一歳迄の発達 G まとめ  

少したとえ話をしましょう。

 御陵に出かける機会があります。 230段の石段があります。 23段の階段に続いて一段の奥行きの四倍の平坦部 (休憩場所) が設けられ、この組み合わせが10回も繰り返す構造です。

 平坦部を発達の マイルストーン と考え、石段を平坦部に達するための要素と考えてください。 “首座り” の マイルストーン に達するために、骨の強化・首周辺にある筋肉の強化・靱帯の強化が要素と考えられます。

 各要素を積み上げて “首座り” を獲得すると、しばらくはこの姿勢を成熟させる為に時間を費やします。 階段の平坦部です。 しばらくの成熟期間を過ぎると次の要素を獲得する石段を登ります。

この繰り返しで歩行の獲得へ進みます。

 このたとえ話から各種の マイルストーン を獲得するのには全ての石段と平坦部を順次に経過する必要性を理解出来るでしょう。 飛び越えての昇段は乳児には不可能です。 このたとえ話と誕生から一年間の発達経過を重ねてください。 

 このHP では、標準のルートを標準のスピードで進ませるのが最善と説明しています。 標準でないルートは階段横の崖部に相当するでしょう。 早いスピードは駆け足で登り始めて途中で息切れするのに当たるでしょう。

このコーナーは理学療法士から届いた原稿を基に作成しています。 原稿と共に、次の様なメッセージも寄せられました。

 近頃、若いひとに変なペンの持ち方・変なお箸の持ち方が目立ちます。 この方々に確認しますと、乳児期に四つ這いしないでお座りしてから立って歩いたと話す方が多数でした。 このような方々の中には肩こりや腰痛に悩まされている方もおられました。

 今回は 「どうして肘支持と四つ這いが大切なのか」 を念頭に置いて乳幼児の運動発達について整理してみました。

 肘支持について; 3ケ月頃からの “動き” の獲得には肘支持が大切な役割を担っていると考えられます。

 “動き” の獲得で、重心の移動が自然におこなわれていると支持力は更に高まり、重力に打ちかって頭を持ち上げようとする肩周囲の筋群の働きがさらに高まり中心部分の土台が築かれ、頭側の発達が保障されるようです。

 四つ這いについて; 7〜9ケ月頃に可能となる四つ這いにより、四肢の機能がたかまり、上体が床から離れて水平面上に持ち上げられること。 視野では、形や奥行きのある空間世界の拡がりへと繋って行くようです。 また、四肢に交互に同じ力がかかる調和のとれた四つ這いには、力がかかる側の肩周辺と手の筋肉群の働きがたかまり、手の親指側への負荷が増して周辺の筋群のはたらきを促します。 下肢の働きも対側性に骨盤周辺に同様の効果が働きます。 このようにしてゲゼルの原則に基づいた 「頭側から尾側」「中心から末梢」「尺側からトウ側」 へと発達が進み、より効率的な手の使い方が獲得されていくようです。

 現代のこの便利な世の中を築き上げて来ている人間の手の機能はすべての生物の進化の賜物と考えられます。

 そして、人間が進化のなかで獲得してきた機能は、一年の歳月をかけて肘支持・寝返り・手支持・四つ這い・独りで座る・つかまり立ちを完成させます。 それぞれが運動発達の原則に基づいて獲得されていること、しかも視覚の発達とつながりあっていることがとても興味深くかんじられました。

 この基本の原則に沿った経路をたどっていくことが “手先の器用な子ども” の発達にも繋がっていくことと思われます。

子供の健康からのコメントも追加します。

 今回の説明では、標準の運動発達を理解するのに貴重なヒントが説明されています。 粗大運動と微細運動の発達は土台となる身体の機能の成熟と密接に関連して同時進行している事実が判ります。

 手の器用さを獲得するためにも、標準の姿勢発達を確実に順序よく成熟させることが必要と判ります。

 進化の過程を考える時、手の握る機能が二足歩行 (ヒトの歩行) の確立にはたす役割もあると考えます。

 四足歩行の動物が立位に進化する時、道具の上に上肢を置いて支える際にも “握る” が必要です。 握る機能が無ければ支点が移動して起立は容易に出来ません。 サルが木にぶら下がる光景から、ぶら下がる機能も立位への進化にりようされたと想像できます。 ここでも “握る” が必要です。

 手の平 (手掌) への刺激、重力に抗した力、・・・の説明にもあるように、運動発達の神秘に驚かされます。

 ヒトが立位に耐えられる準備が完成する 7〜9ヶ月頃 (四つ這い姿勢の確立時) までは臥位が基本であることを受け入れてください。

 繰り返しますが、発達の原理・進化の意義が組み合わされて、発達はコントロールされています。 基本・原則を守った育児指導に正当性があると考えます。

目次 一歳までの運動発達   

@ 6週までの発達  A 2ヶ月頃までの発達  B 3ヶ月頃までの発達  C 4ヶ月頃までの発達

D 6ヶ月頃までの発達  E 7 〜 9ヶ月頃までの発達  F 一歳頃までの発達  G  コーナーのまとめ

  一歳までの発達の説明を読みましたか。 飛ばしたページがあれば、ここで読み終えてください。

  全てを読まれた方は、次の解説コーナー C 粗大運動の説明 へ進んでください。

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