<さ行>
彩胡ジュン 斎藤栄 斉藤純 斉藤肇 佐々木譲 笹沢佐保 佐藤賢一 佐藤正午 志賀直哉 篠田節子 篠田真由美 司馬遼太郎 柴田よしき 島田荘司 志水辰夫 首藤瓜於 殊能将之 城平京 新堂冬樹 真保裕一 新保祐司 菅浩江 鈴木光司 清涼院流水 瀬名秀明 蘇部健一 

彩胡ジュン

『白銀荘の殺人鬼』

データ:

 発行年   2000.6初刷り
 発行所   光文社(ノベルズ)
 ISBN  4-334-07390-5

あっちゃんの感想:
 評価:A

 著者の招待は誰かということで話題になった作品ですが内容的にもなかなかのものでした。多重人格の殺人鬼の一人称主体の作品ですからどう考えても叙述トリックものなんですが問題はどこにトリックがしかけられているのかということです。いろいろ楽しく考えながら読みましたがいやーやられてしまいました。まさかあの人物のあれがあれでしかもあのトリックを併用していたとは・・・見事です。今度読む時にはその伏線というか仕掛けを確認しながら読みたいものです。

02.6.1

斎藤栄
『飛鳥十字殺人事件』

データ:

 発行年    1992.11
 単行本    1980.10
 発行所    双葉社(文庫)
 ISBN   4-575-50391-6
あっちゃんの感想:
 斎藤栄はほとんど読んだことがなかった。触手が動かないというか、はっきり言えば喰わず嫌いだった。ところが最近他社でノベルズとして刊行された本書の内容紹介文を読んですごく読みたくなった。そしてリサイクル書店で本書を見かけさっそく購入して読んだ次第、いやおもしろかった。
作品構成が非常に面白く斬新だった。しかし実際は25年も前の作品なのだ。やや雑な面もあるがそれでも充分に楽しめた。

05.11.3

斉藤純
『銀輪の覇者』

データ:
 ハヤカワ・ミステリワールド
 ¥2000
内容:
 戦争の足音が忍び寄る昭和九年、軍部の暗躍から実用自転車を使用した前代未聞の本州縦断レースが開催される。多額の賞金を狙い寄せ集めチームを結成した響木、越前屋、小松、望月の四人は、各々異なる思惑を秘めつつ、有力チームと死闘を繰り広げるが…。一攫千金を目論む出場者の悲喜劇、ロードレースの戦略や駆け引きを、日本推理作家協会賞作家が圧倒的なリアリティで描く、感動の自転車冒険小説。
EGGさんの感想:
 斎藤肇さんと間違えて借りて来てしまったが、中々に面白いお話でした。以前読んだ『遥かなるセントラルパーク』を思い出しましたが、マラソンより自転車の方が、色々駆け引きや技術があって、それも面白い。物語の方も、サスペンスあり人情ありで、この人やるじゃんなどと思ってしまいました。久しぶりに、読んで満足の一冊。

P.S. ほんと余談ですが、亡国のイージス・映画化記者会見があったようで。仙石を真田広之!ってのけぞりましたけど、いい映画に仕上がって欲しいものです。

04.9.2

斉藤肇
『たったひとつの (浦川氏の事件簿)』

データ:

 原書房
 ¥1800
 2001/09/14 第一刷  

内容:
・たったひとつの事件
  アニメBBSのひとつの書きこみから、殺人者の気持ちを探り当てる浦川氏
・恥ずかしい事件
  ある女性と洞窟に閉じ込められた俺は、翌朝彼女が遠くで殺されたと知らされる。
・はじめての事件
  大沼君たちに頼んで捨ててもらったはずの冷蔵庫に、女性の死体が。あたしたちが疑われる前に、その死体を元に戻さなきゃ。でもこの人どこで殺されたの?

など、殺人にまつわるとりとめもない事件を「浦川氏」が解き明かす、不思議な連作。
EGGさんの感想:
 評価 85点
 はじめの口上で、全体がつながっていることを作者が示唆していたので、おぼろげな輪郭は浮かんでいましたが、8つめの「浦川氏のための事件」を読んで、「あはは、やられました」と、なかなか幸せな気分になりました。
短編一つ一つについて言うなら、「はじめての事件」が一番気に入ってます。「どうでもよい事件」も語り口が好きです。「閉ざされた夜の事件」は変り種で、新鮮。いまだに判らないのが「すれ違う世界の事件」ですが、考えるの止めました。

でも、この懲り方は尋常ではない。普通に書いちゃうと、ギャグミステリになるのがせいぜいの、まずあり得ない話を、こう言う趣向を使って綱渡り的に成立させた手腕(いや努力かな)がすばらしい。そのうえ、ラストのたった1行で、こんなにも読後感が幸せになるって、いやぁいいわ。作風変わった?

斎藤肇さん、『思い通りにエンドマーク』の三部作の人です。記憶ではただのドタバタミステリだったので、変だなと思って家にあるのだけ読み返してみました。

『思い通りにエンドマーク』 78点
『思いがけないアンコール』 78点
『思い上がりのエピローグ』 82点 3作の中で一番アクがなくて、読後感よし。
                  作中の名探偵論もポイント。
『殺意の迷走』       77点 嵐の山荘。
『盗まれた死角』      78点 パラレル世界。これ、清涼院の先取りですね。
『あいまいな遺書』     83点 文学風ミステリ。不可能な自殺死体。
                  この動機は、説得力があった。

ということで、いろいろ実験、冒険をしているのは分かりましたが、『あいまいな遺書』以外は、いまいち(何かが足りない)だったように思いました。ということは、斎藤さん化けたのかもしれませんが、趣味の人に見えますので、じっくりと気に入ったものを出してくれるかなと、少し期待しています。

02.4.26

佐々木譲 ストックホルムの密使 五稜郭残党伝
『ストックホルムの密使』

データ:

 発行年  1994.10初刷
 発行所  新潮社(単行本)
 ISBN 4-10-602735-6
あっちゃんの感想:
評価:特A

厚くて熱い、そして重くて(本)重い(テーマ)作品だった。
そして読むのがとてもつらかった。いくら主人公が頑張っても間に合わないことはわかっている。そして日本で8/15までにどんなことが起きるかも知っている。1945年8月、この小説の終わりは涙なしでは読めなかった。もちろん、主人公の冒険、人物造形よかったし重いテーマではあってもエンターティメント都市手のおもしろさは随所に見られる。しかしつらい、これが戦争中の日本だったのだ。もちろん、全てが史実であるとは限らない。反対にフィクションだからこそ歴史を雄弁に語ることができたとも言える。もう1つ、アメリカの行動を読んで思ったのは今回のイラク問題とウリそっくりだということ、他国のこと、言えた義理じゃないがアメリカも過去からなにも学んじゃいないね。この作品、間違いなく僕が今年読んだエンターティメントのベスト3には入るだろう。

02.9.25
『五稜郭残党伝』

データ:

 発行年  1994.2初刷(単行本:1991.1)
 発行所  集英社(文庫)
 ISBN 4-08-748133-6
あっちゃんの感想:
佐々木譲は太平洋戦争三部作を読んで非常に感心したが本作はさらに舞台が明治初期の北海道(蝦夷)、いやよかったです。船戸の「蝦夷地別件」ともダブるイメージはあったがまた違った感じでよかった。
佐々木譲。恐るべき才能である。 

03.12.7

笹沢佐保 人喰い どんでん返し
『人喰い』

データ:

 双葉社 推理作家協会賞受賞作全集
 ¥630
 1995/05/15 第1刷   

内容:
 花城佐紀子の姉が遺書を残して失踪した。労働争議で敵味方に分かれてしまった恋人と心中するというのだ。だが、死体が発見されたのは相手の男だけで、依然として姉は行方知れずのままであった。姉にかけられた殺人容疑を晴らそうと、佐紀子は恋人の豊島とともに調査をはじめた。
EGGさんの感想:
 評価 80点
 昭和36年度の受賞(当時は探偵作家クラブ賞)ということを加味すれば、もう少し点をプラスするべきなのでしょうが、私も当時とても幼かったので、このころのオトナの世界を共有することが難しいのです。
 ただ、もしこういった世相描写や細かい出来事、登場人物の価値観などが当時の現実に即していたのだったら、それらと本格ミステリーをうまく融合させたこの作品は、新しいミステリーとして迎え入れられたのも当然と思われます。
 ミステリとしては、メインのトリックが、ある名作のアレンジなので、ちょっとどうかと思わなくもありませんが、全体的にはよく出来ていたと思います。

02.6.6
『どんでん返し』

データ:

発行年  1984.5
発行所  徳間書店(文庫)
ISBN 4-19-56760-1
あっちゃんの感想:
 笹沢左保の作品を読むのは雑誌掲載を除ければこれが初めて、しかも非常にユニークな構成、登場人物が2人、あるいは3人という少なさでしかも会話体だけの物語、しかも書名から連想される構成上の制約、しかし笹沢は6つの作品にそれぞれ工夫を凝らし読む者をあっと言わせている。すごい作家だったのだ。

04.6.25

佐藤賢一
『王妃の離婚』

データ:
山本わおさんの感想:
 直木賞受賞作ということで佐藤賢一に初挑戦。
 フランスの歴史物を得意としている作者みたいですね。
 本作も昔のフランスの王妃の離婚裁判を描いたもので、新鮮な題材がおもしろかったです。
 しかし、主人公のコロナに頭を刈った中年の弁護士はかっこいいのだがいまいち姿が想像できなかったなあ。

02.11.10

佐藤正午
『ジャンプ』

データ:

 出版社:光文社(光文社文庫)
 価格:590円

あらすじ:
(光文社のHPより)
 その夜、「僕」は、奇妙な名前の強烈なカクテルを飲んだ。ガールフレンドの南雲みはるは、酩酊した「僕」を自分のアパートに残したまま、明日の朝食のリンゴを買いに出かけた。「五分で戻ってくるわ」と笑顔を見せて。しかし、彼女はそのまま姿を消してしまった。「僕」は、わずかな手がかりを元に行方を探し始めた。
 失踪をテーマに現代女性の「意志」を描き、絶賛を呼んだ傑作!
yobataさんの感想:
 2000年の週刊文春ベストミステリー7位、「本の雑誌」が選ぶ2000年の本ベスト1の話題作が文庫に入ったので読んでみました。
 現代女性の「意志」を描き云々とありますが、ちょっと違うんじゃないかな?と感じました。あのときこうすれば、とか、あのときこれをしなければ、とか、ミステリ的な趣向を借りて、人生における分岐点について描きたかったんじゃないかな〜。
 謎解きと云えるかどうかはともかく、真相は結構どぎつい感じ。なんとなくふわふわした文章が佐藤正午のスタイルなのかどうかは知りませんが、このあたりのどぎつさを和らげる効果はあったかも。それを狙った文体であれば、これはスゴイね。

02.11.24

志賀直哉
『清兵衛と瓢箪・網走まで』

データ:
くれい爺さんの感想:

志賀直哉は「暗夜行路」で有名な白樺派の代表的作家。
という小生は「暗夜行路」も読んでいないのだが。
この「清兵衛と瓢箪・網走まで」も文学音痴の小生は挫折しそうになった。
大阪まで出る予定があったので、往復2時間の電車の乗車時間をこの作品に当てて、読まねばならない状況を作ってやっと読みきった。
初期の短編を集めたものということで習作の印象が残るし、作者の作品全体から眺めればこの短編集の価値もある程度分かるのだろうが、この作品集のみを評価することは小生の文学的力量では無理というもの。
作品中の祖母に溺愛されてろくでなしに育ったという話があるが、小生の境涯にも似ていて、身につまされた。(笑)

                ろくでなしのくれい爺

03.12.2

篠田節子 斉藤家の核弾頭 女たちのジハード ゴサインタン ハルモニア
『斉藤家の核弾頭』

データ:

 発行年    2001.8初刷り(単行本:朝日新聞社1997.4)
 発行所    新潮社(文庫)
 ISBN   4-10-148412-0
あっちゃんの感想:
評価:B
ジャンル的には近未来SFとでもなるのでしょうか。しかしそれにしては突拍子もない未来像です。とんでもない設定でとんでもない展開、にもかかわらず読ませてしまいます。主人公は一見総一郎のように見えまますが実は総一郎の英雄的な行動以上に生彩があるのが斎藤家の女性たち、孝子、美和子、そして小夜子、特に小夜子の描き方はよかったですね。
なかなか評価難しい作品ですが小理屈とは別に楽しい作品でした。シリアスな展開にも拘らずどことなくコメディタッチなのもよかったです。

02.6.21

『女たちのジハード』

データ:

 発行年  2000.1初刷り(単行本:1997.1)
 発行所  集英社(文庫)
 ISBN 4-08-747148-9

あっちゃんの感想:
 読む前は男性である自分には距離感があるんじゃないかなと思っていたが実際はそんな事はなかった。主要な登場人物一人一人のドラマが絡み合いあきさせなかった。主人公は恐らく康子なんだろうけど僕は康子以上に紗織の生き方に惹かれた。

03.7.27
『ゴサインタン 神の座』

データ:

 発行年  2002.10
 発行所  文藝春秋(文庫)
 備考   第10回山本周五郎賞受賞作
 ISBN 4-16-760506-6
あっちゃんの感想:
 もっとホラー色の強い作品かなと思っていたが違っていましたね。でもくせは強いです。僕はずっと篠田節子をすごく評価していますが今までにないユニークな味です。最後はよかったですね。

04.8.6
『ハルモニア』

データ:
 発行年  2001.2
 発行所  文藝春秋(文庫)
 単行本  1998.1
 ISBN 4-16-760504-x
あっちゃんの感想:
 以前テレビドラマ化されたが1回だけ見たことがあった。その時はサイコサスペンス風で早く原作を読みたいと思ったがようやく念願がかなった。
 さて感想だが何と言う切ないラストでした。これ以外の解決はなかったのか、哀しいしかし清冽なラストでした。もちろんそこにいたる物語りも重厚でよかったですよ。

05.5.21

篠田真由美
『未明の家』

データ:
 発行年  2000.1
 ノベルズ 1994.9
 ISBN 4-06-268327-4
 シリーズ 建築探偵桜井京介の事件簿
あっちゃんの感想:
 本シリーズ、何となく読んでいなかったがようやく第1作目読むことができた。気になったのはミステリーであることを登場人物が過剰に意識しているような気がしたこと、それがリアリティをそいでいるような気がした。もう一点、桜井京介の助手の青だが何故学校にも行かずに京介の助手をやっているのか、暗い過去がありそうなのだが本作では明かされていない。楽しみは先にということも分からないでもないがちょっと奇抜すぎはしないか、全体的に作品の方向性が京極夏彦の妖怪シリーズに似ていると
感じたがどうだろうか

06.1.7

司馬遼太郎
『空海の風景』
くれい爺さんの感想:
“天才”という言葉で真っ先に思い浮かべるのは、小生の場合モーツアルトかな。
しかし私たちは“天才”という言葉をよく使うのだが、そう呼ばれる人物がなぜ天才なのかということを理解していることは少ないのではないか。
小生にしてもモーツアルトが“天才”だと思ってはいても、なぜ彼が天才なのかはよく分かっていない。
美しいメロディを紡いだから。
それもあろう。
しかし、美しいメロディならモーツアルトの交響曲でなく、歌の「ジュピター」だって十分美しい。
音楽的にモーツアルトの天才を理解するには、小生の音楽的な素養はほとんどないに等しい。
「アマデウス」はモーツアルトと同時代に、同じ音楽の道を歩みながら、モーツアルトの天才の理由が分かってしまう人間の苦悩を描いていた。
あるいは画家のダ・ビンチを“天才である”というときも、なぜ彼が天才なのかを理解するには、小生は絵画的素養にも欠けている。
たぶん大多数の人が小生と同じではないだろうか。
“天才”という言葉はよく使うが、その人物がなぜ“天才”という言葉に値するかを理解できる人は少ないのではないか。

この作品で司馬遼太郎は空海を“天才”と位置付けているのだが、著者自身もそれを理解しているとは言っていない。
空海という人物とその人生の風景を描くことによって、それを浮かび上がらせようとしているようだ。
ただ空海の思考を論理的、合理的だとしているが、それを解き明かすには膨大な真言密教の理論を解き明かさなければならず、それは著者の目的ではない。
それゆえに論理的、合理的という空海の思考も観念的にしか理解できない。

それにしても空海っていうのはヤな奴だねえ。
こういう奴は、同行したくないタイプだな。
著者の意図してか、せずかはわからないが、そういうのが伝わってくるね。
最澄は天台の思想を伝えるだけは伝えたが、その理論をまとめあげられなかった能無しだが(ゆえに天台は後にそれを肯定しようと否定しようと、そこから新しい仏教が多く生まれたし、あるいは現代の法華経の隆盛があるのかもしれない)、人間としては“いい人”だな。

今年は空海の入唐1200年ということで、そういう空海の評価を見直す意見も出てきているようだが。

04.4.25

あっちゃんのRES:
「空海の風景」は随分前に読みました。平安時代前期までが舞台の歴史小説は大学時代から就職して数年間は結構読んでいました。この作品もその時期でした、映画化されましたがそれも映画館に見に行きました。空海は早張り一種の天才だったんでしょうね。しかも政治的な手腕にも長けていましたし現在で言う知的エリートといったところでしょうか。それに比べて最澄はどちらかといえば凡人タイプかもしれませんね。

04.5.8

柴田よしき
『禍都』

データ:

 発行年    1997.8初刷
 発行所    徳間書店(ノベルズ)
 ISBN   4-19-850387-7

あっちゃんの感想:
クトゥルー神話(本文中にはその名称は出てこない)と日本妖怪の復活とくればどうしたって栗本薫の「魔界水滸伝」を思い浮かべてしまいます。文体は違うものの設定等はよく似ています。特に伝奇シリーズの場合これはある程度仕方ないことかもしれません。要はその上でいかにシリーズ独自の独自性をうちだすかでしょう。このシリーズに関してはその点、一応成功していると言っていいでしょう。個性豊かな登場人物、(珠星、三善坊なんか最高です。)京都という土地へのこだわりなどおもしろいです。
最初読み始めるときは長いのでうんざりしましたが話が進むに連れ気にならなくなりました。
 柴田よしき、篠田真由美、古くは笠井潔・栗本薫等、ミステリーと伝奇という相反する要素を持つジャンルを書き分けている作家も何人かいますがちょっとおもしろいかなと思いました。

02.8.3

島田荘司 ハリウッド・サーティフィケイト ロシア幽霊軍艦事件 最後のディナー 天に昇った男 吉敷竹史の肖像 魔神の遊戯 上高地の切り裂きジャック セントニコラスの、ダイアモンドの靴 御手洗潔のメロディ Pの密室 透明人間の納屋 ネジ式ザゼツキー 摩天楼の怪人 龍臥亭事件

『ハリウッド・サーティフィケイト』

データ:

 出版社:角川書店
 出版日:01.8.10
 価 格:\2100
  ISBN :4-04-873321-4

あらすじ:
 LAPD(ロスアンジェルス市警)重要犯罪課に持ち込まれたヴィデオ・テープ。そこに映っていたのは、ハリウッドの有名女優・パトリシア・クローガーが自邸で何者かに襲われ、惨殺される様だった。しかも、殺害された後、腹をノコギリで切り裂かれ、子宮と背骨の一部が奪い取られていた。ヴィデオの中で犯人が口ずさんだ「P・A・T・T・Y・I・A・N」は何を意味するのか? LAPDは、パティの親友の女優・レオナ・マツザキに連絡を取った。親友の敵討ちに燃えるレオナは、一人の女優志望の女性と会うことになる。ジョアン・ヴィネ
シュ。なぜか記憶を失っており、何者かによって腎臓と子宮、卵巣を盗まれていた。覚えているのは、イギリスでイアン・マッキンレーという民俗学者と暮らしていたことと、彼が語って聞かせてくれた『ケルトの伝説』だけ。「子宮」にまつわる話が多いその伝説に、レオナは事件との奇妙な符号を感じた。一方でLAPDに新たなヴィデオ・テープが送られてきた。次の犠牲者はローレン・トランプ。パティやレオナに比べれば、はるかに無名に近い女優だった…。
(帯より)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、実はもう島田にはあんまり期待をしていなかったのですが、その少ない期待からすると、かなりいい出来の部類に入るはずの話です。しかし、いい出来の部類にはいる「はず」なのに、読後感は大したことない。何故?

 子宮と卵巣を奪われ、記憶を失ったジョアンの過去に潜む秘密とか、ケルトの神話、大規模な臓器密売組織の活動など、凄い大風呂敷を広げて、それなりに畳んで見せる技術、さらに意外な犯人と意外な真相、といったあたりはかなり評価できるはず。ですが、その大規模な犯罪組織がどうしてこんな阿呆な副業を?とか、細部にはかなりアラが目立つような気がしました。
 で、極めつけはレオナの阿呆さ加減でしょうねえ。自分を過信してとんでもない無茶やって、大した考えもなしに行動した結果さんざ危ない目にあって、あげくの果てに人の命が失われていく。
 こいつが登場しているかぎり島田のミステリに未来はないなあ、と思わずにはいられません。

 なんかラストを読むと、この話はさらに発展して続編へと繋がっていくような雰囲気です。まあ、期待しないで待ちましょう(笑)。

01.8.28
『ロシア幽霊軍艦事件』

データ:

 出版社:原書房
 出版日:01.10.16
 価 格:\1600
  ISBN :4-562-03436-X
 初 出:季刊島田荘司02(2000年9月)に掲載された同名中編を大幅に加筆修正し、あらたにエピローグを追加。

あらすじ:
 箱根・芦ノ湖の、突如浮かび上がった巨大軍艦。一枚の古い写真から未曾有の歴史が甦る――。
「出たんです。そりゃあもう、それまで見たこともないような、とんでもなく大きな軍艦ですね。……舳先にはこう、双頭の鷲の紋章が描かれた白い旗が立っていて……ロマノフの皇太子の軍艦が、黄泉の国から賽の河原に戻ってきたんですな」
(折り込みより)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、島田荘司の新刊です。芦ノ湖に突如現れたロシアの軍艦という、いかにも島田らしい不可能現象の謎解きと、帝政ロシア、ロマノフ王朝の最後の皇女、アナスタシアを名乗る女性の謎という歴史ミステリを融合した、なかなかの力作でした。レオナが出しゃばらない分だけ『ハリウッド・サーティフィケイト』よりも良かったです。
 今後もこれくらい大人しくしていて下さい>レオナさん。

 今回はいつもの悪い癖であるところの、ロマノフ王朝の再現うんちくストーリーが「途中」に挿入されていないのがいいのですが、でもやっぱりエピローグには挿入されてます(笑)。まあ、それなりに泣かせるストーリーだし、一応パクリなしのオリジナルと思われるので、これはこれでいいのかもしれませんが。

01.10.31
『最後のディナー』

データ:

 講談社ノベルズ
 2001/12/05第一刷(99年原書房から出版)
「里美上京」「大根奇聞」「最後のディナー」の三篇が収録されています。
EGGさんの感想:
 評価82点
 里美という子(龍臥亭事件の関係者)のことがまったく記憶に無く、その上あの事件(石岡と御手洗の出会った)まできれいに忘れています。ミステリー味は少なく、里美と石岡の後日談、つまりはキャラクター小説になっているためどちらも読み返してみました。

 『はじめの事件』(読んだ方はお分かりでしょうが、故あってタイトルは明かせません)再読評価82点 ずいぶん強引なトリックですな。ただし終盤、恋人を失って喰ってかかる石岡に、冷静な対応をする御手洗はオトナって感じがしてなかなかよかった。

で、これを読み返して「里美上京」と照らしてみると、横浜散策のシーンなど、まさにこの20年前の事件を引きずっているわけです。これには参りました。愛していたから彼女を忘れられない、というのであればそれは美談といってもよい(かもしれない)のですが、彼の場合、自分のだめさ加減の証拠品としてあの事件を忘れられないという面もあるので、ちょっといただけません。ましてや龍臥亭事件では、

 『龍臥亭事件』再読評価 90点 当時問題になった剽窃部分は置くとして、石岡が一生懸命なところいいと思ったし、鳥の絵を書いた新聞紙をはじめとする小道具が探偵小説らしくて、ぞくぞくしました。やはりこの作品、個人的に相当好きな部類に入るんだなぁということを再確認したしだい。

あんなに頑張って、何とか事件を解決し、帰郷する列車の中で、自分が変われそうだと泣いていたにもかかわらず、何でまた元に戻ってるんだろうか。同情するというよりは、あまりの情けなさにひくひくと笑ってしまいました。あとはツッコミね。「50男のどの口から(どうせ僕なんて…)などというセリフがでてくるんだぁ!自分をおとしめるのも大概にせーよ!」

まあ、今回の事件はすべて里見がらみで、そこは割り引いてあげないといけないのかも。初対面のときから、石岡は里美に翻弄(笑)されていたようで。50歳にもなって「初心(うぶ)」も無いもんだが、とにかく石岡にとって里美ちゃんは弱点らしい。

3篇とも人情話(世話物)としては結構いい話なのだけど、こんな石岡が物語りの中心に居座っているというのが、ものすごく違和感があるというか気持ち悪いので、次の事件まで、石岡さんは放っておこうかと思います。(もう一発、大量殺人事件を解決しないと、だめなのかなあ?はぁ〜 ため息)

02.5.17
yobataさんの感想:
 冒頭の掌編は里美が上京して、石岡と再会するまでを描いた作品で、ミステリらしさは微塵もありません。表題作と「大根奇聞」はそれなりのミステリ。石岡くんは相変わらずで、御手洗にFAXで助けを求める。一方の御手洗も相変わらずで、推理のキレはすばらしい。「大根〜」の出来が良く、個人的には好き。

 今年もあまり本は読めませんでしたが、古本蒐集に手を染め、ロス・トーマスの立風書房から刊行された作品群をコンプリ〜トできたのが収穫でした。読んでないけど... 今年も一年ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。皆様良いお年を...

02.12.30
あっちゃんの感想:
 おーい、石岡君(設定では僕よりも10歳は年上なんだが・・・)と言いたくなるような3作品でしたね。「里美上京」はミステリーではないのでここでは触れない。「大根奇聞」は歴史ミステリーと言うのであろうか、御手洗の安楽椅子探偵型の推理が冴えていた。
「最後のディナー」はキリスト者があのような思考と行動をするだろうかと言う疑問は抱くが物語としてはとても余韻の残る作品だった。
ミステリーとしても上出来だったが・・・

05.12.4
『天に昇った男』

データ:

 発行年  1994.10初刷
 発行所  光文社(文庫)
 ISBN 4334-71945-7
あっちゃんの感想:
 島田荘司の言いたいことは痛いほどわかるが結末があまりにもむごい、悲しすぎる、主人公の魂は天に昇っていたのだからそれが救いだともいえるがそれでもやりきれなさが残った。

02.11.16
『吉敷竹史の肖像』

データ:

 出版社:カッパノベルス
 価格:1143円

あらすじ:光文社のHPより
「秋好事件」という現実の事件を材にに取って、一編の詩を思わせる美しい風景を作中に現出させた渾身の書下ろし最新作「光る鶴」と、吉敷竹史はなぜ刑事になったのか、そのきっかけとなった「最初の事件」を瑞々しい筆致で描いた珠玉の青春小説「吉敷竹史、十八歳の肖像」。ファン待望の書下ろし二編に、イラスト&エッセイ、対談、作品紀行グラフ、事件年史表など、吉敷竹史攻略編も充実したシリーズ最新作。
yobataさんの感想:
 「光る鶴」は短めの長編で、「秋好事件」を下敷きにした作品。この事件がなぜ冤罪で、真相はどこにあるのか、といった持論を展開するために書かれた作品。ただ、「冤罪である」という前提で書かれているため、被害者側の視点には欠けてます。その理論は結構整然としていて、すべて実際の事件どおりなのであれば傾聴に値するとは思います。
 他にイラスト&エッセイと弁護士との対談、事件史、短編「吉敷竹史、十八歳の肖像」などが収録されています。本としては豪華ですが、中身は薄めか。

02.12.23
あっちゃんの感想:
 吉敷好きに取っては読まざるを得ないでしょう。もう少し書誌上のデータがあってもいいような気もしましたがまあノベルズですからねえ・・・中編「光る鶴」はいかにも吉敷ものというものでよかったです。

04.12.5
『魔神の遊戯』

データ:

 出版社:文藝春秋(本格ミステリ・マスターズ)
 価格:1857円

あらすじ:文藝春秋のHPより
 スコットランド、ネス湖畔の小村でバラバラ殺人が発生!? 氷の魔王の叫びが地を震わせ、空にはオーロラが。御手洗の名推理やいかに あの名探偵・御手洗潔が、「本格ミステリ・マスターズ」の幕開けに登場します。スコットランドはネス湖のほとりの寒村、ティモシーで、突如として発生した凄惨な連続バラバラ殺人事件。空にはオーロラが踊り、魔神の咆哮が地を揺るがす中、切り刻まれた人体の一部が、一つ、また一つと発見される。スウェーデンのウプサラ大学で脳科学の教授を務める御手洗が勇躍乗り込むが……。本格ミステリの面白さがすべて詰まった渾身の書き下ろし長篇。
yobataさんの感想:
 御手洗潔の登場する長編を読むのは久しぶり。往年の切れ味鋭い大がかりなトリックを期待するのは酷な気もしますが、語り手が石岡ではないのを逆手に取った点は見事。

 この「本格ミステリ・マスターズ」という叢書は、文藝春秋の80周年記念出版なのだそうです。80周年記念の書き下ろしというと、講談社でも同じことをしてましたね。講談社の80周年記念書き下ろしのほうでは、島田荘司の「異邦の騎士」「暗闇坂の人喰いの木」、連城三紀彦の「黄昏のベルリン」、高橋克彦「北斎殺人事件」「広重殺人事件」、船戸与一「伝説なき地」、岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」、東野圭吾「眠りの森」、逢坂剛「十字路に立つ女」などの傑作が出ましたが、この「本格ミステリ・マスターズ」の今後にも期待ですね。先に挙げた講談社の書き下ろしシリーズは我が家の本棚にも並んでたんですが、スペースの都合で手放してしまい、後悔しきり。昨年末にあった、伊勢丹の古書展では「暗闇坂の人喰いの木」の程度の良い初版本があったので、思わず買ってしまいました。

03.1.6
EGGさんの感想:
 読んでいる間は、なかなか面白かった。だけど、後で思ったのは、もし犯人が真剣に完全犯罪を願っているのだったら、まず先に御手洗を始末しておかなければならないだろうということ。この能天気さは、ちょっと傷だと思うんだけどなあ。それとも、こんなにニュースになったのに、うまく処理する自信があったのだろうか。

03.7.31
『上高地の切り裂きジャック』

データ:

 出版社:原書房
 価格:1600円
 書き下ろしの表題作と、季刊島田荘司に掲載された中篇「山手の幽霊」を併録。
yobataさんの感想:
 御手洗潔シリーズの最新作。収録されている作品はふたつとも中篇でした。「上高地の切り裂きジャック」は御手洗が海外に行って以降の事件を扱っているのに対し、「山手の幽霊」は90年頃の事件となっています。「上高地」は、推理ではなく知識によって解決されてしまう最近の御手洗ものの典型で、それなりに面白かったもののやはり少々不満。対して「山手の幽霊」は「暗闇坂の人喰いの木」を思わせる不気味さと面妖さがあり、久々に堪能しました。ただ、90年頃に携帯電話を持っている警察官は居なかったと思うが...

03.3.19
kikuchiさんの感想:
「上高地の切り裂きジャック」
 事件の内容こそ猟奇的で島田チックではあるものの、そのトリック(?)については非常にオーソドックスで、ある意味島田荘司らしくなかったりするかも。でもラストの展開はいかにも御手洗的、島田的でした。で、この事件で御手洗の推理の根幹をなす「知識」についてですが、先日ディスカバリーチャンネルでやってるのを見ました。そういえば『ロシア幽霊軍艦事件』のアナスタシアのエピソードはヒストリーチャンネルからネタを拾ったとあとがきで書いてましたから、あいかわらずネタの出所が分かりやすい人ですね(笑)。

「山手の幽霊」
 「セントニコラスの、ダイアモンドの靴」に引き続きここでも何故か穴掘りに凝っている御手洗・・・。とても現実的とは思えないような出来事が有機的に結びついてきれいに謎が解かれる、という意味では良くできているし面白かったです。事件の解決に必要な情報がすべて勝手に向こうから御手洗の所へ寄ってくるというご都合主義は、「IgE」どころか「ギリシャの犬」の頃からのことですから気にせずに(笑)。
 ちなみに作中に出てくる幻肢のエピソードはすべてV.S.ラマチャンドランの『脳の中の幽霊』からの引用ですが、もうちょっとちゃんとメカニズムを解説しないと不親切ですね。ってゆうか、是非『脳の中の幽霊』を読んで下さい。

03.4.15
EGGさんの感想:
「上高地…」の感想
20年から30年ぐらい前に、普通のレベルの中堅推理作家が使いそうなトリックだと思うんですが、それをこれだけ不思議な状況だと思わせてしまうのは、島田荘司の技術なんだろうか。
その分、ネタを割ったときに、私はどこが不思議だったのかと考え込んでしまったが。
ところで、こうやって、石岡と里美の微妙な関係が続いていくのですね。
なんかさ、事件よりもそっちのほうがきになっちゃって。80点
「山手の幽霊」の感想
季刊島田荘司のvol-01というのは、買って読んでいました。
それに載っていた中篇なのではないかな。細部を忘れていたので、再読。
平成2年の事件ということですが、御手洗と石岡の関係は、もう少し昔の設定のような気がします。御手洗の暴走は榎木津さんに比べればかわいいものだが、周りがあたふたするのを見ると、心が和みます。すっごい強引な密室トリックですが、島田的小道具(これは伏線というより荒業)で読者をねじ伏せたという感じ。島田好きの方にはお勧め。82点

03.7.31
『セントニコラスの、ダイアモンドの靴』

データ:
 原書房
 2002/12/24
 ¥1500

内容:
 偶然訪れた老婦人の何気ない一言で、御手洗は重大事件の進行を察知、行動を開始する。しかし、人質は解放されたものの盗まれた宝石の行方は知れなかった。
EGGさんの感想:
 初期の事件を回想。「山手の幽霊」と同じアイディアから生まれたのでしょうが膨らませ方が上手で、まったく気になりません。いい話だし。ただ、1/3くらいは刈り込んだほうが、ドラマは締まったと思います。 80点
03.7.31
『御手洗潔のメロディ』

データ:

講談社
EGGさんの感想:
 未読だったもので、試してみました。
「IgE」
 あるファミレスで男子便器がしつこく壊されるという話から、あれよあれよの展開で、堪能できました。
 本人は違うと言うかもしれませんが、御手洗シリーズ(特に中短編)は、ホームズの直系であると、あらためて意を強くしました。
「さらば遠い輝き」
 ミステリではなく、レオナさんの失恋(?)のはなし。
 ここまで証拠(笑)を、よこしまな女性ファンに提出してしまっても良いのだろうかと、私は笑ってしまいました。

03.8.19
あっちゃんの感想:
 久々の御手洗シリーズ、しかも短編集、一番気に入ったのは「IgE」でしょうか。全く別々の事象を結び付けて真相を暴くというう展開はすごいです。「ボストン幽霊絵画事件」も些細な出来事から犯罪を感じ取っていくというのがすごいですね。残りの2編もミステリーではなかったが味わいがありました。

04.1.20
『Pの密室』

データ:

講談社
EGGさんの感想:
 御手洗少年、まるで「名探偵コナン」みたい。(絶対に、それ以上だ)キャラクターものとして読むなら、最高の部類に入ると思います。(すっげーおもしろかった)
愚かな駐在や刑事達を懐柔しながら、闘う「少年御手洗」。いいっ!!証拠だってどんどん消えていきそうなのね。誰も相手にしてくれないから。このサスペンス。
それでズバズバいろんな事言い当てていくのね。すると、刑事たち驚くわけだ。
まあ、石岡と組んだ初期のころもそうだったけど、少年がやるとね、迫力が違う。
これは結構快感だよ。もっともっと潔少年の活躍が読みたいなあ。 90点

03.8.19
あっちゃんの感想:
 おいおい、こんな幼稚園児いるかって突っ込みたくなりますね。僕は「鈴蘭事件」のほうがよかったですね。無関係としか思えない断片を組み合わせて真相を見抜くところは快感を感じます。

05.12.28
『透明人間の納屋』

データ:

講談社
EGGさんの感想:
これ、ほんとに少年向けに書いたの?? 少年は主人公だけど....
もし真剣に島田さんがそのつもりで書いたなら、ある意味,島田荘司ってすごいや。
S50年代のある事件に遭遇した男の子の回想なのですが、事件よりも少年の心の動きが主題なのでしょう。それはそれなりに成功しているように思います。いつもと文体が違うし。しかし、事件の背景は.......
あっと驚くというか、つくづく島田荘司ってナンでもアリな人なんですねえ。

03.8.19
『ネジ式ザゼツキー』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:03.10.5
 価 格:\1150
 ISBN :4-06-182341-8

あらすじ:
 記憶の一部をなくした男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。
蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機――。
そして彼の肩甲骨には翼のなごりがあった!妄想としか思えない男の話から、御手洗
潔が導きだした真相とは何か――!? 驚愕の結末が待つ本格ミステリー!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 帯に「講談社ノベルズ初の書き下ろし」とか大嘘が書いてありますが、『斜め屋敷の犯罪』の存在を知らない編集者が書いたのだろうか? まあ、それはさておき。
 手記や物語から実際起こった事件を導き出して解決に導くというのは島田に限らずよくあるパターンとは思いますが、ここまで想像力を極めたファンタジーの物語が実は実話で・・・というのにはなかなか出会えません。まあ、このパターンでの私のベストはというと例の作家の例の作品なんですが、これもかなりイイ線いってるのではないかと思います。
 で、その実際の事件が首が切断されて、ネジを突っ込まれて繋げられている死体っていうのがまた凄い。なんで犯人はこのような細工を死体に施したのか? という謎を、非常にきれいに解決を付けているところが島田荘司の本領発揮といえるでしょう。そういう意味では評価できる面白い話でした。

 エゴンの症状は、『妻を帽子と間違えた男』(オリバー・サックス)の第二章「ただよう船乗り」で紹介されているもので、これをモロに参考文献にしたんだろうなあ、とすぐ分かる、かなりよく似た描写が見られます。ネタの拾い所があいかわらず分かりやすいことです。ただ、なんで普通の記憶喪失にしなかったのか、意図がよく分かりません。
 意図が分からない、というと、なんで本文が横書きなのか、どんな効果を狙ったものなのか作者の意図が全く不明です。枚数稼ぎ? 普通の段組で書けばたぶん800円くらいの厚さになるであろう本が1150円だし、読みにくいのでやめて欲しいです。本当に。

03.10.26
『摩天楼の怪人』

データ:

 出版社:東京創元社(創元クライムクラブ)
 出版日:05.10.31
 価 格:\2857
  ISBN :4-488-01207-8
 初 出:ミステリーズ!vol.3〜vol.11(2003年12月〜2005年6月)に掲載されたものを大幅に加筆改訂

あらすじ:
 1969年、ニューヨーク、マンハッタンの摩天楼にあるセントラルパーク・タワー・ビルの34階の一室で、死を目前にした往年の大女優が、50年近く前の殺人事件の犯人は自分なのだと告白した。
 1921年の嵐のその晩、彼女が犯したという不可能犯罪。停電したその夜、34階にいた彼女が1階にいたプロデューサーをわずか15分の間に射殺したというのだ。
 アリバイがないのは、わずか15分間だけ。その前後、彼女は確かに34階の自分の部屋にいたことが確認されていた。
 そんな犯罪を犯すことが彼女に本当にできたのか?
 そして、彼女の言うファントムとはいったい誰なのか?
 コロンビア大学助教授の御手洗潔に、この謎を解いてみせよ、と言って大女優は息をひきとった。 セントラルパーク・タワーを建てた建築家、オーソン・タルマッジの爆死の謎、彼の持っていた不思議なヒエログリフの意味するものは? 駆け出しだった彼女のまわりで続いた、女たちの不可解な自殺の真相は……?
 御手洗潔が摩天楼の謎に華麗に挑む。

 常に本格ミステリ界のサミッターでありつづける島田荘司の更なる頂点!
(東京創元社HPより)
kikuchiさんの感想:
 一言で言ってしまうと、島田荘司にしか書けない壮大なファンタジーとでも言いましょうか。うん、こういうのは本当に島田にしか書けないだろうなあ。他の作家が書いてもきっとぜんぜん様にならないでしょう。
 出来事としては1969年のことらしいので、占星術よりも前の話になります。御手洗いくつだよ!(島田荘司と同い年だとすると、21歳の時のこと。いくら飛び級のあるアメリカとはいえ、助教授になるには若過ぎないか?) その後どんな曲折があって日本に戻り占星術師を開業するに至ったのか、気になるところではあります。
 人為と偶然が織りなす壮大な舞台装置と悲劇、そして犯罪。細部にアラは目立つ、というか、一連の女優殺しなんて明かされてみれば苦し紛れのムリムリなトリックだったりするわけですが、そんなことどうだっていいと思わせてしまうほどのスケールのでかいロマン溢れるファンタジーでした。

05.11.9

あっちゃんのres:
 ミステリ−ズ連載で途中まで読んでいました。何か「オペラ座の怪人」っぽい設定が出て来たりしてよくわからなくなりました。島田荘司も何とか追いつきたいとは思っているんですけどねえ・・・「魔神の遊戯」文庫になりましたし、感想アップ待機中なのが「最後のディナー」で次に読む予定なのが「Pの密室」です。

0.11.9
『龍臥亭事件』

データ:

発行年  2004.10
発行所  光文社(文庫) 
あっちゃんの感想:
 久々に奇想天外な不可能(解)現象とその合理的な解決という島田荘司の
本格ミステリーを堪能できました。「最後のディナー」や「Pの密室」では情けない中年男性であった石岡君(年上に君付けもおかしいが)が本書では立派に主役を務めているのも奇妙だが頼もしかった。ただ僕としては
 最大の謎が吉敷や御手洗ではなく真犯人の手紙という形で語られるというラストはちょっといただけない。まあ作品の形としてはありなのだろうけれども・・・それにしても御手洗・吉敷夢の競演というにはちょっと物足りない、今度は是非直にとぴうのは望みすぎであろうか、
 それと吉敷と通子が正式に復縁しているのならば表記が加納通子ではなく吉敷通子のはずなのだがこのあたりの事情はどうなっているのだろうか。(石岡の一人称小説なので加納のままという感じはしたが)

06.1.14 (管理人注:ネタバレと思われる部分がありましたので、背景色で隠蔽しました)

志水辰夫 こっちは渤海 深夜ふたたび 帰りなん、いざ 行きずりの街

『こっちは渤海』

データ:

 発行年   1990.8初刷り
 発行所   集英社(文庫)
 ISBN  4-08-749617-1
 初出    単行本:1988.6
 備考    このミス’88国内編14位

あっちゃんの感想:
評価    B
 志水辰夫を読むにははこれが初めてです。このミス国内編ベスト20未読図書読破計画によって読むこととなりました。僕が志水辰夫で知っていることは「このミス」ベスト20の常連ということと守備範囲が広いということ、またその文章を「シミタツ調(節だったか)」と呼ぶ人もいるということぐらいです。本書に関しても書名から多分「ユーモア小説」だろうなということが想像できただけで全くの未知数でした。実際読んでみて「蝦夷地別件」を読んだ後だけにこんな楽しい話があってもいいじゃないかと思いました。登場人物井が自分が小説のキャラクターであることをわかっていたりご都合主義に開き直っている点など一種の懐かしさを覚える作品でした。おもしろかったですよ。リサイクル書店で250円で買ったという限りにおいては・・・

02.4.29
『深夜ふたたび』

データ:

 発行年  1993.6初刷り(単行本:1989)
 発行所  徳間書店(文庫)
 ISBN 4-19-587610-9
あっちゃんの感想:
ごめん、おもしろくなかった。設定は魅力的だったんですよ。ただのめり込めなかったと言うか、一人称だったのが悪かったのか,知らない土地を移動するという話だったせいか、描写も自分には冗長に感じましたし迫力に乏しかったです。どうも志水とは相性が悪いみたいです。これからも「このミス読破計画」で何度か読むことになりますので次回に期待しましょう。

『帰りなん、いざ』

データ:

 発行年  1993.7初刷り(単行本:1990.4)
 発行所  講談社(文庫)
 ISBN 4-06-185397-X
あっちゃんの感想:
 多少セリフがわざとらしいと言うかくさかったが今まで読んだ志水の作品の中では最もよかった。(と言ってまだ3冊だが)またはストーリー展開としてはあんな結末になっていくとは思ってもいなかったのでちょっと驚きました。今回もそうだったが志水の作品はこのミスベスト20に結構選ばれているのでこれからも楽しみにしてみたい。

03.6.22
『行きずりの街』

データ:

 発行年    1996.1初刷(単行本:1990.12)
 発行所    新潮社(文庫)
 ISBN   4-10-134511-2
 備考     日本冒険小説協会大賞受賞作
あっちゃんの感想:
 昨年から数冊志水の作品は読んだがいずれも評価は合格点に達していなかった。しかしこの作品は違っていた。作品全体が熱くわざとらしい描写やセリフもあまり気にならなかった。主人公を始め登場人物一人一人の造形がいい。志水を見直した。

03.9.28

首藤瓜於
『脳男』

データ:

 発行年   2003.9
 単行本   2000.9
 発行所   講談社(文庫)
 ISBN  4-06-273837-6
 備考    第46回江戸川乱歩賞受賞作
あっちゃんの感想:
 僕には珍しいことですが江戸川乱歩賞受賞作としては読んでみたかった作品です。何と言っても「心を持たない男」と言う設定に惹かれましたね。
読むまではサイコサスペンスかななんて漠然と想像していましたが違いましたね。主要な登場人物の鷲谷真理子の過剰気味の熱意が多少気にはなりましたが引き込まれる作品でした。

05.11.6

 

殊能将之 黒い仏 鏡の中は日曜日 美濃牛 樒/榁
『黒い仏』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:01.1.10
 価 格:\760
 ISBN :4-06-182167-9
  帯 :名探偵が世界を変える!

あらすじ:
 九世紀、天台僧が持ち帰ろうとした秘宝とは。助手の徐彬(アントニオ)を連れて石動戯作が調査に行った寺には、顔の削り取られた奇妙な本尊が。指紋ひとつ残されていない部屋で発見された身元不明の死体と黒い数珠。事件はあっという間に石動を巻き込んで恐るべき終局へ。ついにミステリは究極の名探偵を現出せしめた!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 さて、私が今もっとも注目している作家の一人、殊能将之の新作です。前作『美濃牛』に引き続き、名探偵石動戯作が登場しておりますが、今回はあんまり主役という感じがしません。助手のアントニオが実は主役だったりします。で、この話はどうなんだろう・・・。前2作とは作風ががらりと変わっていて、これは「推理小説」ではありません。あえてジャンル分けするならホラーか、あるいはファンタジーと言った方がいいのかなあ。
 そういうわけで作品としては評価不能なんですが、一ついえることは、この帯のセリフ「名探偵が世界を変える!」は近年まれにみるヒットではないかと。私の中で過去の帯ベストは志水辰夫『花ならアザミ』なんですが、内容の深みからするとこちらの帯が上です。本文を読む前と後でこれだけアクロバティックに意味が違って見える帯というのはそうは無いです。というわけで、帯を考えた編集さんが影のMVPなのでした。

01.1.14
あっちゃんの感想:
評価     D−
呆れてしまった。そして悲しくなった。確かにおもしろいねたであろう。しかしそれを支えるお話があまりにも貧相、思いつきだけで執筆したとしか思えない。こんな浅はかな作品を読まされたら白けてしまうだけである。これが「ハサミ男」や「美濃牛」と同じ作家の書いた作品であろうか。
情けない、情けない 僕はD−という評価をしたが僕の評価ではEというのはミステリーとして許されざる反則を犯した作品か文章が幼稚園レベルの作品に与えるものでまだ5作品しかない。通常の小説では評価Dというのは最低と考えてもらっていい。しかも−をつけたというのは後一歩で評価Eになるということだ、本を引き裂きたくなったりしなかった分ましといったところか、刊行されている殊能の作品で読んでいないのは後2作、これは読みましょう。しかし同じようなレベルの作品をもう一度書いたら殊能は見限るしかないでしょう。

02.6.18
『鏡の中は日曜日』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:13.12.5
 価 格:\820
 ISBN :4-06-182222-5
  帯 :かくて閉幕――
    名探偵、最後の事件!
    歪な館、梵貝荘の惨劇。名探偵の死にざま。

あらすじ:
 鎌倉に建梵貝荘は法螺貝を意味する歪な館。主は魔王と呼ばれる異端の仏文学
者。一家の死が刻印された不隠な舞台で、深夜に招待客の弁護士が刺殺され、現
場となった異形の階段には一万円札がばらまかれていた。眩暈と浮遊感に溢れ周
到な仕掛けに満ちた世界に、あの名探偵が挑む。隙なく完璧な本格ミステリ!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、殊能将之の新作です。
 帯がいきなり「名探偵の死にざま!」で、初っぱなで石動戯作が殺されちまうし、どうなることかと、事件の成り行きよりもそっちが気になりました。まあ、名探偵が最初、ないし途中で死んでしまう話というのは他にもあるけどね、信濃譲二とかメルカトル鮎とか。ただ、本格に破格を持ち込むことで定評のある殊能将之のやることだからなあ、本当に殺しかねないよなあ、と。
 ここに触れるとどう書いてもネタバラになるので、この先具体的な感想が書けないのですが、とりあえず面白かったです。館トリックや名探偵そのものに対する皮肉(パロディ?)が冴えているし、博覧強記なうんちくも面白い。で、著者の公式ウェブサイトに載ってますけど、登場人物名がまた凝っていること。

01.12.28
あっちゃんの感想:
 出だしが何となくぎこちなかったが第2章からはすんなりと読めた。あんなトリックとは思いもしなかったので見事にやられてしまいました。14年前の殺人の動機もすごいけど現代の事件の真相はもっとすごかったです。うかつに書くとすぐにネタ晴らしになってしまうほど伏線を張り巡らしていたんですね。「黒い仏」を読んだ時はどうなることやらと思いましたがこの作品を読んで一安心しました。

03.1.11
『美濃牛』

データ:
 発行年  2000.4初刷り
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182123-7
あっちゃんの感想:
 前作「ハサミ男」が非常におもしろかったし本作のうわさは前作以上だったので非常に期待していました。結果的にはその期待度が大きすぎました。わらべ歌に隠されていた秘密、真犯人の秘密等なかなか凝っていましたが僕は勝手に金田一シリーズ風のものを創造していたのその点、仕掛けが小粒に感じてしまいました。しかしもちろんこの作家のパワーは確かなものです。新聞広告を見たとたんに読みたくなった次回作「黒い仏」を読むのを楽しみにしておきましょう。

02.3.12
山本わおさんの感想:
 殊能将之初挑戦は「美濃牛」にしてみました。
題名から美濃地方の田舎の地下に迷宮があって、そこで本格的な謎解きがある・・・ような話を想像してたんですが全然違ってましたね。
どちらかというとトリックの斬新さなどより個々の登場人物や、俳句や小説への言及といった部分が面白かった。まるで連続ドラマのような面白さ。そう、私はこれを連続テレビドラマ・ミステリと呼ぶことにします。著者は脚本家出身なのでは?と思いましたが、どうやら違うようですね。
平易な文章もよい。おかげでかなり分厚いのですがスルスルと読むことができました。
続けて「ハサミ男」も読んでみようかなあと思っています。

03.6.1
kamanoeさんの感想:
 いやはや、これは面白かった。キャラが楽しいというのもあるけど。
 犯行動機にとらわれない、人の内面に深入りしない探偵というのは、「本格推理」といわれる最近の作品では多いが、その点をズバリと指摘され、返答に詰まり(人の気持ちが分からないことを)「それは自覚していますよ」と答える弱さを見せる石動は、好感が持てます。それまでのとぼけた言動もユーモアを感じさせ、うまい(楽しい)と思う。

03.12.31
『樒/榁』

データ:
 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:02.6.5
 価 格:\700
 ISBN :4-06-182256-X
 備 考:講談社ノベルズ20周年記念密室本
kikuchiさんの感想:
 ネタバラシがあるので、必ず『鏡の中は日曜日』を先に読んで下さい。
 本書は樒(しきみ)と榁(むろ)の2編の中編からなっていて、過去の事件、現在の事件という構造になっています。どちらもうまくまとまっているけど小粒な作品で、どちらかというとなじみのキャラを楽しむ方向を狙っていると思えなくもないです。細部の作り込みとか博覧強記はさすがですけどね。

02.6.21
kamanoeさんの感想:
 いやはや。「黒い仏」「鏡の中は日曜日」(共に講談社ノベルス)と読んでいって、「石動の役割は?」と不思議な気持ちで本書を手にしたんですが、これは。氷川作品を読んだあと、「密室モノ本格推理は短編があってるのか」なんて思ったんですが、短いだけですっきり楽しい作品なわけはないですね。つうか、これ面白いと思える人いるんでしょうか。

03.12.31
あっちゃんの感想:
 この作者、本当に殊能将之なんですかねえ。何でこんな出来損ないの推理クイズのような作品書いたんでしょうかねえ。この作品の密室トリックよりももっとミステリーですよね。

04.1.5

城平京
『名探偵に薔薇を』

データ:

発行年  1998.7
発行所  東京創元社(文庫)
ISBN 4-488-42301-9
あっちゃんの感想:
いやあ、すごい設定ですねえ、ロマンチックな書名などに比べて内容的にはグロ気味、そして論理は冴えている、主人公の名探偵のキャラも良かった。どんでん返しの果てにあった苦い結末、傑作でした。

06.4.8

新堂冬樹
『血塗られた神話』

データ:

 発行年  1998.8
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182036-2
あっちゃんの感想:
 何ていうのかなあ、あまりにも主人公の職業とキャラが隔離しているような気がしてならなかった。読みやすいことは読みやすいのだがその違和感が最後まで拭いきれなかった。

05.6.14

真保裕一 黄金の島 盗聴 発火点 誘拐の果実 ホワイトアウト 朽ちた木々の枝の下で 防壁 灰色の北壁 密告

『黄金の島』

データ:
 出版社:講談社
 出版日:01.5.25
 価 格:\2000
  ISBN :4-06-210656-6
 初 出:週刊現代1998年10月3日号〜2000年8月12日号に掲載されたものを加筆訂正

あらすじ:
 荒波を乗り越えて日本に行けば、冷蔵庫やテレビのある暮らしができる。そして自由も手に入る――
 ベトナムの若者たちは夢見た。
 もう一度、愛する人に会いたい――
 日本を追われ、ベトナムにたどり着いたヤクザは、帰国を決心した。
 そして彼らは<黄金の島>へと船出した。
(帯裏より)
kikuchiさんの感想:
 一言でいうと、オンナは怖いってことでしょうか。奈津が怖いと思っていたら、トゥエイの方がもっと怖い。と思っていたらやっぱり奈津の方がもっともっと怖かった、という話です。……って、こんなところで「持病」をこじらせてどうする(笑)。

 本来のメインストーリーであるところの修司やカイの仲間たちの活動も確かに読みどころではあるのですが、私には脇役たち、たとえば奈津や甲村やトゥエイの動向が気にかかりました。特に私がこの物語で気になるのはトゥエイの行動と甲村の行動の背後にあった「思想」で、もしトゥエイが最初の密航計画よりも前に「そのこと」を知っていたのだとしたら、自分さえ助かれば、という身勝手で狡賢く見える行動も、すべて「純愛」ゆえの行動だったことになります。また、甲村の行動も、もし彼が最後に自分がどうなるか(どうされるか)、まで読んでいて、なおかつあの行動に出たとしたら凄い。これも「純愛」のなせるわざでしょう。けど、結末を読めずいたのだったらただのマヌケです。どっちなんでしょうね?

01.7.6

『盗聴』

データ:

 発行年   1997.5初刷(単行本:1994.5)
 発行所   講談社(文庫)
 ISBN  4-06-263510-0

あっちゃんの感想:
評価:A

 作家の中には長編が得意な人、短編が得意な人もいます。今まで僕は真保裕一の長編しか読んでいませんでした。本書で「短編のお手並み拝見」となったのですが脱帽です。おもしろいです。短編集ですがボリューム感がありました。どれも粒そろいですが好みで言うと「再会」が一番です。読み終わった時に切なくなってしまいました。ついで「私には向かない職業」、タイトルはP.D・ジェイムズの「女には向かない職業」のもじりですが主人公が何となく沢崎に似ていたと思ったのは僕だけでしょうか。
いまだに真保裕一の不敗神話は崩れていません。

02.8.8
『発火点』

データ:

 出版社:講談社
 出版日:02.7.15
 価 格:\1900
 ISBN :4-06-211325-2
yobataさんの感想:
 「発火点」は真保裕一の新作。東野圭吾の「トキオ」と同様に父と子をテーマにしているようです。帯などから殺人の動機に重きをおいたミステリのような印象をうけていたのですが、主人公の成長小説といった作風でした。つまらなくはないけど、娯楽として本を読む身としてはテーマがちょっと重いか。

02.9.16
『誘拐の果実』

データ:

 出版社:集英社
 価格:1900円

あらすじ:
(SHUEISHA BOOKNAVIより)
 病院長の孫娘が誘拐され、“身代金”は捜査の手を逃れて緊急入院した実業家の命。陰謀か、挑戦か。同時期にもう一つの誘拐が! 逆転に次ぐ逆転、戸惑う家族と捜査陣。前代未聞の誘拐事件を描く長編。
yobataさんの感想:
 私は誘拐を扱ったミステリが好きで(実際の事件は許せません念のため)よく読むのですが、この作品はさすが真保裕一とうならせる出来でした。興を殺ぐといけないので、詳しくは書きませんが、考え抜かれた作品、とだけ云っておきましょう。
 作品の大筋には影響ないのですが、ちょっとした疑問があるのと、ヒューマンドラマっぽい作品に仕上げるよりも、もっとゲーム性の強い仕上がりの方が個人的には好みだったかなあ。

02.11.20
『ホワイトアウト』

データ:

発行年  1996.12初刷
発行所  新潮社
ISBN 4-10-602741-0
あっちゃんの感想:
 ようやく読めました。真保裕一の作品は講談社文庫からと言うのが現在の僕の基本的な方針ですのでなかなか読むことができませんでした。舞台は厳冬の山ですが呼んでいる間心は熱かったです。主人公の富樫がいいですね。欲を言えば犯人グループの1人笠原を描いて欲しかったなという気はします。それと作者が仕掛けていたトリック、ちょっとびっくりしました。

03.9.7
『朽ちた樹々の枝の下で』

データ:
発行年  1999.2初刷(単行本:1996.3角川書店)
発行所  講談社(文庫)
ISBN 4-06-264505-X
あっちゃんの感想:
 主人公が失踪した女性を気にかけて自分なりの操作を始めるあたりはちょっと持って行き方が強引かなあって感じたが読んでいくうちにぐいぐいと引き込まれていった。ストーリーの面白さも抜群だが主人公の生き様に好感が持てた。

03.9.28
『防壁』

データ:

 発行年  2000.7(単行本:1997.10)
 発行所  講談社(文庫)
 ISBN 4-06-264911-x
あっちゃんの感想:
 収録されている4篇ともいいですねえ。心が熱くなってきます。どうして真保裕一は僕より年下なのにこんな人生の重みを感じる作品を書くことができるのだろうか。

04.7.6
『灰色の北壁』

データ:

 出版社:講談社
 出版日:05.3.17
 価 格:\1500
  ISBN :4-06-212802-0
 収録作品:黒部の羆、灰色の北壁、雪の慰霊碑
 初 出:乱歩賞作家赤の謎(2004年講談社刊)、小説現代2004年8月号、2005年1月号

あらすじ:
 すべての謎は、あの山が知っている!
 天才クライマーに降りかかった悲運の死。標高7000mの北壁で、彼が見たものは何か。
 『ホワイトアウト』から10年。渾身の山岳ミステリー
 世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。
死と背中合わせのその北壁を、たった1人で制覇した天才クライマー。その業績に疑問を投じる一編のノンフィクションに封印された真実とは……。
(Amazon.co.jpより)
kikuchiさんの感想:
 いずれも雪山を舞台にした登山家を主人公にした山岳小説で、山に賭ける男の生き様がどれもすごく格好いいものでした。で、それだけでなくなおかつ「黒部の羆」の叙述トリック、「灰色の北壁」の本格トリック、「雪の慰霊碑」の意外性と、「本格ミステリ」としても実に良くできた面白い話でした。
 実は『真夜中の神話』がちょっとアレだったので、あんまり期待していなかったのですが、テーマさえ間違えなければまだまだ目が離せない作家ですね。

05.7.15
『密告』

データ:

発行年  2001.7
単行本  1998.4
発行所  講談社(文庫)
ISBN 4-06-273199-1
あっちゃんの感想:
 重量感ありましたね。それを読ませてしまう力量にはいつもながら感心してしまいます。いろんな意味でここまでやるかと言う感じもあったがそれを気にさせない書きかたは見事というしかない。

05.12.23

新保祐司
『国のささやき』

データ:

くれい爺さんの感想:
音楽の話から歴史、国家、思想といった話を広げていく批評文集。
帯に「文芸批評に新分野を拓いた」とあるが、これはちょっと大仰かな。
思うに、批評というには引用が多すぎる、内村鑑三と小林秀雄の。
これはあとがきで著者自身も「私の批評の楕円は小林秀雄と内村鑑三という二つの定点によって出来上がっている」といってはいるのだが、もう少し自分の言葉で言わなければ批評とはいえないんじゃないの。
内村鑑三については名前くらいしか知らないし、小林秀雄は今はどうか知らないが、小生らの年代の人間には受験によくでるというので高校時代にいくつか読んだ記憶があるだけで、それもほとんど忘れてしまった。
で、その内村と小林のどういっていたかというのはたくさん紹介してあって、その面ではなかなか面白く読めた。
つまり、著者がどう考えているのかというよりも、内村や小林がどう考えていたのかということがである。

06.6.2

菅浩江 永遠の森 博物館惑星 五人姉妹
『永遠の森 博物館惑星』

データ:

 出版社:早川書房
 価 格:¥1900
 出版日:2000/07/31
 備 考:第32回 星雲賞(国内長編部門)受賞
      第五十四回 日本推理作家協会賞<長編および連作短編集部門>受賞

内容:
 地球の衛星軌道上にあるアフロディーテは、地球のありとあらゆる文化遺産、芸術、動植物を収めた楽園である。各部署に勤める学芸員たちは、巨大データベースと自らの頭脳を直接接続させ、美の本質を追求していた。田代孝弘もまたその一員として、地球から送られてくるさまざまな物品を鑑定、研究していた。

美と人の想いをめぐる連作短編。
EGGさんの感想:
 評価:84点
 星雲賞はわかりますが、なぜに推理作家協会賞?日常ミステリのテイストが、こころもち入っているのは確かですが、絶対違うと思う。(協会のHPに行って選考経過を読んでみましたが、東野圭吾に同感)まあ、それはさておき。

菅浩江さんを初めて読みましたが、魅力がありますね。追いかけてみたくなりました。今回は私の好みにピッタリとまでは行かなかったので、この点数ですが、もう何作か読んだら、大当たりに出くわしそうな気配です。

舞台装置はしっかりSFしている。上っ面だけではなく本当にSFが好きで、そういう世界を構築したがっているように見えます。それなのに彼女の描く世界は、少しも金属的な冷たさがない。

第二話の「この子だれの子」が一番好きでした。老夫婦の依頼は「骨董市で買った人形の名前を特定してくれ」というものでしたが、所長(=孝弘はいつも難題を押し付けられる)の命令で、何の価値もない手作り人形を調べに調べます。その謎が解けたとき、あー、と腑に落ちました。落し加減がうまい。少し悲しい話ですが。

今のはたまたまミステリーでしたが、いつもはそうじゃない。かといってSF的な落ちなのかといえば、それも違います。人が美しいと思う心をテーマにした連作なのです。

連作全体の構成としては、所長のほか同僚のミミ、エリート意識丸出しの後輩マシューが、良いトライアングルを作っていて、適度なユーモアと、ストレスを与えています。加えて孝弘の妻・美和子(彼はワークホリック気味なので妻の相手をしてやっていない)の姿が、だんだんに見えてきて、最終話で意外な結末を迎えます。ちょっと感動しました。

ああ、うまく説明が出来ません。味わったことのない料理なので、言葉で伝えられない。しいていえば、ダイナミズムを配した小松左京のSFでしょうか。これはもしかして京都つながりなのかも。

02.5.17
『五人姉妹』

データ:
 早川書房
 ¥1700
 2002/01/31発行
EGGさんの感想:
 評価 A
 SF短編集です。この間読んだ『永遠の森』に比べると、つらい話痛い話が多かったので、あー面白かった、とはなりませんでしたが、完成度はこちらのほうが高いと思います。

 これを読んで一番感じたことは、現在を起点にしても、まだSFという物語の余地が十分あるのだな、ということでした。いくつか紹介すると、

「夜を駆けるドギー」
 今であってもおかしくない。ペットロボットとネット少年をめぐる物語で、社会的な「落ち」もさることながら、人嫌いの少年同士のつながりを描いているところが菅さんらしく、9編の中では一番好み。

「ホールド・ミー・タイト」
 云われてみればいかにもありそうな、未来のネット空間。それでも人間たちは常に孤独で寂しい。現実に疲れた彼女を癒してくれたものは…。

「KAIGOの夜」
 介護されるロボットを作り出した「中枢」の意図は?(この年の短編ベストにいれるべき傑作)

 というわけで、菅さんはSFを題材としながらも、人間の心のありようを描いている人のようです。次回は初期の作品を読んでみようかと思っています。

02.5.23

鈴木光司 リング、らせん、ループ 仄暗い水の底から
『リング』『らせん』『ループ』

データ:
 角川書店
山本わおさんの感想:
 巷では「リング」が一番面白くて段々評価が落ちていってるようですが、私はどれも面白かった。特にどんどんSF色が強まっていくのが嬉しい。
 「ループ」はこういう続編の作り方があったのかとその力業に脱帽です。テーマ的にも大好き。特に進化とガン化を結びつけた辺りにはしびれました。このアイディアで長編1本書いてくれないかなあ。

02.5.19
『仄暗い水の底から』

データ:
 出版社:角川書店
 出版日:1996.2.29.
 価 格:\1300
 ISBN :04-872937-3
 収録作品:浮遊する水、孤島、穴ぐら、夢の島クルーズ、漂流船、ウォーター・カラー、海に沈む森

山本わおさんの感想:
 鈴木光司は「リング」シリーズ以外はダメですね。
 私には合わない。
 これも短編集なのだけど全然統一感がない。
 ホラーは怖くないし。むしろホラー以外の題材がいい。
 映画は巻頭作だけを題材にしたのか。これももうちょっと膨らませれば面白かったのになあ。長編向きの人なのかも知れません。

02.7.1

清涼院流水 トップラン3 トップラン4 トップラン5 トップラン最終話 トップランド2001 彩紋家事件
『トップラン 第3話 身代金ローン』

データ:

 発行年  2000.8初刷り
 発行所  幻冬舎(文庫)
 ISBN 4-344-40014-3
あっちゃんの感想:
 清涼院流水ー既に20名を超えたメフィスト賞作家の中で彼ほど読者を選ぶ作家はいないであろう。彼の作品を読んだ読者は真っ二つに分かれます。評価・絶賛するか、否定・罵倒するか、少なくともJDCシリーズに関してはそうでしょう。JDCが一旦切りがついてしばらくして本シリーズが刊行されたと思います。読もう読もうと思いつつ結局読み始めたのは昨年の半ばから・・・ちょっと後悔しています。それは本シリーズが刊行された2000年が舞台になっているからです。たとえば本書は2000年の8月に刊行されましたが作中の時間は2000年の2月半ばから3月3日まで、ご丁寧にその時期に起こったニュースも挿入されています。こんな試みを行ったのは小説では清涼院流水が初めてではないでしょうか。キャラクターの設定も話の展開もはっきり言って「リアリティ」はありません。
それでもなんて言うのか、リアルなのは2000年という時代と密接に結びついているからでしょう。たかだか201ページのうち全巻までのあらすじが57ページあるのも物語を反復して印象付けるというテクニックのように感じる。そして本書のラストはちょっと予想していなかったものだけに次巻以降の展開がより楽しみです。

02.4.15

『トップラン 第4話 :クイズ大逆転』

データ:

 発行年    2000.10初刷り
 発行所    幻冬舎(文庫)
 ISBN   4-344-40029-1

あっちゃんの感想:
評価;B

清涼院流水は「ユウ」のジャンケントーナメントといい本書の「一巻の終わりクイズ」といい駆け引きのあるクイズ・ゲームの話はうまい。そういった意味では緊迫感もあるしリアリティもある。話も急展開になってますます目が離せない。メフィスト賞についてはその受賞作のレベルがピンからキリまであることが話題になるが流水はそのピンの方と評されることが多い。しかし僕はあえて言う。メフィスト賞は清涼院流水をデビューさせたことによってその歴史的価値を持つと、メフィスト賞は清涼院流水のような異能の作家を生み出すためのものでありそれが他のミステリー賞と一線を画するものであると、そう考えているのは僕だけかなあ

02.7.18

『トップラン 第5話 最終話に専念』

データ:

 発行年   2000.12初刷り
 発行所   幻冬舎(文庫)
 ISBN  4-344-40046-1

あっちゃんの感想:
いやーこういう展開になるとは思いもしなかった。後1作でどう収拾をつけるのか現段階では予想も付かない。駄洒落や詭弁に満ちていると言えばそうなのだがそれが決して安っぽくないのはさすが

『トップラン 最終話 大航海をラン』

データ:

 発行年  2001.2初刷り
 発行所  幻冬舎(文庫)
 ISBN 4-344-40071-2

あっちゃんの感想:
こんな展開になるとは誰が予想できただろうか。しかも「コズミック」のように一連の事件の大本にある歴史上の人物を設定するとは、他の作家が
やったら絶対許せないようなことだが清涼院の場合は・・・しょうがねえなという気になってしまうから不思議なものだ。もちろん、引き続き「トップランド」を読むつもりだ。

03.7.27
『トップランド2001:天使エピソード 1


データ:

 発行年  2001.10
 発行所  幻冬舎(文庫)
 ISBN 4-344-40168-9
あっちゃんの感想:
 テイストはトップランから持続したまま、奇妙な物語が始まった。無茶な設定ではあるし人物描写もできていない。でも読み続けているのは何でだろうか。

04.7.6
『彩紋家事件』

データ:

発行年   23004.1〜2
発行所   講談社(ノベルズ)
あっちゃんの感想:
 普通のミステリー風かなと思ったのは冒頭だけでした。上巻の半ばから延々とマジックショーの実況中継になる下巻に至っては清涼院流水ならではの展開で呆れました。でも呆れても面白いのだから不思議、稀有な作家である。

05.2.7

瀬名秀明
『Brain Valey』

データ:
 発行年  2000.12(単行本:1997.129
 発行所  角川書店(文庫)
あっちゃんの感想:
 脳科学、情報学等の博学ぶりには感心した。その半分も表面的にしろ理解できただろうか。ただストーリーがどうも今一つだった。一番,肝心な船村鏡子の能力が説得力に欠けていた、また「神」の正体もなんだかなあって気がした。確かに無難な解釈ではあろうが・・・
 にもかかわらず面白かったことは面白かった。ハナの勇敢な行動も感動ものだったし、孝岡と息子の確執。メアリーのドラマなど読み応えはあった。

03.4.15

蘇部健一 動かぬ証拠 長野・上越新幹線四時間三十分の壁
『動かぬ証拠』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:01.5.5
 価 格:\840
  ISBN :4-06-182188-1

収録作品:
しゃべりすぎの凶器、逃亡者〜片腕の男、黒のフェラーリ、天使の証言、転校生は宇宙人、宿敵、宇宙からのメッセージ、逆転無罪、リターン・エース、再会、変化する証拠

内容:
 細工は完璧のはずだった……。映像や音声を駆使した画期的アリバイ工作の落とし穴。周到な犯人が見落とした想像を超えるダイイング・メッセージの数々。いずれ劣らぬ完全犯罪が思いも寄らない一点から破綻する。その決定的瞬間をラスト1ページにとらえ、究極の証拠を一目瞭然で明かすかつてない本格ミステリ!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 最後の1ページで、絵で一目瞭然の証拠を突きつける、という、本格ファンとしてちょっと興味を惹かれる作品集です。エピグラフにも引用されているので、たぶん刑事コロンボを意識しているのでしょう。ここの作品を評価すると、「しゃべりすぎの凶器」、「黒のフェラーリ」などはいい感じですが、「逆転無罪」はちょっと分かりにくいです。で、惜しむらくは、どの作品でも決めてとなる動かぬ証拠が読者にあらかじめ開示されていないということだけですね。
 あと、二人の刑事、半下石と山田の掛け合いも私は結構気に入っていて、

>「そうですね。”きみはヒロスエ派、それともフカキョン派?”とか”君は焼き肉派、それともすき焼き派?”とかですね。警部はどっち派です?」
>「ヒロスエが正妻でフカキョンが愛人かな……」
>「焼き肉派か、すき焼き派かを聞いたんですよ」
>「え……」

とか

>「おまえ、モーニング娘。のドンジャラがあるのを知ってるか?」
>「は?」
>「娘に牌を借りてくるから、今度囲むか?」

とか。極めつけはこれ

>「妖怪に目がないもので。だから、ひとりで……」
>「はあ、じゃあぬりかべとかお好きなんですか?」
>「ええ、まあ……」
>「ガマボイラーも?」
>「警部、それはデストロンの怪人です」

これって、絶対山田が突っ込むことを期待した半下石のボケだよね(笑)。

01.6.9
あっちゃんの感想:
 こんな手法は今までなかったんじゃないかな。おふざけといえばおふざけだがチャレンジ精神には感心した。しかし収録されている11作品、すっきり出来るものとあれって疑問の残るものとはっきり分かれてしまいました。たとえば「しゃべりすぎの凶器」とか「黒のフェラーリ」は前者だが「宿敵」とか「逆転無罪」は後者となります。まあ人によってはこの手法自体認めることは出来ないのでしょうけど・・・僕は好きです。この発展形の「木乃伊男」も楽しみです。

05.12.11

『長野・上越新幹線四時間三十分の壁』

データ:

 発行年    1999.3初刷
 発行所    講談社(ノベルズ)
 ISBN   4-06-182066-4

あっちゃんの感想:
 コメディタッチだがメインのアリバイトリックは王道を行っている。僕はアリバイものはあまり得意ではないがそれでも楽しめた。冒頭の時刻表がちょっとアンフェアだったのはいただけないがよく考えられていたと思う。長野と新潟で発生した別々の殺人事件、両者に共通する双子の姉妹、そして鉄壁のアリバイ、いいですね。いかにもと言う設定でミステリー魂をくすぐられました。蘇部健一、侮りがたしです。

03.8.3

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