論説・解説・主張  【医療Newsの解説】 抗インフル薬は胎児に悪影響無いのか  2011/01/01 
 

  日本産婦人科学会は 201011月に『妊産婦への抗インフルエンザウイルス薬投与』についての調査結果を公表しています。

 調査は 163名の妊産婦に投与した結果を検討しています。

 この結果をマスコミは “抗インフル薬、胎児に悪影響なし”・“抗インフル薬、妊婦に推奨継続=胎児に副作用なし” とのタイトルで報道しています。 (読売新聞 on line News、時事通信 on line News)

 日本産婦人科学会は147名の調査でこの様に判断し、マスコミは日本産婦人科学会のコメントを伝えています。 皆さんはマスコミ記事から『妊娠中も安心して抗インフルエンザウイルス薬を服用できる』と受け取られるでしょう。

 一方で、タミフルの添付文書には次のような注意が書かれています。 (添付文書とは厚労省が認可した薬剤の使用説明書です。 医師はこのガイドラインに沿って処方しています。)

 「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]」と記されています。

 科学の本質として、常に新しい事実を探求し、得られた結果が正しいと判断されるなら、新しい情報を提供する事は必要です。 しかし、今回の調査が147名の少数で実施された結果からの判断です。 日本産婦人科学会は以前から妊産婦にも積極的に抗インフルエンザウイルス薬を投与することを勧めてきました。

 産婦人科学会が抗インフルエンザ薬が妊婦にも安全と考えるなら、薬剤の使用説明書の変更を厚労省に求めるのが先決です。

 研究機関付属の病院では日本産婦人科学会の方針に賛成して投与する機会も多くなるでしょう。 市中の医療機関では添付文書のガイドラインを重視した治療が優先されるはずです。

 治療は担当医の判断で進められますが、患者の希望も参考にされる場合が多くあります。

 日本産婦人科学会の方針も公表されていますが、添付文書を改定する機運は伺えません。 妊産婦への投与を慎重にすべきとの注意は削除されません。

 皆さんも現状を正確に読み取る必要を感じてください。

   管理データー  04