2008年

11月29日 (土)  

AKURO〜悪路
at 新神戸オリエンタル劇場

 まさに、期待を一切裏切らない、素晴らしさ!!!
 期待していた通りの、クオリティの高さ!!!
 見応え充分、これぞミュージカルの王道、さすが!!!

 ストーリーは、その昔、大和朝廷が東北地方を“侵略”しようとしていた頃、地の 民・蝦夷(エミシ)たちが隠れ里「鉄の谷」を守るべく、また未来のために、生き、 戦い、死んでゆく、歴史ロマン…。伝統芸能である鬼剣舞を取り入れ、東北言葉も織 り交ぜながら、“鬼”とは何か、“真実”とは何か、“平和”とは何かを、真っ向か ら問いかける、奥深い作品となっています。

 実は…。基本、ケンケン(斎藤健二くん)しか、観てません(^^ゞ
 群集で登場した時は、どこだ!!どれだ!!とキョロキョロして、無事見つけられたら ひたすら凝視。それでも、こっち跳んだりあっち跳ねたり縦横無尽に跳び回るから、 姿を追うのに必死。元々、役名すらない若手の1人。メインはエミシの役ですが、ラ ストの大立ち回りでは大和側の兵士だし。ダンス(剣舞)の時も、後ろ側にいること が多くて、誰かの陰に隠れてしまうことも多々。けれど、それは、全体を締める役割 を担っているからに他ならず…。
 まず目を引いたのが、そのアクロバットの美しさ。トランポリン選手だったことも あって、姿勢がとてもきれいなんです。他の出演者の皆さんも、基本的にアクション やアクロバットの出来る人たちで、でもその中でいちばん美しい姿で跳んでいたの は、紛れもなくケンケンでした。もちろん、高さもあります。まるでお猿さんみたい に、ピョンピョン飛び跳ねて走り回って、その姿も愛らしくて。…最初のセリフも、 甲高い雄叫びだったもんね。
 そして、芝居。アクション満載のミュージカルといえども、こちらの劇団は芝居を ものすごく大事にしているそうで、ある意味端役かもしれないケンケンも、肩の傾 き、手の流れ、ひとつひとつの表情や動きが意味深く、あの切ない思いがあふれた声 で「どうしたら…。」と叫んでいました。ちゃんと1人1人の役柄というものが確立さ れていて、それを大切に丁寧に演じる姿は、演劇としてもとても素晴らしいものでし た。
 もちろんミュージカルですから、歌も。ケンケンにソロはないので、はっきりと歌 声が聴こえたわけではありません。座席も後方でしたし。それでも、伝わってくるん です、みんなとの想いが、歌に乗せて。
 アクロバットとアクションと芝居と歌と、すべてケンケンが得意とするものばか り。しかも剣舞は、夢援隊Companyでずっとしてきたことでもあり、トランポリンを 使ったアクション指導にたずさわるという立場すらも、また同様で。それなのに、本 人はまだまだ完成度に不安や不満を抱きつつ、時間が足りないと言いながら、さらな る向上心を持って質を高めていくことに余念がなく…。
 心底胸を打たれました。そうでなくても、ものすごくものすごくカッコ良かったの に。泣きそうになるくらい、胸を鷲掴みにされそうなくらい、カッコ良かったのに。

 他の出演者についても、少し。
 やっぱり、神田沙也加ちゃん。この人、すごいと思います。お母さんの歌唱力とお 父さんの演技力、そのどちらも“良いところ”をしっかりと受け継いでいて。実は、 今一番印象に残っていたのが劇場版『さらば電王』でのソラ役で、今回の役であるア ケシが静かに歌いながらそぞろ歩くシーンなどは、どことなくソラを彷彿させて…。 そうでなくともミュージカルの出演が相次いでいて、いつの間に稽古したんだろうと 思うくらい、アケシ(静御前)を演じ切る姿は見事なものでした。
 鹿の精霊役、藤森真貴さん。バレエがものすごく神秘的で、美しく、一瞬にして目 を奪われて…。神の遣いという役柄を、洗練されたバレエで表現されていて、感嘆が もれるほどに素晴らしかったです。
 実は、このお2人の他は、すべて男性でした。前述の通り、皆、アクションやアク ロバットの基本がしっかりと身についている方々ばかりだったので、力強さやたくま しさと共に、肝を据えて観ていられました。怪我しないかという心配も感じながら、 でも、本番は見事な立ち回りを存分に見せつけてくれました。
 ラストの大立ち回りの際、高麿にアテルイが乗り移ったかのように見せる役者2人 のシンクロした殺陣は、演出としても見事でした。
 衣装やメイクでも役柄の区別をはっきりと現していて、物語に更なる理解度を深め ることが出来ていたと思います。
 もちろんミュージカルですから、基本は歌です。ですが、そのベースにはきちんと した芝居があり、ごくごく自然な流れで歌へと繋がる、その絶妙さも素晴らしいもの でした。

 音楽も、実は生バンドで。残念ながら、私の座席からその姿を見ることは出来な かったのですが、たった4人のメンバーで、ものすごく多くの音色を響かせていまし た。洋楽器から和楽器から、たくさんの種類の音が、物語を彩り、『AKURO』の世界 観を見事に包み込んでいました。

 舞台装置は、とても面白い仕掛けとなっていました。「鉄の谷」の名の通り、錆び た鉄と大きな刀を模したものはもちろんですが、中心に置かれた、傾斜のある大きな 四角いもう1つの舞台。これをぐるぐると回すことで、山となり丘となり谷となり屋 敷となり…。しかも装置の移動そのものを担うのも、役者達自身なのです。動かしな がら演じ、演じながら動かしていく。そこに、舞台ならではの“見立ての美学”を感 じ取ることが出来ました。

 本当に、本当に、皆、素敵でした。そして、カッコ良かった!!!  初日にもかかわらず、度重なるカーテンコールにスタンディングオベーション、そ して共に歌った「生まれ変わり/死に変わり」という歌のフレーズ…。すべてが、観 客席の本心から生まれた感動を、表していました。
 この場にいられたこと、この舞台を観られたこと、そして、私を此処へといざなっ てくれたあなたの存在に、深く深く感謝します。どうもありがとうございました…!!

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