育児指導の具体例 B 02
[症例] ○ 5ヶ月を過ぎても、HP に説明されている肘支持が出来ません
○ 7ヶ月を過ぎても寝返りが出来ません
寝返りは、標準として 5〜6ヶ月頃に獲得するとされています。
時々、「三ヶ月で寝返りが出来ました」 と話される保護者に出会いますが、こちらは偶然に “ひっくり返った” の状況です。
理学療法士は仰向けからうつ伏せへの寝返りが出来る条件として 四点を取り上げますが、保護者が容易に観察出来る二点を取り上げておきます。 @ からだの正中線を越えて手をのばせる A 両下肢を左右対称性に屈曲して腹部にひきつけられる (膝関節部がヘソに近づけられる) が必要条件となります。
うつぶせ姿勢で、肘支持が確実にできます。 片側に重心を移し、前方にある玩具に手を伸ばせるようになります。
この様な状態まで成熟すると寝返りが可能となります。 寝返りをするためには、 肘支持が必要条件です。
逆に、寝返りの出来ない乳児では、上に説明した条件が満たされていません。
今回の相談を寄せられる保護者、診察室の経験で、四ヶ月頃までうつぶせ育児が出来ていない乳児が多くいました。 「うつぶせを嫌がるから、うつぶせはさせなかった」 と話される保護者にも多く出会いました。 この様な乳児では肘支持も不可能です。
改善へのアドバイスとしては、肘支持を獲得させる育児が必要です。 うつ伏せ時間を多くした育児に早く変更することです。
乳児に目的を説明して協力させることは不可能です。 日常の育児で改善を図る以外に方策はありません。
再スタート地点は “獲得できていない要素の直前” と決めてください。 三ヶ月以前を想定してください。
再スタートをすると決心して、日中で目覚めている時の大半をうつぶせで過ごさせる一大決心が必要です。
うつ伏せに慣れさせて、肘支持を会得させる必要があります。 生後2〜3ヶ月からの再スタートです。
泣いてうつ伏せ姿勢を嫌う乳児なら、【育児の広場】・[赤ちゃんは泣かしましょう] を参照してください。
これ以外に方策は無いのですから、一大決心をしてください。
保護者が傍らで遊べる時には並列で うつ伏せ姿勢で相手をします。 また頭をつきあわせる対面の位置で呼びかけをする遊びをしてください。 声かけを続けて注意力を持続させる努力もしてください。
家事のために乳児の傍を離れる時には、離れた位置から声かけを続け、時々には顔を見て保護者の笑顔を見せてください。
声をかけられ、表情の変化する保護者を見て、興味は高まるはずです。 (注参照)
これでモチベーションを高め、継続させる努力が実行出来ます。
保護者が離れても、乳児としての探求心で、物を探す欲求は持続します。
七ヶ月乳児を二〜三ヶ月児として扱いますが、軌道に乗せれば短期間で遅れは取り戻せます。
「肘支持が出来ません」 との相談にも、このアドバイスが有用です。
この様なアドバイスを届けた相談者からは、「少し手助けをしただけで、こんなに変化することに驚きました!」 と感動の返信を受け取ります。
注 0〜6ヶ月の乳児期でも、視野には落ち着く色彩と適度な量の刺激に限るべきです。 耳には心地よい音を、乳児に心地よい音は保護者の声と云われています。
このコーナーの全てを読まれると不安も小さくなり、改善点・努力目標も判るでしょう。
しかし、今までの検診に不安が残る保護者、不安が解消出来なかった保護者には、セカンド・オピニオンを求めて専門医療機関の受診を勧めます。
運動発達について信頼できる検診を望まれるなら、運動発達専門医療機関を受診してください。
運動発達専門医療機関についてはメニューから 運動発達専門医療機関 を選んで、説明を読んでください。
このコーナーの目次
紹介した事例と不安が一致した方は、まとめ のコーナーに進んでください。 → まとめ
この事例が合わない場合には、次の紹介例から選んでください。
@ 症例−1 反り返りが強い A 症例−2 肘支持が遅れている B 症例−3 お座りが出来ない C 症例−4 手支持が出来ない・四つ這いが遅れている D 症例−5 通過点を飛ばした発達をしている E 症例−6 通過点を速く通過している F 発達遅れに共通する原因
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