昔の教授講義記録 元に戻る(to Index)
医療では禁句・行ってはダメな行動が多々あります。 これらは医学教育で将来に医道を目指す学生に伝授されます。 科学の根底にある原理感も話されます。
この様な医学部教育の中から、筆者が経験した数件を紹介します。 時代に即さない表現、不適切な表現も含まれますが、そこにある真意は現代でも必要と考えて記述します。
《必要なら患者に酒を勧めます》
教授は末期がんの患者を想定して。 患者が固形物の摂食が困難となった時に、「何か食べたい」 と訴えたときに君たちならどのような行動を取るか、との問いかけでした。
教授は学生からいろいろな意見を聞いた後に話されました。
患者は流動食しか口が通らない状態です。 それでも食べたいとの食欲を訴える末期がん患者です。 初期状態なら口から食事もと取れ、一方では食事指導として禁酒は強く指示していました。 末期の段階でも禁酒は必要でしょうか。 医師として禁酒は治療のために必要としても末期がん患者の栄養補給としてアルコールを栄養源と考えるのも一考と考えませんか。 私なら飲酒も認めます、との話でした。
治療は優先で、飲酒の食事指導も不可欠です。 しかし、臨機応変に患者の状況に治療も合わせる事も選択すべきとの教えとして受け取りました。
医者も患者となった時、主治医の指導は守りますが、少しの脱線は行っています。
“ホスピス” の概念が紹介される以前の時代でした。
「科学の場で、ゼロは証明できない。」
医学部教育は基礎系と臨床系に大別されています。 この話題は基礎系の教授から聞きました。 純粋な科学論です。 ヒトの生命活動は多種で複雑です。 周囲から加わる影響も万人に共通はしていません。 試験管で研究する場でも、実験に影響を及ぼす環境を完全に一定に保つ事は難題です。
この環境で、上の提言を実行するのが医学です。 医学で上の提言に該当する例を書きます。
ワクチンは研究室で副作用の出ないように製剤されて届けられます。 しかし、接種すると副反応は消去されていません。 提言が該当しています。
通常の治療薬剤でも副反応が無いように努力されていますが、ゼロには達していません。
医療ではゼロを目指していますが、ゼロへの到達は難題です。
この提言を忘れずに細心の注意を持って患者に接する姿勢を説かれた講話でした。
ここで二つの講話を取り上げました。
複雑で受け取り様では真逆に解釈出来る場面も現れそうです。
医療の現場でこの二話が軽視されている場も見かけ、経験しています。
患者さんと接する場面で謙虚になれない過信、脅かして治療指導をする医者、この人たちに上の二話を聞かせたいものです。
管理データー outou_kowa_20250115