家庭の医学  K-016   肺炎のなりかけ  家庭医学Top へ戻る
 
 よく聞く話です。 「肺炎のなりかけと診断され、五日間の抗生物質をもらってすっかり良くなりました」。 この話に疑問を抱きませんか。
 
‘肺炎のなりかけ’とはどのような病気でしょうか。 答えは簡単です。 そのような病気はありません。 敢えてたとえるなら、赤ちゃんに  ‘老人性痴呆症’ のなりかけと診断しているようなものです。 80年後の可能性は否定しません。 (例え話の真意を明確にするため、不適切な用語を使用しています)
 
‘高貴薬’ と言う言葉を聞いたことがありますか。 40年程以前には開業医院で渡される薬によくこのハンコが押されていました。 中身はたいていの場合は抗生物質でした。 抗生物質の薬価が高い時代に使われました。 患者はありがたく頂くというム−ドでした。
 
 さすがに時代が変わり高貴薬は無くなりましたが、風邪に抗生物質を多用することの後ろめたさを隠すために、‘肺炎のなりかけ’という病気が作り出されたようです。
 
 最近EBM、エビデンス・ベ−スド・メディシンと言う言葉を耳にされることがあるでしょう。 ‘事実に基づいた医療’が必要と叫ばれているのです。
 
 EBMを推進しようという時代に‘肺炎のなりかけ’はナンセンスです。
 
 風邪の治療で短時日で症状が消退しない時に、この診断をしておくと患者には納得される、不信感を起こさせないといったメリットもあります。
 
 本来はこの話題は医者に聞かせる話でしょうが、患者の側にもこの診断に安心を感じる側面もあります。
 
 今回、この話を書いたのは診療室での会話は科学的に進めたいとの提案です。 第一には医者が実践すべきことです。 しかし医学的に真実で進めていくと患者に信頼されない一面があることも知ってほしいとの話題提供です。
 
【医者の意見】4 に書きました‘のどが腫れています’の会話も同じ次元です。 こちらも読んでください。

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