股関節脱臼の予防 と 抱き方

 

股関節脱臼の予防には、股関節部で下肢の運動を制限しないことが必要です。

股関節脱臼を予防するために、 良い抱き方として “縦て抱き”、悪い方法として “横抱き”  を主張される意見があります。

股関節脱臼の予防には股関節部の自由な運動が必要とされ、縦て抱きは自由な運動が制限されないと主張されます。 横抱きでは制限すると主張されます。

このHPで解説しています正しい横抱きでも股関節の運動は立て抱きと同様に可能です。  

縦て抱きを勧めるHPで掲載されている乳児の姿勢を注意深く観察しますと、乳児の頭は後屈 (後方に垂れる) しています。 脊柱も後方に反り返り、左右にS字状の屈曲が見えます。  これは乳児に楽な姿勢ではありません。

乳児の楽な姿勢 (脊柱にネジレが無い 頭が後方に垂れない 頭から股関節までの脊柱は前方に緩くカーブしている) が保持されることが必要です。  縦て抱きでこの姿勢を保持することは至難です。 横抱きなら容易です。

縦て抱きで、乳児前半期 (0 〜 6ヶ月頃)  に留意が必要な体幹の前屈姿勢を保持するのは難しいと考えます。 

縦て抱きを推奨される意見では 乳児期の姿勢の成熟 (注を参照) が考慮されていないと考えます。

縦て抱きをされている乳児の写真を見ますと、乳児の臀部・股関節部は下方からの支えと母親側への押さえが働いています。  下肢の運動は抑制されています。

このHPで解説しています正しい横抱きでは、乳児の股関節部・下肢は保護者の腕の上で自由な動きが可能になっています。

正しい横抱きでは、縦て抱き以上に自由な運動が可能と考えます。

股関節脱臼の予防として、『横抱きは止めましょう』 とのキャンペーンには賛成できません。  

この解説でも “必要な時の縦て抱き” は止めていません。 短時間なら真っ直ぐ姿勢も許容しておきます。 外出時には横抱きを強く勧めます。

“楽な姿勢” と言う表現をしていますが、この姿勢は乳児に備わった脊柱の曲線を維持しているのです。

まとめ。

股関節脱臼の予防には股関節部で下肢の自由な運動が阻害されないことが必要。

乳児前半期には、乳児に楽な姿勢を守ることが必要。

この二点を守った抱き方が必要と考えます。 この二点を守るには、横抱きが勝ると考えます。

 乳児期の姿勢の成熟     他のコーナーにも掲載しています。

胎児の姿勢は家庭医学書等で図示されています。

頭から股関節までを腹側に丸くして丸まっています。 腰・膝を曲げて腹に近づけています。

生後には徐々に体幹を伸ばす姿勢に変化します。

頭から腰までを真っ直ぐに伸ばすのは六か月頃です。 完全に伸ばすのはつかまり立ちが出来る頃になります。

乳児を抱く時には、この姿勢の成熟に合わせた姿勢保持に留意が必要です。

時期に適しない真っ直ぐ姿勢は不健康で、乳児には苦しい姿勢となります。

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