2011年

10月23日 (日)  

音楽劇・醒めながら見る夢
at 森ノ宮ピロティホール

 この、どこへ向かおうとしているのか分からなくなるような、はっきり言ってやや こしい、辻仁成の書くホンを、見事に演じきったものだ。…というのが、正直な感想 だった。
 何もかもが夢うつつの状態で、現実と幻が常に交錯していて。 その切り取った場面場面では意味が理解出来るんだけれど、他の場面とのつながりを 考えた時に、「考え」ないと追い付かない、微妙で複雑でファジーな感覚が残った。
 ラストシーンも…、うん、そんな感じ。

 出演者は、最小限に削ぎ落とされた人数で。だから、メインの2人以外は違う役も ちょこっとだけあったり。とはいえそれも、ほんの1シーンだけ、とかで。
 それなのに。人物関係に戸惑う場面がないわけではなかった…。というのも、実体 として在る人物と、回想場面として在る人物と、実は幻(幻想あるいは幻影)で実体 としては無い(亡い)人物とが、混在していたから。
 “それ”が“そう”だと分かるまで、観客は想像を巡らし憶測をし続ける必要が あったわけで。

 古川雄大くんが天使、村井良大くんが悪魔、という役だったワケだけれども、確か に2人はコンビとしてコンビネーションの良さを際立たせていたのだけれども、それ ぞれが“天使”あるいは“悪魔”という役割は明確にはなく、むしろ、一般認識的な 天使と悪魔の役割は一切していなかったように思うのだけれども。
 初舞台というCHEMISTRYの堂珍嘉邦くんは、さすが、歌う場面は言わずもがなの説 得力と素晴らしさ。お芝居の部分では若干の覚束無さを感じ得ずにはいられなかった けれども、それでも、良いボーカリストは良い役者になるという定説を裏切らないも のではあった。
 村川絵梨ちゃん、ドラマや映画の映像作品では何度も見ていたけれど、やはり真の 実力を持った人。歌がこれほどうまいとは知らなかったが、そうだ、山本耕史くんと 2人芝居のミュージカル『the Last 5 Years』にも出演していたんだった、というこ とを思い出した。
 そして、松田賢二さん。いや、なんか、“さん”付けってなんとなく慣れなく て、って別に友達でもなんでもなくて、つまりは賢兄って呼ぶ方が自分にはしっくり くるんだよな、ってだけのことで。ファンになってからはもう数年経つのだけれど、 舞台を観るのは実は初めてで。しかし、想像通りの演技の確かさがあり。歌のみなら ずダンスまで踊ってしまうのは驚きだったけれど。元々アクションの人だからもっと もっと動いてもらって良かったのだけれども。
 音楽や音響、照明やスポットの使い方に、斬新さを感じたのは確か。耳にズンズン と響いたり、目にチカチカと眩しかったり、ギラギラ感を覚えた場面が多々あった。

 自分が観たこの公演は、東京公演ののち地方公演も終えての大千穐楽だったので、 終演後のカーテンコールでは役者全員が1人ずつコメントし、脚本・演出・音楽を務め た辻仁成も舞台上に並んだ。
 きっと、この作品をきちんと理解して芝居に噛み砕いて自分のものにするのは骨の 折れる作業だったろうと、一見しただけの素人でもなんとなく分かる。だからこそ観 客としても、出来ればもっと「知りたい。」や「何故?」や「それでも、だから、」 といった欲求を満たすものであって欲しかったように思う。せっかくのこの、儚くも 強く、脆くも激しく、優しくも厳しい、前向きな愛の物語をより深いものとして感じ るために。そう、すべてを包み込む愛を以って、前へと歩みを進めていくために。

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