2009年

6月26日 (金)&27日(土)  

30-DELUX Action Club MIX『ナナシ』
at 松下IMPホール

 この時代、戦国時代を描くには、この形、この展開が、やはり一番しっくりくる、 ということなのだろうか。
 壮大なる歴史活劇。愛と憎しみと勇気と心の、深く通い合う人間と人間のぶつかり 合い。血の繋がり、心の繋がり、想いの繋がり。それらを、時に胸に秘め、時にお おっぴらに謳歌し。愛する者を殺され強く生きると決めた女は、そして、その敵(か たき)の子を宿し慈しみ育てる。伝説が伝説を呼び、殺し合い殺され合いながら、世 は、平和を求めて移ろいゆく…。

 27日の大千穐楽を一緒に観た小僧は、開口一番、舞台セットに描かれた「一」の字 を見て「あのヘビ、何?」と言い放った。私には漢字の「一」に見えたのだが、なる ほど、神の化身とも言われるヘビの姿に見えなくもない。…真意を確かめてくれば良 かったな。

 今回の作品は、殺陣の素晴らしさがいちばんの見どころだったと言えよう。
 アクションクラブの物凄さを、まざまざと見せつけられた。動き、セリフ回し、そ して存在感。いや、もう、とにかく、その凄さが、超一流なのはもはや当然なのだ が、目の当たりにした時の圧倒感と衝撃は、たまらなく圧巻だった。例えば、前田さ んの青龍のシーンなどは、まるで某劇団☆新感線の舞台を観てるんじゃないかと思っ てしまうくらいクオリティの高いものだったし、武田さんの丹弦もしくは玄武の身の こなしは、素晴らしく面白く凄みもあり。家康役の田尻さん(あびこ幼稚園卒園児)の 重圧感、酒井家次役の船橋さんのスピード感、いずれも観ている者に強烈なインパク トを与えるものだった。そして、特筆すべきは、川原さん演じる白虎の圧倒的な凄 み。それについては、追々触れていこうと思うが…。
 殺陣指導にはもちろん、アクションクラブのみならずTeamAZURAもそれにあたり、 その他アクションや殺陣の経験者の方々も携わっていたことだろう。だが、経験の少 ない方々も含め、皆がお互いにその胸を借り、力を引き出してもらい、より質の高い ものを目指しているという心意気が、ガンガン伝わってきた。だからこそ、見応え十 分、なおかつ、圧倒的な感動を与えるシーンが、次々と生まれ魅せられていったのだ ろう。

 当然ながら、アクションだけでは作品は成り立たない。しっかりとした芝居があっ てこそ、物語は更なる魅力を発する。その点においても、誰も手を抜いてはいない。 紅一点であった朱雀役の水野裕子ちゃんは、お芝居は今まで避けるようにしてきたの だそうで、今回がほぼ初めての芝居、そして初めての舞台。しかし、赤雷役で2人の 重要なシーンを担ったケンケンは「ほんっといい子!!!」と大絶賛で、エチュードを 繰り返すようにして芝居を引き出してあげることで、より良くなっていったのだと か。
 また、台本協力にはIKKANさんの名もあったのだが、うん、むっちゃ分かりやす かったデス。忍者の訓練シーン、あれ、そうですよね、始まった途端に「あ、IKKAN さんのパート。」って分かりましたもん。もちろん、それが当然むちゃくちゃ面白く て。あ、忍者の定番“忍び足”は、決してNHKの「タイムスクープハンター」を見た ワケではなく、忍者事典みたいなのに載ってるのをやったということのようで。いや あ、1人でうきゃうきゃ喜んでたんだけどなあ。そして鈴鹿さん、忍者長で大活 躍!!!っつか、30-DELUXではそーゆー扱いなのね(爆)だって、大千穐楽での最後の カーテンコールの時、清水さんがキャスト1人ずつフルネームで紹介してんのに、 「鈴鹿森。」ってモモチ役の森さんと「2コ1。」にされちゃってたしー。あの絵も スッテキー♪小僧も「ハットリくんや!!!」って大喜びで、太陽の塔になっちゃった 20世紀少年な鈴鹿さんのイラストに、ケタケタ大笑いして見てたもんね。
 …ただ、何故だか、タイソンさんがほぼお笑い担当になってたのは…、ちょっと もったいなく感じたなあ。
 いや、しかし、オロチ役タイソンさん、モモチ役森さん、そして鷹丸役渡辺くんの 3人での芝居は、すっごく面白かった!!!とりわけ驚いたのが、渡辺くんのその声だっ た。「ウルトラマンメビウス」でのアミーゴ♪なジョージ役しか見てなかったけれど (『学園ヘヴン』での声の出演は、見逃したもので)こんなに通る声をしていたとは。 逆に、もったいなかったのは佐野さん。最後の2日間ということもあったのかもしれ ないが、ずいぶんと喉を痛めてしまっているように思えた。それでも、十分後方まで 聞こえる声ではあったのだけれど。武田さんも…若干。ただ、父を自らの手で殺め、 兄と慕う者を喪う鷹丸という役、前半の朗々とした明るさが魅力だったのに対し、ラ ストはあまりにも悲劇が重なり過ぎて辛かった…。
 そして、やっぱり、ナナシ役の清水さん。いや、正直に言うと、2年前に観た 『BLUE』での碧役が物凄く印象的で。今回、それを凌駕することは残念ながらなかっ た。しかし、メリハリのある声のトーン、動き、立ち回り、すべてにおいて、主役 だった。いや、立場上なのか主役は服部半蔵の佐野さんなのだそうだ。でも、作品の タイトルも『ナナシ』だし、ナナシが主役じゃ…ないの??

 さて。ケンケン。いや、斎藤健二さん。
 まず、最初。舞台上手(かみて)、松明の前、キリッと立つ姿を観た瞬間、…くっ、 と小さく声を上げてしまった。一気に胸を鷲掴みにされた、何かが込み上げてくるよ うな感覚。
 下手(しもて)から走り込んできてのセリフ、一瞬耳を疑った。ケンケンの声じゃな い!!役作りのために喉を潰したのかとさえ思った。だがそれは、後に登場する赤雷と の差別化を計るために、声色を変えてのものだと分かった。本人も、観ている人に同 じ人が演じているけど違う役だということを分かってもらうため、と話していた。そ れは、間違いなく成功していた。あ、そうだ。「小早川が寝返りました!!!」のセリ フに、ゆーちゃんを思い浮かべた馬鹿が1人。(いや、合ってるんだけどね。「天地 人」の世界では。)
 やっぱり、今回も、誰よりも高く跳び、誰よりも多く回り、キレのいい見事なアク ションを存分に見せてくれた。それはもう、いつも通り、期待通りの、ケンケンの姿 だった。
 そして、赤雷。
 …ものすごく、惜しい。思い出せば思い出すほど、惜しい。もっともっと、まわり が本気で妬く程の“愛しさ”が、もっともっと、欲しかった。まだ、足りない。…そ れは、何故か。「パパになった気分は?」って聞いた時、「なんかよくわかんなくっ て…。」って苦笑いしてた。それも理由の1つだろう。演出にも、もしかしたら物足 りなさがあったのかもしれない。(ああ、身長も足りなかった、明らかに足りなかっ た)だが、一番の理由は、そう、白虎の圧倒的なカッコ良さには敵わなかったから だ。川原さんの全身から発せられるオーラと、自らの背丈ほどもある錫の見事なさば き具合。そして、白虎の想いが痛いほどに伝わってくる表情、さらに目。朱雀が、心 惹かれてしまうのも無理はない、と思える説得力のある芝居に、まんまと持っていか れてしまっていたのではないか。
 確かに…くやしいくらいに優しくて愛らしくて、そのくせ立ち回りのキレも良くて 見事なアクロバットも魅せて、「斎藤健二、ここにあり!!!」な、赤雷だった。それ は、もう、紛れもない事実だし、期待通りの活躍だった。だが、同時に、まだまだこ んなもんじゃないだろ、とも思った。これで満足してませんから、って本人に言った ら、「もちろんですよ。まだまだやるよ、行きますよ。」って、勢いよく返事が返っ てきた。…目は合わせてはくれなかったけれど。ただ、間違いなく言えるのは、赤雷 の身のこなし、剣さばき、思いやり、どれを取っても、ここまでレベルを上げて演れ るのは、斎藤健二、この人をおいて他に誰もいない。それは明白。大手を振って断言 できる。だからこそ、だからこそ、なのだ。
 これが、正しい評価かどうかは、分からない。ただ自分が2回観て感じたすべて を、そのまま殴り書きしたに過ぎないのかもしれない。だが、気付いたんだ。私は、 愛する者には容赦はしない。手加減したくない。偉そうな言い草だけれど、それだ け、期待して、信じているから。だからこそ、なのだ。

 大千穐楽公演が終わり、劇場を後にした直後から、物凄い脱力感に襲われた。疲れ た…。と、震えが止まらない。どういう震え?その理由は?…なんだか、ふられたみた いな、もう会えないような、そんな気がして、それで、震えてる。やっぱり、もう、 これ以上、足を踏み込んではいけないんだ、って。手を伸ばしちゃいけない、って。 そんな気がした。突き放されたみたいな…。まただ。近づこうとすれば、近づいたと 思ったら、離れていく、こぼれていく。ああ、そうだ、まただ。…何を期待していた んだろう。身の程を知れ、ってことだ。わかってはいたつもりだけど、当たり前のこ とだけれど、改めて突きつけられると、どうしようもなく不安にかられて、立ち止 まってしまう。私は、何を、期待していたんだろう…。どうしても答えが出せないま ま、眠りにつき一晩経ち、目が覚めた瞬間、分かったんだ。私は…女になりたかった んだ、って。朱雀、いや、朱里ほどの修羅は、持ち合わせてはいない。自分1人で首 を絞めて、自分1人で耐えれば、それで済む話。だが、それでも…救いが欲しかっ た。ただの甘えだと言ってしまえば、それまでだ。でも…。でも、涙はこぼれなかっ た。肩に顔を埋めて、泣きそうにはなったけれど、決して泣かなかった。…泣けな かったんだ。
 私の修羅は、これからだ。

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