から施錠された「密室牢獄」の中で墜落死した男と、まわりを食べ物に囲まれたテーブルの上で餓死した男。現代に蘇った”マスグレイヴ館の島”は百年前の奇想のままに、不可思議な死で飾られた。また、島の対岸の岬でも、時を同じくして関係者の死。絶壁まで続いた足跡は飛び降り自殺としか思われなかったが……。
 符号のように繰り返される”墜落死”、海を隔てた島と岬で起こった連続怪死事件にはなにが秘められていたのか。
(表紙折り返しより)
Kikuchiさんの感想:
 とにかく、この人のトリックメーカーぶりにはただただ感心するばかり。足跡トリックについては、「こんなに簡単でいいんでしょうか?」というくらい実に単純なもの。単純すぎて誰も考えつかなかったような、そんなトリックですが、メインの方は『斜め屋敷の犯罪』(島田荘司)ばりの大トリックで、すごいです。しかも、そのトリックを使う必然性や実効性なども実によく設定されています。こんな大トリックものを年に何冊も書かれては、島田荘司の影も薄くなるはずですね。
 突然でてくる二人称とか、「ナルコレプシー睡眠」の設定など、必ずしも大成功を収めているとは言えないようにも思えるのですが、これだけ盛りだくさんにいろんなミステリを盛り込まれると、もうそれだけで満足、という感じはあります。
 ラストのオチは、まあご愛敬という気もしますが、こんなユーモアも好感が持てました。

01.1.10
『3000年の密室』

データ:
(ハードカバー)
 出版社:原書房
 出版日:98.7.28
 価 格:\1600
 ISBN :4-562-03101-8
 備 考:1997年(第8回)鮎川哲也賞候補作
データ:(文庫)
 発行年  2002.3初刷り
 発行所  光文社(文庫)
 ISBN 4-334-73288-7

あらすじ:
 密室と化した洞窟で発見された片腕のミイラは、3000年前の”殺人事件”の被害者だった。しかも腕は明らかに死後に切断されていた。
内側から閉ざされた洞窟で、いったい犯人はどうやって消え失せたのか? なぜ死体の腕を切り落としたのか?
一方、多くの謎を持ったミイラの調査がすすめられるなか、発見者の一人が「奇妙な状態」で死んだ。現場には本人の足跡しかなく、自殺にしか見えない状況だったのだが……。
はるか過去の殺人と現代の死、時空を超えて開かれた密室の彼方には、いったい何が見えたのか――。
(表紙折り返しより)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、やっと見つけた柄刀一のデビュー作です。
 3000年前の縄文人のミイラが密室で殺害されたのはどうしてか、という謎について、動機も含めて真っ正面から挑み、それなりに成功を収めています。3000年というタイムスケールでの密室トリックは、さすが稀代のトリックメーカー柄刀一だけあって凄い発想でしたが、現代の事件の方はちょっと薄味だったかな、と。また、考古学上の一大発見をめぐる人間関係など、非常にリアリティの感じられるつくりになっているのですが、主人公の境遇(両親を事故で亡くし、以来「死」というものに対して神経症的になってしまっているという設定など)は、人物像をくっきりさせる意味ではいいのでしょうけど、本格ミステリとしては、その設定自体に特に意味がないので、不要ともいえます。

 テーマとして主眼においているのは、3000年前の密室殺人よりも、考古学をめぐる諸問題の方に傾いてしまっているように思えるので、読む前と読後でちょっと違和感がありました。別に瑕疵ではないですけどね。
 また、文章が、女性が語り手ということもあるのでしょうけど、光原百合を思い起こさせるような文体で、これはちょっと意外な感じでした。

01.3.2
あっちゃんの感想:
 すごく読みたかった作品でした。文庫になってすぐにたまらず買ってしまいました。とても文章が読みやすかったです。ただねえ、3000年前の密室殺人と現代の事件がうまくかみ合っていないと言うか3000年前の密室殺人の謎がメインになるのかなと思っていたら主人公がいつの間にか現代の事件を捜査し始めるし・・・現代の事件の方は犯人がある意味魅力的でした。しかし3000年前の密室殺人の真相があれじゃあねえ。意外性はあるしダイナミックだけれどもどうなんでしょうねえ。

02.12.26
『奇跡審問官アーサー 神の手の不可能犯罪』

データ:

出版社:講談社(講談社ノベルズ)
出版日:02.4.5
価 格:\1200
ISBN :4-06-182240-3
kikuchiさんの感想:
 あり得ざる状況での殺人をこれでもか、というくらい矢継ぎ早に見せつけて、さらにそれを合理的に解決してみせる手腕。さらにあの「動機」。凄いですね。なんか噂ではトリックが前例のあるものが多いらしいのですが、まあ、原理が単純なトリックが多かっただけに、あり得る話ではありますが、見せ方がすばらしいので許せるでしょう。私はどれも前例を知らなかったし。

02.6.21
『殺意は幽霊館から』

データ:

 出版社:祥伝社文庫
 価格:\400
yobataさんの感想:
 400円文庫の1冊で、天才・龍之介のシリーズです。幽霊館で目撃された幽霊と、殺人事件の謎を解き明かす作品で、これでもかと惜しげもなく繰り出されるトリックに満足の作品。

02.7.13
『殺意は青列車に乗って』

データ:

 出版社:祥伝社(Non Novel)
 出版日:04.2.20
 価 格:\857
  ISBN :4-396-20772-7
 収録作品:「龍之介、黄色い部屋へ入ってしまう」「光章、白銀に埋まる」「一美、黒い火の玉を目撃す」「どうする卿、謎の青列車と消える」「龍之介、悪意の赤い手紙に息を呑む」
 初 出:「小説NON」2002年6月号、12月号、2003年4月号、6・7月号、書き下ろし

あらすじ:
 奇妙な黄色い部屋、謎の黒い火の玉……。天才・天地龍之介の行くところ怪事件がある。極めつけは、鉄道ダイヤグラムの魔術師が企画したミステリートレインの乗っ取り事件! 乗客が行き先・ルートを当てるイベント列車に爆弾が仕掛けられたのだ。龍之介の従兄弟の光章は車中の後見人を救おうとするが、列車がどの路線からも発見できない。どこへ消えてしまったのか? しかも、光章の恋人・長代一美が犯人に捕らわれて……。龍之介、博覧強記の頭脳でこの大ピンチをどう切り抜ける!?
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 龍之介シリーズは傾向として、理科の豆知識をうまく調理してミステリに仕立てるという印象があるのですが、それ以外にも希代のトリックメーカーの本領ともいうべき驚天動地のトリックが詰まったお買い得な短編集でした。「黄色い部屋」は黄色く塗る理由とそれを見破る洞察が、「白銀」は、よく知られた化学現象をうまく利用したトリックが秀逸でした。また「赤い手紙」は一つの発見で世界がひっくり返るどんでん返しが見事。
 一つ難を言うとしたら、表題作のトリックが比較的割れやすいところか。まあ、それを補って余りあるサスペンスでしたが。
 で、どうやら次回からまたちょっと環境が変わって新しい展開がありそうです。次作がまた楽しみです。

04.3.20
IFの密室

データ:

発行年  2003.4
ノベルズ 2000.2
発行所  光文社(文庫)
ISBN 4-334-73469-3
あっちゃんの感想:
 柄刀一は難しいという先入観を持っていた。以前読んだ「3000年の密室」は一種の歴史ミステリーだったので抵抗感はなかったがアンソロジーなどに収録されている短編を読むとやはり難しかった。本書も最先端医学の問題をテーマにしているらしかったので敬遠していた。しかし読んでみると読みやすかった。何よりも出産を巡る問題は来月第2子誕生と言う自分にとっては非常に切実でリアリティを感じた。(実際に読んだのは9月頃だったが・・・)探偵役も非常に勘定移入できた。既婚で子育て中でしかも妊婦という探偵は初めてではないかな。
 柄刀一の作品もっと読みたくなった。

05.12.4

土屋隆夫 妻に捧げる犯罪 危険な童話 影の告発 針の誘い
『妻に捧げる犯罪』

データ:
くれい爺さんの感想:
 鮎川哲也と並び称され、本格の旗手として昭和30年代に傑作を次々と発表した土屋隆夫だが、鮎川に比べてもうひとつポピュラーでない印象を持っていたので、彼の作品を手にするのは初めて。
「危険な童話」「影の告発」「赤の組曲」「針の誘い」と次々と傑作を発表した後のこの作品は、評判を落としたいわくつきの作品。
しかし、一つの電話の会話から殺人とその場所、人間関係を推理するところは本格としても満足のいく出来だと思う。
ただ、全体としては盛り上がりや推理の快感というものに欠けるような印象である。
順序が逆だが、傑作といわれる作品も読んでみたい。

04.7.1
『危険な童話』

データ:

発行:講談社(現代推理小説大系10 昭和47年7月8日)
 定価:850円
(ISBNは、なし)
「現代推理小説大系10」他に「黒いトランク」(著:鮎川哲也)「車引殺人事件」「団十郎切腹事件」「奈落殺人事件」「加納座実説」(著:共に戸板康二)「私論・推理小説とはなにか」(著;土屋隆夫)等を収録。

あらすじ:
 刑務所を出たばかりの須賀俊二が、殺された。現場は従兄弟の未亡人、木崎江津子の家だ。俊二を迎え入れ、夕食の買い物に江津子が出かけた、僅かな時間の間に殺されていたという。
 人を殺め、自首して来た須賀を、偶然迎える形となったのは木曽刑事だった。送監の決まった朝、須賀と面会した木曽は、不思議な言葉を聞いた。「出獄する日に、もう一度お世話になるんじゃないかと、それが心配なんです……。」微笑を浮かべていたあの男は、何が起こることを予期していたのか。
 須賀殺害の現場で、木曽はあることに気付く。
kamanoeさんの感想:
 うん、まぁ、良いかな。特別感銘は受けないが。
 やっぱり、ただ一人の容疑者に拘りすぎる捜査・推論の進め方には、感心しない。先に読んだ「黒いトランプ」でも特定の人物に照準を定めすぎる点が気になったのだが、こちらはそれ以上。もちろん、視点が一人の刑事に(ほぼ)定まっているため、他の刑事の捜査の進め方はあまり分からないのだけど、他に容疑者が一人も(読者に)提案されないのは、どうなんでしょう?。
 また、導き出された推理の裏付け(の提示の仕方)が弱い気がします。精度の高い(?)犯罪だったということでしょうか。笹部への接触の仕方など、捜査側の行動もいささか乱暴にも思えるのですが。
 結末は避けられずとも、木曽刑事の行動は、やはり批判の対象になるでしょう。読後感はあまり良くないですね。

 クリスティの某作品を思い出させますが、法律が違うんでしょうね。日本では、まったくメリットがない?。となると逆にデメリットしかないわけで、致命的な失敗になってしまう気が…… でも、確かに精度の高い犯罪だったと思います。

05.2.27
『影の告発』
くれい爺さんの感想:
 前に「妻に捧げる犯罪」を読んで、土屋隆夫の代表作を読んでおきたいと思い、まず日本推理協会賞を受賞した本作を手に取った。
kamanoeさんが「危険な童話」の感想で、早い段階で容疑者を一人に絞りすぎているのではないかと書かれていたが、本作にもそのきらいはある。
主人公の検事が、たしかに容疑者を早い段階で絞っている。
まあ、まわりの刑事に他の容疑者の可能性も示唆させるような意見を言わせてはいるのだが。
ただ、容疑者を絞っているということでアリバイ崩しという話の本筋に読者をより惹きつけられるような印象でもあるので、あながち欠点とばかりは言えないかも。
さて、そのトリックだが、これがシンプルで非常によい。
これから「危険な童話」「赤の組曲」「針の誘い」の3作を読む予定。

05.6.22
『針の誘い』

データ:

くれい爺さんの感想:
幼児誘拐、身代金受け渡し現場で夫と刑事が見守る中、母親が殺される。
犯人は誰か...?という話。
土屋隆夫の代表作の一つとされている。
土屋隆夫の「影の告発」を読んだときにも書いたが、主人公の千草検事が自分の推理に早くからこだわりすぎている感じは相変わらずだ。
それゆえにアリバイくずし、犯人が使ったトリックの解明に重点があって、どんでん返し的な面白さは期待できない。
アリバイくずしの思考の中で、犯人の身代金受け渡し指定場所に関する言葉から、アリバイがないものにアリバイができ、アリバイがあるものにアリバイがなくなるという逆説的思考の転換をしているところはよく考えてあって見事。
逆に、脅迫状のトリックに関しては、郵送された場合は配達した郵便局員がいるだろうし、郵送されなかった場合は当然配達した郵便局員はいないことになる。
この点、犯人はどう考えていたのだろうか。

06.6.11

都筑道夫

『猫の舌に釘を打て』

くれい爺さんの感想:
都筑道夫コレクションシリーズで<青春編>と銘打たれた、著者の初期の中・短編集。
で、「猫の舌に釘を打て」は初期の傑作とされている中編。

が、このトリック、ミステリー史上で5本の指に入る(と思う)、女性推理作家のあの作品に似ているんじゃないの?
たしかに“犯人であり、探偵であり、被害者である”という設定はアクロバット的で、そのための構成もしっかりとしているのだが、そのトリックのために、あえてしている構成という印象が拭えない。

都筑道夫が亡くなったとき、彼の作品を読んでいないことに気づき、おいおいと読んでみようと手に取った。
「三重露出」「なめくじに聞いてみろ」「誘拐作戦」「キリオン・スレイの生活と推理」「七十五羽の鳥」など、傑作と評価されている作品もこれから読んでみたいと思っている。

04.4.25

積木鏡介
『芙路魅』

データ:

発行年  2002.4初刷り
発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182253-5
あっちゃんの感想:
「メフィスト賞」受賞作家異端派の最右翼の一人積木鏡介、この作品、今までの作品に比べると少々まともですがでもとんでもない作品には違いありません。短い中にいろいろと詰め込もうとして多少消化不良を起こしていますがでもおもしろいです。最後はこれが密室トリックの真相かと呆れてしまうものですがまあいいでしょう。

 とここまでが感想です。密室本に関してちょっと書きます。来年の3月までに5冊は読みたいと思っているのですがシリーズを順番通りに読んでいくという原則、その作家の最初に読む作品としては読みたくないのでそれらを除外すると現時点で読むことのできる密室本は少ないです。次回は浦賀和宏の「浦賀和宏殺人事件」を読むと思っていますが他には蘇部健一の「木乃伊男」があるぐらいなんです。3月まで後2冊読める密室本が出てくるかな。でメフィスト賞作家で密室本という企画にある意味もっともふさわしくある意味もっともふさわしくない作家が一人いますよね。いつ登場するのか、楽しみにしているのですが僕の予想では密室本のとりを勤めるような気がします。今年の刊行を予告していながらまだ出ていないシリーズ最新作が密室本になるのではという思いがあります。その場合、分厚い密室本になりそうですが・・・

02.10.12

天藤真 遠きに目ありて 鈍い球音
『遠きに目ありて』
山本わおさんの感想:
 しばらく天藤真を読もうと思っているので、その第1冊目。身障
者の少年を名探偵役にした安楽椅子探偵ならぬ車椅子探偵。謎解きも
面白かったが、少年が活動的になっていくさまや周りの人たちの温か
な描写がよい。

03.8.17
『鈍い球音』

山本わおさんの感想:
 もう少しで阪神vsダイエーの日本シリーズですね。
 というわけで野球好きには天藤真著「鈍い球音」をおすすめしま
す。
 日本シリーズ直前に監督が不可解な失踪をし、それをコーチや娘
や友人の新聞記者達が捜索するという出だしですが、軽やかな味でな
かなか面白いです。少し時代が古いので懐かしい感じですが、十分今
でも通用しますね。

03.10.5

戸松淳矩
『剣と薔薇の夏』
くれい爺さんの感想:
 “ついに”という作品が何作か出ているようだが、こちらも“ついに”という作品。
なんといっても17年ぶりの新作というのが凄い。
といっても戸松淳矩という作家を知っていたわけではない。
「名探偵は千秋楽に謎を解く」とか「名探偵は九回裏に謎を解く」などの作品があるらしいが、ジュブナイル・ミステリーとして、主として少年少女からヤングアダルト向けの作品だったらしく、17年前にはすでにいっぱしの大人だった小生は読んでいない。
さて、この新作、帯に「ディクスン・カーをも凌ぐ歴史ミステリの傑作」とあるのだが、こちらも小生、カーの歴史ミステリを読んでいない。
カーで読んだ記憶のあるのは「皇帝のかぎ煙草入れ」「帽子収集狂殺人事件」「三つの棺」「火刑法廷」くらい。
舞台は1860年、日本の遣米使節団歓迎に沸き立つニューヨークで、その当時のアメリカの政情が詳しく書かれ、それをベースにした物語もたっぷりある。
はっきりいって書き込み過ぎ。
ミステリとしての面白さを半減させていると感じるが、それでも読ませるのは著者の筆力の確かさを示してはいる。
探偵役が誰なのか、最後まではっきりさせないが、登場する日本人にさせなかったのは読者の期待をあえて裏切るものなのだろうが、逆に盛り上がりに欠けたことになっている。
推理に関しては、犯人が行った聖書の暗示や“建設と破壊”の暗示などは納得はできるが、そこまでする必要があるかどうかというと、このあたり当時のアメリカの事情が絡んでいて、書き込みの量の多さもあって、あまり頭がまわらなかった。
まあ、密室のトリックや庭師の振る舞いのおかしさの謎解きはすっきりしているけど。
全体として、この書き込み量を評価するか否か、で評価が分かれるかもしれない。
評価すれば佳作、評価しなければ平均作、といったところか。

04.10.1

鳥飼否宇
『非在』

データ:

発行年   2005.8
発行所   角川書店(文庫)
単行本   2002.3
ISBN  4-04-373103-5
あっちゃんの感想:
 前回読んだ「中空」に比べると複雑で分かりにくかった分評価は下がってしまいました。人魚伝説や不老不死伝説を取り入れた点は面白かったのですが・・・ただこの著者非常に興味あります。
 次は「昆虫探偵」読みたいです。

06.2.26

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