人工内耳友の会−東海−
装用記

「いくおーる」誌 人工内耳NEWS15 より
            小野寺正孝さん(宮城県)

(平成10年9月6日福島市で行われた人工内耳相談会で発表されたものです。)

 小野寺正孝と申します。昨年9月に人工内耳の手術をしまして、現在充実した日々を送っております。

 失聴経過は劇的ではなく非常に穏やかにそして確実に失聴の日が近づいてまいりました。平成2年8月、急に激しい「めまい」「耳鳴り」「嘔吐」に襲われました。診断の結果は『メニエル氏病による両側性感音性難聴』でありました。この日からが、私の「難聴生活」と「メニエル氏病」との戦いの始まりでした。進行性難聴がゆえに、年々聴力は低下し、メニエル氏病は改善されず、将来が不安で『死へあこがれた時期』もありました。

 聴力が改善されないものかと病院を転々としました。どこの病院でも一様に、聴力改善は見込まれないとのこと、余儀なく補聴器の生活となりました。補聴器も次々と買い求め、完全失聴まで7台の補聴器を使用してみましたが言葉を明瞭に理解することができませんでした。30歳台の働き盛りで、会社では責任が重くストレスなど多い毎日であり、妻子を抱え生活がかかっていましたからそれはもう必死でした。

 平成9年6月、勤務中『激しい耳鳴り』とともに、音の世界と決別しました。『何も聞こえない』恐怖と前途への不安・家庭・家族・生計・仕事そんなことが頭の中を繰り返し堂々巡りするばかりでした。そんなときに、T病院耳鼻咽喉科O先生より聴力の改善は見込まれないが『人工内耳』の埋め込み手術をすれば若干ではあるが、聴覚を再獲得できますよと筆談されました時、藁にもすがる思いで手術をお願いしました。

 入院までの約2カ月の間、会社を休職しました。その間に身体障害者手帳の申請・厚生医療給付の申請・重度身体障害者医療受給の申請そして、MRI・CTなどの検査を行いました。また、人工内耳についての説明そして装用者の合同リハビリテーソョンの見学、装用者の方々とお会いする機会に恵まれました。手術に対する不安が解消され、平成9年9月に入院、手術までは心理テスト・読話テストなどがありました。

 手術の前日には人工内耳を埋め込む側頭部の毛を大きく剃らなければなりません。手術は9月10日午後からでした。全身麻酔ですので手術中の痛みは全くありませんでした。手術時間は約4時間。私の場合、麻酔から醒めた時少々気持ち悪い程度で術後3日間の絶対安静と尿道に管がセットされている以外はさほど苦痛ではありませんでした。

 『音入れ』の前日は、期待と不安で、気分が高揚し眠れませんでした。9月25日待望の『音入れ』の日、電極を、一極・一極設定するので時間がかかりましたが、電極全部使用可能とのことでした。コンピュータのスイッチを入れると同時にバローン・バローンというような音の後に突然(オ・ノ・デ・ラ・サ・ン)との声が、失聴前同様に聞こえてきました。そして妻が(オ・ト・ウ・サ・ン・ホ・ン・ト・ウ・ニ・キ・コ・エ・ル・ノ)との言葉もはっきり聞こえていきました。完全失聴期間105日であったが感無量でした。本来なら失聴したまま生涯を終えるはずだった私が「医学の進歩」そして「エレクトロニクス」により開発された『人工内耳』の恩恵にただただ感謝しました。

 私は、この一年間自分のプライドを捨てて病院・自宅・会社などでリハビリしてまいりました。現在思いますことは、やはりプライドを捨てて努力しなければならないと言うことです。病院でのリハビリは、言語療法士の指導のもとで月に1〜2回通院致しました。

 自宅・会社でのリハビリは
1‥筆談は一切しない
2‥聞こえない時は何度でもきく
3‥自宅では、妻・子どもの言ったことを復唱する
4‥会合・会議・集会などは、積極的に参加する
5‥苦手な言葉は、メモを取り家族・友人に訓練してもらう

 以上5点を重点課題として努力し、現在では90%位の会話は理解できるようになりました。電話ですが、初めは相手が誰であるのか又、話の内容が理解できませんでした。そこで、自宅・会社の内線電話を利用して訓練し1カ月位目より、ゆっくり話していただければ理解できるようになり、現在では通常の口調での電話の会話も理解でき、携帯電話使用も可能となりました。テレビですがニュースを見ることから始めました。アナウンサーが早口の為なかなか理解できず、6カ月位でやっと理解できるようになりました。

 今後の課題についてですが、よく聴力障害者について『一次障害』(聞こえないこと)によって『二次障害』(コミュニケーションの不足)が起き、『三次障害』(社会生活の適応力がなくなる)を誘発することがあると言われます。つまり情報不足が不信を生み社会生活の常識から外れた行動をとったり、ひいては付き合いづらい人物になって、孤立するようなことが起きます。『人工内耳』で、少しでも聞こえることでこうした弊害から解放された意味は大きいと思います。単に、日常生活が便利になったという以上に、人生の生き方の方向に関わってくると思います。

  『人工内耳』この大きな福音を、1人でも多くの方にご理解いただき、耳の聞こえで「悩み」「苦しんで」いる方が回復に至ることを切に望んでやみません。




メールはこちらへ

装用記メニューへ