育児指導の具体例 E   不安を持つ保護者へ    05

[症例] ○ 通過点を飛ばした発達をしています

 通過点を飛ばしても、次の通過点にさしかかっている乳児の場合、「大丈夫でしょう」 と説明する医師も居ります。

 この HP では今後の発達を考慮して、『確実に通過点を獲得するのが良き育児』 と説明しています。

 通過点を飛ばした発達をする乳児をもたれる保護者に問いますと、この HP で推奨している育児法を採用されていない症例が多数です。

 ○ 四ヶ月未満での縦て抱きはしない  ○ 二ヶ月頃からうつ伏せの時間を多くする  ○ 自力でお座りの出来るまで、お座りを極力させない  等の注意です。

 この HP では、 ヒトの運動発達は 「運動機能の成熟は・頭側から尾側へ・中心から末梢へ・尺側からトウ側に向かう」 との原則に従っていると他のコーナーで説明しています。   (注 起立して手のひらを前面に向けます。 この時に上肢の親指側をトウ側、小指側を尺側と表現します。)

 上の注意を守って育児をされるなら、この原則に準じた発達が自然に進みます。

 3〜4ヶ月頃には首・肩の部位まで発達が進んで頭を持ち上げることが可能となります。 4ヶ月を過ぎると肩・上肢と胸部の発達が進み肘支持が可能となります。 この頃には肘支持の姿勢で一側に重心を移し、前方にある玩具に手を伸ばせるようになります。 この動作を繰り返すうちに寝返りが可能となります。

 6ヶ月頃には、成熟は腹部を超えて腰部に近づきます。 重力に打ちかってさらに高く上体を持ち上げようとします。 肘支持から手支持に進みます。

 7〜9ヶ月頃には、骨盤の周囲筋群も成熟し、手と膝を接地点として上半身を持ち上げた姿勢の獲得から、 “四つ這い” も可能となります。

 10〜12ヶ月ころには、成熟はゴール地点の足に達します。 前半で、つかまり立ちを獲得し、立位でも体重を支えることが可能となります。 後半では二足で立ち、バランスをとる能力を得て歩行が可能となります。

 この説明では、床に寝転んでの発達を説明しました。 骨盤まで成熟した時に骨盤で上半身を、足先まで成熟した時に全身を支える力が備わります。

 うつ伏せ姿勢で重力に抗して体の一部分を支えようとする力が備わります。 4ヶ月頃に頭を、4ヶ月を過ぎて上半身を、6ヶ月で腹部から上位の体幹を、7ヶ月には手と膝を支点にして頭から体幹 (腰部より上位) までを重力に抗して持ち上げる力を蓄えます。

 この HP では、運動発達の通過点を確実に経由した発達こそが最も健康的と考えています。

 先の注意を守った育児の重要性を知ってださい。 そして、通過点を飛ばした原因がここにあることも受け入れてください。 

 注意点を厳守したにもかかわらず、通過点を飛ばした場合は下段の追加説明を読んでください。

 注意事項を知らずに育児して、違う育児法を採用された保護者へ。

 上の説明を受け入れて、標準の経路に戻る努力を勧めます。

 他の不安例でも説明していますが、確実に通過した時点まで戻って再スタートする育児が必要です。

 共通する事項はうつ伏せの時間を多くすることです。 極力仰向けを避け、お座りはそれ以上に避けることです。

 具体的な努力目標は、他の事例で知ってください。

 育児の注意点を厳守しても、変な経路をたどる症例はあります。 実数調査は知りませんが、経験からすると一割近くの乳児には見られるようです。

 この場合にもうつ伏せ姿勢をさらに徹底して、通過点を確実に通過させる努力は必要と考えます。 努力の成果は必ず得られるはずです。

 肘支持・手支持を獲得する課程で、重力に抗する力を関知して “手の握り” を獲得するのに必要な機能を成熟させます。

 ヒトには二足歩行と握り機能を介して器用さを獲得できました。 現代の育児では、手の機能を損なう育児が進んでいるとの危惧があります。

 この一割にも、注意点を厳守されない症例は含まれると推測します。 過去の育児については、保護者の報告を信じるしかないのです。 信頼されて問いただせば、間違い箇所が判明した症例も経験しています。 もう一度、厳密を重視して振り返ってください。

 豊富な治療経験を持つ作業療法士しから寄せられたメッセージを紹介します。 (一部省略、全文は他で紹介)

 近頃、若いひとに変なペンの持ち方・変なお箸の持ち方が目立ちます。 この方々に確認しますと、乳児期に四つ這いしないでお座りしてから立って歩いたと話す方が多数でした。 このような方々の中には肩こりや腰痛に悩まされている方もおられました。

 現代のこの便利な世の中を築き上げて来ている人間の手の機能はすべての生物の進化の賜物と考えられます。

 人間が進化のなかで獲得してきた機能は、一年の歳月をかけて肘支持・寝返り・手支持・四つ這い・独りで座る・つかまり立ちを完成させます。 それぞれが運動発達の原則に基づいて獲得されていること、しかも視覚の発達とつながりあっていることがとても興味深くかんじられました。

 この基本の原則に沿った経路をたどっていくことが “手先の器用な子ども” の発達にも繋がっていくことと思われます。

 このコーナーの全てを読まれると不安も小さくなり、改善点・努力目標も判るでしょう。

 しかし、今までの検診に不安が残る保護者、不安が解消出来なかった保護者には、セカンド・オピニオンを求めて専門医療機関の受診を勧めます。

 運動発達について信頼できる検診を望まれるなら、運動発達専門医療機関を受診してください。

 運動発達専門医療機関についてはメニューから 運動発達専門医療機関 を選んで、説明を読んでください。

このコーナーの目次  

   紹介した事例と不安が一致した方は、まとめ のコーナーに進んでください。 → まとめ

   この事例が合わない場合には、次の紹介例から選んでください。

  @ 症例−1 反り返りが強い  A 症例−2 肘支持が遅れている  B 症例−3 お座りが出来ない  C 症例−4 手支持が出来ない・四つ這いが遅れている   D 症例−5 通過点を飛ばした発達をしている  E 症例−6 通過点を速く通過している  F 発達遅れに共通する原因

   案内ページに戻ります。  案内ページ 

  

     管理データー  Undou_SMAHO  09-FUANKAISHO_Jirei  Fuan_JIREI-05