<か行>
加賀美雅之 景山民夫 笠井潔 霞流一 加藤周一 門田泰明 上遠野浩平 川端裕人 木々高太郎 菊地秀行 貴志祐介 岸田るり子 北方謙三 北上秋彦 北村薫 北森鴻 北山猛邦 京極夏彦 霧舎巧 桐野夏生 鯨統一郎 倉知淳 栗本薫 黒崎緑 黒田研二 古泉迦十 古処誠二 小沼丹 小林泰三

加賀美雅之 双月城の惨劇 監獄島

『双月城の惨劇』

データ:

 出版社 光文社(カッパノベルス)
 価 格 \952
 出版日 2002/4/20 第一刷
 ISBN 4-334-07468-5

参浄さんの感想:
 カッパ-ワンの作品。二つの塔を持つ古城、双子の美人姉妹、血塗られた伝説、連続密室殺人、と推薦文を書いている二階堂黎人もかくやといわんばかりの道具だてです。
 こういったカー的な世界は好きなんですけど、大ネタの密室トリックが読んでてあっさりわかっちゃうのが残念。これでもか、と手がかりを「フェア」に書いてしまってるんで、みえみえになってしまってます。トリック重視の作品だけに、もうちょっとうまくミスリードして欲しかった。

 あと、解決後の犯人に対する探偵の態度はどうも賛成できません……

02.5.10
あっちゃんの感想:
 新人のデビュー作とは思えないほどのできばえ、また非常に正統的な本格推理でとても好感が持てた。僕こういうミステリー好きです。「監獄島」分厚いけどいずれ読みたいです。

05.11.2
『監獄島』

データ:

 出版社:光文社 カッパノベルス
 価格:各1300円

あらすじ:
 あらすじは下記URLを参照してね。
http://www.kobunsha.com/book/HTML/knv_07575_4.html
yobataさんの感想:
 カッパ・ワンから「双月城の惨劇」でデビューした著者の、ベルトランシリーズ第2弾。私は「双月城の惨劇」は読んでないのですが(読む気はあったのですが)、あまりのボリュームに圧倒され、1作目を棚上げして読んでしまいました。2400枚に不可能犯罪がこれでもか、というほど詰め込まれています。
 本格とか謎解きに対する著者の精神を買います。魅力に乏しい登場人物、時代がかった語り口など、欠点も多いけれど、やはり貴重な書き手の一人でしょう。伏線の張り方とか、見え見えな部分や、こりゃ実現不可能だろ、というトリックもあるけれど、最後に手がかりがピッタリと収まるべきところに収まるサマはやはり本格ミステリの醍醐味だと感じました。
 ベルトランは一体何をきっかけに真相にたどり着いたのか、さっぱりわからないけれど、とりあえず及第点。

04.10.4

景山民夫

『遥かなる虎跡』

データ:
 発行年   1992.1初刷り
 発行所   新潮社(文庫)
 ISBN  4-10-110214-7
 初出    単行本:1988.10
 備考    「このミステリーがすごい’88}国内ベスト13位

あっちゃんの感想:
 「このミス国内ベスト20」未読図書読破計画の第3弾です。景山の作品としては10年以上前に読んだ「遠い海から来たCOO」以来2作目です。正直言ってこんなにすばらしい冒険小説を書く人だったとは思っても見ませんでした。スピード感もあるしキャラクターもいい。またメッセージもよかった。主人公とアイリーンが最後までベッドシーンに至らなかったのも安易さがなくて好感が持てた。久々に気持ちのいい冒険小説を読むことができてよかったです。

02.4.1

笠井潔 三匹の猿 オイディプス症候群 梟の巨なる黄昏 巨人伝説1〜3 ヴァンパイヤー戦争1
『三匹の猿 私立探偵飛鳥井の事件簿』

データ:

 発行年   1999.8初刷り
 発行所   講談社(文庫)
 備考    初出:「海燕」1995年1、2月号
       単行本:1995.3(ベネッセ・コーポレーション)
 ISBN  4-06-264653-6
あっちゃんの感想:
 笠井潔のミステリーはこれまで矢吹駆もの4作だった。矢吹駆シリーズはとにかく主人公が超絶的な存在であり哲学的なモチーフなのでとっつきにくかったがこの作品はそんなことはなかった。飛鳥井は好感が持てるし舞台も現代の日本なので読みやすいことは読みやすかったしミステリーとしてはフーダニットの面白さがあった。この作品の後味の悪いというかやるせない。法月綸太郎ものの長編や東野圭吾の「放課後」、「魔球」のように救いのないものだった。飛鳥井はこんな陰惨なジケンにこれからも取り組んでいくのだろうか。読むのは気が重いであろうが読んでいくであろう。

02.2.19
『オイディプス症候群』

データ:

 光文社
 ¥3200
yobataさんの感想:
 矢吹駆シリーズ最新作。
 今はなき「EQ」誌に連載されていた作品の単行本化。「哲学者の密室」からでも10年くらい経ってると思うのだが、作品中では「バイバイエンジェル」から2年ほどしか経っていないらしい。
 期待に違わず面白く読んだのですが、もうちっとコンパクトにならないかな〜。1600枚くらいらしいけど、やっぱり長いよね。
 最近出た「哲学者の密室」創元推理文庫版(1160ページもある)のあとがきでは、矢吹駆の行く末を見届けるとかなんとか書いてあったので、そのうち続きがでるようです。
 1600枚という長さと3200円という値段に負けない方はどうぞ。

02.4.24
『梟の巨なる黄昏』

データ:

 発行年  2000.2初刷り(単行本:廣済堂出版 1993)
 発行所  講談社(文庫)
 ISBN 4-06-264813-x
あっちゃんの感想:
 なかなかおもしろい趣向だった。具体的に作中作としての「梟の巨なる黄昏」がどんな内容なのか読んでみたくなりますね。笠井の作品は始めに大学時代に伝記SF、そして近年は矢吹駆シリーズなどのミステリーを読んできたがこのようなホラーもなかなかなものです。

03.3.29
『巨人伝説』1〜3

データ:

 発行年  1988.7〜1989.7初刷(単行本:1983.2〜1987.2)
 発行所  徳間書店(文庫)
あっちゃんの感想:
 久しぶりに読み返した。最初に読んだ時はそんなに感じなかったが非常にイデオロギー的な作品だったんですね。それはミステリーである矢吹駆シリーズとも重なる部分があるかもしれない。物語として一番おもしろかったのは第3巻の遍歴編である。反転した文明史観が興味深かった。ユダヤ思想が敵として出てくる辺りを含めて、

03.12.8
『ヴァンパイヤー戦争1』

データ:

発行年   2004.6
発行所   講談社(文庫)
ISBN  4-06-274798-7
あっちゃんの感想:
 このシリーズ実は20年程前に角川ノベルズとして出ていた頃に読んでいました。ただ買っている途中で絶版になってしまい第9巻辺りで読めなくなってしまいました。昨年だったか読み通したくなりました。ないものは
リサイクル書店で買えばいいかなと思っていたのです。今年になって講談社文庫として復活すると知りました。加筆修正があると言うので思い切って講談社文庫で新しく読むことにしました。・・・と前置きが長くなりましたがちょっと主人公が人を簡単に殺しすぎているのが気になりました。
あまりにアンモラルだと主人公に感情移入しにくくおもしろさが減少しちゃうんですね。ただストーリー事態は非常におもしろいです。今後に期待します。

04.11.14

霞流一 牙王城の殺劇 首断ち六地蔵 デッド・ロブスター ウサギの乱 スティームタイガーの死走
『牙王城の殺劇』

データ:

出版社:富士見書房(富士見ミステリー文庫)
 出版日:02.1.30
 価 格:\460
  ISBN :4-8291-6146-9

あらすじ:
 「コビトワニのグッチ君を見つけだして欲しいんです」
 ドーベルマンからハリネズミまで、珍ペットならなんでもござれの刃狩動物病院に舞い込んだ、これまた珍妙な事件。忙しい父姉に代わり、現場に乗り込むのは、高校二年生の紋太郎と仲間たち《フォート探偵団》だ。
 UFO、心霊現象など、超常現象(フォーティアン・フェノミナ)を調査し、真の怪奇事件との出会いを渇望する、ちょっとだけ夢見がちな三人組。もはや怖いものなどない!
 彼らが挑戦する相手はワニの楽園《牙王城》。事件は財閥跡目相続問題も絡み、ついには殺人事件まで起こるが……。
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、霞流一の新作ですが、富士見ミステリー文庫なんて初めて知りました。ブックススケジューラーが無かったら絶対見落としてたことでしょう、文庫だし。
 で、感想なんですが、小説の中で起こっている不可思議な現象と、その合理的解釈についてはいいのですが(特に、駕籠を担ぐ甲冑の騎士の謎はなかなか凄い)、その謎解きと犯人指名の段で、本来の霞流一らしいロジックの積み重ねが全くないのはいかがなものか。人がごろごろ殺されて、自分らも凶行を受けているにもかかわらず、お気楽に探偵ごっこを続けている高校生たちというのもなんだかアレだし。まあ、ジュニア向け量産ミステリだからしょうがないのかなあ。でも不可思議現象のてんこ盛りといい、動物モチーフといい、一連の霞作品の列から外れたものではないだけに、ロジックの方ももっとやって欲しかった。まあ、これもシリーズのようなので、奇蹟鑑定人ファイルシリーズとどう区別していくのかも含め、次に期待を託しましょう。次は空飛ぶペンギンの話なのか・・・。

02.2.15
『首断ち六地蔵』

データ:

 出版社:光文社(カッパノベルズ)
 出版日:02.7.25
 価 格:\819
 ISBN :4-334-07475-8
 初 出:季刊「GIALLO」2000年秋創刊号〜2002年春号まで7回連載
yobataさんの感想:
 「首断ち六地蔵」は霞流一の連作短編集。ミステリ季刊誌ジャーロに連載されていたもの。短編の中に幾通りもの仮説をたてては壊す、いわばどんでん返しの連続を意識した作品。著者によるとその数30にも及ぶらしい。そのミステリマインドには敬服するが、やはり伏線も手がかりも読者にはほとんど提示されてなくて、謎解き場面を延々と読まされている感じ。伏線がないから、どんなに見事な謎解きであろうと「あ!」と膝を打つ、といった驚きがない。少々残念。

02.9.16
くれい爺さんの感想:
 こういう感想を以前にも書いたことがあったが、それが誰の何と言う作品だったかは忘れてしまった。
 それだけの作品だったということだろう。

 で、この「首断ち六地蔵」だが、小生には向いてなかったというしかない。
 まず、軽口で饒舌。
 「..略して『JSK』。一文字違えば、JFK、あちらはクリスチャンのホトケさん。」てな軽口、いまどき、言う?
 “オヤジ”を通り越してまんなあ。
 そのくせ(饒舌なわりに)、描写が下手。
 「第六首」の舞台の描写なんて、さっぱりわからない。
 40も越して、曲がりなりにも作家がこの程度の文章力?
 小生の友人も早稲田に行った奴がおるが(文学部だけど)、早稲田の政経もこの程度かいな。
 さらに、話の最後の“オチ”が見当がついてしまう。
 これはトリックがどうでわかってしまうというのでなく、話の進め方から想像がついてしまうということ。
 謎が次々と出され、一転、二転、三転と謎解きがなされるのは、テレビドラマの「トリック」を思い浮かべてしまった。
 ま、謎解きにこだわる姿勢みたいなものは認めるけど。

02.9.20
『デッド・ロブスター』

データ:

 出版社:角川書店
 出版日:02.9.20
 価 格:\1300
  ISBN :4-04-873415-6

あらすじ:
 死者から恵比寿様の木彫りの像が郵送されてきた。
 中学校のプールで、夜中に、警備員と一緒に、全裸で溺死していた男からだった。
 そして男が所属していた劇団関係者の相次ぐ不審な死。死者の残す「エビ」にまつわる異様な状況。全編「エビ」と「たいこ持ち」に彩られた怪事件に私立探偵・紅門福助が挑む。
kikuchiさんの感想:
 『ミステリー・クラブ』以来4年ぶりの紅門福助登場です。とはいえこの人が書く探偵はどれも似たり寄ったり、というか特にキャラクター設定を考えていないのでしょうから、別に久しぶりという気もしませんが(笑)。
 前作『首断ち六地蔵』よりはフーダニット本位で私の好みに近い作品ではありましたが、犯人断定のロジックが消去法、というのが相変わらずの不満点ではあります(とはいえ、消去法の材料となる状況証拠自体はわりといい感じでしたが)。あと、さんざ事件が起こりまくって被害者がひととおり殺されてから、おもむろに「じゃあ、事件をまとめようか」とか言って犯人指定に移るというのも人命に対して不真面目ですね。少なくとも最後の事件が起きる前に容疑者が数人に絞られているんだから、何か事件を阻止する行動を起こせよ、という気がします。
 さすがに10冊も読むと、霞流一の文体やわざとらしいギャグにも飽きが来てます。次作は「呪い亀」(原書房)ということで、路線は変わらないようですが、少し作風を考えた方がいいんじゃないか、と。

02.12.4
『ウサギの乱』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:04.3.5
 価 格:\1000
  ISBN :4-06-182357-4

あらすじ:
 天宇受売命(あめのうずめのみこと)を祀る神社で、兎の骨が大量に出土した。二年後、宮司の変死を皮切りに濫発する怪死事件!出入り不可能な二重密室での串刺し、骨を粉々に砕かれ、埋葬されていた死体……。犯人の意図のまったく読めない不可思議犯罪の行方は!?警視庁警部倉吉高史と名探偵駄柄善悟のコンビが事件に挑む本格推理。
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 『火の鶏』『おさかな棺』と2作ほどスキップしてしまった霞流一を久しぶりに読んでみました。今回のテーマはウサギですが、キャラクター作りとか展開とか、消去法の犯人特定とか、いつも通りのワンパターンではありました。それでも、防犯ベルや自転車のロジックはさすがでした。特に防犯ベルの方はかなり緻密で意外性もあり、久々のヒットです。こういう謎解きを書いてくれる人が今のところ他には見あたりません。それと、密室トリックも前代未聞、驚天動地、空前絶後、実に壮絶でした。
 続くと飽きる霞流一ですが、たまに読むといいですね。

04.3.20
『スティームタイガーの死走』

データ:

発行年  2004.3
初版   2001.1(ケイブンシャノベルズ)
発行所  角川書店(文庫)
ISBN 4-04-372902-2
あっちゃんの感想:
 「フォックスの死劇」のあまりの下品さに辟易してずっと霞の作品には手を出さなかったが気にはなっていた。今回通勤の帰りに読む本がなくなったので比較的短くて重くないと言うことで本作を読むことにしたのだがいや、感心しました。列車内の個室の密室殺人と言えばあの作品を思い起こしますが本作の趣向もよかったです。そして最後のサプライズ、ここまでやるかといった感じで堪能しました。

04.12.23

加藤周一
『小さな花』
くれい爺さんの感想:
 学者やジャーナリスト、あるいはテレビの報道エンタテインメント番組でコメントするような人間はたくさんいるが、そんな中でいわゆる知識人と呼べる人は何人いるだろうか。
加藤周一はその考え方には多少の違いはあるが、小生が知識人と認める数少ない人の中の一人である。
さて、小生の思う、その知識人とは何か。
作品の中で、加藤周一がある人物を評している一文が、すべてを語ってくれている。
「いかなる組織にも属さず、いかなる種類の権力にも媚びず、カネもなく、地位もなく、しかし世の中の何事にも批判する内心の自由を失わず、自ら娯しむところを娯しむ」
小品だが、加藤周一をいう人の心の一端に触れることのできる作品だ。

05.5.3

門田泰明
『黒豹忍殺し』

データ:

 発行年   1992.12初刷(講談社ノベルズ:1989.1)
 発行所   光文社(文庫)
 ISBN  4-334-71605-9
 シリーズ  黒豹全集 特命武装検事・黒木豹介 19
あっちゃんの感想:
 ストーリー展開のご都合主義も設定のずさんさ、リアリティのなさもへたくそな文章表現もなぜかこのシリーズ、許せちゃう。不思議な魅力のあるシリーズです。

02.8.19

上遠野浩平 ブギーポップ イン・ザ・ミラー パンドラ ブギーポップ オーバードライブ 夜明けのブギーポップ ペパーミントの魔術師
『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』

データ:

 発行年     1998.12初刷り
 発行所     メディアワークス(文庫)
 ISBN    4-07-310350-4
あっちゃんの感想:
 旧エンターティメント交差点で第1作目「ブギーポップは笑わない」を読んで以来3作目、独特の雰囲気がたまらない。技巧的には第1作には及ばないが登場人物の心の動きに感銘を受ける。設定等で謎な部分が多いシリーズだがこれからも気長に付き合っていきたい。

02.5.28
『ブギーポップ オーバードライブ歪曲王』

データ:

 発行年   1999.2初刷り
 発行所   メディアワークス
 ISBN  4-8402-1088-8
あっちゃんの感想:
 前作を読んでから随分たっていてその関連がよくわからなかったのが残念。書きたいことはわかる気がする。人間誰しも歪曲王がとりつく心のエリアがあるんだなと思った。

03.5.31
『夜明けのブギーポップ』

データ:

 発行年   1999.5初刷り
 発行所   メディアワークス(文庫)
 ISBN  4-8402-1197-3
あっちゃんの感想:
 このシリーズ年に一度ぐらいしか読めないので今までの展開を覚えていないことが多いのでちょっと展開がわからない面もあった。しかし多角的な視点で一つの物語を構成していく方法は第1作を彷彿させるしストーリーもなかなかのものだった。

04.5.8
『ペパーミントの魔術師』

データ:

発行年   1999.8
発行所   メディアワークス(文庫)
ISBN  4-8402-1250-3
あっちゃんの感想:
 このシリーズ、本当ユニークで何とも言えない味がある。アイスクリームと世界の破滅という取り合わせ、普通じゃないですよ。まだまだ先は長い。

05.2.8

川端裕人
『夏のロケット』

データ:
 
出版社:文芸春秋
 出版日:98.10.10
 価 格:\1762
 ISBN :4-16-318020-6
 備 考:第15回(1998年)サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作
山本わおさんの感想:
 これ、ツボでした。
 宇宙にあこがれた少年だった人なら絶対面白いはず。
 お話は高校時代違法なロケット制作にいそしんだ(でも失敗した)男5人が社会人になって再びロケットを飛ばそうと(しかも本格的な)するもので、それをユーモラスにしかも工学魂あふれる筆致で描写していきます。
 SF好き、宇宙好きは必見!

03.6.29

木々高太郎
『木々高太郎集』

データ:

 発行年   1985.5初刷り
 発行所   東京創元社(文庫)
 ISBN  4-488-40007-8
 シリーズ  日本探偵小説全集 7
あっちゃんの感想:
評価:B
「プロフィル傑作選」に収録されていた「就眠儀式」以外は全て始めて読みました。長編の「折蘆」や「わが女学生時代の罪」もそこそこ面白かったですけど(ただし「わが女学生時代の罪」のヒロインの妊娠の真相はあっけに
取られてしまいましたが)それ以上に「睡り人形」や「文学少女」の何ともいえない怖さが面白かったです。時代的なギャップはどうしようもありませんが(医学的知識)それを割りびいても斬新さがあります。

02.7.9

菊地秀行 妖魔淫殿 緋の天使 魔界都市ブルース6 妖魔姫 ブルーマスク 妖魔王 魔界都市ブルース 妖月の章 D―双影の騎士 1,2
『妖魔淫殿』

データ:

 発行年  1996.4初刷り
 発行所  光文社(文庫)
 ISBN 4-334-72216-4
 初出   1993.6ノベルズ刊
あっちゃんの感想:
 久々の妖魔シリーズ、僕が読んでる菊地のシリーズ物の中でも一番すきなのがこの妖魔シリーズです。菊地の主人公は美形が多いのですが妖魔シリーズの主人公工藤明彦は違います。西川**おに似た風貌というだけで親近感が持てます。エロスもバイオレンスもホラーももちろん申し分がない。またこの作品全1巻ではあるがスケールが大きいし読んだあとの余韻もあります。よかったです。

02.4.1
『緋の天使』

データ:

発行年    1995.12初刷り
発行所    祥伝社(ノベルズ)
ISBN   4-396-20537-6
シリーズ   魔界都市ブルース
あっちゃんの感想:
 菊地は長くしすぎる傾向があるが本書はちょうどよい長さで叙情的な作品だった。このシリーズ、もっと読みたいんですけどねえ

02.5.18
『魔界都市ブルース 6 ;童夢の章』

データ:

発行年   1998.12初刷り
発行所   祥伝社(ノベルズ)
ISBN  4-396-20648-8
シリーズ  マン・サーチャー・シリーズ
あっちゃんの感想:
 評価:B
 ついこの間、同じシリーズの長編「緋の天使」を読んだばかりだが比較すると僕は菊地は短めの長編か中短編の方がおもしろいような気がします。菊地はサービス精神が大きくていろんなアイデアを一つの話の中に詰め込みすぎてしまうきらいがあります。だから一つの物語としてちょうどよい長さを大幅に超えてしまい物語としてバランスが崩れてしまうような気がします。ですが本書のような短編集だと物語としても落ち着きがいいように思います。また秋せつらやメフィストが強すぎるのが不満な点でもありましたが本書では二つの作品ともに両ヒーローがたじたじしてしまう登場人物が出てきてこれも新鮮でした。

02.5.22
『妖魔姫』1〜3

データ:

 発行年  1998.9〜1999.2初刷り(ノベルズ:1994.6〜1994.11)
 発行所  光文社(文庫)
 シリーズ 妖魔シリーズ

あっちゃんの感想:
今回大活躍するのは南風ひとみ、彼女にこんな面があったとはねえ、房総の小さな漁村を舞台に最後にはとてつもないスケールになっていくあたりはさすがです。また工藤明彦が強いだけのヒーローでないものいいですね。

03.4.26

『ブルーマスク、ブルーマスク 完結編』

データ:

 発行年  1997.1〜7初刷り
 発行所  祥伝社(ノベルズ)
 シリーズ 魔界都市ブルース

あっちゃんの感想:
魔界都市にふさわしい物語だった。途中たくさん仮面が出てきて混乱したがよくまとめていたと思う。凍らせ屋シリーズも読んでみたくなった。

03.6.19

『妖魔王  媚獄編、淫神編』

データ:

発行年 2000.5〜2001.1
発行所 光文社(ノベルズ)

あっちゃんの感想:
菊地の作品はどうも長すぎてだれる傾向があるが本作は逆に短すぎるように思った。設定は奇抜だし人間くさい大黒というのも楽しい。そして何よりも映像化に向かない主人公工藤明彦がいんだなあ。

04.3.20
『魔界都市ブルース 妖月の章』

データ:

 発行年  1999.7
 発行所  祥伝社(ノベルズ)
 ISBN 4-396-20665-8
あっちゃんの感想:
 ちょっと分かりにくい話が多かったのと無理に戦闘シーンを挿入したような感じがしたのがマイナスだがそんな中で「花影」はほろりとさせられる。また「踊る外谷さん」はシリアスな話の多い中で珍しい作風だった。

04.5.8
『D―双影の騎士 1,2』

データ:

発行年  1996.11
発行所  朝日ソノラマ(文庫)
あっちゃんの感想:
 なかなか追いつけませんねえ。本作ではDの正体、出自にかなり迫っていて興味深い内容でした。

04.12.23

貴志祐介 十三番目の人格 ISOLA 天使の囀り 青の炎
『十三番目の人格 ISOLA』

データ:

 出版社:角川書店(角川ホラー文庫)
 出版日:96.4.25(初版)
 価 格:\660
 ISBN :04-197901-3
 備 考:1996年(第3回)日本ホラー小説大賞候補作
山本わおさんの感想:
 映画よりも深く書き込んであってよかったですが、ラストでハッピーエンドかと思ったらそうでなかったので後味が悪かった(よく考えればホラーなんだから当たり前だが)。でもやっぱり千尋は救われて欲しかったな。

02.7.1
『天使の囀り』

データ:

発行所  2000.12初刷り(単行本:1998.6)
発行所  角川書店(文庫)
ISBN 4-04-197905-6
あっちゃんの感想:
読むのをとても楽しみにしていました。なかなか読みごたえありました。ブラジル脳線虫の描き方も非常に抑制されていましたしリアルな怖さがありました。オーソドックスといえばオーソドックスなストーリーですが文章が非常にうまいので堪能できました。

03.1.11
『青の炎』

データ:

発行年  2002.10
単行本  1999.10
発行所  角川書店(文庫)
あっちゃんの感想:
 舞台が馴染みのある鎌倉だけに何ていうのかたまらない作品ですね。もっとほかに道がなかったのか、どうしてこうなってしまったのか、やりきれないですね。後味は決していいとは言えませんがそれでも傑作には間違いありません。

05.8.7

岸田るり子
『密室の鎮魂歌(レクイエム)』

くれい爺さんの感想:
 クリスチアナ・ブランドの「ジェゼベルの死」を“完璧”と評した、その岸田るり子が第十四回鮎川哲也賞を受賞した受賞作。
トリックに妙味はないものの非常に読みやすかった。
小生好みの郷愁感もほのかに感じさせてくれもする。
ただ、これが鮎川哲也賞を受賞したということには、少々驚きもある。
もっとも、この作品がそれに値しないというつもりはまったくない。
というのも、この鮎川哲也賞の選考委員が笠井潔、島田荘司、山田正紀なんですよ。
この三人の名前をみれば、なんかこうもっとコアな推理小説っていうのを選ぶんじゃないかと思ってしまう。
それにしてみると、この作品はとても淡白な感じがするんだよね。
まあ、この三人がよくこの作品を選んだなあ、っていう驚きかな。

05.5.3

北方謙三 三国志 楊家将
『三国志』

データ:

 三国志 1〜13
 角川春樹事務所
 各1800円
EGGさんの感想:
 評価 90点(平均で)
2001年12月にアップしたものです。その後、少しづつ文庫本で買い揃えて読みなおしています。4巻まで来ましたが、やはり面白いと思います。

読み終わってすぐ書くつもりではいたんですが、悩んでいるうちに時間がたってしまいました。本も返してしまい、記憶も感動も薄れかかっていますが(おいおい!)、まずは「ハードボイルド三国志という、画期的な作品が生み出された」という話から。

何がハードボイルドかというと、本人が対談でおっしゃっている「文体」にもすばらしいものがありましたが、なんと言っても一番の功績はキャラ立てにあると思います。

人徳と凶暴さを合わせ持つ劉備、戦い方に自分の全存在を賭けた曹操、もっとも繊細な神経を持ちながら敢えて「粗暴」の仮面をかぶった張飛、年上の妻を愛し愚直なまでに戦さ人でありつづけた呂布、自らの作戦失敗を責めそれでも国を支えつづける孔明、戦いに虚しさを覚え孤独な放浪を夢見る馬超、などなど、おなじみの面々が新しい性格を与えられています。
でも、たとえばみーまーさんが触れられていたコミック『蒼天航路』ほど、自由奔放に三国志を作り変えている(と、私には思える―それはそれでうならせるものがありますが…)のではなく、三国志の精神はきちんと尊重しているようにみえるのです。

きっと、北方さんも三国志の何かにすごく惹かれていて、それを描いてみたかったと。自分の決めた生き方を貫く男たち、それは、生き死によりもっと大切なことがあると知っている男たちであり、情におぼれず、その志は利害を超え、世の中の理にも囚われない。三国志の英雄たちがみんなこんなだったら、ちょっと出来過ぎのような気もしないではありませんが、適度に乾いた余韻の残る文体と、緻密で周到なエピソードの改変によって、彼らはみなメチャメチャかっこいいのです。

たとえば許チョ。赤壁の戦いで魏軍が大敗し、曹操は逃走を図ります。定本(すいません。吉川英治くらいしか読んでいません)では、孔明の指揮の元、劉備軍の伏兵が次々と襲いかかりボロボロになった曹操が関羽に命乞いをするという有名なシーンですが、北方三国志では、曹操は逃走のすべてを護衛の許チョに託します。
許チョは、冷静に馬の疲れを読み、追っ手との距離を測り、疲労で意識が薄れかけている曹操をなだめながら、泥沼を渡り、ついに劉備軍を振り切るのです。
私、かねがねこのシーン(頭を下げる曹操も未練たらしいし、いくら恩義があるからといってそれを許す関羽も問題で、それらのことを占いで見通して駒を操っているような孔明はもっといやらしくて)すっきりしなかったのですが、北方さんのを読んで、溜飲が下がりました。黙々と任務を果たす許チョもすばらしいけれど、許チョにだけは人間的な弱みを見せてしまう曹操が好対照で、いやみがありません。名場面の筆頭に挙げたいところです。

一度も裏切りをしなかった呂布、というのにも初めてお目にかかりました。(なんとチョウセンも登場しません)ここら辺は北方さんが確信犯的に歴史を変えているのでしょうが、話が締って見えます。
赤兎馬と心を通じさせていることを示す多くのエピソードは清々しい。なかでも、馬飼いの名人にあずけられた赤兎が入水を遂げようとするシーンは、胸を打たれました。この馬もまたハードボイルドな奴です。

劉備は前半、相当の知恵者ぶりを発揮して、とくに負け戦はすべて計算のうちだったという設定には感心しました。また終盤の、関羽・張飛の弔い合戦である呉との戦い。これも、定本では単に劉備が愚かだったことになっていますが、北方本ではすごい狙いを秘めた勝てるはずの戦ということになっていて読ませます。(対する陸遜も、悩みに悩み、怯えながらたった一つのチャンスにかけるという展開で、私が今までは嫌いだった陸遜ですが、こういう書き方をされたら応援せざるを得ません)
で、その劉備が大敗を喫した後、腑抜けのようになって死に至りますが、北方本では、その劉備の死に際がすばらしい。私はあまりのかっこよさに、ここ泣きました。この後孔明が、何を差し置いても劉備の遺志を継ごうとするのも、このときのことを思い返しているからなんだと、納得できるのです。

…といった、人物像を語っていると、とりとめが無くなってしまうので、後ひとつだけ他にはない特徴を。

それは戦いについてです。戦記ものって、趣味ではないのではっきりしたことは分からないですが、ここに出てくる戦さはどれも、ものすごく面白いです。
もしかしたら、すべての戦いに、北方さん独自の発想があるかもしれません。よく勝負事(ゲームなど)で性格が出るって言いますが、北方流の曹操の戦い方は正にそれで、絶対に同盟を組まない。考えに考え抜いて、打てる手をすべて打っても、まだ勝ちが見えない。それでも戦うしかないので行く。特に青洲の黄巾賊との戦いは、皮膚感覚に訴えてくる描写で、圧巻でした。
対して、孔明の戦いは華麗なマジックのよう。えっ、そんなことを目的にした戦いだったの?と、何回も吉川本に手を伸ばしましたが、どうも総て北方さんのアイディアのように思えます。(いえ不勉強で確信はありません)
もし、こんなシナリオの戦略シミュレーションゲームがあったら、私絶対にやります。孔明はいつも何かひとつが足りなくて、魏にはついに勝てませんでしたが、一度でもいいから、夢を叶えてみたいではありませんか。

あまりに長い物語で、重層的にいろいろなテーマを盛り込んでいるので、触れられなかったことが沢山ありますが、とにかく今年読んだ中では大収穫でした。文庫本はいずれ全巻そろえて、いつか読みなおそうと思います。まだ読んでいないという三国志ファンの方は、チャンスがありましたらぜひ手に取ってみてください。

02.5.17

『楊家将』

データ:

くれい爺さんの感想:
「圧倒的じゃないか」というのは、ア・バオア・クー攻防戦でのアムロが発した言葉。
作品の最終場面で描かれる宋と遼の戦いの描写はこの言葉を思わず発してしまうほど圧倒的。
ア・バオア・クーでのアムロの言葉は攻める味方が圧倒的なのだが、この作品では敵の遼の軍が圧倒的なのだ。

帯に「中国で『三国志』と人気を二分する」と書かれているが、不覚にも小生は初耳である。
スケールの面では「三国志」に遠く及ばないが、その分、北方が戦闘描写に懸けた濃密さは十分に堪能できる。

北方の中国歴史小説を「三国志」「楊家将」と読んで気になったことが一つ。
“調練を積んで強くなった”という設定が非常に多いということ。
これって、一時期流行った歴史ゲームの影響なんだろうか。

04.8.14

北上秋彦
『種の終焉』

データ:
山本わおさんの感想:
 岩手在住作家・北上秋彦氏の国際謀略小説ですが面白かった!私がこのジャンルを読むのが初めてで新鮮だったというのもあるんでしょうが。
 主人公が義足の国際情勢アナリストで、ネットを駆使して謀略に立ち向かっていくのが今風でした。
 アジアの人口問題やエボラの恐怖や日本の出生率減少なんかをうまく絡めてましたね。
 ミステリー映画祭で初めて知って読んでみようと思ったのですが、嬉しい出会いでした。

02.11.25

北村薫 盤上の敵 朝霧 街の灯 覆面作家は二人いる 覆面作家の愛の歌 覆面作家の夢の家 冬のオペラ ニッポン硬貨の謎 スキップ
『盤上の敵』

データ:

出版社:講談社
 出版日:99.9.10
 価 格:\1600
 ISBN :4-06-209876-8
 初 出:小説現代増刊メフィスト1998年5,10,12月号、1999年5,9月号

あらすじ:
 鴨猟に出かける商店主を襲い、殺害する男が登場する。彼は黒のキングという立場を作者から与えられる。やがて男は奪った猟銃を手に、ある家に押し入り、そこにいた女性を人質に立てこもる。
 一方、テレビディレクターの末永純一は、どうしても成功させなくてはならないプランを考えながら、車で家路に向かった。ところが自分の家のまわりをパトカーが囲んでいる。慌てて携帯電話で家にかけると、電話に出たのは妻の友貴子ではなく、黒のキングだった。自分の家に凶悪犯がいる。妻を心配する末永に対し、黒のキングは取引きを持ちかけた。妻の身を第一に考えて、末永はテレビ局の同僚に協力を取りつけ、警察と犯人を同時に欺く計画を立案し、実行に移すのだった。
(「このミステリーが凄い!2000年版」より抜粋)
kikuchiさんの感想:
 北村らしからぬハードな、トリッキーな作品でした。最初に犯人が銃を奪うシーンは、なんか宮部みゆきを読んでいるような感じで。でも、事件とはあまり関係なさそうな主人公と妻の出会いや妻の生い立ちが事件の進行と交互に挿入されていて、こっちの方は細部のエピソードなどがいかにも北村らしい文章だったと思います。
 ポイントは、主人公がなぜ警察を欺いてまで犯人に協力しようとするのか、という点で、ここの真相とどんでん返しは良かったです。一瞬で世界が反転して、それまでの伏線がぴたっと嵌るという、本格ミステリを読む上での一番の楽しみがありました。
 で、本格としてはそういう意味で面白く読めたのですが、一方、黒のキングといい、妻の元同級生・兵頭三季といい、今までの北村にない雰囲気のキャラで、作品を否応なく暗く、救いのないものにしています。ラストも私にとっては決してハッピーエンドとは思えないので、なんだか複雑な読後感でした。

02.2.15
あっちゃんの感想:
 確かにこれまでの北村作品とはガラッと雰囲気が違っていた。ミステリーとしてのトリックはさすがだなと思った。が難を言えば構成上無理があったような気がする。強引に物語を引っ張っているような気がするのだ。もう少し自然さがあればよかったかなと思った。

05.11.2

『朝霧』

データ:

 発行年     1998.4初刷り
 発行所     東京創元社(単行本)
 ISBN    4-488-01280-9

あっちゃんの感想:
 評価:B
 この作品はミステリー的な味付けをした普通の小説という感じがしました。ミステリーとしてのおもしろさは風味のようなもので僕にはそれが物足りなく感じました。「空飛ぶ馬」や「夜の蝉」のような驚きがないのです。大学を卒業する少し前から就職後数年の「私」のスケッチ、それに春桜亭円紫が絡んでくる。ミステリーとしてじゃなければそれなりにいいお話なんだろうけど僕がこのシリーズに求めているのはミステリーとしてのおもしろさなんですね。まあこれでこのシリーズも終わりみたいなので次からは「覆面作家」シリーズに入りたいと思っています。

02.6.5
『街の灯』

データ:

 題名:街の灯  City Lights,memories of my Becky
 発行:文藝春秋(本格ミステリ・マスターズ 2003/1/30)
 ISBN:4-16-321570-0
 定価:1,762円

あらすじ:
  −−昭和七年、< 時代 >という馬が駆け過ぎる。−−
 士族出身の上流家庭・花村家にやってきた若い女性運転手。
 令嬢の<私>は『虚栄の市』のヒロインにちなんで、彼女を
 ひそかに <ベッキーさん> と呼ぶ。そして不思議な事件が
 ……。待望の新シリーズ!      (帯・表側より)
kamanoeさんの感想:
 昭和初期、資産家の令嬢、車での学校への送り迎え、御学友は華族令嬢。という設定のためだけでなく、ゆったりとした時の流れを感じさせます。
 主人公の「英子」さんは、「名無しの女子大生」と「覆面作家の新妻さん」を足して2で割った感じ。(虎にはならない) 一方、ベッキーさんは、円紫さんが先に立ち手を引く者であるのに対して、目を向ける点を示し後押しする者でしょうか。(円紫さんの立場は違うかな)その辺りに違いを感じます。「名無しの女子大生」が「導かれるもの」ならば、英子さんは「たどらされる者」(?)。やっぱり二人とも「導かれる者」か。
 二つの話の違いは立場の違い?。この「街の灯」では資産家令嬢とその使用人(運転手)という身分を抜きには成り立たないのかと。そして、身分の違いを越える関係を築くことのできる背景に、ベッキーさんの正体、というのが隠されているのかと思います。
 北村さんの描く女性(「名無しの女子大生」であり「新妻嬢」)は、男にとって好ましい、ある種の理想的な女性であり、作家が男性であることがよく分かるといった意味の(批判的な)意見を読んだことがあるんですが、今回の作品もそう言えると思います。(私は男だから「好ましい」と思ったけど) ただ、ベッキーさんは微妙な線。もうちょっといくと(ヒーロー的な、あるいは超人的なキャラだと)嫌味で、興味を失わせかねない。もっとも、それこそ「男にとって好ましい、都合の良い女性」にしようという(私の)卑しさから出る感想か(笑)。
 最初に「ゆったりとした時の流れ」と書きましたが、全体の雰囲気が似ているためか、季節を感じない。読めば、「桃の節句」であったり、銀座の「夜店」であったり、また他の作品でも篠つく雨であったり、裏切られた感の「肌寒い夏の日」だったり季節の描写はある。しかし感じ取れないんですよね。引き合いに出すのは変でしょうが、樋口有介の作品は、空気が揺らぐようなじっとりとした暑さとか、肌を刺すような「ピンッ」と張り詰めた寒さを感じさせるのですが、そういったものがない。雰囲気としては、明瞭・明快な空気感なんだけど。

 加納朋子の「アリス物」では警戒していた所為か、ページを残して唐突に終わる、という印象は少なくてすんだんですが、今回は油断していました。「あれっ、終わっちゃった」と。評論とインタビューは嬉しいのですが、出来たら頭に持ってきて欲しい。(でも先に評論等を先に読むのも嫌かな)
 インタビューによると、シリーズとし続き、「2・26事件の頃で終わる」との事。恩田陸の新作「ねじの回転」(未購入)も「2・26事件」を扱っているし、宮部みゆきの作品にもある。私にはピンっとこない(歴史の授業もその時代は駆け足だし、授業を受けていたのは既にはるか昔……)のですが、それだけ印象に残る、描いてみたいと思う出来事ということでしょうか。

 帯の「駆け過ぎる」は変ではない?。

03.3.2
『覆面作家は二人いる』

データ:

 発行年   1997.11初刷り(単行本:1991.11)
 発行所   角川書店(文庫)
 ISBN  4-04-343201-1

あっちゃんの感想:
 北村薫の作品は「円紫」シリーズしか知らなかったがこちらのシリーズもなかなかおもしろい。覆面作家こと新妻千秋は実際には現場に行ったりいろいろ飛び回っているがどちらかと言えば与えられたデータを元に論理的に推理する安楽椅子探偵タイプ、読者と同じ地点に立ちながら真相を見抜くのは気持ちがいい。後2作も期待している。

03.6.28

『覆面作家の愛の歌』

データ:

発行年  1998.5初刷り(単行本1995.9)
発行所  角川書店(文庫)
ISBN 4-04-343202-X

あっちゃんの感想:
 静さんという新しい登場人物も加わりますますのってきた第2弾、短いながら「覆面作家のお茶の会」が中でもよかったですね。「覆面作家と溶ける男」は奇妙なできごとの謎とスリリングな展開が楽しめた。表題作は電話トリックがいまいち分かりにくくマイナス点、といったところ。

03.7.26
『覆面作家の夢の家』

データ:

 発行年   1999.10
 単行本刊行 1997.1
 発行所 角川書店(文庫)
 ISBN   4-04-343203-8
あっちゃんの感想:
 「覆面作家と謎の写真」、三作の中ではもっともすっきりしていたと思った。構成もよかった。「覆面作家、目白を呼ぶ」、後味がちょっと悪かったですね。「覆面作家の夢の家」、参加不能な暗号と言うのも何だかなあっていう気はしました。

04.6.21
『冬のオペラ』

データ:

発行年   2002.5
初版    2000.2
発行所   角川書店(文庫)
ISBN  4-04-343205-4
あっちゃんの感想:
 短編3作だが連作としてはちょっとバランスがよくないかなあと感じた。むしろ表題作の「冬のオペラ」をもう少し長編として膨らませた方がよかったのではと感じた。ミステリーとしてもドラマとしても申し分が無かった分ちょっと残念。

04.12.23
『ニッポン硬貨の謎』

データ:

 出版社:東京創元社
 出版日:05.6.30
 価 格:\1700
  ISBN :4-488-02382-7
 初 出:ミステリーズvol.01〜06、vol.08〜10

あらすじ:
 1977年、ミステリ作家でもある名探偵エラリー・クイーンが出版社の招きで来日し、公式日程をこなすかたわら東京に発生していた幼児連続殺害事件に興味を持つ。
 同じ頃、大学のミステリ研究会に所属する小町奈々子は、アルバイト先の書店で、50円玉20枚を「千円札に両替してくれ」と頼む男に遭遇していた。
 奈々子はファンの集い〈エラリー・クイーン氏を囲む会〉に出席し、『シャム双子の謎』論を披露するなど大活躍。クイーン氏の知遇を得て、都内観光のガイドをすることに。上野動物園で幼児誘拐の現場に行き合わせたことをきっかけに、名探偵エラリーは2つの難事件の核心に迫り、ついに対決の場へ……!
(東京創元社HPより)
kikuchiさんの感想:
 エラリー・クイーンが五十円玉二十枚の謎を解く!という惹句に惹かれて読んでみました。
 ストーリーや謎解きについては全般的に『九尾の猫』を強く意識したつくりになっているのかな?
 五十円玉二十枚の謎解きについては、なんというか、観念的なもので、必ずしもはたと膝を打つ名答というわけではなかったのですが、まあそれなりにうまく作った感じです。で、クイーン論、あるいはクイーンパロディとしてはもう出色の出来かと。凝りに凝った訳注を読んでいると、本当に偶然見つかったクイーンの未訳を北村が訳したと信じたくなりました。

05.7.15

あっちゃんのres:
「ミステリーズ」は7号までは何とか買っていましたので「ニッポン硬貨の謎」も途中までは読んでいました。そうですか・・・単行本になったんでね。「ミステリーズ」はそんなにぜひ読んでいきたいというほどの掲載作がなく7号で力尽きてしまいました。(^_^;)その中で楽しみにしていたのが鯨統一郎の「新・世界の七不思議」と「本格ミステリ・フラッシュバック」でした。「新・世界の七不思議」は完結したし連載1本のために買い続けるのもねえ・・・
「ニッポン硬貨の謎」は幼児殺人事件よりもクィーンの滞在記の方がメインのような感じでこれからという段階でした。文庫化するぐらいに読むことになるかなあ、北村薫はもう少し後に「盤上の敵」を読む予定です。

05.7.17
『スキップ』

データ:

 発行年  1999.7
 発行所  新潮社(文庫)
 単行本  1995.8
 ISBN 4-10-137321-3
あっちゃんの感想:
 物語には終わりがあるしその終わり方で評価が決定されることもある。それが僕の持論だったが本書は終わって欲しくないという気持ちを抱き続けながら読んでいった。でも本書も小説であるからには終わりはある、どんな終わりなのか、常識的にはいくつかのパターンが考えられたが実は本書の終わり方は僕が推測したそのいずれでもなかった。すなわち「終わらない」ことが「終わり」であったし、しかもそれが最高の終わり方だったという、僕が今まで読んだ小説の中で珍しい作品であり傑作だった。欲を言えば「性的」な問題にももっと触れて欲しかったがそれは読み手によっても評価が違うかもしれない。2006年のベスト10候補の筆頭といってもいいだろう。

06.5.1

北森鴻 狐闇 凶笑面
『狐闇』

データ:

 講談社
 ¥1900
 2002/05/30

内容:
 幻のコレクションを巡り、暗躍する古美術商たち。贋作作りの疑いをかけられ、苦境に立たされる旗師・陶子。明治初期の堺県令・税所コレクションの存在も浮かび上がり…。一枚の鏡に隠された謎。
EGGさんの感想:
評価 85点

『狐罠』につづく冬孤堂シリーズ第2作らしいです。図書館で何の気なしに手にとって読んでしまったので、1作目は未読。

陶子の生き方は、なかなかにハードボイルドで、小気味がいいです。
仁徳天皇陵から出土された可能性のある三角縁神獣鏡のコピー。偶然彼女の手に入ったことから、二重三重の罠にはめられ、骨董師の鑑札を剥奪されるまでに追いこまれるのです。しかし陶子は不屈の精神で、これに立ち向かう。民俗学者・蓮杖那智(ゲスト出演?)も協力し、明治初期の悪徳県令・税所篤(さいしょ・あつし)の盗掘の謎に迫っていきます。

文章がうまいですね。情景も、骨董品に魅入られていく心理も、分かるっていうか、気がついたら納得させられている。どの人物もキャラが立っている。手馴れているが手抜ではない。上野の骨董店の親父なんか最高。

殺人がらみのサスペンス小説としても面白いのですが、明治時代の国家的謀略を背景にした盗掘事件の話が大変に興味深く、このネタだけで話をまとめてくれた方が私の好みだったかもしれません。(現代までその秘密を護っている家があるというのは、ちょっと不自然なので)

02.12.22
『凶笑面』

データ:

発行年   2003.2
発行所   新潮社(文庫)
ISBN  4-10-120721-6
シリーズ  蓮丈那智フィールドファイル 1
あっちゃんの感想:
 北森は以前から読みたかった作家だったがアンソロジー以外では初めて読んだ。特に北森作品の中でも民俗学ミステリ−と言う僕にはぴったりの作品だったがなるほどおもしろかった。手法的には高田崇のQEDシリーズと似ているがQEDシリーズよりもミステリーとしてはすっきりしている。本書の冒頭で著者は「諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」に捧ぐ」と献呈の辞を書いてあるが実はずっと星野之宣の「宗像教授伝奇考」シリーズを読んでいるのだが本書のテイストと共通するものもあり興味深い。

06.2.26

北山猛邦
『「クロック城」殺人事件』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:02.3.5
 価 格:\800
 ISBN :4-06-182239-X
 備 考:第24回メフィスト賞受賞作
kikuchiさんの感想:
 幻想的な世界感の中で、トリックだけがあまりに現実的な物理トリックで浮いてます。普通トリックだけが非現実的に浮くことはあるけど、こういう逆の浮き方は珍しいかも。こういう世界感にする必要があったのかどうかは疑問ですけど。

02.6.21

京極夏彦 続巷説百物語 今昔続百鬼−雲 巷説百物語 陰摩羅鬼の瑕 後巷説百物語
『続巷説百物語』

データ:

 出版社:角川書店
 出版日:01.5.31
 価 格:\2000
  ISBN :4-04-873300-1
 収録作品:野鉄砲、狐者異(こわい)、飛縁魔(ひのえんま)、船幽霊、死神あるいは七人みさき、老人火(ろうじんのひ)
 初 出:季刊「怪」第六号(平成11年9月刊)、第七号(12月刊)、第八号(平成12年5月刊)、第九号(9月刊)、第拾号(平成13年1月刊)、書き下ろし

あらすじ:
 人の世に凝るもの。恨みつらみに妬みに嫉み、泪、執念、憤り。
道を通せば角が立つ。倫を外せば深みに嵌る。そっと通るは裏の径。
所詮浮き世は夢幻と、見切る憂き世の狂言芝居。身過ぎ世過ぎで片付けましょう。
仕掛けるは小悪党、小股潜りの又市。山猫廻しのお銀、事触れの治平――。
手練手管の指の先、口の先より繰り出されるは、巧緻なからくり、目眩。
邪心闇に散り、禍は夜に封じ、立ち上がるは巷の噂、物怪どもの妖しき姿
野鉄砲、狐者異、飛縁魔、船幽霊、死神、老人火――。
 おんぎょうしたてまつる
「御行奉為――」

(表紙折り返しより)
kikuchiさんの感想:
 WOWOWでのシリーズと絡んでいるのかいないのか、「死神」「七人みさき」と同じ話ですが、TVで見たのとは随分印象が違いました。京極は言霊使いなので、映像ではその効果が薄れるということなのかもしれません。で、「死神」「老人火」の間に何やら大きなエピソードがあったようなのですが、それはTVの方でやった「福神ながし」なんでしょうか? 残念ながら私は「赤面ゑびす」までしか見ていないので〜。

 ミステリとしては、「野鉄砲」「狐者異」でのお札の使い方がうまく作ってあって、特に「狐者異」は何度首を切っても蘇ってくる怪人という謎をミステリ的にうまく決着させていてなかなかいい感じです。本書では各編が有機的に繋がっていて、それまで何度も「七人みさき」の話を匂わせておいて「死神」そして「老人火」につなげていきます。これも巧み。

 「百物語」というからには、100話までやるつもりかと思っていたら、どうやら今回で終了のようです。残念。

01.6.20
EGGさんの感想:
 評価85点

 昨年11月末にアップしたものです。
 京極流必殺シリーズの2巻目です。これは読ませましたねえ。
それぞれが独立した短編でありながら、「七人岬」と言う中篇に収束していく構成の妙。幻想小説が現実に立ちかえるような最終章。この余韻も好きです。ビデオでみた「七人岬」は陰惨なうえ鈍重で、不快感だけが残りましたが、こちらは、これが京極さんの品なのかなあ。同じ悪でも業というか宿命と言うか凛としていて、哀れさを感じるほど。

これを読んで、京極夏彦という作家の資質が、かなり明確になったと自分では思っているのですが、その話はまた今度ということで。
『今昔続百鬼―雲』

データ:
 講談社ノベルズ
 1150円
EGGさんの感想:
 評価80点

79点でもいいかも。ちょっとこのシリーズでは期待外れ。
多々良先生って、単なる妖怪オタクの迷惑人間だし、メインの絵解きは鳥山石燕という絵師の洒落だし・・・・。ドタバタ(コメディ)は嫌いではないですが、おお!っていうのがなかったのがやはりね。それでも、あの方が登場するとさすがに物語が締まりますね。

02.5.23
『巷説百物語』

データ:

 出版社:角川書店
 出版日:1999.8.31
 価 格:\1900
 ISBN:4-04-873163-7
山本わおさんの感想:
 ビデオ版を先に見ていたのだが、原作の方が全然面白いですね。
 キャスティング的には又市はピッタリ。おぎん、百介はちょっとずれてるかな。
 京極版必殺というのはその通りですね。
 短編のせいか京極堂シリーズよりライトで読み易かった。
 入門編におすすめかな。

02.8.12
『陰摩羅鬼の瑕』

データ:

 発行年     2003.8
 発行所     講談社(ノベルズ)
 ISBN    4-06-182293-4
あっちゃんの感想:
 久々の京極夏彦、この作品、犯人は大体最初から見当が付く。ただその動機がわからない。つまり最も疑わしい人間が最も犯罪からと遠い場所(動機がないという点で)にいるのだ。その動機はある意味、衝撃的なものだった。もちろん他に類はない。「塗仏の宴」からもっとメタレベルの作品になっていくのかなと思っていたらこういう手もあったんですね。

04.8.28
『後巷説百物語』

データ:

 角川書店
 h15/11/30初版
 \2000

内容:
”恵比寿像の顔が赤くなるときは、恐ろしい災厄が襲う”
明治十年、一等巡査長の矢作剣之進は、ある島の珍奇な伝説の真偽をめぐり、友人らと言い争いになる。議論に収拾はつかず、ついに一同は、解を求め、東京のはずれに庵を結ぶ隠居老人を訪ねることにした。一白翁と名のるこの老人は、若い頃、百物語開板のため、諸国の怪異譚を蒐集してまわったほどの不思議話好きだという。翁は、静かに、そしてゆっくりと昔の事件を語り始めた。 鈴の音とともによみがえる、あの男の声を思い出しながら。「御行奉為---」
(カバー折り返しより)
EGGさんの感想:
 初めの2話が、たるくて放ってあったんですが何とか読み終えました。ホントの本当に百介の話はこれで終わり......なのでしょうか。
最終話はかなり上手〜く纏めているように見えますが、京極堂の妖怪シリーズと陸続きであったとは、、、(由良氏のご先祖様登場。しかもこれじゃあ狂骨の仕掛けは又市が...)
こうなると、又市と中善寺に血縁関係があったとしても私は驚きませんね(笑)。
謎に包まれていた又市たちの大仕事には今回も触れず仕舞いでした。あれは、テレビ「仕掛け人シリーズ」の最終回恒例の大イベントな訳です。『続巷説...』では、それを匂わせて描かなかったところがミソだと思っていましたが、どうやら京極氏はいつか書いてやろうという気があるのではないでしょうか。(仲間がどんどん倒されていきそうで、特にお銀さん、辛いのですが、でも読みたい)

04.9.22

霧舎巧 ラグナロク洞 マリオネット園 四月は霧の◯◯密室 5月はピンクと水色の恋のアリバイ崩し 六月はイニシャルトークde連続殺人 七月は織姫と彦星の交換殺人 八月は一夜限りの心霊探偵 霧舎巧傑作短編集
『ラグナログ洞』

データ:

 発行年  2000.11初刷り
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182146-6
あっちゃんの感想:
 気になったのが前半と後半の雰囲気ががらりと変わったことです。後動悟が登場するまでは次から次へと閉鎖された洞窟ホテルで殺人事件がおきてもお気楽モードでしたが後動が出てきてから重苦しい感じになっていました。それが著者の狙いだったのかもしれませんが僕にはなじめませんでした。また洞窟ホテルやペンションの図もちょっと不親切、最も詳しく書いてしまうと著者は困るでしょうが・・・それと事件の原因ともなった影郎村の秘密も何だかなあ感じでしたね。とまあ、いろいろ不満点はありますが作品のミステリーマインドは強く感じました。もちろん、これからも読んでいきます。

02.11.24
『マリオネット園』

データ:

 発行年  2001.10初刷
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182208-X
あっちゃんの感想:
 ちょっと遊びが過ぎたのと首吊り塔の構造がいまいち理解できなかったというのでちょっと評価は辛くなる。マリオネットにかけた様々な意味付けは成功していると思います。骨格になる部分は優れているのに肉付けがもう一歩かなと思いました。

03.10.26
『四月は霧の◯◯密室』

データ:

発行年   2002.4初刷
発行所   講談社(ノベルズ)
ISBN  4-06-18244-6
あっちゃんの感想:
 人を食ったような設定だが悪くはない。登場人物もバラエティに富んでいるしミステリーとしてもできはいい。乗りは軽いが中身はちょっと重いというアンバランスさ、さすがライバルは「金田一少年」だ。今後の展開、
楽しみだ。これを読んだのは2月だったがどうせなら次作からはその月に読むことにしようか。

04.3.20
『五月はピンクと水色の恋のアリバイ崩し』

データ:

 発行年  2002.8
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182268-3
あっちゃんの感想:
 さくさく読めたし楽しかった。まあこれぐらいの分量なのでいろんな深みを要求するのは無理だがシンプルな構成の中に一工夫されたアリバイものが光っている。

04.5.8
『六月はイニシャルトークde連続殺人 』

データ:

 発行年  2002.12
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182289-6
 シリーズ 私立霧舎学園ミステリ白書
あっちゃんの感想:
 ますます「<開かずの扉>研究会シリーズ」とクロスしていってますね。今度の舞台の一つは何と***、ミステリーとしての着地点も上手いし目が離せません。

04.8.6
『七月は織姫と彦星の交換殺人』

データ:

 発行年  2003.11
 発行所  講談社(ノベルズ)
 ISBN 4-06-182329-9
あっちゃんの感想:
1998年という時代設定をうまく使った錯覚トリック、ちょっと疑問に思ったもの納得しちゃった辺りまだ甘いですね。

04.9.20
『八月は一夜限りの心霊探偵』

データ:

発行年  2003.11
発行所  講談社(ノベルズ)
ISBN 4-06-18230-2
シリーズ 私立霧舎学園ミステリ白書

あっちゃんの感想:
 真冬に真夏の物語を読むというのもおもしろい。小技が決まっていた。
このシリーズようやく半分、早く続きを刊行して欲しい。

05.2.7
『霧舎巧傑作短編集』

データ:

発行年  2004.4
発行所  講談社(文庫)
ISBN 4-06-18369-8
あっちゃんの感想:
「本格推理」に収録されていた「手首を持ち歩く男」以外は初めてだった。「手首・・・」はやはり前回同様混乱してしまった。混乱してしま
うのは僕だけか・・・他の作品はいずれも書名に恥じないレベルのものばかりだった。人を食ったラストの「紫陽花物語」、かの名探偵が活躍する
「動物園の密室」、考え抜かれた「まだらの紐、再び」、哀しい余韻の残る「月の光の輝く夜に」、まさにボーナストラック「クリスマスの約束」、よかったです。

06.6.4

桐野夏生
『グロテスク』

データ:
くれい爺さんの感想:
「ジュディ・ガーランドは大熱演だった。当時、彼女の熱演を<鬼気迫る>と表現したのは双葉十三郎さんだったろうか」
とは和田誠の映画エッセイ「お楽しみはこれからだ」の一説。
小生には演技がどうこうということはわからないが、映画や劇、ドラマなどの役者の演技には“熱演”とか“迫真の”とか、あるいはここの“鬼気迫る”などの形容がある。
この「グロテスク」を読んで最初に感じたことは、登場人物“姉”を演ずる著者の“鬼気迫る”演技ということであった。
この“姉”の悪意の存在感が圧倒的に凄い。
逆に、大人になってからの“ミツル”と宗教との関係は、“つくりすぎ”だろう。

ただ、これはもうエンタテインメントとはいえないかもしれない。
文学のほうにかたよっているといってもいい。
EGGさんが丸谷才一の「輝く日の宮」を“ミステリーでもある”とおっしゃってたが、文学とエンタエインメントの境が微妙になってきているし、あるいは文学に娯楽的要素を加味して読ませたり、エンタテインメントに文学的要素を加味して主張したりするのは、読書人口の減少、長い出版不況といった時代の要請なのか。
朝日新聞の夕刊で「震災人国記」というのがあって、高村薫の作風が震災を境に変わったということが書いてあった。
たしかにこのごろの高村は「晴子情歌」「新リヤ王」とまったく文学の人なのだが、高村は昔から文学志向だったと思う。
たしかに被災はその契機ではあったのだろうが。
逆に今回直木賞を受賞した京極夏彦の「通俗娯楽小説に精進」という言葉に心意気を感じる。

内容について少し。
生物社会においては自らの遺伝子を残すというのは競争なのである。
人間の社会においても同じであろうが、社会が固定化し、価値観が均一化すれば、その中の競争はより激しさを増すのだろう。
現在の日本は“金(かね)本位主義”でほとんど均一化しているために、競争は激しく、低年齢化しているのではないか。
女子校という閉ざされた社会の中で、遺伝子存続競争に明け暮れる生徒たち。
かわいさと家庭の裕福さという価値観をはずれたものが見出した頭の良さや悪意に価値を見出すというのはその競争に敗れた敗者のの逃避にすぎない。
姉の“男嫌い”も和恵の“セックス嫌い”もあるいはユリコの“セックス好き”も男性に愛されたいが満たされない敗者の逃避かもしれない。

余談だが、売春の倫理観というのが揺らいだ。
“セックスが好き”という女性がそれを商売にした場合、これは“悪”なんだろうか?

04.1.25

鯨統一郎 隕石誘拐 金閣寺に密室 九つの殺人メルヘン なみだ研究所へようこそ ミステリアス学園 ふたりのシンデレラ
『隕石誘拐』

データ:
 出版社:光文社(カッパノベルズ)
山本わおさんの感想:
 鯨統一郎を初めて読みました。宮澤賢治ものというのにつられてですが・・・。
 デビュー作の印象からか氏は歴史推理が中心だと思っていたのですが、こういう普通のミステリーも書くんですね。
 私は角川文庫版の童話は1回全部読んだという程度の賢治ファンですが、なかなかいろいろ研究して書いているなあと思います。
 話は面白かったです。結構残忍なシーンもあるのですが、なぜかファンタジックに感じてしまうのは不思議でした。Hシーンも多かっ
たな。
 ただ、誘拐に拉致監禁に宝探しにと盛り沢山過ぎて全部薄味になってしまったかなあと思いました。個人的には賢治作品からの宝探しの謎解きをメインにして欲しかった。

02.9.16
『金閣寺に密室』

データ:

 発行年  2000.4初刷
 発行所  祥伝社(ノベルズ)
 ISBN 4-396-20684-4
あっちゃんの感想:
 何と言っても一休のとんちの逸話が盛り込まれているのが楽しかった。章ごとの一休のイラストもかわいかったし、肝心なミステリーとしての出来はちょっと苦しい面もあったが意外な犯人だったし複数の事件が収束していく様もよかった。実行犯はてっきり**だと思っていたんだけどちょっと**じゃ無理があったか。

02.11.7

『九つの殺人メルヘン』

データ:

 発行年   2001.6初刷
 発行所   光文社(ノベルズ)
 ISBN  4-334-07430-8

あっちゃんの感想:
「邪馬台国はどこですか」を彷彿とさせる設定でしかも前編アリバイ崩し、それにグリム童話の解釈を絡めると言う絶妙な組み合わせ、しかも僕の世代には懐かしい挿話もてんこ盛り、日本酒はほとんど飲まない僕も思わず飲みたくなる日本酒の薀蓄もあってこれでこの値段は安い、しかも僕はリサイクル書店で買ったので250円

03.9.7
『なみだ研究所へようこそ』

データ:

発行年   2001.4
発行所   祥伝社
ISBN  4-396-20712-3
あっちゃんの感想:
 鯨統一郎は一体どれだけの顔を持っているのだろうか、読むたびに作風が異なって感じられる。本書の設定自体はリアリティがないがミステリーとしてはマイナスにはなっていない。何よりもサイコセラピーとミステリーを結びつけた着想には感心した。

05.9.19
『ミステリアス学園』

データ:

発行年  2003.3
発行所  光文社(ノベルズ)
ISBN 4-334-075019-6
 感想
読む前は学園ミステリーだと思っていたのだが実際は全然違っていた。**を登場させて最終的に***********を真犯人としたこと自体は新しい試みだし評価したい。しかしきれいには決まらなかったところが惜しい。もっとすっきりした読後感だともっと傑作になっただろう。

05.12.26
『ふたりのシンデレラ』

データ:
発行年   2005.9
発行所   光文社(文庫)
単行本   2002.9原書房
ISBN  4-324-73939-3
あっちゃんの感想:
 単行本で目にした時から読んでみたかった。この手の趣向は僕の心をいたくくすぐる。しかし読んだ後満足できる作品はあまりなかった。(本家本元を含めて)しかし本書は読みやすい上に謎解きもすっきりしていた。鯨藤一郎はもっともっと読んでいきたい。

06.2.26

倉知淳
『猫丸先輩の推測』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
yobataさんの感想:
 猫丸先輩が活躍する短編集。それぞれの作品タイトルが、著名なミステリーのパロディになっている遊び心のある作品集です。

 内容のほうも堂に入ったもので、なかなか意外性に満ちている。読者も謎解きに参加できるといった本格派ではないものの、猫丸の謎解きは整然としていてロジカル。少々飛躍はあるけれど、あくまでもひとつの可能性、推測であると断りがあるから、納得のいかない部分もすんなりと受け入れられる。全体的に小粒な感は否めないけれど、楽しめる作品集でした。

02.9.23

栗本薫 嵐の獅子たち 新・魔界水滸伝 銀河聖戦編4 劫火 蜃気楼の彼方 運命の糸車 ヤーンの時の時 宝島
『嵐の獅子たち』

データ:

発行年  2002.2初刷り
発行所  早川書房(文庫)
シリーズ グイン・サーガ 83
ISBN 4-15-030689-3
あっちゃんの感想:
 既に第83巻、全100巻で完結させるとして残り17巻、ここに至ってなお先が読めない、あるいは予想を裏切る展開、栗本薫の実力といったところか、グイン・サーガはギネスブックに世界一長い小説と認定されたがこの物語のすごいところは量だけではない。その量に質が伴っているということだ。この作品をリアルタイムで読んでいくことは何という喜びであろうか、

 さて次に読むのは約束通り海外ミステリーのシリーズ物です。多分遅くとも木曜日には感想をアップできると思います。

02.3.4
『新・魔界水滸伝 銀河聖戦編4』

データ:

 著者名  栗本薫
 発行年  1996.11初刷
 発行所  角川書店(文庫)
 ISBN 4-04-150047-8

あっちゃんの感想:
カイザー転移でウオン基地から脱出する場面はグイン・サーガでも同じような場面があったような・・・さてだんだん役者も集まってきていわば長めのプロローグが終わると言うところでこのシリーズ中断してしまっている。本書が出たのが1996.11、約6年たっているのに続きが出ないとは・・・自分としてはグイン・サーガ以外のシリーズよりもこちらの方を優先してほしいと思っているのだがこれはまあしょうがないか

02.7.25

『劫火』

データ:

 発行年  2002.4初刷
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-030691-5
 シリーズ グイン・サーガ 84
あっちゃんの感想:
 実は現在、グイン・サーガ86巻まで出ています。ちょっと溜まってしまいあせっています。と言うのもこのシリーズ、先が読めないのです。いわゆるジャンル的なお約束というものがあります。しかしこのシリーズはそのお約束事を破っていきます。本書ではあまりそのような面はありませんでしたがしかし激動の巻ではありました。次巻ではどんな展開になるか、またこの巻ではちょっと登場人物が以下にもといった行動を取ってそういった意味ではちょっと残念でした。(キャラクタ―主体で読む人にはよかったかもしれませんが)

02.8.13
『蜃気楼の彼方』

データ:

 発行年  2002.6初刷り
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-030695-8
 シリーズ グイン・サーガ 85
あっちゃんの感想:
 本編3冊、外伝2冊もためてしまったので年末本編だけでも読んでしまおうと取り組みました。丁々発止のやり取りがおもしろかったですね。イシュトヴァーンは一体どうなってしまうのでしょうか。

02.12.26

『運命の糸車』

データ:

 発行年   2002.8初刷り
 発行所   早川書房(文庫)
 ISBN  4-15-030698-2
 シリーズ  グイン・サーガ 86

あっちゃんの感想:
 第1巻目から登場していたあの人がとうとう死んでしまった。登場人物の中でももっとも波乱万丈の人生を送り悲運なまま死んでしまった。そのこと自体は本書の中ではメインではないが僕としては一つの区切りというかそんな気がしました。

02.12.26
『ヤーンの時の時』

データ:

 発行年  2002.12初刷
 発行所  早川書房(文庫)
 ISBN 4-15-030706-7
 シリーズ グイン・サーガ 87
あっちゃんの感想:
 87巻めで最大級の出来事が起きてしまった。まさかこういう事態を書いてしまうとは・・・グイン・サーガはどこにいこうとしているのであろうか。

03.1.8
『宝島』

データ:

 発行年    2002.10-11初刷り
 発行所    早川書房(文庫)
 シリーズ   グイン・サーガ外伝 17
あっちゃんの感想:
今や残虐なゴーラの殺人王となったイシュトヴァーンが初々しい20歳の青年として登場する。耐えがたいような試練に会いながら人生を突き進むイシュト、どこで彼は狂ってしまったのか,ゴーラ王としてのイシュトはとても痛々しい。いわゆるイシュトヴァーン・サーガの追尾を飾るこの作品は宝島に上陸してからの描写がややもの足りないが若きイッシュトの心を描いたという店では面白かった。

03.3.28

黒崎緑 しゃべくり探偵 しゃべくり探偵の四季
『しゃべくり探偵』

データ:

 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
あっちゃんの感想:
 黒崎を読むのは3作目ですが読むたびに違った作風でその広さにまず感心しました。この作品自体とてもよかったです。黒崎はもっともっと注目されていい作家だと思います。(寡作なのが損しているのかな)

02.2.3
『しゃべくり探偵の四季』

データ:

発行年   2002.11
発行所   東京創元社(文庫)
ISBN  4-488-41802-3
あっちゃんの感想:
 久々の黒崎緑。しかも「しゃべくり探偵」の続編、論理のスマートさということでは「怪しいアルバイト」。「戸惑う婚約者」かなあ、異色編の思い出2作も含めてもちろん満足できる出来だった。黒崎は寡作な作家だが読む方も思い出したように読んでいるのでどっちもどっちか、でも今まで外れはなかった。これからも読むのを楽しみにしている。

05.7.17

黒田研二
『ウエディング・ドレス』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:00.6.5
 価 格:\840
 ISBN :4-06-182130-X
 備 考:第16回メフィスト賞受賞作

あらすじ:
 純愛か裏切りか。結婚式当日の陵辱から、わたしとユウ君の物語は始まった。そして<十三番目の生け贄>という凄絶なAV作品に関わる猟奇殺人。ユウ君と再会したとき、不可解なジグソーパズルは完成した!
(裏表紙より抜粋)
kikuchiさんの感想:
 「すべてが謎とトリックに奉仕する、体脂肪率0%の新本格」という帯の推薦文は、かなり絶賛してるように見えてしまうのですが、全文を読んでみると、「キャラ立ちなし、蘊蓄なし、洒落た会話も気の利いたジョークもなし。」という文に引き続いて冒頭の一文が導かれるので、実はあまり褒めているようには思えません。他にも「爆笑のハウダニット」とか言われてるし(確かにすごいバカトリックだったけどね〜(笑))。
 女の視点からの物語では男が死亡しており、男の視点からの物語では女性が失踪しているという不可解な状況の叙述トリックには、騙されたかといえば、騙されたような気もしますが、それほど世界観がひっくりかえされたわけではなく、なんか、「ふ〜ん」という感じで終わってしまいました。メインのトリックについては、『斜め屋敷』以降に新本格作家が粗製濫造した館トリックと大差ない感じのもので、仕掛けが大がかりな割にはやってることがショボいです。

01.2.21
あっちゃんの感想:
 読む前に思っていたより面白かった。何となくトリックは想像できたがそれでも完全にはわからなかった。まあ及第点というところか

05.12.11

古泉迦十
『火蛾』

データ:

 発行年   2000.9
 発行所   講談社(ノベルズ)
 ISBN  4-06-182149-0
 備考    第17回メフィスト賞受賞作
あっちゃんの感想:
 物理トリックがしょぼかったけどストーリーはユニークで面白かった。こんな作品今までに日本にはなかったしね。でもこれだけの作品を書いてしまったら第2作が出ていないのも仕方ないか、(ペンネーム変えて再登場している可能性もあるが・・・)

05.9.23 

古処誠二  UNKNOWN 未完成 少年たちの密室

『UNKNOWN』

データ:
 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
あっちゃんの感想:
 野上と朝香の会話がおもしろくよかったですよ。次回作も読んでみたいです。

02.2.3
『未完成』

データ:

 出版社:講談社(講談社ノベルズ)
 出版日:01.4.5
 価 格:\820
  ISBN :4-06-182181-4

あらすじ
 世界の常識がひっくりかえっても表沙汰にすることができない大事件――二重三重に閉ざされた孤島の射撃場で、何人もの隊員が見守るなか、小銃が消え失せた! 事態を完全な秘密状態のまま解決するという難題に挑むのは防衛庁捜査班の朝香二尉と相棒の野上三曹。謎解きと小説の面白さが奇跡のように調和した傑作!
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 『少年たちの密室』が面白かったので、『UNKNOWN』をすっとばして読んでみました。
 話の作り方とかキャラクター描写とかなかなか手慣れたものを感じましたが、肝心の謎(小銃の消失トリック)がそれほどものすごく不思議なものではないし、謎解きの方もまあ、普通かな、と。HOWはそんな感じで、WHYの方がメインかといえばそうなんですが、これもまあ、ホワイダニットとしてはそれほど意表を突いた意外なものというわけでもないような感じでした。
 で、衆人環視の中での小銃消失という謎をメインにしているものの、自衛隊を取り巻く環境やら防衛論、さらには在日韓国人問題などを細部に織り込んでいくところがきれいにはまっていて、むしろ「新社会派」といった方がいいような話です。
 一日で一気読みしちゃえるような「好作品」ではありましたが、小粒感は否めませんでした。

02.1.25
『少年たちの密室』

データ:

講談社ノベルズ
 ¥820 2000/09/05  

内容:
 東海地震で倒壊したマンションの地下駐車場。そこには6人の高校生と担任教師が閉じ込められていた。暗闇の中で救出を待つ彼らだったが、札付きの不良・城戸が瓦礫で頭を打たれ死亡した。殺人?でもどうやって…。
EGGさんの感想:
 評価 82点
 『UNKNOWN』という自衛隊を舞台にした第一作。ミステリとしては弱いものの、まじめに小説を組み立てようとしているところに好感が持てました。

 第二作は、ずっと重い話で、中盤まで閉口しましたが、事件の背景や登場人物たちの動機、状況証拠まですべて提示するために必要だったようなのです。話の運びとしては減点かもしれませんが、ドラマとしてもミステリーとしても、そのお陰でふくらみ、奥行きが深くなったわけで、1年練っただけのことはあるのでしょう。

 どういうところが伏線になっているかは、ルール違反なので触れませんが、一つだけ書かせてください。

 宮下が暴力に負けて自殺したらしいというのがプロローグでわかり、親友の優が、その原因を作ったのが城戸だと断定して追い詰めようとしています。これがこの物語の骨格の一つなのですが、私は優がしゃかりきになればなるほど、冷めてしまっていました。そもそも宮下は自殺まですることはないだろう、城戸をつぶすなら、他にいくらでも方法がありそうなものだというのが気になって、そのうえ負けてしまったように見えるのが少し不快だったのです。
ところが真相が明かされて、彼が死ななければならないほどの理由(彼のミスなのだろうけれど)が判ったところで、一気にその不満が消えました。正統的なミステリーだと言ってよいと思います。

02.6.6
あっちゃんの感想:
 ミステリーしてはおもしろかったがテーマが重いし読後感もあまりよくない。すっきり感がないというか、

05.12.10

小沼丹
『黒いハンカチ』
くれい爺さんの感想:
宮部みゆきも知らなかったというこの作家をどうして小生が知っていよう。(知らなかった)
固有名詞はA女学院、B病院、C駅、D町とアルファベットで表現され、登場人物の名前はニシ・アズマはじめカタカナで表される。
著者はそういうものは記号程度にしか考えていないのだろう。
つまり、この短編集は推理小説のエッセンスを、それ以外のものを極力単純化させて書いているのだ。
それでいてただの文章パズルになっていないのは著者の力量だろう。
そも、短編にあまり詰め込み過ぎると逆に物足りなさを感じるのだ。
著者は余裕を持って楽しみながらこの短編集を書いているようだ。
殺人事件も出てくるが、凄惨さなどは感じず、むしろ爽やかさを感じる。
小柄で愛嬌のある顔をした女学校の若い教師ニシ・アズマが魅力的。
昭和32年から33年にかけて書かれた作品で、女学院やそこの教師の描写、彼女たちの話し方などにのどかさを感じる。
重〜い作品を読んだ後のデザートに最適な作品。

03.10.7

小林泰三 AΩ 海を見る人
『AΩ(アルファ・オメガ)』

データ

 出版社:角川書店
 出版日:01.5.30
 価 格:\1500
  ISBN :4-04-873297-8

あらすじ:
 ジャンボジェット機墜落。真空と磁場と電離体からなる世界から、「影」を追い求める「ガ」。再生する男・諸星隼人。宗教団体「アルファ・オメガ」。世界に溢れかえる”人間もどき”。
 ――人類が破滅しようとしている。――
(帯より抜粋)
kikuchiさんの感想:
 というわけで、小林泰三のハードSFホラー超大作です。
 「影」を追ってきた「ガ」がジャンボジェットと接触して墜落させてしまい、その犠牲者・諸星隼人と命を共有しつつ、敵が現れたら戦闘形態に「変身」するという設定。しかも戦闘形態は3分間ほどしか維持できない。で、主人公の名前が諸星隼人、ときたら何がモチーフになっているか、もうお分かりですね。これで諸星の奥さんの名前が「アンヌ」とかだったら完璧なのに(笑)。何故「沙織」なんだろう。

 それはともかく。今まで我々がおぼろげに想像していた宇宙人というもののイメージを根本から変えてしまうような、とてつもなく柔軟な設定やら、小林泰三がデビュー作から描き続けている「生命」というものに対するクールな思想やら、そして相変わらずのグログロでグチャグチャ、ドロドロのシーンなど、本来ハードSFには相性の悪い私でも面白く読めました。

 で、ラストの隼人と沙織の別れのシーンは、さすがにあの伝説の「ウルトラセブン」最終回には及ばないものの、そのテイストは確かに生かされていました。シューマンのピアノコンチェルトでしたっけ? BGMとして聴こえてくるような気がしました。

01.6.17
『海を見る人』

データ:

 出版社:早川書店(ハヤカワSFシリーズJコレクション)
 出版日:02.5.31
 価 格:\1700
  ISBN :4-15-208418-9
 収録作品:時計の中のレンズ、独裁者の掟、天国と地獄、キャッシュ、母と子と渦を旋る冒険、海を見る人、門
 初 出:SFマガジン1997年10月号、『少女の空間』徳間デュアル文庫、SFマガジン1999年5月号、書き下ろし、SFマガジン2000年2月号、1998年2月号、2001年2月号

あらすじ:
 「あの年の夏祭りの夜、浜から来た少女カムロミと恋に落ちたわたしは、1年後の再会という儚い約束を交わしました。なぜなら浜の1年は、こちらの100年にあたるのですから」――場所によって時間の進行が異なる世界での哀しくも奇妙な恋を描いた表題作、円筒形世界における少年の成長物語「時計の中のレンズ」など、冷徹な論理と奔放な想像力が生み出す驚愕の異世界七景。日本ホラー小説大賞受賞作家による初のSF短編集。
(裏表紙より)
kikuchiさんの感想:
 あとがきに書かれている「アーサー・C.クラークの言葉に「充分に発達した科学技術は魔法と区別が付かない」というものがある。つまり、ハードSFは科学的な説明を気にかけなければ、ファンタジーとして読むことができるのである。」という言葉がこの作品集の全てを表しているような気がします。とはいえ、ファンタジーとして読むには分かりにくすぎるので、おおざっぱにでも重力と光と時間の関係について知っておいた方が楽しめると思います。せめて「事象の地平線」で何が起こるかということくらいは知っていないと「海を見る人」の意味が分からないでしょう。参考書としては竹内薫(湯川薫)の「ペンローズのねじれた四次元」(講談社ブルーバックス)などはそれなりに分かりやすいかと。

02.8.3

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