2010年

5月29日 (火)  

三島由紀夫作 近代能楽集より
葵上・卒塔婆小町
at シアター・ドラマシティ

 初めて足を踏み入れる“美輪明宏の世界”。おそらく、この作品に高山光乗さんが 出演されるというきっかけがなければ、自分にとってはずっと、テレビの中にしか見 ない世界だったかもしれない。別に、異様な雰囲気を放つ空気だとか人だとか空間だ とかがあるわけでは決してないし、もしかしたら限りなく独断による偏見であったり 色眼鏡であったりするのかもしれない。けれど、気難しさや過剰な神経質さを感じさ せる程くどい場内放送があり、そして幕が上がった「葵上」の舞台美術には、独特の 空気が流れていたことは間違いないように思えた。

 そう、まずは「葵上」の上演。サルバドール・ダリの絵画に出てくる歪んだ時計を 模したソファや舞台装置に、ギリシャ彫刻を思わせる女性立像に電話が備え付けら れ、大きなベッドの向こう側にはさらに大きな内掛けのようなものが。そして、登場 人物たちから発せられる言葉の、ある種の“異様さ”に驚く。三島由紀夫作、とのこ とで、時代を超越したものを感じもしたけれど、“普通ではないもの”を強く印象付 ける脚本だった。そして、大きな青々とした松の刺繍がほどこされたコートと漆黒の ドレスに身を包む六条康子(つまり、六条御息所)を演じる美輪明宏という人の、異 様なまでに独特な世界観を放つ“情熱的に恋焦がれる女性像”に、圧倒される。ある 種の違和感を覚えつつ、それでいて不思議なくらい自然に思え、そして強く惹き付け られる。…何なんだろう、この不可思議な世界は。その康子と光が湖上での思い出の 中にいるシーンで、想いあふれる心情を吐露する康子のセリフの中に「生まれ変わ り、死に変わり」という言葉があった。…ミュージカル『AKURO』でも語られた、言 葉。そこに、生と死を繰り返しながら営みを絶え間なく続ける命の“普遍性”を、強 く感じずにはいられなかった。

 休憩をはさんだ後、琵琶歌が朗々と流れる中で「卒塔婆小町」は始まる。この舞台 美術もまた独特なもので。とはいえ、現代の公園ともなり80年前の鹿鳴館ともなる場 所を、バックスクリーンに描かれる東京都庁と鹿鳴館の外観との切り替えにより、時 間と空間を越えたり繋げたりする、絶妙な演出がなされていた。小町を演じる美輪氏 の変貌は、特殊メイクによってなされているのだけれど、ここにもまた不思議ながら も説得力のある、独特の空気感が漂っていた。100歳間もない現代の小町には、ボロ ボロの衣装に振り乱した灰色の髪とはいえ、達観した雰囲気と共に、残りの人生を ユーモラスに過ごそうとする、どこか柔らかな印象があった。逆に20歳の小町の、白 いドレスを身にまとった背筋のしゃんと伸びた姿には、またも、ある種の違和感を感 じながらも、実に繊細に且つ明確に“乙女の恥じらい”を表現する、言うなれば凄み のようなものがあった。通常の感覚では“あり得ない”と感じることが、そこにはご くごく当たり前に存在していて、不思議に感じながらも素直に引き込まれていく、説 明しきれない世界があることを知った…。

 さて、このきっかけをくれることになった高山さんについても、書いておかなけれ ば。
 出演は「卒塔婆小町」のみ。冒頭の、現代のシーンでは、公園にいるアベックの中 の1組。とはいえ、舞台上手側で、正面を向いていて、少し距離はあるもののまさに 私の目の前にいらっしゃいました(笑) 長い前髪を大五郎みたいにくくっていて、な んだか可愛らしい感じ。でも、彼女が肩に寄りかかっても、鼻をほじったり耳をほ じったり携帯をいじってみたり。ちょっと飽きてきた、そんな感じ。そして仕舞いに は、ネクタイの趣味が変、って彼女に言われちゃう始末。それでも飄々として“今風 な若者”を演じていました。変わって、鹿鳴館では燕尾服に身を包んだ紳士。ひとつ ひとつの仕草が、まさに紳士的。背もあるし、立ち居振る舞いがとても綺麗。それで いて、舞台の上では右へ左へと大きく移動を繰り返し、多くの役割を任されていると いう印象が。ただ、ダンスのステップが、若干重めに感じたのは、気のせいかしら?? そして、ラストシーン、もう1人の詩人として登場、小町の顔を見て驚きの表情を見 せながら、そのまま幕が下りました。なんとも重要な役柄、と、感心しつつ思ってい たら、もっと驚いたのはその後のカーテンコール。今回の地方公演では、美輪さんの 相手役は岩田知幸さんが務められていたのだけれど、その岩田さんと交代しながら、 美輪さんとダンスを踊るという大役を果たされていました。客席はほぼ総立ちでスタ ンディングオベーション。私も、ちゃんとみっくんさん(と、呼ばせていただいてま す、ご本人に対しても…)の姿が見たくて、そしてただただ「みっくん、ス ゲー!!!」と、その場にそぐわない言葉だと認識しながらも、喉半開きで無言で叫ん でおりました。
 とにかくその驚きをご本人にも伝えたくて、でも「たまたま良い役をもらえて」な んて謙遜されてましたけど、やっぱりこの人もすごい人だという認識を新たにしまし た。それでいて、率先してサイン用の太マジックを取りに行ってくださったり、さ さっとエレベーターのボタンを押しに行ったり、その時に「今回はイケメンが多いで すよね」と他のファンの方に言われて「イェーイ!!」なんておどけてピースしてみた り。あと、京都に住んでらした方なので、関西弁で話しかけると、ちゃんと関西弁で 返してくれはりました。思いっきり関西弁トークが出来て、むっちゃ嬉しかったです ☆そして、以前にも増して腕周りがゴツくなられたんではないかと…。いや、もう、 こう言っちゃなんですが、甘いマスクにたくましい身体、ですよ、本当に。
 また、みっくんさんのお芝居が観たいな。歌も聴きたいな。そんな風に思いなが ら、ニコニコ顔が伝染した状態で、大きな手を握らせていただきました。うん、ま た、いつか♪ ありがとうございました!!!

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