論説・解説・主張  【医療Newsの解説】 新型インフルの診断で三割の誤診  2010/07/03
 

  読売新聞on line Newsで次のようなNewsが報じられました。 (2010 06171525分)

 『国立感染症研究所などの研究チームは昨年9月~12月、兵庫県内の私立病院で発熱などの症状からインフルエンザ感染が疑われると診断された患者計129人に遺伝子検査をした。その結果、91人(71%)は実際に新型インフルエンザにかかっていたが、38人は新型ではなかった。

 38人は季節性インフルエンザにも感染していなかった。

 新型インフルエンザの流行時に採用された治療指針では、簡易検査で新型と判明しなくても、症状や周囲の感染状況を見て、新型に感染したと判断すれば、タミフルやリレンザなどの治療薬を処方するとされていました。』 (記事は、当HPで要約しています。)

 今回の調査グループで、誤診された38人の患者で簡易検査が実施されていたか否かは、記事には説明されていません。

 現場では症状のみでインフルを確実に診断するのは難しい作業です。 

 一方でインフルに感染していなかった38人(29%) の患者で必要のない抗ウイルス剤が投薬されていたことになります。

 新型インフルの流行時に用意された治療指針は、当然のこととして誤診は無いとの想定でした。

 欧米各国と比較し、我が国でタミフル・リレンザの投与機会異常に多いと統計調査で判明しています。

 誤診例にも投与されている実態を証明した調査報告です。

 治療指針の作成には慎重な検討が必要と考えます。

 誤診を報じるには少ないサンプル数との批判が聞かれそうです。

 権威ある研究機関が調査した結果であり、権威ある学会に報告されますから、無視できない現状が露見したと判断できます。

 今回の調査対象は129名と少ないグループでした。 しかし、傾向として参考に出来る調査です。 年間のインフル患者数は1万人とされています。 

 参考 政治に関する世論調査が頻回に行われてます。 現在の総有権者数は一億人を越えています。 マスコミが実施する政治世論調査は有効回答数約1000人で実施されています。 対象数とサンプル数で今回の調査と世論調査を比較すると、100/10000 (インフル調査)、1000/100000000(世論調査) となります。 サンプル比率を比較し、統計的には有効な調査と受け止めてください。

 このNewsには大きな問題が二つあります。 ① 誤診が29%もあった ② インフル感染でなかった患者 (誤診された患者) に抗ウィルス剤が投与されていた

 ① 詳しくは説明しませんが、ウイルス感染症の短時間での診断は難しい問題です。

 ② 現時点で、タミフルと異常行動の関連については解明されていません。 子供への投与には制限が設けられています。

 この二点については医療者が検討すべき課題であって、患者側の問題ではありません。

 しかし、09年の診療現場で 「感染は疑われますが、タミフルの投与は後日に判断します」 と聞かされたら、皆さんはどの様な行動を取りますか。 新型インフルの治療現場で 「タミフルを投与してください」 との患者の強い希望があったと聞いています。

 子供の健康 からの意見  2009 の新型インフルは新しい感染症で、医療関係者には未経験の問題が多くあったことは否定できません。 後日に判明した事ですが、ウィルスのタイプとしては A 群に類似するものとされました。

 今までに流行したインフル・ウィルスと類似したタイプで 30% の誤診があったのは困ります。 毎年の流行期の診断の制度にも疑問を感じます。 

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