あとがき

　さて、何を書くべきか、書かざるべきかはわからない。敬愛するにゃんこ先輩にも、『作者は作品で語れ』という名言があるのだ。暑い寒いは子供の言い草、大人は黙って作品勝負。なのだが、少しだけ、少しだけ昔話をしたいと思う。旧作の『いつか虚空の上で』の解説で武田暗が語ってくれることと少しだぶるかも知れないが、ま、勘弁していただきたいのだ。

　さて、このＰＣ（ポジティブ・チルドレン）の原案は今から１７年近く前に遡る。今でこそ、もう、玉石混淆、今更、女の子の操作する兵器ネタは、売れないから新人賞とかで書くことはダメだ。といわれているそうだが、まだ、そんなに作品が出ていなかった頃の話である。現在のようなヒロイニック・ファンタジーやヒロイン・オペラ全盛と言う時代ではなく、ただただ、ヒロインは添え物的な感があった。レッツ・コンバインだろうと、古代君が死んじゃおうと、アムロが行こうと、そうだったのだ。
　酷い場合には監督が替わって今までのヒロインがいつの間にか居なくなり、新しい監督のお気に入りのヒロインが出てきて・・・などというものもあったのである。（さて、何でしょう）
　そんな中、私が考えたのは主人公が刺身のツマの物語だった。兵器システムとしては兵器とヒロインだけで完結している。しかし、あまりにも高い完結故に闘争本能の欠如が問題となる。そこで、主人公が必要になる。
　恐ろしい話だが、『イクサー１』の女の子、『冥王計画　ゼオライマー』（コミック版）の女の子の役を主人公にさせようと思ったのである。（エロ抜きで）
更に、宇宙戦艦が現有の戦闘機の形をしているのだ。全長２００メートルのトムキャットやファントムが飛び回る宇宙。このことを大学１年の正月の大通り、冴速さんや朱雀の前で、熱弁を振るった思い出がある。冴速さんはさぞかし呆れられたと思うのだ。

　そして幾星霜。一時は武田に下駄を預けたこのＰＣだが、結局、今回、もう、どうしようも逃げ場のない状況で書かねばならなくなってしまった。
　いろいろ逃げ回っていたのだが、今年の正月、もう、はっきりと冴速さんにとどめを刺されてしまったのだ。
　仕方なく、私はちゃかぽことキーボードを叩き始めた。既に７年ものあいだ物語を書かなかった私の脳は乾涸らび、単なる乾燥した何かと化してしまっていたのだ。新しい設定、新しい世界。しかし筆はなかなか進まなかった。
　書きたいものは、今はこれではない。突然悟った私は、古いノートをひっくり返し、残念ながら、過去のＨＤデータの一部は消失し、サブデータとしてのノートの設定等に頼るしかなかったのだ。時々出てくるデッサンの狂った少女の顔は私の心臓に深刻なダメージを与え、あまりにもこっ恥ずかしい断片は、私を数十メートル下の地面へと誘ったのだが。
　しかしとにもかくにも、私は過去の設定を発掘し、ここに書き始める準備を整えたのである。
　むろん、１９８５〜６年版のＰＣと、現在の、この発表されたＰＣの間には大きな隔たりがある。現在、ストーカーにされてしまった主人公の出会いだが過去にはヒロインとのロマンチックな出会いが用意されていた。
　冬のある日、天文観測をしていた主人公は忽然と現れたヒロインと出会ってしまうのだ。これが空から落ちてきたら『ら』であろう。しかし、これではちっとも面白くないので今のようになってしまったのだ。
　その面白いというのがストーカーまがいである。一体私に何が、この１６年の間にあったのであろうか。
　ま、とにもかくにも、物語は語られようとしている。果たしてこの物語はどこへいくのか、ラストだけは決まっている物語である。ネバーエンディングではない。

　おそらくはありきたりのラストが待っているはずなのだ。そのためにも、今は一歩一歩書き進めるしかないのである。

２００２年１月吉日　上杉　明

見ない方がいいかも知れない特別付録

１９８６版ポジティブ・チルドレンキャラ設定表（第１話登場人物分）より

●主人公　坂本　竜之介
　碧丘高３年　没個性的なところが個性というどこでもいる少年。しかし異常なほど雑学に詳しい。典型的な上杉主人公キャラ。趣味は天文観測。その最中にヒロインと出会い、大きな陰謀と、自分の正体を知ることになる。なお、名前は坂本龍馬＋芥川龍之介（あまりにも畏れ多いので竜とする）以下男はみんな明治維新の主要人物＋小説家の名前で統一

●ヒロイン　神無月　真理亜
　十二使徒砲を装備する万能戦略戦術艦Ｆ−１４のナビゲーター。その凄まじい戦闘力故に陰謀に巻き込まれ、パイロット不在のＦ−１４は大破、ナビゲーターの彼女は地球へと脱出することになる。美少女。

●大村　八雲
　碧丘高３年　剣道部元主将。非凡な能力を持つ彼だがなぜか主人公とは馬が合う。また大局からの戦術眼を持つ。主人公の足りない運動神経＋理性のサポート役か。

●勝　康成
　主人公のバイト先（ファーストフード）の社員。師匠的存在。

●高杉　金之助
　主人公、大村の学校の担任。歴史・軍事マニア