<海外作品>
アイザック・アシモフ ダニエル・アラス ポール・アルテ ヴァン・ダイン R.D.ウィングフィールド サラ・ウォーターズ スーザン・ヴリーランド アーロン・エルキンズ ディクスン・カー ジェラルド・カーシュ スティーヴン・キング エラリイ・クイーン ジョン・グリシャム アガサ・クリスティ ロバート・クレイス フェイ・ケラーマン トニー・ケンリック ロバート・ゴダード ウィルキー・コリンズ P.D.ジェイムズ キャスリーン・スカイ ヘンリー・スレッサー ロバート・J.ソウヤー ロアルド・ダール ジェフリー・ディーバー コリン・デクスター コナン・ドイル J.R.R.トールキン ジェレミー・ドロンフィールド ジム・トンプソン ラリイ・ニーヴン T.ジェファーソン・パーカー リチャード・ノース・パタースン エリオット・パティスン トマス・ハリス ドミニック・ファーブル リンダ・フェアスタン エリザベス・フェラーズ ダン・ブラウン リリアン・ブラウン クリスチアナ・ブランド ローレンス・ブロック C.C.ベニスン エドガー・アラン・ポオ E.D.ホック アーナス・ボールデン パット・マガー ロバート・R.マキャモン シャーロット・マクラウド ヘレン・マクロイ ジル・マゴーン スティーブ・マルティニ A.A.ミルン マイクル・ムアコック ピーター・ラヴゼイ ジョー・R.ランズデール リービ英雄 デニス・ルヘイン R.レンデル ピーター・ロビンスン

アイザック・アシモフ 第二ファウンデーション ファウンデーションの彼方へ

『第二ファウンデーション』

データ:

 訳者名     岡部宏之
 発行年     1984.12初刷り
 発行所     早川書房(文庫)
 ISBN    4-15-010592-8
 シリーズ    銀河帝国興亡史 3
 原書刊行年   1953

あっちゃんの感想:
評価:B
 旧エンターティメント交差点で指定図書に第1作「ファウンデーション」が選ばれて既に数年たっていますがようやく3作目を読み終えました。そしてここまでが高校時代に創元推理文庫で読んでいたものです。くわしいストーリーは忘れていましたが「第二ファウンデーション」がどこなのかは覚えていました。ですがそれでも楽しく読むことができました。このシリーズはSFですがむしろミステリー的な趣向に満ちています。「第二ファウンデーション」の場所を巡って繰り広げられる終盤の推理合戦、そして最後に明らかになるある人物の正体、まさにミステリー魂がくすぐられる作品でした。

02.6.7
『ファウンデーションの彼方へ』上・下

データ:

 訳者名  岡部宏之
 発行年  1996.7初刷(原書c1982)
 発行所  早川書房(文庫)
あっちゃんの感想:
 今までのシリーズは創元推理文庫でも読んでいたが本作品からは全く新しい展開になってきた。おもしろかったです。ファウンデーションでもなく
第2ファウンデーションでもないガイアという存在、さらにその奥に人類発祥の地としての地球が・・・物語の終盤では一人の人間の選択に宇宙の未来が託されるという展開になっていき盛り上がっていくし登場人物一人一人が魅力的に描かれていてしかもユーモアもある。次回作が楽しみだ。
 これで銀河帝国興亡史シリーズ後3作6冊だと思っていたら何と新シリーズが発行されるという・・・最後まで付き合おうか

04.2.17

ダニエル・アラス
『なにも見ていない 〜名画をめぐる六つの冒険〜』
くれい爺さんの感想:
 ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」が小生にとって衝撃だったのは、なにもサスペンスフルな展開でも、薀蓄の多さでもない。
自分がダ・ヴィンチの傑作「最後の晩餐」の何も見ていなかったことに気づかされたことに衝撃を受けたのだった。
その絵に女性やおかしなところにナイフを持った手が描かれていたとは。
小生に絵画の才能がかけらもないことは100%断言できるが、絵画を見ることは好きで、近くで開かれる展覧会などにはできるかぎり見に行っている。
「最後の晩餐」は本物は見たことはないが、画集などで何度か見ていたはずである。
この本の題名は「なにも見ていない」で、絵画の新しい解読法を提唱している。
その題名の面白さから手にした。
内容は専門的な言葉も出てくるので少々難解だが、面白かった。
ティントレットの「ウルカヌスに見つかったマルスとウェヌス」で、ウルカヌスが見ているものはウェヌスのお○○こで、後ろの鏡に映っているのが実はウルカヌスのその後の行動であるとか、ティツィアーノの「ウルビーノのビーナス」の裸婦の表情は優しさ、恥じらい、女らしさといった美徳があふれているとされていたが、実はその左手でマスターベーションをしているとか。
ミステリーにはたくさんの名探偵が描かれるが、現実にそういう名探偵が存在するなら、きっと絵画的な才能、つまり視覚を論理的な思考に結びつける才能があるのではないかと考えている。
「ウルビーノのビーナス」で裸婦が左手を自らのお○○この上に置いているのはなぜか。
ただ隠していると見ていたのでは足りないのである。
フランチェスコ・デル・コッサの「受胎告知」で画面の一番前にかたつむりが描かれているのはなぜか。
神学的な意味合いのみならず、なぜそこに描かれているのかといった、さまざまな角度から見ていかなければならない。
かたつむりが描かれているなあ、とだけ思っているようでは、見たことにならない。
殺人現場であるものがある場所に存在する(あるいは存在しない)ことに疑問を持ち、それを論理的に説明しようとする才能というのは、そういう絵画的な才能ではないかと思うのである。
ただ、“あるなあ”とだけ見ているようでは名探偵失格であろう。
絵画においても、現実の社会においても、実際には私たちはほとんど何も見ていないのかもしれない。

05.1.10

ポール・アルテ

『第四の扉』

データ:

 著者:ポール・アルテ
 訳者:平岡敦
 出版社:早川書房(ハヤカワポケットミステリ1716)

yobataさんの感想:
 著者のポール・アルテはフランス人で、サスペンスやロマン・ノワールが主流のフランスミステリ界でただひとり不可能興味満載の本格探偵小説を書き続けているんだそうです。ディクスン・カーに多大な影響を受け、二十を超える長編を発表しているそうな。

 1987年発表の本書は、アルテの長編第一作で、シリーズ探偵のアラン・ツイスト博士が初登場する作品でもあります。帯にある「本家を超えた”フランスのディクスン・カー”」をいう惹句にワクワクしながら読んでみたのですが、期待以上!すごい!のひと言です。200ページそこそこと昨今の作品群から比べてかなり短いですが、謎また謎で最後まで飽きさせない。謎解きもなかなか良いし、ラストのヒネリも堂に入ったもの。次の作品が待ち遠しい!
 本格ファンは読みのがしてはならない作品。がんばれアルテ!

02.5.30

ヴァン・ダイン 僧正殺人事件 かぶと虫殺人事件
『僧正殺人事件』

データ:

 訳者名  井上勇
 発行年  1973.3新版初刷り(原書:1927)
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN   4-488-10304-9
あっちゃんの感想:
 評価:A
 今まで読んだヴァン・ダイン作品4作の中では最も読みやすくまたおもしろかった。いやこの作品は自明の理のことながらミステリーファンにとってBの基本図書の一つ、ようやく読むことが出来てそれだけでも感激、マザーグースの歌詞による見立てもよく出来ていたし何よりも最後に明かされる真犯人の意外性、文句のつけようがありません。

02.6.11

『カブト虫殺人事件』

データ:

 訳者名   井上勇
 発行年   1960.4初刷り(原書:1930)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-10305-7

あっちゃんの感想:
 ヴァン・ダインはどうしても本作以前の5作のみが評価されがちだがこの作品、決して侮れない。容疑者は限定されているしとりわけ難しいトリックなわけでもない。それでも物語りはスリリングに展開していき謎解きのおもしろさが持続する。ダインは全部付き合ってみますよ。

03.7.26

R.D.ウィングフィールド クリスマスのフロスト 夜のフロスト
『クリスマスのフロスト』

データ:
 著者名    R.D・ウィングフィールド
 訳者名    芹澤恵
 発行年    1994.9初刷り
 発行所    東京創元社(文庫)
 ISBN   4-488-29101-5
 原書の発行年 1984
あっちゃんの感想:
 昨年会社の向かいのリサイクル書店で100円で売っていたのを買いました。100円だったから買ったようなものです。というのはどうもこの作品、「このミス」等を読んでみてもどうも自分の好みではないような気がしていたからでした。主人公のフロストがエキセントリックかつ下品な人物のようなイメージがあってとても好感が持てそうもなかったしモジュラー型という形式が僕には複雑なストーリーのような気がしてついていけそうもなかったし第一ページ数が結構あってしんどうそうでした。でだまされたと思って読んでみて、見事に自分の先入観が間違っていたか思い知らされました。フロストは下品でずぼらで自分勝手な人物ですがその反面実際の捜査という仕事に関しては徹底的にやり遂げようとしていますし優しく思いやりもあります。決して嫌なやつではなくむしろ人間味あふれる好感の持てる刑事でした。ある意味僕の好きな鮫島警部や吉敷刑事につながるものがあります。また複数の事件が平行して起きるというのも書状の失踪事件という中心からそれることがなかったために混乱することもありませんでした。本は読んでみないと分からないこともあるんですね。

02.3.10
『夜のフロスト』

データ:

 訳者名   芹沢恵
 発行年   2001.6
 原書    c1992
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-29103-1
あっちゃんの感想:
 相変わらずのフロストの暴走。今回はやりすぎかなと思った箇所もあったがまあいいでしょう。フロストはとんでもない御仁なんだけど憎めない。フロストシリーズ三作で翻訳が止まっているが第4作も待ち望んでいます。

04.6.30

サラ・ウォーターズ
『半身』
くれい爺さんの感想:
 評価の高い作品だけど、好みは分かれると思う。
小生には、少々しんどい展開だった。
ラストもある意味想定の範囲内ともいえる。

05.6.15

スーザン・ヴリーランド
『ヒヤシンス・ブルーの少女』
くれい爺さんの感想:
 一ヶ月ほど前に「栄光のオランダ・フランドル絵画展」に行ってきた。
この展覧会の目玉はなんといってもフェルメールの「画家のアトリエ」。
ここ10年ほどの世界的なフェルメール人気もあって、案外込んでいた。
元来ミーハーである小生もフェルメールは好きな画家で、オリジナルを見るのは「真珠の耳飾りの少女」につづいて二度目である。
フェルメールの絵はその静謐さや、光の清澄さややわらかさとともに、その描かれた一瞬のキャンバスの中に永遠を感じさせるような気がする。
それとあの色使いの鮮やかさも好きですね。
「真珠の耳飾りの少女」の青と黄のターバン、黒く潤んだような瞳、赤く瑞々しい唇、などは忘れられないですね。

さて、この作品、書評のひとつに「フェルメールの絵のようにいつまでも心に残る小説」とあったので手にしてみた。
ヒヤシンスのような青いスモックを着た少女が縫い物の途中で窓から外を見ている場面を描いた、フェルメール作の絵(架空)を手にした人々を廻る八編の連作で、現代から始まって最後に絵が描かれる場面へと至る、時系列を逆に遡って書かれている。
八編の中では最初の「十分に愛しなさい」と中ほどの「朝の輝き」、そして最後の「マフダレーナが見ている」の、この三篇が強く印象に残った。
「十分に愛しなさい」の教師の絵に対する思い、「朝の輝き」の貧しい農家の妻の「美しいものがないとだめなの」という心情、そして「マフダレーナが見ている」の最後の五行は絵画芸術の永遠性を感じさせるとともに、小生がフェルメールの絵に感じた“一瞬の中にある永遠”といったものを感じさせる。
たしかに“心に残る”連作集でした。

04.10.9

アーロン・エルキンズ 遺骨 画商の罠 死者の心臓 楽園の骨
『遺骨』

データ:

 訳者名  青木久恵
 発行年  1994.4初刷り(c1991)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-100074-7
 シリーズ スケルトン探偵シリーズ
あっちゃんの感想:
 主なトリックが二つ、それが法医学的なトリックでいかにもスケルトン探偵らしい。特に二つ目のトリックは斬新だった。主人公のギデオン教授の思いがじかに伝わってきて話としても面白みがあってよかった。

02.11.27
『画商の罠』

データ:

 訳者名  秋津知子
 発行年  1995.3初刷(原書:c1993)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-100085-2
あっちゃんの感想:
 ミステリーとしてはちと弱いかなあと感じたが物語り自体は面白かった。
主人公の冒頭の苦渋の選択もよかったしヴァンシィのキャラクターとその騒動もよかった。ギデオンシリーズはミステリーとして楽しみノーグレンシリーズはストーリーを楽しむような感じがする。

03.11.10
『死者の心臓』

データ:

 訳者名  青木久恵
 発行年  1996.3
 原書   c1994
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-100098-4
あっちゃんの感想:
推理面が今一だったがサスペンスはあった。知性派のギデオン教授がアクションですからねえ。

04.11.1
『楽園の骨』

データ:

発行年   1997.12
発行所   早川書房(文庫)
ISBN  4-15-100119-0
あっちゃんの感想:
 今回はジョン・ロウの一族の巻き込まれた事件、ギデオンも今までとは違った対応を余儀なくされていました。発見された死体は事故死か殺人か、
なかなか引っ張っていきましたね。

05.12.10

ディクスン・カー 不可能犯罪捜査課 緑のカプセルの謎 囁く影 喉切り隊長 弓弦城殺人事件 帽子収集狂事件 ユダの窓
『不可能犯罪捜査課』

データ:

 訳者名  宇野利康
 発行年  1970.2初刷り
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN 4-488-11801-1
 シリーズ カー短編全集 1
あっちゃんの感想:
 フェル博士もH・M卿も出てこないんですが代わりに神出鬼没なマーチ大佐が活躍してくれます。しゃれていたというかオチが効いていたのは「新透明人間」、「ホット・マネー」もあるのに気が付かない盲点という意味では面白かった。「もう一人の絞刑史」は何とも言えない味があった。他の作品もなかなかの出来,時代的に古くなったトリックもあるがそれは仕方ない。カーはもっともっと読んでいきたい。

03.2.14

『緑のカプセルの謎』

データ:

 訳者名  宇野利泰
 発行年  1961.3初刷(原書:1939)
 ISBN 4-488-11809-7

あっちゃんの感想:
こういう話も書くんですね。奇想天外なトリックが用いられているわけでないし怪奇趣味もない,ある意味非常にオーソドックスなミステリーです。しかしよく考えられているので愉しめた。みんな怪しい,その中で一人に絞っていく過程は面白かった。

03.2.19
『囁く影』

データ:

 訳者名  斎藤数衛
 発行年  1981.6初刷り(原書:c1946)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-070358-2
あっちゃんの感想:
 トリックを説明されれば「え、そんなことだったのか」というようなものだがそれを巧みに隠した手腕はさすがなもの、今回はフェル博士おとなしめだったがなかなか人情味溢れる設定で読後感もよかった。

03.4.21
『喉切り隊長』

データ:

訳者名   島田三蔵
発行年   1982.8初刷(原書 c1955)
発行所   早川書房(文庫)
ISBN  4-15-070362-0
あっちゃんの感想:
 ちょっと地味だったかなあ、トリックもあっと驚くようなものじゃなかったし・・・確かに意外な犯人ではあったが、

04.5.8
『弓弦城殺人事件』

データ:

 訳者名  加島祥造
 発行年  1976.4
 原書   1933
 発行所  早川書房
 ISBN 4-15-070401-5
あっちゃんの感想:
 今ならお城の見取り図が絶対示されているだろう。ちょっとなかったのでわかりずらかった。しかしユニークな登場人物だらけの中での殺人事件、楽しく読めた。

05.1.23
『帽子収集狂事件』

データ:

 訳者名   田中西二郎
 発行年   1980.6
 原書    1933
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4488-11804-6
あっちゃんの感想:
 人を食った終わり方だったがミステリ−としては楽しめた。こういうミステリーもっともっと読んでいきたい。

05.6.19
『ユダの窓』

データ:
発行年  1978.3
発行所  早川書房(文庫)
原書   c1938
ISBN 4-15-070405-8
あっちゃんの感想:
 いや、おもしろかったです。「ユダの窓」というのは前から気になっていた言葉でしたがなるほどなと思いました。まあ思いつかないほど奇抜なアイデアでしたね。でもそれ以上法廷ミステリーとして充分に傑作でした。

06.5.1

ジェラルド・カーシュ

『壜の中の手記』

データ:

 訳者:西崎憲・大岐達哉・駒月雅子・吉村満美子・若島正訳
 出版社:晶文社(晶文社ミステリ)

 このミス2003第6位
 文春ベスト第5位

yobataさんの感想:
 ジェラルド・カーシュの短編集。コリアとか、ダールとか、「奇妙な味」系列の作品集。MWA賞を獲得した表題作は、米文学史上最大の謎アンブローズ・ビアスの失踪を題材にした作品で、この作品集の中でも出色。他に、「豚の島の女王」「ブライトンの怪物」「時計収集家の王」「死こそわが同志」が印象深い。
 この作品集が好評を博したので、新たな作品集も計画されているようです。

03.2.5

スティーヴン・キング

『アトランティスのこころ』 上・下

データ:

 著者:スティーヴン・キング
 訳者:白石朗
 出版社:新潮文庫

yobataさんの感想:
 映画化され話題を呼んでいるキングの最新作。単行本と文庫本が同時に発売されるという珍しい刊行形態にも注目。私が買ったのは文庫版です。だって、ハードカバーは2冊で6千円近いんだもん。

 作品の方は、5編の連作集となっており、上巻まるまる1冊分の「黄色いコートの下衆男たち」をはじめ、「アトランティスのハーツ」「盲のウィリー」「なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」「天国のような夜が降ってくる」とだんだん短い作品になっていく、という感じです。どの作品も登場人物が少しずつ重複していて、通読すると40年に及ぶドラマが現れる、という趣向です。
 5編の中でもっともキングらしく、出来も良いのが「黄色いコートの下衆男たち」で、その面白さは抜群。これ1本でも良かったのでは?とも思わせる出来。とある書評では「スタンド・バイ・ミー」に匹敵するとも書かれていたな〜。すべて通して読むにはちょっと長いけど、オススメ。

02.5.28

エラリイ・クイーン Xの悲劇 ギリシャ棺の謎 エジプト十字架の謎 アメリカ銃の謎 シャム双生児の謎
『Xの悲劇』
EGGさんの感想:
評価 88点

何を今さら〜な本ですが、わたくし未読だったのでして、本棚に黄色くなった文庫本が…(笑)。奥付を見ると、昭和46年2月時点で18刷、しかも180円。高校時代に買ってそのまんまという、我が家でも歴史的な一冊であります。中学一年生だったと思います。友人だか藤原宰太郎の探偵クイズだか忘れましたが、とにかく指をツイストしたXというダイイングメッセージ。その意味を知ってしまったが為に、悔しくて本が読めなかったという、暗〜い過去を背負って35年以上経ってしまいました。Xのいみを忘れたら読んでやろうと思っても、そういうバカなことは決して忘れないものです。

以前OFF会でそんな話をしたら、kikuchiさんが、そこはまったく問題ありません、とおっしゃったのです。で、先日ぼんやり本棚を眺めていたら、くすんだXが目に入りまして、やっと読む気になったというわけ。(すまそん。前置きが長かった)

す、すばらしい。まずは、第1幕第1景ドルリー・レーン登場の場面。中世ヨーロッパの領主を思わせるドルリー邸で、ブルーノ検事・サム警部がロングストリート事件を語り始めるところ。

>話し出そうとしてサム警部のぶこつな顔が緊張した。
>広い周囲の壁が見えなくなった。暖炉の火が、何者かの手で操られたように衰えていた。
>ハムレット荘も、ドルリー・レーンも、古い器物と古い時代と古い人々の気配も、すべてサム警部のだみ声の中に溶け込んでいった。

シェークスピア劇の舞台みたいでぞくぞくしました。クイーンがこんなセンスを持っていたとは…。国名シリーズとはかなり趣を異にしているのですね。時代こそ現代(といっても1930年代)ですが、ゴシックロマンの匂いまでします。
探偵としてのドルリーも、論理的というより、情動的探偵法を採っているように思います。もちろん天下のクイーンですから、事件そのものは論理的に解決されますが、ドルリー・レーンの着眼点は、犯人が人間であるということ。不合理に見えることでも、犯人にとっては必然的理由があるはず、というのが出発点なわけです。逆説こそふりかざしてはいませんが、犯人の心を考えるという点で、ブラウン神父に近いのではないでしょうか。

おまけに、このドルリー・レーン、やんちゃです。サム警部や死んだはずのロングストリートに変装したり、素っ裸で日光浴をしたり、引退(それは耳のせいだけど)した老人とは思えない元気さ。今まで自分の持っていたイメージがぜんぜん違っていて、こうなったら『Y』以下3冊とも、読み返さないといけないような気がしてきました。

さて事件の方。序盤で、自分の予備知識からこいつだろ犯人は、と思わせる人物がいたのですが、ある理由でその可能性があっさり消えてしまって、うわーガセネタだったのか、なんて思って、納得行かないものの、展開に引きずられて一気に最後まで読んでしまいました。んで、結果は、完敗。そーだったのか、かなりの綱渡りだけど、これならアリです。すごいなあ、クイーン。1931年というと、昭和6年でしょ。今ごろ読んでも面白いというのは、けっこう大変なことじゃないの?(それとも俺がジジイなだけか?)
動機こそ、復讐という古めかし〜ものを持ってきているけれど、その味付けがなんとも新鮮味があって美味しい。法廷シーンも初心者向けではあるけれど、充分に面白い。(なんてったってガードナーの『ビロードの爪』が1933年出版なのだから、いうべき言葉がないです)
本格ミステリーの度合いでは、いまでも『Y』の方が上だという印象があるけど、そんなわけで、面白さではこちらに軍配を挙げてしまいましょう。

来年早々、ほんとに『Y』読んでしまうかもしれません。

02.12.24
『ギリシャ棺の謎』

データ:

 訳者名   井上勇
 発行年   1959.9初刷り(原書:1932)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-10408-8
あっちゃんの感想:
エラリー・クイーン(探偵)がデビューした作品、最初の頃はその推理が失敗続き,悩み落ち込むクイーンの何と初々しいことか二転三転するが最後に明らかになった真犯人は驚きました。結構長い作品ですが堪能できました。

03.3.18

『エジプト十字架の謎』

データ:

訳者名   井上勇
発行年   1974.6新版(原書 1932)
発行所   東京創元社(文庫)
ISBN  4-488-10409-6

あっちゃんの感想:
 さすがに国名シリーズの中でも傑作との誉れの高い作品ではある。
真犯人の見当は物語後半過ぎるとつけることができるしそれは間違っていなかった。しかしそれを論理てきに証明することは難しいしましてや物語に出てくる様々な謎を解明することはなそさらである。エラリーも後手後手になり最後は犯人を2番手になって追っていく羽目に・・・以前も書いたかもしれないがクイーンの魅力に人間性がある。その苦悩と使命感に共感するのだ。

04.5.8
『アメリカ銃の謎』

データ:

 訳者名   井上勇
 発行年   1981.4
 原書    1933
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-10410-X
あっちゃんの感想:
 現在では通用しないトリックではあるが充分に驚かせてもらえた。あまりにも緻密な手がかりなので僕には全然解けなかったがそこが楽しい人もいるんだろうな。

05.1.23
『シャム双生児の謎』

データ:

 訳者名  井上勇
 発行年  1960.3
 発行所  東京創元社(文庫)
 原書   1933
 ISBN 4-488-10411-8
あっちゃんの感想:
 高校時代に僕はクイーンの作品を3作読んでいる。「Yの悲劇」、「ドラゴンの歯」そして本書だ。「Yの悲劇」はその犯人の特異性のゆえに結構覚えていたが本書に関して言えば幸か不幸か殆んど覚えていなかった。いやそれにしてもユニークな舞台設定であった。その閉鎖された中で起こった殺人事件、二転三転する推理、おもしろかった。

06.5.1

ジョン・グリシャム 評決のとき 法律事務所 ペリカン文書
『評決のとき』

データ:
 著者名    ジョン・グリシャム
 訳者名    白石朗
 発行年    1993.7初刷り
 発行所    新潮社(文庫)
 ISBN   上:4-10-240901-7 下:4-10-240902-5
 原書刊行年  c1989
あっちゃんの感想:
 釈然としない思いで読んでいった。それは明らかにカール・リーは殺人を犯していながら無罪を主張すると言うことに起因する。それは僕だけの重いではないだろう。たとえばもし日本でこのような事件に関する小説が書かれたとしても全然違うものになっただろう。それはアメリカと日本の法律の違いもあるだろうし社会環境も違うからだ。またジェイクの弁護も先日としては汚いやり方だしどうも共感できなかった。また死刑制度を肯定しているというのも僕には気になった。
・・・という作品だったがにもかかわらずおもしろかったしいろいろ考えさせられた作品だった。登場人物の造形もいいしストーリーの展開もよかった。つまり著者の主張、主人公の立場等が僕には受け入れられなくても小説としてはすばらしい作品だったということ、傑作とはこういうものを言うのかもしれない。

02.3.27
『法律事務所』

データ:

 訳者名  白石朗
 発行年  1994.8初刷(単行本:1992.7)
 発行所  新潮社(文庫)
あっちゃんの感想:
 文庫では前作に当る「評決のとき」のような思い作品かなと思っていたら全然違っていましたね。僕には後半が息切れしているように感じられました。ちょっと展開についていけなくなったかなと、致命傷は主人たちが最後に正当防衛とも言えない殺人を犯してしまうことでしょう。爽快感がしぼんでしまいました。

03.12.26
『ペリカン文書』

データ:

訳者名  白石朗
発行年  1995.5
原書   c1992
発行所  新潮社(文庫)
あっちゃんの感想:
 ここまでやるかと言う展開とそれにも関わらずヒロインは生き延びると言うアンバランスさがちょっと気になったがまあ楽しめました。

04.11.1

アガサ・クリスティ スタイルズ荘の怪事件 五匹の子豚 青列車の秘密 ねじれた家

『スタイルズ荘の怪事件』

データ:

 訳者名  田村隆一
 発行年  1982.6初刷り
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-0700667-2

あっちゃんの感想:
 これは前に読んだことがあるぞと思いながら読んでいきました。でも買った記憶がないのです。図書館で借りているとも思えないし・・・で最後まで不思議に思いながら読み終えました。今日、作りかけのミステリー蔵書目録(海外編)を見るとちゃんと「スタイルズ荘の怪事件」が載っているではありませんか。確かにここ2,3年のうちに買って読んでいるのです。とちょっと狐につまされたような体験でした。さて何と言っても本作ではポアロがいいですね。彼のおとぼけが一種のミスデレクションになってだまされてしまいましたしポアロの思いやりというか暖かさというかよかったですね。

02.9.4
『五匹の子豚』

データ:

 訳者名  桑原千恵子
 発行年  19977.2初刷(原書:C1942)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-070021-4

あっちゃんの感想:

 クリスティのすばらしいところはその設定のユニークさであろう。
今回は16年前の殺人事件の真相を関係者からの証言だけで推理するという趣向、それが無理なく破綻なく最後まで続くからすごい。しかも最後には容疑者の5人を一同に真相を解明する。それもどんでん返しありで。おもしろかったですよ。

03.9.10

『青列車の秘密』

データ:

 発行年  2004.7
 原書   c1928
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-130005-8
あっちゃんの感想:
 偶然が重なっているという感じは受けたが面白いことは面白かった。

04.10.24
『ねじれた家』

データ:

発行年  2004.6
発行所  早川書房(文庫)
ISBN 4-15-130087-2
あっちゃんの感想:
おもしろかったです。真犯人も僕にとっては十分に意外性あったしトリックもよく考えられていたと思います。

06.6.11

ロバート・クレイス
『破壊天使』 上・下

データ:

 訳者:村上和久
 出版社:講談社(講談社文庫)

内容紹介:(講談社BOOK倶楽部より)
私は忘れない――神に蹴られる、衝撃

ほんの悪戯と思われた爆発物は恐怖の殺人兵器だった。
女性刑事スターキーが遺恨を晴らすために立ち上がる!

白昼のLA。爆発物処理員が作業中に爆死した。爆発物は精巧で強力な殺人兵器と判明。犯人は爆弾魔ミスター・レッドか。処理員時代、爆発事故で恋人を失い、自らも瀕死の重傷を負った過去を持つ女性刑事スターキーが、トラウマに苦しみつつ捜査に乗り出す。
息をもつかせぬ全米ベストセラー・サスペンス!
yobataさんの感想:
内容はさておき、それほどの厚さはない(1冊300ページほど)のになぜか上下に分かれていて、しかも高い(上下とも税別各990円)のが、どうも気になる。

かなり複雑なヒロイン、スターキーを好きになれるかどうかによって、評価は分かれるでしょう。事件の真相がちょっと陳腐だけれども、スピーディな展開で読ませる作品ではある。

02.10.6

フェイ・ケラーマン 堕ちた予言者 赦されざる罪

『堕ちた預言者』

データ:

 訳者名   高橋恭美子
 発行年   1999.8初刷り(原書:c1992)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-28208-3

あっちゃんの感想:
リナ&デッカーシリーズとしては3,4年ぶり、結構分厚かったし最初ン方は乗り切れなかったがライラが夜中にデッカー家に押しかけるあたりからおもしろくなってきた。異様な人間関係の女優一家、ピーターと娘シンディの心の行き違い、リナとの関係を織り交ぜながら展開していくストーリーはなかなかのものだった。最後結局***********のが僕としてはちょっと不満も残るがまあいいでしょう。

02.10.7
『赦されざる罪』

データ:

 訳者名  高橋恭美子
 発行年  2001.6初刷(原書 C1993)
 ISBN 4-488-28209-1
あっちゃんの感想:
 読み応えのある作品だった。主人公の家族のドラマと事件がオーバーラップする構成はうまい。デッカーの人間味溢れる行動は胸を打つ。事件は解決したがやりきれなさが残るラストも見事、フェイ・ケラーマンは本当に読ませる作家だ。

04.3.20

トニー・ケンリック マイ・フェア・レディーズ ネオン・タフ
『マイ・フェア・レディーズ』

データ:

 角川文庫
 H10改版初版発行
 ¥640

内容:
 フリーの記者ヘンリーは、売春婦のマーシャを仲間に引きずり込み、冷血漢のデヴァインを騙そうとしている。
デヴァインは恩人だった男の遺言に従い、男の愛人(淑女の売春婦)を探し出し時価10億円の価値があるダイヤを渡そうとしているらしいのだ。
しかし、すでに何人かの女性が失敗し、惨殺されていた。
売春婦が淑女(レディー)に成り済ますなんて無理、というマーシャの一言から、ヘンリーは本物のお嬢様を探すことになるのだが…
EGGさんの感想:
 85点
 20〜25年ほど前、年末の深夜ドラマで一度見たことがあって、(前にもそのことを書いた覚えがあります)すんごく面白い話だなあ、原作が読みたいなあ、と思って探したのですが、やっと今頃になって、古本屋で見かけ読むことが出来ました。

原作を読んで、ほとんど自分の記憶どおり、つまり映画と同じ、だったのにびっくり。

映画(2時間ドラマ)は金子修介監督のほぼデビュー作で、脚本が那須真知子(乗り乗りの時期だったはず)
配役 ヘンリー:柴田恭平 マーシャ:沖まさ美 ジェニファー(お嬢様):田中美佐子  デヴァイン:寺田農(ミノリ)
という、いかにもなメンバーで、これならゴールデンアワーの放送でも、あるいは封切り映画でも十分評価される内容だったと、今だに思うのですが、とにかく原作、映画ともに、エンターティメントの秀作。

唯一ちがっているのは、ラストのあたり、原作ではこれでもかという執拗な戦闘。(デヴァリンが007シリーズのジョーズ(ますます古い(^^;;;)のように不死身だから)気分的には、映画のラスト:しゃれた感じのほうに軍配かな。

03.7.24
『ネオン・タフ』

データ:

 角川文庫
 ¥720
 H2/09/10初版発行

内容 返還直前の香港で繰り広げられる、米国麻薬捜査官ヒュー・デッカーと麻薬組織の攻防を描く一大巨編。
EGGさんの感想:
80点
 設定も展開も、悪い意味でB級アクション映画。ファンが期待しているのは、しゃれていて、しかも誰も思いついたことも無いような設定と、あれよあれよ、という展開なのですが、無駄に冗長なんですよね。
語り口がうまいから、それなりに読めてしまうけれど、ああ面白かったという満足感は薄いかな。残念。これなら初期作品を読み返したほうがいいかも。

03.7.24

ロバート・ゴダード
『石に刻まれた時間』

データ:

 原題:SET IN STONE
 著者:ロバート・ゴダード
 訳者:越前敏弥
 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
 価格:1000円

あらすじ:東京創元社のHPより
 青天の霹靂のように、最愛の妻が逝った。悲しみと驚きに打ちひしがれた僕は、親友と義妹の夫婦に誘われ、二人の新居にしばらく滞在することになる。だが、そこで掻き立てられたのは、新たな悲劇の予感だった。第一次世界大戦直前に建てられ、忌まわしい来歴に彩られた奇妙な石造りの家……錯綜する疑惑と不思議。切ない亡き妻への語りかけに始まる本書は、やがて世にも恐ろしい物語へと姿を変える。当代随一の語り部による離れ業!
yobataさんの感想:
 ロバート・ゴダードの最新刊。扶桑社からハードカバーで出た(すでに文庫化されてます)「一瞬の光のなかで」と昨年講談社文庫で出た「今ふたたびの海」は未読なので、ゴダード作品のベストだとか、3指に入るといった評価はできませんが、相変わらず強烈なリーダビリティでぐいぐいと読ませます。ゴダードが館モノのミステリを書くとこうなるか、とワクワクしながら読み進めたのですが、後半何だか怪しくなってきて、結局ホラーなのかミステリなのか、何となく中途半端に終わってしまった感じがしました。前半部分が抜群に面白かっただけに、なおさら残念に感じましたね...

 物語の肝要な部分を明かさないままに終わってしまうのはゴダードの十八番なので、私は何とも思いませんが、アザウェイズの秘密が何だったのかが、最後までわからなかった点に不満を表明している書評なども目にしました。ゴダードの著作においては、あまり重要ではないと思うんだけどね。

03.3.4

ウィルキー・コリンズ
『月長石』
くれい爺さんの感想:
 たしか“エンターテインメント交差点”での推薦図書にも指定があったが、その折には遠慮させてもらった。
そのときにアップされたログも古いパソコンの中に入っているだろうが、整理されていないので引き出して読むのも手間がかかりすぎる。
この名作古典とされる作品をこれまで読まなかったのは、ただその長さゆえである。たしかに長い。
しかも最初の“ペタリッジの手記”の章はあんなにいきいきと面白いのに、“クラック嬢の寄稿”の章はまどろっこしい。
謎の部分の解明の仕方も、現代では通用しないかもしれない。
まあ、こういう古典はその書かれた時代と共に評価しないといけないだろうが。

03.4.22

P.D.ジェイムズ

『女の顔を覆え』

データ:

 訳者名  山室まりや
 発行年  1995.3初刷り(原書:c1962)
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-076606-1

あっちゃんの感想
 P.D.ジェイムズの作品といえば重苦しい、読みにくいっていうイメージがあって読むのに相当の覚悟が要るのですけど本書はデビュー作ということもあってか読みやすかったしおもしろかったです。しかし人間関係の果ての悲劇ということには変わりありません。被害者のどうして?という悪意がこういう形になってしまうとは・・・結末の付け方もよかったです。

02.11.28

キャスリーン・スカイ
『ヴァルカン』

データ:

訳者名  斎藤伯好
発行年  1986.8初刷り(原書:c1978)
発行所  早川書房(文庫)
ISBN 4-15-01078-9
シリーズ 宇宙大作戦シリーズ
あっちゃんの感想:
 久々の「宇宙大作戦」、アラクニアンの設定は随分ひどい点があるが本作は一種の人間ドラマと見るべきであろう。スポックとカタリア・ドレメイン、それにカーク,マッコイ、ロムラン艦の艦長親子の織成す物語なのだ。その点は面白かった。カークがほとんどいいとこなしという展開も意外性があった。

03.3.13

ヘンリー・スレッサー うまい犯罪、しゃれた犯罪 ママに捧げる犯罪

『うまい犯罪、しゃれた犯罪』

データ:

くれい爺さんの感想:
短編の名手、ヘンリィ・スレッサーの作品を映画監督の名匠アルフレッド・ヒッチコックが選んで編集した短編集。
原題は「A BOUBUET OF CLEAN CRIMES AND NEAT MURDERS」で“CLEAN”を“うまい”、“NEAT”を“しゃれた”と訳しているのだが、読んでいてたしかに“うまい”とか“しゃれてる”と思ってしまう。
長編ではよく“頁を繰らせる面白さ”という表現を小生はよく使うのだが、それは主に展開の面白さを言っている。
この短編集は、次はどんな話を聞かせてくれるのという意味で“頁を繰らせる面白さ”にあふれている。
これほど高水準でそろっている短編集はちょっと見当たらないんじゃないか。
ダールなんかめじゃない。

04.1.28
『ママに捧げる犯罪』
くれい爺さんの感想:
 ヘンリ・スレッサーの短編をヒッチコックが編した「うまい犯罪、しゃれた殺人」は短編集の傑作であった。
この「ママに捧げる犯罪」はそれが好評だったので、同じくヒッチコックが編した第二弾。
質の高さは「うまい犯罪、しゃれた殺人」に及ばないが、あいかわらずスレッサーはうまい。
話の“落ち”が絶妙。
好みとしては「制服は誰にも似合う」が最高によかった。
こういう名人芸に触れる読書は至福の時を与えてくれますよ。

04.9.22

ロバート・J・ソウヤー
『ゴールデン・フリース』

データ:

 ハヤカワSF文庫
 1992/11/30 発行

内容:
 私はイアソン。宇宙船アルゴのすべてを統括している思考型コンピューターだ。
私はこの船の秘密を知った女科学者を、(崇高な使命を守るため)死に追いやったのだが、元の夫であるアーロンがそれを納得せず、いろいろ調べている。五月蝿いやつだ。
EGGさんの感想:
 評価 84点
 というわけで、犯人がHALのようなコンピューター、という設定の、SF倒叙ミステリーです。SF好きな人は、知ってて当然なのかな。
私は、サーフィンしていて偶然知るまでは、まったく知りませんでした。万人向けではないかもしれませんが、相当に面白かったです。
フェアなミステリというわけではないけれど、サスペンス小説と見るなら、こういう展開もアリでしょう。

03.8.19


ロアルド・ダール キス・キス 来訪者
『キス・キス』

データ:
くれい爺さんの感想:

11篇の短編を収めた、1960年発表の短編集。
日本初版は1974年で、訳者がなんと開高健。
短編集ということで、やはり玉石混合なのだが、石が多いのはしかたがない。
阿刀田高の評価では「女主人」「天国への登り道」「牧師の楽しみ」が出来のよい作品で、「誕生と破局」「暴君エドワード」はまずまず、ということだった。
「女主人」は著者の代表作といっていいほど怖くて、これは評価どおり。
「牧師の楽しみ」は予想はつくが、話の落ちが決まっていて、これも評価してよい。
「天国への登り道」は怖さは伝わってくるが、妻が夫を放って出かけるところの心理がはっきりしなくて、これはちょっと評価を落としてまずまずというところか。
「誕生と破局」はヒトラー誕生を描いているが、その後を考えれば味わいはあるが、作品だけを読んだだけではあまり評価できないかな。
「暴君エドワード」はよくわからなかった。
逆に阿刀田が評価してなかった「ビクスビイ夫人と大佐のコート」は冒頭の男女観の話が素晴らしいし、話の落ちもしっかりしていて、この作品は出来のよい作品と評価してもよいと思う。
他の作品はよく分からんかった。

03.9.2
『来訪者』

データ:
くれい爺さんの感想:
 中編の艶笑話が4編。
どれもラストの“落ち”の部分はなかなか面白いのだが、
そこに至る話がちょっとまどろっこしい。
もう少しテンポよくするか、得意の短編にするか。
これにて“ダール”を卒業、次はスレッサー。

03.11.30

ジェフリー・ディーバー
『魔術師』
くれい爺さんの感想:
 映画に「コレクター」と「ボーン・コレクター」というのがあって、これまで「コレクター」は見たことがあるのだが、「ボーン・コレクター」は未見だった。
で、どちらも黒人俳優の主演のミステリー映画で、小生はどうもこれを混同してしまっていたようである。
正確にいうと「コレクター」は名優モーガン・フリーマンが主人公の犯罪心理学者アレックス・クロスに扮したJ.パターソン原作のミステリーで、「ボーン・コレクター」はこれまた名優デイゼル・ワシントンが科学捜査官リンカーン・ライムに扮したもので、これがジェフリー・ディーヴァーの原作のものである。
今回、「魔術師」を読んだ後に映画「ボーン・コレクター」を見たが、なかなか面白かった。
ついでに言うと、「コレクター」のほうも面白かった。
映画で混同していたように、小生はこのジェフリー・ディーヴァー原作のリンカーン・ライムのシリーズを読んだことがなく、主人公の名前は聞いたことがある気はするのだが、ほとんど知らなかった。
で、リンカーン・ライムが四肢麻痺であることも当然知らなかった。
今回の作品「魔術師」はイリュージョンというものを基本にして、誤導(ミスディレクション)というものの理論的な組み立てを表わしている。
誤導はミステリーの必須アイテムであるから、これはなかなか興味深いものがあった。
この手の作品に泡坂妻夫の「11枚のトランプ」があって、これは手品(マジック)の楽しさとミステリーにおける誤導の面白さを堪能でき、泡坂の作品では「乱れからくり」の評価が高いのが一般的だが、小生は「11枚のトランプ」のほうを高く評価していて、傑作だと思っているのだが。
「魔術師」は誤導がテーマということもあって、見せかけと真実がめまぐるしく移って、最後まで飽きさせない展開で読者を引っ張る。
シリーズを遡って読んでみたいと思わせる作品であった。

05.2.24

コリン・デクスター 謎まで三マイル 別館三号室の男 オックスフォード運河の殺人 消えた装身具
『謎まで三マイル』

データ:

 訳者名  大庭忠男
 発行年  1993.9初刷り
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-077556-7
あっちゃんの感想:
出だしは良かったんですけどちょっと分かりにくかったです。期待はしているんですけどね、コリン・デクスターは

02.10.17
『別館三号室の男』

データ:

訳者名  大庭忠男
発行年  1994.6初刷(原書:1986)
発行所  早川書房(文庫)
ISBN 4-15-077557-5
あっちゃんの感想:
やっぱりモースはあくが強い。ルイスもたいへん。ということでミステリーとしてではなくモース主任警部の物語としてそれなりに楽しめた。またおっくすフォードが舞台とは思えないほどどろどろした男女関係も読ませどころだった。残念ながらミステリーとしてはいまいちだったかな。

03.2.20
『オックスフォード運河の殺人』

データ:

 訳者名   大庭忠男
 発行年   1996.6初刷(C1989)
 発行所   早川書房(文庫)
 ISBN  4-15-077-558-3
あっちゃんの感想:
 面白い設定でした。運河を航海する船と言うのが今一イメージしにくかったのですが19世紀の殺人事件をモースが推理すると言うのは楽しかった。最後の辺りで証拠物件が出てくるのはちょっと興ざめだったがよく検討しているといったところか

03.12.26
『消えた装身具』

データ:

訳者名  大庭忠男
発行年  1997.4
発行所  早川書房(文庫)
ISBN 4-15-077559-1
あっちゃんの感想:
面白かったです。その前の3作ぐらいからは今ひとつかなと感じていたんですがこれはよかったです。最後の真犯人の正体から動機まで見事に決まっていました。

04.12.23

コナン・ドイル シャーロック・ホームズ全集2 詳細版シャーロック・ホームズ全集3 シャーロック・ホームズの冒険 シャーロック・ホームズの生還

『シャーロック・ホームズ全集 2』

データ:

 解説・注 ベアリング・グルード
 監訳   小池繁滋
 発行年  1997.5初刷
 発行所  筑摩書房(文庫)
 ISBN 4-480-03272-X

あっちゃんの感想:
評価:A

 これだけ古い作品だとどうしても時代的な制約が出てきて最新のミステリーと同等に評価するのが難しいものですがさすが古典中の古典だけあります。100年以上前の作品ということを考慮しなくても大変おもしろい作品ばかりでした。ホームズとワトソンが共同生活するようになって初めての事件「緋色の研究」はプロットがいいです。現在と過去をサンドイッチにして物語の奥行きを深めています。モルモン教に対してはとんでもない偏見に満ちていますがこれこそ時代の制約というものもあって仕方ないでしょう。しかしホームズの推理は非常に鮮やかでしたしおもしろかったです。「まだらの紐」−有名すぎる凶器が出てきますがそれを知っていても十分に楽しめました。スリリングな作品でした。「入院患者」は犯人は分かりますがその動機の解明におもしろさがありました。「独身貴族」はホームズの人間性が窺える作品でした。

02.9.2

『詳細版シャーロック・ホームズ全集 3』

データ:

 解説と注 ベアリング−グルード
 訳者名  小池滋
 発行年  1997.6初刷り
 発行所  筑摩書房(文庫)
 ISBN 4-480-03273-8

あっちゃんの感想:
 本書はバラエティに富んでいました。中でもホームズの粋な計らいが光る「第二のしみ」、ホームズが出し抜かれた「ボヘミヤの醜聞」、ホームズの屈辱感がよく出ていた「五つのオレンジの種」、奇想な「赤毛組合」、
これまた奇想な「青いガーネット」、ホームズの面白いところは推理の面だけでなくホームズも人間性も大きいんだなと思いました。

03.1.19
『シャーロック・ホームズの冒険』

データ:

 訳者名  阿部智二
 発行年  1971.1(新版)
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN 4-488-10101-1
あっちゃんの感想:
 実は数年前からちくま文庫の「シャーロック・ホームズ全集」を読んでいました。ところが同シリーズが絶版になったことを知り創元推理文庫版で
読んでいくことにしました。全12話、今回改めて思ったのはホームズという人間はとても人間味のある暖かい人柄であるということです。作品に
ユーモアを与え読後感も爽やかです。「ボスニアの醜聞」なんか結果的に言えばホームズの負けですがそういうのもまたいいんですね。何とか数年で全部読んで見たいです。

04.12.23
『シャーロック・ホームズの生還』

データ:

訳者名  阿部知二
発行年  1971.1新版
発行所  東京創元社(文庫)
ISBN 4-488-10103-8
あっちゃんの感想:
読む順番から行くと「回想のシャーロック・ホームズ」だったが間違えて本書を買ってしまった。そういった点では失敗だった。しかしまあバラエティにとんだ短編集でおもしろかった。前作同様ホームズの人間味が作品にいい味を付けてくれていた。

06.6.4

J.R.R.トールキン 指輪物語2 指輪物語4,5 指輪物語5〜7
『指輪物語2 旅の仲間 上2』

データ:

 書名    指輪物語 2 ;旅の仲間 上2
 著者名   J.R.R.トールキン
 訳者名   瀬田貞二、田中明子
 発行年   1992.7初刷り
 発行所   批評社(文庫)
 原書    c1954
 ISBN  4-566-02363-X
あっちゃんの感想:
 この時期に本書を読むことになってとても恥ずかしい。僕は特に映画などの映像化で話題になっている本を読むのが嫌なんですが本シリーズは1年前に第1巻を読でようやく最近になって購買リストの順番になってしまったのだから仕方ありません。^^;
 さて牧歌的な中にスリリングな展開、主人公は決してヒーロー然としていないところが好感が持てます。本書のラストで主人公のフロドは絶体絶命のピンチを迎えます。続け方もにくいです。もちろんもう1年は待っていられません。1ヶ月に1冊ぐらいは読んでいきたいですね。

02.2.28
『指輪物語4,5 旅の仲間 下1,下2』

データ:

 訳者名   瀬田貞二、田中明子
 発行年   1992.7初刷り(原書:c1954)
 発行所   評論社(文庫)
あっちゃんの感想:
固有名詞がなかなか紛らわしくて覚えにくかったのが難点。今までの2巻がどちらかといえば牧歌的な面があったのに比べ第3巻からはいよいよ冥界の王との壮絶な戦いが切って落とされる。最後のフロドとサムのやりとりなどの名場面もあり次巻が楽しみ。

 以前感想をアップした時は「指輪物語」を書名としましたが今後は指輪物語をシリーズ名とし「旅の仲間」、「二つの塔」、「王の帰還」の方を書名とします。

02.6.17
『指輪物語5〜7 二つの塔』

データ:

 書名    二つの塔 上1・上2・下
 著者名   J.R.R.トールキン
 訳者名   瀬田貞二、田中明子
 発行年   1992.7初刷り(原書1954)
 発行所   評論社(文庫)
 シリーズ  指輪物語 5〜7
あっちゃんの感想:
 第2部、盛り上がりましたねえ。旅の仲間が3つに分かれそれぞれ冒険をしていく、それぞれよかったですよ。ただ固有名詞が大変でした。結局上2に入るところで「補遺編」を購入しました。分からない言葉が出てくるたびに巻末の用語説明を参照しましたがこれがまた何行ごとに1回ぐらいの割合で見比べなかればならなかったのでそれが面倒でしたね。でも辛抱して読んでみてよかったなあと思いました。後2冊、これは来年ですね。

02.12.11

ジェレミー・ドロンフィールド
『飛蝗の農場』

データ:

 訳 者:越前敏弥
 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
 発行日:2002.3.22
 ISBN:4-488-235069
 価 格:1,060円
 原 題:The Locust farm / Jeremy Dronfield
くれい爺さんの感想:
 こういう散文的とでもいうミステリーを読んで評価するのはこのサークルではyobataさんが一番でしょう。
 ゴダードの作品をよく読まれて、高く評価されてました。

 序盤から中盤にかけてはちょっと読みづらいですが、終盤は真実と嘘のカオスとでもいう混沌を畳みかけるように進められ一気に読ませます。
 著者の力量の確かさがわかります。

 新聞紙上の書評で文学作品っぽい印象を受けていたのですが、実際にはそういう感じはなく、しっかりとミステリーしていました。


 以下はネタばれに近いものがありますので、未読の人は読後に読んでくださいネ。


 ラストのロザリンドがキャロルに起こったことに対して責任
を感じるのはキャロルがベヴァリーの死に責任を感じていたの
と相似のような関係を表現しているし、スティーブンがこれか
ら生きていくことについてケヴィンとまさしく一体になったと
感じさせるラストは余韻を残して印象深い。

02.9.1

yobataさんのres:
 くれい爺さんも「飛蝗の農場」を読まれたのですね。何とも表現のしづらい作品ではありますが、良い作品でした。

 ゴダードの作品では「リオノーラの肖像」がいちばん良かったです。途中まではかなり退屈ですが、読み通す価値のある作品だと思います。

02.9.3

ジム・トンプソン
『内なる殺人者』

データ:

 出版社:河出書房新社

くれい爺さんの感想:
 ジム・トンプソンというと映画「ゲッタウェイ」の原作者くらいしか思い浮かばない作家なんだが、1980年代に復権し、この「内なる殺人者」が彼の最高傑作という評判。
 犯罪者の内面を描くということでは、例えばカッツェンバックの「旅行者」などの描写に比べると淡白かな、という印象である。
 が、この作品がかのロバート・ブロックの「サイコ」(1959年)に先立つこと7年、1952年に発表されたとなると、それなりには評価されてもいいかもしれない。
 犯罪者がわの内なる狂気を倒叙式で描くなどの面白みもあるが、犯罪者のトラウマをもっとはっきり描いてもよかったかもしれない。
 最後に犯罪者に突き付けられる証拠は、倒叙式ならではの意外性を持っていて、これもなかなかのものである。

02.8.11

ラリイ・ニーヴン

『リングワールドふたたび』

データ:

 訳者名   小隅黎
 発行年   1988.4初刷(原書 c1980)
 発行所   早川書房(文庫)
 ISBN  4-15-010767-X
 シリーズ  ノウンスペース・シリーズ

あっちゃんの感想:
 入っていけなかったなあ。ハードSFにしては頭の痛くなる科学的な薀蓄説明がなかっただけよかったですけど視覚的な作品で映像が浮かんでこないのが駄目でしたねえ。リングワールドという魅力的な人工空間と個性的な諸種族のイメージが捕らえにくかったです。せっかくのシリーズ最後の作品だったのに・・・

02.8.7

T.ジェファーソン・パーカー
『サイレント・ジョー』

データ:

くれい爺さんの感想:
 日本には“むっつり右門”という男がいるが、こちらはサイレント(物静かな)・ジョー。
口は閉ざし、眼は開けておけ。そこから何か得るものがあるかもしれない」「決断はすばやく下し、その決断を貫くことに全力をつくせ」という養父の教えに忠実に生き、そのばかっ丁寧な言動にハードボイルドの持つ倫理観を感じて、思わずブルッときてしまった。
その養父が殺された事件を追う中で、たとえその養父の影の部分が明らかになろうと、彼は突き進む。
著者はシリーズの作品を書かないらしいが、シリーズ化しても遜色ない魅力的な主人公である。

03.6.1

リチャード・ノース・パターソン 最後の審判 罪の段階 子供の眼 サイレント・ゲーム ダーク・レディ
『最後の審判』

データ:

 原題:The Final Judgment
 訳者:東江一紀
 出版社:新潮社
 価格:2500円
yobataさんの感想:
 「罪の段階」では判事として、「子供の眼」では弁護士として登場したキャロライン・マスターズの生い立ちを描く作品。実父や異母姉と対立するに至った経緯と、姪を弁護する手腕が読みどころか。ブレットの恋敵として登場するミーガンの掘り下げがちょっと弱いが、期待に違わぬ力作。
 しかし、この作品のことまで考えて前2作を書いたのだとすると、スゴイ作家としか云いようがない。

02.10.17
くれい爺さんの感想:
「罪の段階」「子供の眼」に続く、法廷サスペンス三部作の三作目。
「罪の段階」で小生には主人公よりも魅力的に感じたキャロライン・マスターズが主人公となって、姪にかかった殺人の嫌疑をその弁護士として法廷に臨む。
キャロラインとその家族との確執なども明らかになる。
相変わらずパタースンの法廷でのサスペンスの盛り上げ方はうまい。
が、反面、キャロラインの家族との確執の原因を描く過去の話にどうも乗り切れない感じがする。
小生自身がもうそういうお話にほとんど魅力を感じない読者だからかもしれないが。
ラストで明かされる家族の秘密も、なんとなく予想がついてしまうしね。
近頃、「子供の眼」が文庫で発売されたような話を聞いたが、なんといっても一作目の「罪の段階」は傑作、お勧め作品である。
パタースンの作品を集中して読んでいるのだが、後、「サイレント・ゲーム」「ダーク・レディ」の2作を読むつもりでいる。

05.1.22
『罪の段階』
くれい爺さんの感想:
 歳をとって忘れっぽくなっていいことの一つは、以前に読んだ作品を初めて読んだ感覚で読み直すことができること。
この作品も8年ほど前に読み、PC−VANの「エンタテイメント交差点」でも絶賛され、小生自身も高く評価したと覚えているが、8年を経て細かいプロットはほとんど忘れてしまっていたので、まったく初めての感覚で読めた。(これが良いことか、悲しいことかは考えないでおこう)
読み直すことにしたのは、著者の法廷三部作「罪の段階」「子供の眼」「最後の審判」が完結したのと、新しいシリーズ(?)「サイレント・ゲーム」が発表されたからで、半年ほどかけてこの4作品を読もうと思っている。
8年前も高く評価したと思うが、それでも「こんなに面白かったのか」というほど面白い。
いやあ、ただただ結構なものを読ませていただきました、これに尽きます。
リーダビリティというとダン・ブラウンの作品のように話の流れで一気に読ませるような作品もあるが、一つ一つのプロットに謎を組み込んでそれを積み重ねて読ませるような、こんな作品もある。
前者は冒険譚の感覚だし、後者のほうがよりミステリーらしいといえるかもしれない。

04.8.30
『子供の眼』
くれい爺さんの感想:
「罪の段階」に続くパタースンの法廷三部作の二作目。
「罪の段階」の嘘と真実のめくるめくようなタンゴを思わせる力技で読者を引っ張るのと比べると少々力が足りないかな。
まず、冒頭の「悪夢」と「脱出」の章は敵役のリカード・エイリアスの悪役ぶりが凄くて、ここは引っ張られる。
が、「取調べ」と「陪審」の章がややダレる。
「公判」の章は弁護士のキャロライン・マスターズの反対尋問の論理が凄くて、ここも読み応えたっぷり。
なかでも目撃証言の女性の証言を覆していく論理には、“論理的な思考は、なにも本格推理ものだけじゃない”と感じさせ、たしかにこれはミステリーだとあらためて思わせられた。
終盤の「子供の眼」と「家族」の章は、やや蛇足的。
ここで明かされる真実というのが、論理的思考の末でなく、たぶんこうだろうというぐらいの結果のものだが、それがぴったしカンカン。
つまり、結末が読めてしまうんですよね。
「罪の段階」で小生がクリストファー・パジェットより魅力的に感じたキャロライン・マスターズがここでも大活躍。
法廷三部作の最後、「最後の審判」ではそのキャロライン・マスターズがいよいよ主役を張る。
楽しみ。

04.10.18
『サイレント・ゲーム』
くれい爺さんの感想:
「罪の段階」「子供の眼」「最後の審判」の法廷サスペンス3部作の後の作品。
法廷サスペンスという趣向は変わらず、その方面でのストーリーテラーぶりはさすがに堂に入っている。
が、結末は想定の範囲内だし、セックスに関する描写が読者サービス臭い。
犯行の動機などの犯人の心理面も、もっと掘り下げられたらと思う。
セックスの好みだけでは物足りない。

05.5.22
『ダーク・レディ』

データ:

くれい爺さんの感想:
「罪の段階」「子供の眼」「最後の審判」「サイレント・ゲーム」と読んできて、パタースンの作品としては5作目になる。
そこそこ面白く読めたのはラスト4分の1、「罪の段階」のときに感じた筆力はもう感じなかった。
とりあえず、この5作でパタースンは卒業。

06.5.5

エリオット・パティスン
『頭蓋骨のマントラ』(上・下)

データ:
 エリオット パティスン/三川 基好 訳
 早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)
 ¥660(上・下各)
 2001/03/01
 ISBN: 4-15-172351-X(上)
     4-15-172352-8(下)
くれい爺さんの感想:
 舞台をチベットの奥地にある強制労働収容所にするのだ。主人公は中国経済部の主任監察官だった男、単道雲。北京で起きた史上最大の汚職事件を二件解決し、何十人もの高官を強制労働キャンプに送ってきた刑事で、北京で最後に一人だけ残った正直者と言われていたが、大物が絡んだ汚職事件を追求して北京を追われ、いまはインドとの国境に近いチベット南部の刑務所で道路建設の作業に従事している男だ。この男が殺人事件の捜査をまかされるのである。
かくてチベットの風俗風習、そして複雑な政治的状況を背景に、極めて特異なミステリーが始まっていく。その背景だけでも十分に読みごたえがあるのだが、しかしこの特異な舞台を強調しすぎると、この作品の美点が見えにくくなりそうだ。では、この長編の美点とは何か。
 主人公に捜査を命じた大佐の秘書から「小単(シャオシャン)」と呼びかけられる場面を見られたい。それは、祖母が彼を呼ぶときに使った言い方で、自分より若い者に対する古風な呼びかけだが、それを思い出して、彼は突然寂寥感に襲われるのである。あるいは、父親に書いた手紙を燃やし、その灰が天にのぼっていくのを見守るシーンを読まれたい。監査役につけられた軍曹に、彼は「ただ心に相手の心を思い浮かべればいい。そうすれば手紙は届く」と言うのだが、こういう細部が光っていることに留意したい。この人物造形が全体を引き締めて、奥行きのあるミステリーになっていることはぜひ指摘しておきたい。今年の翻訳ミステリーのベスト3級の傑作だ。

 と、ここまでが去年のはじめ頃に朝日新聞の書評に北上次郎が載せた文章。
で、去年の「このミス」が発表されたときに、「どうして入らないんだ」と「エンタメ交差点」に書いた記憶がある。
で、読んだ感想だが、評価が難しいとでも言おうか。
たしかに北上の言うような細部や人物造形は光っているのだ。
中でも小生が引かれたのは、監査役の軍曹がはじめは単を囚人として軽蔑して扱っていたのを、だんだんと単に引かれていき、やがては収容所の監視員という組織の一員という立場から自分自身を見出していく流れであった。
が、しかし、風俗風習や政治的状況といった背景が読みごたえがありすぎるのだ。
中でも宗教的な部分はなかなか理解できない。
そういった部分に気を取られて、肝心の主人公が捜査の為に行う空間的な移動やかかわった人間への質問の真意、思考的経路がはっきりしない。
つまりは構成の重厚さや人物造形の巧みさから傑作なのかもしれないが、それを傑作と理解するにはそうとう読み込める読者でなければならないと言わざるをえない。
「このミス」くらいの読者では、これを傑作とは理解できないのだろう。
小生?...「このミス」程度の読者であります。(^^;

02.5.7

トマス・ハリス
『ブラック・サンデー』
くれい爺さんの感想:
 途中でほぼ挫折していたが、風呂場本としてほそぼそと読み続け、ようやく読み終えました。
なんせ書き込みすぎ。
1975年の作品なのだが、このころ人気のあったフォーサイスやラドラムといった著者の軍事スリラーやテロ・サスペンスの作品はもっとテンポがよかったような気がする。
つまり早くて的確な場面転換がそういうサスペンスを盛り上げて、読者を惹きつけていたと思うのだが。
この作品には、そういう部分で不満が残った。
「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」のトマス・ハリスとは思えない。
ただ、これが1975年の作品であることは先に言ったが、パレスチナ・ゲリラのアメリカへのテロ攻撃という作品が、9・11の25年前にすでに描かれていたこと、そして現在の世界情勢がほとんど変わっていないことに驚かされる。
全体的にはイスラエル寄りの作品という印象だったが、ラストがああいうかたちで終わらせたのにはちょっと驚き。

04.12.25

ドミニック・ファーブル
『美しい野獣』
くれい爺さんの感想:
 めずらしいフランスのミステリー。
刺激の強い作品に慣れてしまっている小生には、こういう作品はどうも...、ということで風呂場本となっていましたが、ようやく読み終えました。
夫が妻を死に追いやる手段としてとった方法とは...?
妻の心理描写で、その追い詰められていく様子が語られるのだが、こういうのはどうしても展開が遅いと感じてしまいますね。

05.3.9

リンダ・フェアスタン
『誤殺』

データ:

 発行:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫 2002/7/15)
 ISBN:4-15-173351-5
 定価:940円(税別)

あらすじ:
 アレックス・クーパーはマンハッタンの地方検察庁で性犯罪訴追課を率いる美貌の女性検事補。ある日、アレックスの別荘に滞在していた親友の女優イザベラが無残な射殺対となって発見された。はたしてアレックスと間違われて犠牲となったのか? 捜査を開始したアレックスの身辺に出没する怪しい影。やがて予想外の容疑者の出現に、彼女は絶体絶命の窮地に立たされた! 卑劣な犯罪に敢然と立ち向かうニュー・ヒロイン登場。   (カバー裏表紙より)
kamanoeさんの感想:
 うわぁ〜、面白い! なんか「騒々しいなぁ」と思いつつ読んでいったんですが、スピード感があるというか、ゴチャゴチャしながらついついページを捲ってしまう。前のめりに疾走する感じ。途中、「まったり」して(笑)しまう部分もあるんですが、後半1/3での急展開。なんとなく見えてきたところから、怒涛のラストスパート。ハラハラしながら、読みきりました。いや〜、海外モノにもかかわらず、楽しめました。
 美人検事補に、ハンサムな刑事。検事補のお相手は有能なビジネスマン。ところが、展開はロマンスに走らない。もちろん、冒頭から「自分と間違われて殺されたのではないか」と事件の中心に立たされたこともありますが、そんなことはお構い無しに検事補としての仕事が引きも切らないからですね。(担当する性犯罪の)犯人に対して怒り、(気に入らない)上司に怒り、とんでもない判事に怒り。って、これじゃぁ怒ってばかりですが、そんなことはなく、ごく自然と共感できる怒りである。(本筋とは関係ないですが) そして一方、買い物をし、バレエのレッスンを受け、雑誌をめくり、魅力的な人物像に仕上がっている。(料理はしない)
 本筋の話も、急転直下な展開であったり、犯人の情報収集が容易過ぎないか? と思ったりもしますが、なかなか綺麗に決まっていると思います。(違和感で立ち止まる、ってことはまったくなし)

 以後の作品も期待を抱かせますね。

 しかし、途中出てくる判事は、とんでもないね。何度も痛められた者は、「そのおかげ」で快復が早いなんて! ばかじゃね〜の。混乱から絶望にいたる時間は早いかもしれないですけど。

             kamanoeでした

05.3.20

エリザベス・フェラーズ 猿来たりなば 自殺の殺人

『猿来たりなば』

データ:

 訳者名    中村有希
 発行年    1998.9初刷り(原書:1942)
 発行所    東京創元社(文庫)
 ISBN   4-488-15916-8
 備考     「このミステリーがすごい’99」海外編ベスト4位

あっちゃんの感想:
評価;A

 設定はコメディを思わせるが中身はきっちりとした本格、一癖も二癖もある登場人物、推理の試行錯誤、見事に張られた伏線、そして予想を裏切るチンパンジー殺害の動機、意外な犯人、いずれも超一級品、創元推理文庫で出ている後2作も読んでみたい。
登場人物、試行錯誤の推理も

02.5.21
『自殺の殺人』

データ:

訳者名  中村有希
発行年  1998.12
発行所  東京創元社(文庫)
ISBN 4-488-15917-6
あっちゃんの感想:
 読んだ後はよくあるどんでん返しのパターンだと言えるのだが呼んでいる間はどこに落ちるのか分からず楽しく読めた。

05.7.17

ダン・ブラウン 天使と悪魔 ダ・ヴィンチ・コード パズル・パレス
『天使と悪魔』(上・下)

データ:

 (各)¥1800
 2003/10発売
 角川書店

内容:
 反物質を発見した科学研究所セルンのベトラ博士が、他殺体となって発見された。その胸には、「イルミナティ(光明会)」というなぞめいた言葉の焼き印が。ハーバード大学で宗教的象徴を専門とするロバート・ラングドンは、強引に調査を依頼される。
イルミナティとは、ルネサンス期の科学者のグループで、ガリレオもその一員だった。ガリレオはローマ教皇の迫害を避けて、新しい考えをローマで秘密裏に討論していた。しかし、イルミナティは消滅したはずだったのに。
そしてベトラが開発していた反物質のサンプルが盗まれ、バチカンのどこかに隠されたと知らされる。爆発すればバチカンが消滅する。ラングドンはベトラの娘で生物学者のビットーリアとバチカンへ飛んだ。タイムリミットは6時間...

くれい爺さんの感想:
 yobataさんの「リーダビリティのある」という言葉に誘われて手にしてみました。言われるとおりの面白さです。
映画でいうと「インディ・ジョーンズ」プラス「ダイ・ハード」の面白さというところでしょうか。こういう薀蓄の出てくる作品というのは元来好きなほうですし。

そういえば、日本の古代史の薀蓄を交えSFにすると諸星大二郎の「暗黒神話」になるし、アトランティスの薀蓄を交えサスペンスにすれば東周斎雅楽・魚戸おさむの「イリヤッド」になる。どちらも好きな漫画です。

バチカンについての薀蓄も面白く読んだ。
科学と宗教の関係についての大演説などは、あっちゃんが読んでも面白いかも。

第2作の「ダ・ヴィンチ コード」のほうがこの作品よりも話題ですが、読んでみたいと思わせますね。

04.6.30


あっちゃんのres:
 そうですか
「インディ・ジョーンズ」も「ダイ・ハード」もそして同じようなノリだった「スピード」も大好きな映画です。もちろん「暗黒神話」は僕にとってベスト3には入る大傑作ですから楽しめるかもしれませんね。薀蓄でもうざったくなる薀蓄と気にならない薀蓄がありますがまあどうなんでしょうね。海外物は決まった作家しか読まなくなって開拓しないといけませんね。

04.7.2
EGGさんの感想:
 久しぶりのノンストップサスペンス。最近スピードが落ちてきているはずなのに、ほぼ一日でした。おんもしろかったなあ。図書館ではダ・ヴィンチ・コードだけでなく、これも予約の行列で、やっと借りられたのです。うん、待った甲斐があった。
聖なる道を示す4つの暗号、いいですねえ。基礎知識ないからホントなの?っておもうけど、懐かしいアドベンチャーゲームを解いているようで、わくわく。点対称のロゴも効果的で、とにかく二重マル。

訳がとっても読みやすかったので、越前敏弥さんのインタビューページ貼り付けておきます。
http://www.litrans.net/whodunit/int/echi.htm

04.9.9
『ダ・ヴィンチ・コード』

データ:

 訳者:越前敏弥
 出版社:角川書店
 価格:各1890円

 あらすじや詳細は下記URLをご参照ください。

 http://www.kadokawa.co.jp/sp/200405-05/
yobataさんの感想:
 超話題作、しかもかなり売れているようですね。ダン・ブラウンの2作目です。今回も抜群の面白さで読ませます。うんちくもスゴイし、息をもつかせぬ展開です。ただ、前作に比べて、ご都合主義と感じてしまうような箇所が増えたのも事実。まあ、前作のラングドンは信じられないほどの超人でしたが...。
 これを都合が良いと受け止めるか、よく練られていると感心するかで評価は分かれそうです。
くれい爺さんの感想:
 薀蓄の面白さは堪能できる。
特に、ダ・ヴィンチの絵画に隠された意味合いの面白さ、中でも「最後の晩餐」の見方には眼から鱗が落ちた。
思わず、美術本を取り出して見直しましたよ、「最後の晩餐」を。
暗号の面白さ、あるいは言葉遊びといってもいいかもしれないが、はよく考えられているし、英語やフランス語が出来なくても十分に面白さを味わえる。
“ニュートンの球体”なんてのは笑えますから。
話の展開も一気に読ませる面白さではあるが、終盤に薀蓄の多さが邪魔をして少々だれを感じた。
yobataさんが“都合がよすぎる”ように感じたといってたのもそのあたりの印象でしょうか。
たしかに結末はまとめすぎのように感じたな。

04.9.5
『パズル・パレス』

データ:

 著 者:ダン・ブラウン/越前敏弥・熊谷千寿 訳
 出版社:角川書店
 出版日:06.4.5
 価 格:\1800(上下巻とも)
  ISBN :4-04-791517-3(上巻)
     4-04-791518-1(下巻)
 原 題:Digital Fortress / Dan Brown(1998)

あらすじ:
 全通信を傍受・解読できるNSAのスーパーコンピューター<トランスレータ>が狙われる。対テロ対策として開発されたが、一般市民の通信全てをも監視可能なこのコンピュータの存在は決して公にできない国家機密であった。だが、この状況に憤った元スタッフが、自ら開発した「デジタル・フォートレス」という解読不可能な暗号ソフトを楯に、<トランスレータ>の公表を迫ったのだ。このソフトが流布されれば、アメリカは完全に無防備になってしまう……。
(上巻表紙折り返しより)
 NSA暗号解読官スーザンは「デジタル・フォートレス」を<トランスレータ>で解読しようとするが、解読どころか、NSAそのものの機能さえ麻痺してしまうという絶体絶命の事態に……。ソフトを凍結させるパスワードを求めて、アメリカ、スペイン、そして日本を舞台に、タイムリミットの暗号解読作戦が、今、始まった!
 個人のプライバシーと国家安全保障とが対立する、情報化時代のテロリズムをスリリングに描いた、鮮烈なデビュー作!
(下巻表紙折り返しより)
kikuchiさんの感想:
 角川書店のサイトのインタビューで言及していた、2005年の夏頃に出る予定のラングドンシリーズ第三弾が遅れてやっと出たのかと思っていたら、そうではなくて、デビュー作「Digital Fortress」の翻訳でした。なんで「パズル・パレス」なんてタイトルにしたんだろうと思っていたら、どうやら舞台となった国家安全保障局(NSA)のニックネームのようです。作中でも言われているし、訳者あとがきの参考図書にもそういうタイトルの文献が挙げられています。

 で、感想ですが、ダン・ブラウンって何かフォーサイスを軽くして荒唐無稽さを増やしたような感じだなあと思いました。実在の組織を舞台にして、現実に起こるかもしれないと思わせるような事件や陰謀を精緻に描くというところはフォーサイスっぽい。これがエシュロン発覚より前に書かれたというところに著者の先見性とか題材を選ぶ確かな目を感じます。ですが、一方で真相の意外性を狙うあまり、かなり無理に見える展開をあえて採用してしまっているところに嘘っぽさ、安っぽさも感じられてしまいます。
 あと、日本語についてはちょっとアレな部分も多いです。トクゲン・ヌマタカはまだしも、エンセイ・タンカドなんて、いったいどんな字を書くのか見当がつかない名前です。

 犯人とか黒幕の正体という点ではワンパターンなので、前三作を読んでいる人には終盤の展開が簡単に予測がついてしまうでしょうが、息もつかせぬ展開で一気読みしてしまう面白さがありました。

06.4.20

リリアン・ブラウン 猫はスイッチを入れる 猫は14の謎をもつ 猫はシェイクスピアを知っている

『猫はスイッチを入れる』

データ:

 著者名      リリアン・ブラウン
 訳者名      羽田詩津子
 発行年      1990.4初刷り(原書:1968)
 発行所      早川書房(文庫)
 ISBN     4-15-077-204-5

あっちゃんの感想:
評価:B−

ココとヤムヤムが可愛いのでよかった・・・というのはいかんよねえ。でもこういうミステリーもたまに読むのはいいよね。

02.7.18
『猫は14の謎をもつ』

データ:

 訳者名   羽田詩津子
 発行年   1991.7初刷(原書:c1988)
 発行所   早川書房(文庫)
 ISBN  4-15-077205-3
あっちゃんの感想:
 猫が主役であることには変わりはないがシャム猫ココは登場しない。
ミステリーあり、怪談あり、人情話ありなど14のバラエティ富んだ短編集、猫派の僕には楽しい作品集でした。

03.10.6
『猫はシェイクスピアを知っている』

データ:

 訳者名  羽田詩津子
 発行年  1992.1
 ISBN 4-15077206-1
 備考   原書:c1992
あっちゃんの感想:
 いつの間にか大富豪になっていたクィラランだが事件はそれでも起きる。なかなか楽しめた。

04.8.28

クリスチアナ・ブランド 緑は危険 ジェゼベルの死

『緑は危険』

データ:

 ハヤカワ文庫
 \640
 1978/7/15 発行
 2000/10/31 四刷
 ISBN 4-15-073001-6

参浄さんの感想:
 これぞ本格ミステリといわんばかりの、オーソドックスな本格。どこか飛び抜けているところがあるわけではなく、しかもメイントリックに至ってはどうにもしょぼい。まあそれは作者も承知しているらしく、あっさりネタ割ってますが。
 だけども全編を支える伏線とミスディレクションが非常にしっかりしているため不満は無し。どころか非常に満足。
 一発ネタのバカ本格も楽しいですけど、こういった土台のちゃんとしたものを読むと嬉しくなってきます。

02.4.15
『ジェゼベルの死』
くれい爺さんの感想:
 第十四回鮎川哲也賞を「密室の鎮魂歌」で受賞した岸田るり子が新聞のインタビューの中で「完璧だと思った」と語っていたのを読んで読む気になった。
推理の試行錯誤がきっちりと描かれていて、いかにもミステリーを読んだ気がする。
ただ、この作品を完璧だとするには、どうしても引っかかる一点がある。

ここからはネタばれ気味の話になります。
もちろん岸田るり子さんには読んでもらいたいけど。

犯人が犯行の中で一人の女性を拘束するが、なぜ殺さなかったか。
もともとその女性は犯人の復讐すべき三人の中の一人であったはず。
拘束することができれば殺すこともできたはずなのに。
その説明が弱い。

さて岸田るり子はどう読んだのか。

05.5.3

ローレンス・ブロック

『死への祈り』

くれい爺さんの感想:
煙草をやめて11年と17日、禁煙の動機がブロックのこのシリーズであったことは何度か書いたこともある。
その探偵スカダーのシリーズの最新作。
この作品でブロックは一人称で語られるべきハードボイルド小説に三人称で犯人の心理を描写し語るという試みをした。
邪道かもしれないが、そう違和感はなかった。
資産家夫婦が惨殺されるという事件の謎、容疑者が死体となって発見された後に、発表された事件の内容に疑問を持つスカダーの推理のありかたも納得がいく。
あいかわらず会話が面白く、ブロックの本領を発揮。
ただ、このシリーズの「八百万の死にざま」「聖なる酒場の挽歌」「倒錯の舞踏」「死者への誓い」という頂点群に比べれば内容の軽さは否めない。
もうスカダーも63歳、すでにこのシリーズは一人の人生を描く大河小説、“北の国から”化しているともいえるかも。
ラストは“to be continue”となっているのか。

03.2.11

C.C.ベニスン
『バッキンガム宮殿の殺人』

データ:

 発行:早川書房(ミステリアス・プレス文庫 1998/5/31)
 ISBN:4-15-100124-7
 定価:780円

あらすじ:
 エリザベス女王が使用人の死体を発見するなんて――居合わせたメイドのわたしは、事の真相をひそかに探るよう命じられた。死んだ男は、つい先日も女王の居室近くにいたという。
 なぜそんな畏れおおい所にいたのか? やがて宮殿で働く者たちの秘密が明らかに……女王陛下の小粋なメイド探偵ジェインの活躍を描く、カナダ推理作家協会賞最優秀処女長編賞受賞作(カバー裏表紙より)
kamanoeさんの感想:
 外国作品が苦手なわたしでも、楽しく読めたが、印象が薄い……
 馴染みのない英国王室。しかし、そこで働くものが特別な精神構造をしているわけでもなく、他の社会の世界となんら変わりない、同じような人たち働き生活している様は、驚くべきことではないのに、ニヤリとさせる。

 ちなみに、女王陛下とは、どこにも書かれてはいませんがエリザベス二世と思われます。<災厄の年>、ウィンザー城の火事、ロイヤルファミリーの醜聞など。時代物(歴史物)かと思っていたら、現代物なんですね。

 さて、メイド探偵というより、陛下の使いっパシリのようなジェインですが、なんとまぁ、危なっかしいことか。誰にどこまで話すか、なんか行き当たりばったりのような。探偵に向いてない。(笑)内容も、チューインガムの悪意に目がなかなか行かないのが不思議だし、大団円(なんと女王陛下が探偵役!)も、イマイチ理解しづらい。分かったような、分からないような、指摘が甘いような……緊迫感に若干欠けるのかな。

でもまぁ、処女長編ということで、今後に期待。

05.12.28

エドガー・アラン・ポオ
『ポウ小説全集 4』

データ:

 著者名  エドガー・ラン・ポウ
 訳者名  丸谷才一 ほか
 発行年  1974.9初刷り
 発行所  東京創元社(創元推理文庫)
 ISBN 4-488-52204-1

内容:
 「黄金虫」、「黒猫」など20の短編+評論「暗号論」
あっちゃんの感想:
 数年かけてポウ小説全集全4冊を読み終えました。第4巻の中では「黄金虫」が飛びぬけてよかったです。この作品は高校時代に読みましてとても感心した記憶があります。それ以来20年以上たっていろいろとミステリーを読んできましたがこの作品のすばらしさは変わることがありませんでした。また初めて読んだ「長方形の箱」とか「ミイラとの論争」、「ヴァルドアマル氏の病床の真相」、「シェヘラザーデの千二夜の物語」等楽しみました。ポウは偉大だと改めて感じました。

02.2.11
『モルグ街の殺人事件』

収録作品:

 「モルグ街の殺人事件」「落穴と振子」「マリー・ロジェエの怪事件」「早すぎる埋葬」「盗まれた手紙」
くれい爺さんの感想:
「モルグ街の殺人事件」は推理小説の始まり。これまで読んでなかったというのが、ちと恥ずかしいような。
謎自体は“意外”を通り越してしまっているのだけれど、推理というものの進め方、考え方はその後を決定付けるもの。
「マリー・ロジェエの怪事件」はちょっと難解過ぎ。検証する気にもなれない。
「盗まれた手紙」は「黄金虫」と並んで人気、評価の高い作品。トリックの一つの分野としての始まりであり、代表作といえよう。

03.2.12

E.D.ホック
『サム・ホーソーンの事件簿』

データ:

 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
 価 格:¥860
 出版日:2000/05/26
EGGさんの感想:
評価 A
 1920年代アメリカの田舎町を舞台にした、不可能犯罪ものの連作です。若い町医者のサムが、難事件に首を突っ込んでいきます。レオポルド警部ものに比べて、ゆったりしています。このころのアメリカってよく分かりませんが、地方はこんな感じだったのでしょうね。
 トリックは見たことがあるネタがけっこうあったのですが、彼のほうが先だったかも知れず、なんとも言えません。それでも、持って行き方が上手で、職人の技って感じです。個人的には「野外音楽堂の謎」の動機がとても面白かった。それと「ロブスター小屋」の密室トリックもあんな仕掛けのわりに無理がなく説明されていて秀逸。
 いろいろ探偵がいるらしくて、そういう意味でも都筑さんと似ているなと思いますが、とにかくホックの短編集はもっと読みたいです。

02.11.21

アーナス・ボールデン

『殺人にいたる病』

データ:

 角川文庫
 \340
 昭和56年12/30 発行
 ISBN 4-04-254202-6
 原書刊行年 1971

参浄さんの感想:
 推理作家が主人公のミステリを書いてる推理作家の日記、というややこしい設定の小説です。この日記というのが小説を執筆するのと同時に書いているので、作中作の文章と日記の文章が何の区別も無く書かれているわけです。これは作中の人物の行動なのか、それとも日記の作者なのか。と、まあ大変混乱するわけですが、こういった酩酊感は嫌いじゃないですねえ。むしろ大好き。

 もっともそれがミステリ的仕掛けにはいまいち繋がっていかないのが残念ですけど。まあ、作中作ネタは新本格以降やたらとありますから、よっぽどのものでないともう驚かないってのもあるんでしょうが。

 ところでこの小説の原題は「ストラウス(STRAUS)」というんですが、なんでこんな邦題にしたんだろう……

02.4.26

パット・マガー 四人の女 七人のおば 目撃者を捜せ

『四人の女』

データ:

 著者名    パット・マガー
 訳者名    吉野美恵子
 発行年    1985.1初刷り
 発行所    東京創元社(文庫)
 ISBN   4-488-16403-X
 原書出版年  1950

あっちゃんの感想:評価:A
 パット・マガーの作品は読むのはこれで3冊目だが全2冊は奇抜な趣向に比べて読後感が今一つだった。しかし本書は違っていた。ラリー・ロックが殺そうとしているのは誰かという被害者候補探しのおもしろさもさることながらラリー・ロックと彼に関わっていく4人の女性についてじっくりと書き込まれていてそのドラマが非常に味わい深い。ラリー・ロックは上昇志向が高く身勝手な男だがその中で見せる暖かさがより悲劇性を高めていた。ラリー・ロックが誰を殺そうとしているかは半ば辺りで分かってしまうが(もちろん作者がバラスという意味ではない)それも気にならない。また本書は半世紀以上も前の作品だが全然古臭さを感じない。傑作というのはこういうものなのだろう。

02.4.16
『七人のおば』

データ:

 訳者名   大村美根子
 発行年   1986.8初刷り(原書:1947)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-16404-8

あっちゃんの感想:
 今回は夫を殺したのは七人のおばの誰かという趣向、この七人のおば誰もが夫婦の問題を抱えている。というか姉妹の間で不倫騒動まで起こしている始末,一緒に暮らしたことのある姪がその夫にその思い出を語り誰が犯人なのかを探るということだがそのメインの謎解きよりもその家族の歴史というかその話自体がおもしろかったですね。しかも最後にちゃんとミステリーとしては決めてくれました。パット・マガー、なかなかやってくれます。

03.4.17

『目撃者を捜せ!』

データ:

 訳者名  延原泰子
 発行年  1988.11
 原書刊行 1949
 発行所  東京創元社(文庫)
 ISBN 4-488-16405-6

あっちゃんの感想:
 面白かった。僕のマガーのベストは「四人の女」だがミステリーとしての仕掛けはこちらの方が上です。目撃者捜しのはずが最後には・・・最後まで楽しめました。

04.6.21

ロバート・R.マキャモン
『魔女は夜ささやく』
くれい爺さんの感想:
 日本でもこのところ“久しぶり”という作品が相次いでいるが、こちらはアメリカでの“久しぶり”の作品。
キング、クーンツの後をうけるようにホラー作品を手がけていた彼が脱ホラーの「マイン」「少年時代」「遥か南へ」の三作の後、休筆して十年、ミステリー作品として現れた(2002年作品)。
マキャモンの作品は「少年時代」しか読んでいないし、ミステリーではあったが少年の成長譚として叙情的な感傷を感じさせてなかなかよかったという印象があるが、こまかなプロットは忘れてしまっているし、今回もマキャモンというネームバリューで手にした。
舞台は1699年のアメリカ、カロライナ地方。
イギリスの植民地として新たな町を建設しようとしているファウント・ロイヤルの地で魔女裁判が行われる。
町の神父と夫を殺したとされる女性が魔女として訴えられ、その裁判に判事とその書記が町にやってくる。
魔女としての証拠が次々と挙げられていくなか、書記は彼女が魔女とは信じられず、独自で調査をする。
これがミステリー作品であるというように、魔女としての証拠である超常的な目撃証言などに対する理論的な解明もなされてはいるが、むしろそういうミステリー的な面白さよりも、物語として話を追う面白さに満ちている。
そういうところ、いかにもマキャモンらしいといえば、そういえるのかもしれない。
そういうストーリーテラーとしてのマキャモンの魅力は感じさせはするが、ミステリーとしては平均程度の評価かな。

04.11.4

シャーロット・マクラウド ヴァイキング、ヴァイキング 猫が死体を連れてきた オオブタクサの呪い ビルバオの鏡

『ヴァイキング,ヴァイキング』

データ:

訳者名  高田恵子
発行年  1989.5初刷り(原書:1982)
発行所  東京創元社(文庫)
ISBN 4-488-24604-4
シリーズ シャンディ教授シリーズ

あっちゃんの感想:
評価:B
どちらかといえば男性キャラよりも女性キャラの方が威勢がいいのがおもしろかったです。。ラスト近くシーグリンデとヘレンの登場の仕方はすごかったですね。大騒動の後のハッピーエンドもいいんじゃないですか。

02.7.3

『猫が死体を連れてきた』

データ:

 訳者名   高田恵子
 発行年   1989.10初刷(原書:1989)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-34606-0

あっちゃんの感想:
 今回は学長が大張り切り、警察署署長とシャンディ教授とトリオで活躍、事件自体は結構陰惨だが登場人物が明るいので気にならない。まあおもしろかった。

03.8.3
『オオブタクサの呪い』

データ:

訳者名  高田恵子
発行年  1990.12
原書   C1985
発行所  東京創元社(文庫)
ISBN 4-488-24608-7
あっちゃんの感想:
 アイデアはいいし話もおもしろかった。ただミステリーとしてはちと不満が残る、残念、

04.11.14
『ビルバオの鏡』

データ:

訳者    浅羽英子
発行年   1991.3
発行所   東京創元社(文庫)
ISBN  4-488-24609-5
あっちゃんの感想:
本書もそうだがこの種のミステリ読み終えると物足りなさを感じてしまう。にもかかわらず読むをやめたくない。読みやすさと安心感があるか
らだろう。本書もユニークな登場人物に楽しめた。

06.6.11

ヘレン・マクロイ
『歌うダイアモンド』

データ:

 著者:ヘレン・マクロイ
 訳者:好野理恵 他
 出版社:晶文社(晶文社ミステリ)
 価格:2400円

内容紹介:晶文社HPより
 『家蠅とカナリア』『割れたひづめ』などの長篇ミステリで再び注目を集めるヘレン・マクロイは、本格推理からSFまで、幅広いジャンルにまたがる短篇小説の名手でもあった。
 清朝末期の北京を舞台に、ロシア公使夫人の謎めいた失踪事件を異国情緒たっぷりに描いて、名作の誉れ高い「東洋趣味」を筆頭に、女教師の分身が奇怪な事件を引き起こす怪奇ムード満点の「鏡もて見るごとく」、UFOの目撃者が次々に謎の死を遂げる「歌うダイアモンド」、深層心理というテーマに真正面から取り組んだ「カーテンの向こう側」、終末戦争後の世界を淡々と描いて深い感動を呼ぶ「風のない場所」他、〈クイーンの定員〉にも選ばれた名短篇集の珠玉の傑作八篇に、十五年前の冤罪をはらすため帰ってきた男が、再び事件に遭遇する力作中篇「人生はいつも残酷」を併録。

yobataさんの感想:
 マクロイの短編集。表題作をはじめ、「鏡もて見るごとく」などミステリ作品はスリリングな展開で読ませる。読んでみて少々驚いたのが、収録されている作品のうち、4作品ほどがSFだったこと。でも、これがまた結構面白かったりして、得した気分です。特別に収録された「人生はいつも残酷」はかなりトリッキーで意外性に満ちており、力作と謳われるのも納得。
 再評価の著しいマクロイの長編も読んでみたい。でも、入手困難なんだよね。

03.2.17

ジル・マゴーン 騙し絵の檻 踊り子の死
『騙し絵の檻』
くれい爺さんの感想:
 一言、面白い。
 日本語のタイトルの如く、“騙し絵”としてきっちりと読者をミスディレクションする本格ミステリーしている。
 ただ、結論としてでてきたものは平凡かも。
 それは例えば少女が額から出てくるようにみえる絵において、少女そのものは平凡な普通の少女であって、額から出てくるように見える手法が重要であるようなものか。
 その“騙し絵”の手法が素晴らしく、明かされてみると思わず唸った。
 冤罪で16年間を刑務所で過ごしたホルトの言葉がかっこいい。

「君と寝る気はない」
「どうして?」
「必要ないからだ」

「冤罪だったとしても、もう外に出られたんだ。君は世間に負債を払った。これでちゃらにしろよ」
「世間は俺に負債を払ってうない」

03.9.28
『踊り子の死』

データ:
くれい爺さんの感想:
二転三転する容疑者。
たしかに“フーダニット”という謳い文句がぴったり。
小手先の物理的仕掛けや密室といった有りがちな謎でなく、さまざまな人たちの証言の真実と嘘、その証言の後ろにあるものを導き出していく手法は、本格ミステリーという分野にしては登場人物もしっかりと描かれていて好感が持てる。
409頁の「サムには何が人間を動かすか、がわかっていた。彼はただ、そういう人間があまり好きではなかった」とあるが、サムがわかっていた「人間を動かす何か」が何なのかがはっきり書かれていない。

03.12.14

スティーブ・マルティニ
『弁護人』

くれい爺さんの感想:
リーガル・サスペンスの分野で第一人者といえば「推定無罪」や「立証責任」のスコット・トゥロー。次は「法律事務所」「評決のとき」のジョン・グリシャム。
トゥローが文学派でグリシャムはアクション派。
近年、その描写力で地位を占めたのは「罪の段階」「子供の眼」のリチャード・ノース・パターソン。
他にも小生が高く評価した「合理的な疑い」のフィリップ・フリードマンなどもいる。
実際の事件の裁判を描写したビューグオリシーとハーウィッツの「裁判」は情況証拠のみを綿密に積み上げたものだった。
おりしも情況証拠のみと思われた“ロス疑惑”に無罪判決が出た。
日本におけるリーガル・サスペンス小説というと大岡昇平の「事件」くらいしか思い浮かばない。
テレビの2時間サスペンスドラマでは「弁護士○○○」とか「検事×××」といったものがオンパレードなのに。
これはアメリカと日本における訴訟に対する社会風土の違いが大きく影響しているのだろう。
先だって見た映画「情婦」はアガサ・クリスティのめずらしい法廷ものが原作だったが、こちらはクリスティらしいどんでん返しが盛られていた。
さてマルティニのリーガル・サスペンスは解説によると二転三転の展開と謎解きを主にした作風と紹介があった。
作品を読む限り、その紹介に間違いはないし、少々展開が遅く感じたものの面白く読めた。
が、結末がああいうふうだと、被害者のズボンに付いた血痕とそばに落ちていた葉巻の吸殻はどう説明するんだ。解説者を含め、誰か教えてくれい。

03.3.10

A.A.ミルン
『赤い館の秘密』

データ:
(複数社から出版されています)
 集英社文庫

 訳者名   大西伊明
 発行年   1959.5初刷(原書:1921)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-11601-9
くれい爺さんの感想:
 先ごろ、「A.A.ミルン  くまのプーさん展」というのが開かれていたのですが、行っていません。
 A.A.ミルンは日本ではやはり“くまのプーさん”とこのミステリー「赤い館の秘密」が有名でしょう。
 集英社文庫から「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10」というシリーズが出ていて、その一作品です。
 ちなみにそのBEST10とは
 フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」
 ルルー「黄色い部屋の謎」
 ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」
 クイーン「Yの悲劇」
 ベントリー「トレント最後の事件」
 クリスティ「アクロイド殺害事件」
 カー「帽子収集狂事件」
 クロフツ「樽」
 セイヤーズ「ナイン・テイラーズ」
とこの「赤い館の秘密」です。
 10作品の中で読んでいないのはセイヤーズの「ナイン・テイラーズ」だけになりましたが、他の作品も細部は忘れてしまっています。
 こういう黄金時代の古典的ミステリーもおいおいと読み返してみたいと思っています。

 さて、このミルンの「赤い館の秘密」ですが、全体的に地味な印象で、犯人もあっと驚くようなものではありませんでした。
 トリックに関しても、この作品が書かれた頃ならあり得たかもしれませんが、現代のミステリーでは使えないものでしょう。
 むしろ、そういうところより、人物の造型や描き方、彼らの会話の面白さなどのほうが読みどころといえるかもしれません。

02.10.13
あっちゃんの感想:
 なかなかおもしろかった。ギリンガム&ベヴリーのホームズ・ワトソンコンビが絶妙、トリックの使い方もうまい、僕は直前でわかったが「なるほどな」と感心した。惜しむらくはミルンのミステリーはこの1作だけだがもしシリーズ化していたらと思った。

03.9.8

マイクル・ムアコック
『白き狼の宿命』

データ:

 訳者名   井辻朱美
 発行年   1985.1初刷(原書 c1967)
 発行所   早川書房(文庫)
 ISBN  4-15-010595-2
 シリーズ  エルリック・サーガ 3
あっちゃんの感想:
 気長に読んで行っているエルリック・サーガ第3話、本書でエルリックは生涯最悪と思われる悲劇を体験をする。このシリーズはエルリック・サーガと銘打っているが実はこの悲劇を生み出したストームブリンガーが真の主人公かもしれない。難を言えば本書は連作短編集的な体裁を取っているが一つ一つの話が長い方がいいような気がする。

02.7.24

ピーター・ラヴゼイ 降霊会の怪事件 最後の刑事 単独捜査 バースへの帰還 猟犬クラブ 最期の声
『降霊会の怪事件』

データ:
 出版社:早川書房(ハヤカワミステリ文庫)
yobataさんの感想:
 「降霊会の怪事件」はクリッブ&サッカレイシリーズの未訳作品がようやく紹介されたもの。降霊会で霊媒が殺される、というお約束の不可能犯罪もの。あまりにもまとも過ぎて、ちょっと物足りないかも。

02.9.16
『最後の刑事』

データ:

くれい爺さんの感想:
 手にしているのは1993年4月10日発行の初版本なので、約10年ぶりの再読ということになる。
犯人は覚えていたが、細かいところは忘れていたので、再読とはいえ面白く読んだ。
たしかにフーダニットとしての魅力はなくなるのだが、逆に著者の描写などを余裕を持って読める感じがする。
主人公のダイヤモンドはイギリスのミステリーではダルジールやモースといった刑事たちと似た、独断的な刑事である。
もう一つはダルグリッシュやジェリーなどのような刑事かな。
前半はその独断さがバカに見えるが、そういうのも犯人を知っている余裕のゆえか。
後半の推理の辿る道のりがよく見えるのも。
ラストも印象的な、1992年度英国アンソニー賞最優秀長編賞を受賞した秀作。
ちょっとラヴゼイを追ってみようと久しぶりに手にした。

03.4.22
『単独捜査』
くれい爺さんの感想:
 「集中的に読もうキャンペーン」で取り上げたラヴゼイのピーター・ダイヤモンド警視シリーズの第2弾。
この作品も再読である。
事件そのものの面白みは少ないが、日本も舞台の一つになるということに興味は持てる。
まあ、あんな力士はいないと思うけど。
自閉症の少女に対するダイヤモンドの気持ちや行動は丁寧に描かれ、その人柄がよく表れている。
前作が傑作といわれる「最後の刑事」で次作がこれまた傑作の名が高い「バースへの帰還」、その間を埋める作品ということで、ちょっと復習。

03.7.27
『バースへの帰還』
くれい爺さんの感想:
 1週間ほど旅行に行っていたのだが、旅行中に読む本は一冊別に取っておいて、この作品を旅行前に読み始めて、旅行までに読みきれなかったら置いておくつもりだったのだが、あんまり面白いので途中で止められず、結局、旅行には2冊持っていって、どちらも読んでしまった。
一人一人の証言が丁寧に書かれているし、それが真犯人に続く証拠としてきっちりと積み上げられていく。
一方、脱獄犯との時間的な緊迫感を描き出して、作品として高いクオリティを持った。
「最後の刑事」におけるハードボイルド的な要素は減ったが、警察小説として一級品の作品。

03.9.18
『猟犬クラブ』

データ:
くれい爺さんの感想:
文学系作品を1冊挫折しそうで、感想アップもなかなか出来なかったのだが、そういうときにはこういう作品はいいね。
密室殺人の本格推理の1編。
クリスティ、セイヤーズ、カーといった黄金期へのオマージュではないのだが、著者も楽しんで書いているようだ。
こういったフーダニットの作品にありがちな、容疑者に謎を残さなければならないため、人物の描写が物足りなく感じるのはしかたがない。
600ページ近い長編も、1ページ16行、1行39語のゆったり感は読みやすい。(ちなみに挫折しそうな文学作品は1ページ18行、1行41語である)
英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞の受賞作。
ラヴゼイの作品を四作品追ってきたが、一応これでおく。

03.11.30
『最期の声』
くれい爺さんの感想:
シリーズの中で、レギュラーの登場人物を殺すというのは大きな転換点になることは確かで、それは一度しか使えない。
いや、使えることは使えるのだが、それらがすべて良い作品になることはほとんどない。
テレビドラマ「太陽にほえろ!」は数多くの殉職者を出したが、ジーパンの殉職以外はあまり語られないようなものだ。

主人公のピーター・ダイヤモンドの妻、スティファニーが殺されるという設定は、シリーズの愛読者にはショックこのうえない。
が、こういうのも二度とは使えない。(もちろん妻は一人だけなので、使い様もないのだが)
その二度とは使えぬ設定を、きちんと構成し、読ませる内容にしているのはラヴゼイならでは。
また、34章で“ついに動機がわかった”とダイヤモンドの心情を描写しているが、これは“読者への挑戦”とみてもよい。
推理のためのすべての要素は出し尽くされているからだ。
その時点では読者にも簡単過ぎるのが残念だが。

yobataさんは“佳作”と評価していたが、小生はもう少し評価してもよいのではと思う。
秀作に近い佳作、あるいはぎりぎり秀作に入れてもいいような。

04.4.25

ジョー・R.ランズデール
『ボトムズ』
くれい爺さんの感想:
 テキサス州東部、ルイジアナとの州境に沿って流れるサビーン川沿いの低湿地“ボトムズ”に広がる森林地帯が舞台。
時は1930年代、ボトムズに迷い込んだ兄妹が発見した黒人女性の死体。
死体は裸で有刺鉄線でまかれ、胸と性器を切られ、クリトリスを切除されていた。
始まりは「小鹿物語」でその後は「アラバマ物語」で展開される、サイコ・サスペンス・ホラー。
なんといっても“ボトムズ”の描写がすばらしい。
迷い込んだ兄妹に迫る“ボトムズ”の恐怖が生々しく伝わってくる。
黒人差別の強い土地で公平に捜査をしようとする町の治安官の父の勇気と挫折、その父の姿を見ながら少年から大人へと成長していく息子。
あたたかく見守る母親と、元気で好奇心旺盛な祖母と、かつてのアメリカの典型的な家族を描きながら、その中で父と息子の関係を映し出していく。
人間の強さと弱さを表す父親の姿にあろうとすべき人生を見出して行く息子といったパターンはいかにもアメリカ人好みか。
2001年のアメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞を受賞した作品で、面白いことは請け負えるが、最初に述べたように導入がかつての名作「小鹿物語」や「アラバマ物語」に似ているのは割り引きか。

03.8.11


リービ英雄
『我的中国』
くれい爺さんの感想:
“的”は中国語では所有を表す助詞で日本語の“〜の”に相当し、“我的中国”は“私の中国”という意味になる。
現代の日本において“的(てき)”は若者が“わたしてきには”とか“じぶんてきには”などと使用する場合の“私が思うところとしては”とか“自分の感じるところでは”というようなニュアンスで使われているようだが、この作品の題「我的中国」の“我的”も著者はそのような意味合いで使っているようだ。
その意味で“私の感じたところの中国”というような意味合いで受け止めるのがよいかもしれない。
著者は自らのアイデンティティーを“日本在住のアメリカ人”というところにおいており、その感覚で中国を語るのだが、中国人が「アメリカ人は嫌い」というのと「日本人が嫌い」というのでは雲泥の差があるのではないか。
アメリカと中国がユーゴの中国大使館誤爆のような現代を共有はしていても、日本と中国のような歴史を共有はしていない。
ならば、著者のアイデンティティーはサッカーのアジアカップ北京大会での反日ブーイングの嵐を見た後では、“私は日本人でもなく、アメリカ人でもなく、中国人でもない”と言っているようで、たしかにそれは客観的に中国を見ることができるのかもしれないが、日本人の私にとっては少々物足りなさを感じる。
作品中の中国の高校生が“アメリカ人は嫌いだ”というのと、日の丸、君が代に対するブーイングとはその重みに大きな違いがあると思うからだ。
私が初めて中国を旅行したのは1978年の8月で、初めて一人旅をしたのは1992年8月、合計する15,6回は中国を旅行している。
10年前の一枚の写真を頼りに、その写真の場所を訪ねようとしたとき、言葉の出来ない私に代わり、一生懸命に聞いて回ってくれたタクシーの運転手さんなど、お世話になった中国の人もたくさんいる。
そういう人たちにとって日本人とは何なのか、日本人である私はどういう存在であったのか、今そういうことを尋ねてみたい気がする。
それはたぶん著者とは違う、日本人としての中国紀行になるであろうが。

04.8.30

デニス・ルヘイン
『シャッター・アイランド』

データ:

くれい爺さんの感想:
いま、アメリカで最も注目されている推理作家の一人であることは確かであろう。
なんといっても、今年のアカデミー賞をにぎわした映画「ミスティック・リバー」(主演男優賞ショーン・ペン、助演男優賞ティム・ロビンス)の原作者である。
日本では私立探偵パトリック&アンジーもののほうでよく知られているのかもしれない。
小生もこのシリーズには注目はしていて既刊の四作品は購入しているのだが、まだ未読である。

以下、ネタに触れる内容なので気をつけて!

この「シャッター・アイランド」は「ミスティック・リバー」と同じくノンシリーズの単発ものなのだが、この作品は結末が袋とじになっていることで話題になった。
内容は“世界の逆転”(これを言うとネタばらしに近いことになってしまう)というトリックを使用しているのだが、この手のトリックはたまに使われるもので新鮮さには欠ける。
それをどう読ませるかなのだが、そこはさすがルヘイン、楽しませてくれます。
帯にある“衝撃の結末”にも偽りはない。
が、全体としては佳作の域は出ていないかな。

この“世界の逆転”というトリックで驚かされたのが映画「ビューティフル・マインド」。
ミステリー映画ではないのでよけいに驚かされたのだが、そのトリックが明かされたときには口をあんぐりさせられた。

04.4.25

ルース・レンデル 眠りの森の惨劇 運命の倒置法

『眠りの森の惨劇』

データ:
 著者名      R.レンデル
 訳者名      宇佐川晶子
 発行年      2000.4初刷り
 発行所      角川書店(文庫)
 ISBN     4-04-254124-0
 原書の発行年   c1992

あっちゃんの感想:
 結構読むのに長くかかったために「あれ、この人誰だったけ」というような箇所が出てきてミステリーとしては面白さが半減してしまった。もちろん、真犯人の正体には驚いてしまったしある意味、アンフェアぎりぎりのアクロバット的な面白さはあった。ミステリーとしては今ひとつとなってしまったが主人公のウェックフォード警部の描き方はとてもよかった。次女の問題に悩む警部、被害者の少女への複雑な思い、人間ドラマとしては堪能できた。

02.3.19
『運命の倒置法』

データ:

著者名   バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル)
訳者名   大村美根子
発行年   1991.5
発行所   角川書店(文庫)
ISBN  4-04-254153-4
あっちゃんの感想:
久々のレンデルだったが目まぐるしい視点の変化はちょっとだるかったが徐々に明らかになる過去の犯罪と最後の現在の惨劇が効果的に描かれていた。まだまだレンデルからは目を話せない。

04.12.23

ピーター・ロビンスン 必然の結末 夢の棘
『必然の結末』

データ:

 訳者名   幸田敦子
 発行年   1992.6初刷(原書:1989)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-27303-3
あっちゃんの感想:
「別館三号室の男」の次に本書を読むとバンクスって本当に良識のある紳士だなあって思ってしまいます。妻子がありながら他の女性にときめきを感じその感情にうろたえる様なんかかわいいというかいいですね。
ミステリーとしてもよくできていたと思います。最後のやりきれない結末も見事でした。派手さはないがじっくり読ませてくれるこのシリーズ、僕は好きです。

03.2.26

『夢の棘』

データ:

 訳者名   幸田敦子
 発行年   1994.8初刷(原書:c1989)
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-27304-1

あっちゃんの感想:
 相変わらず重いストーリー展開、特にケイティの人物造詣がそれに輪をかけている。またラストも救い野乃鋳物でやりきれなさが残った。にもかかわらずこのシリーズを読み続けているのはバンクス首席警部の人柄であろう。重いストーリーとバンクスのキャラクターがバランスが取れているのだ。

04.2.14

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