育児指導の具体例 D 不安を持つ保護者へ 04
[症例] ○ 8ヶ月を過ぎても上腕を伸ばした支持ができない
○ 10ヶ月を過ぎても四つ這いをしない
この二つの不安では、共通する原因として、六〜七ヶ月相当と考える手支持 (写真−C) が獲得できていないと考えます。
8ヶ月・10ヶ月を過ぎての相談ですから、肘支持は可能なはずです。 ごくまれに、肘支持も未熟であった症例を経験しています。
肘支持 (写真−B) が可能であることを最初に確認します。 写真-B と比較して、同じ姿勢が出来ますか。 肘を床に接する地点が肩より前になっていますか。 頭をシッカリと持ち上げていますか。
写真の左が肘支持、右が手支持です。
早期に保護者がお座りの強制をしたり、うつ伏せの保育時間が短いと、肘支持を確実に成熟させないままに次のステップに進むことがあります。
肘支持が完成している場合には、手支持 (写真−C) は出来ますか。 チェック・ポイントは上肢をシッカリと伸ばしていること、 手の接地地点が肩より前で肩の幅より広いこと、 手を開いて床に接していることです。
今までの相談例では、○ 手支持が出来ない ○ 肘支持が不完全 の場合が殆どでした。
厳密に観察されて、手支持が完全でないことを気づかれたはずです。 なかには、肘支持も完全でなかったと気づかれた保護者も居られるはずです。
標準の発達過程に戻す方策は、肘支持の完成・手支持の完成を目指すことにあります。 そのためには、うつ伏せ姿勢での生活時間を増やすこと、目覚めている時間帯の全てをうつ伏せで遊ばせる事です。
言い換えれば、五ヶ月頃を想定して、この時期に獲得すべき事項を充分に経験させることを目的にすべきと考えます。 肘支持も完全でない乳児・手支持が出来ない乳児の両方に有効な目的です。
具体的には、@ 目覚めている時間帯の殆どをうつ伏せ姿勢で過ごさせる A 上肢を伸ばして支持をしたいと欲するモチベーションを高める に配慮した育児です。 付け加えるなら、乳児にうつ伏せを楽しませる気持ちを起こさせる努力も加えて欲しいと望みます。
保護者が傍らで遊べる時には並列で大人も寝転んで相手をします。 また頭をつきあわせる対面の位置で呼びかけをする遊びをしてください。 保護者もうつぶせの姿勢です。 四つ這い移動を見せるのも良いでしょう。 乳児の手に触れることも役立ちます。
A
については、次の様なアドバイスが考えられます。ママがキッチンで食事の準備をするとき
150〜200 cm 以上を離して、後でうつ伏せにし、声かけと振り返って子どもの顔を見る動作も交えて仕事をしてください。 子どもは声の聞こえる上前方を注視しようと顔を挙げます。 楽に上前方を見ようと腕を伸ばして見上げたいと望みます。保護者がテーブルで作業をしている時、団欒をしている時にも、本人は床にうつ伏せにして上から声かけする様にしてください。 子どもの視線は斜め上方にするような配慮です。 離乳食を先に済ませ、保護者が食事をしたり団欒する時にも、同様です。
ママの顔・口から見えない糸を出して子供の頭に結びつけて引き寄せる、引き上げる気持ちです。 顔は表情の変化であり、口とは声かけです。
屋内に階段 (4〜5段で充分) があれば、階段で遊ばせてください。 “前に進みたい”・“上に登りたい” の一念で手足の動かし方を会得します。 これが四つ這いにつながります。 近くのお寺の本堂にある階段も格好の遊び場です。 (この方法は手支持がほぼ完成した頃から、四つ這いを促進する手法です。)
半段階・一段階後戻りし、再スタートをするのが良いでしょう。
歩き始めた後で、歩き方が変・他の幼児と比べて転びやすい、振り返ってみると四つ這いの経験が少なかったと気づかれる場合があります。
この様な場合にも、階段遊びは有効です。 試してください。
手支持が出来ている乳児を仰向け姿勢で遊ばせてみてください。
手で足指に触れて手足で遊ぶ情景が見られるようになります。 足指を口に持ってゆく光景も見られます。 この時にオシリが床からわずかに持ち上げられています。
オシリが持ち上がっている事は、運動発達を知る医師・理学療法士等が、寝返りを果たす条件とし、次に続く四つ這いへの経路に到着した証拠と見なしています。
“四つ這い姿勢の獲得” と “四つ這い移動” の二段階で理解してください。 前者が可能になった乳児は短時日で後者も可能となります。
四つ這い移動が乳児の発達で重要な移動手段であることは、色々な解説書に説明されています。 長い期間に経験させたい運動です。
育児に際しては、 “四つ這い移動” と “つかまり立ち” の間に長い期間をおく努力が必要となります。 このためにも、乳児の周辺からつかまり立ちに利用できる箱・家具を遠ざけてください。
このコーナーの全てを読まれると不安も小さくなり、改善点・努力目標も判るでしょう。
しかし、今までの検診に不安が残る保護者、不安が解消出来なかった保護者には、セカンド・オピニオンを求めて専門医療機関の受診を勧めます。
運動発達について信頼できる検診を望まれるなら、運動発達専門医療機関を受診してください。
運動発達専門医療機関についてはメニューから 運動発達専門医療機関 を選んで、説明を読んでください。
このコーナーの目次
紹介した事例と不安が一致した方は、まとめ のコーナーに進んでください。 → まとめ
この事例が合わない場合には、次の紹介例から選んでください。
@ 症例−1 反り返りが強い A 症例−2 肘支持が遅れている B 症例−3 お座りが出来ない C 症例−4 手支持が出来ない・四つ這いが遅れている D 症例−5 通過点を飛ばした発達をしている E 症例−6 通過点を速く通過している F 発達遅れに共通する原因
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