人工内耳友の会−東海−
人工内耳Q&A

人工内耳Q&A集 4

4.リハビリテーションについて
 4−1.リハビリテーション一般
 4−2.磁気ループ等
 4−3.電話
 4−4.マッピング
 4−5.聞こえの不具合
5.その他


4.リハビリテーションについて
4−1.リハビリテーション一般

Q41−01 リハビリテーションも健康保険の対象になるのか?
A41−01 リハビリテーションも健康保険の対象です。

Q41−02 リハビリテーションの期間はどのくらいか?
A41−02 集中的リハビリテーションは、病院や、お子さんの学校で数ヵ月にわたって行なわれますが、その後も継続的な聴能訓練が言語習得と並行して必要です。

Q41−03 スピーチプロセッサにマップが二種類(会話用、会議用等の様に)入ると便利なような気がしますが、可能でしょうか。また、コストの問題はあるのでしょうか。
A41−03 将来のスピーチプロセッサには可能と思いますが、現スピーチプロセッサを改造するのは難しいと思われます。ただ、会話と会議とではマップは変わらないと思います。

Q41−04 個人で使用できる読話訓練用のビデオテープはありませんか。
A41−04 病院に御相談下さい。用意しているところもあるようです。

Q41−05 手術してから一年くらいはほとんど健聴者のように聞こえが良かったのですが、途中顔面神経とショートのようになり、3〜4本減らしました。顔面神経は全く心配ないのですが、以降は会話が以前に比べて大分劣るようになり残念です。電話が自由に聞くことが出来れば本当に有り難い。
A41−05 人工内耳での言葉の聞き取りには概ね15本の電極がそろっていればいいと言われています。この方の場合、減らしたのが3〜4本と言うことですから、大丈夫と思われます。ただ大変よく聞こえていた人であれば減らした当初は前回のものと比較してしまいますが、これも慣れてくると元のようにあるいは前以上に聞こえが改善してくる人もいるようです。4本も減ってしまったという気持ちで聞くか、あるいはあと15本あるから大丈夫という気持ちで聞くかという問題もあると思います。15本で電話を毎日使用して話しているという方もおります。

Q41−06 人工内耳の聞こえる音が体調によって、ものすごく大きく聞こえるときと、普通に聞こえるときがありますが、体調によって左右されるのでしょうか。
A41−06 体調により聞こえが左右されると言う患者さんは多いようです。特に、風邪、寝不足、花粉症、便秘、生理、肩こりなどによって落ちるようです。

Q41−07 音の理解と言葉の理解とは全面的に違う。つまり音を理解して言葉を理解する段階を経るが、言語理解への医療システムを作り、各病院でリハビリに使ってほしい。
A41−07 リハビリテーションマニュアルの日本語版が、人工内耳における音の理解から言語理解に及ぶまで一応マニュアル化されて各施設に常備されております。

Q41−08 手術をして二カ月余りです。音が大きくて大変な時もありましたが、やっと少し落ち着いてきました。それでも小さな声の方が聞きやすく思います。まだまだテレビや電話は無理で、たまに音(言葉)が判るときもあります。皆さんどのようにしておられるのでしょうか?
A41−08 音の大きさは、人によって違うこと、プログラムはあなたの音に対する反応を基準にして作られることは、お答えした通りです。一般に(特に失聴期間が長い場合)、手術後数カ月は音の大きさに対する感覚になれなくて大きすぎたり、小さすぎたりするものです。痛みを伴わない限り心配ないと思います。テレビや電話の声を、どの程度了解できるかは人によります。いろんな人がそれぞれ工夫していて、時々人工内耳友の会の会報にも記載されています。

Q41−09 人工内耳を装用した自分の聴力が、どのくらいなのかよく分からないのですが。
A41−09 普通の難聴の方でも聴力がどのくらいか分かりかねる場合が多くあります。いわゆる聴力レベル(聞こえの閾値)ということで言うならば、人工内耳装用の方は約40〜50デシベルと言えます。一般に1メートル離れたところでの人の会話音声の大きさは約65デシベルで、小さい音は約40〜50デシベルと言われていますので、人工内耳装用の方は少し小さめの音声が聞き取れる程度の聴力と言えます。もし詳しく知りたい方は、担当の先生に人工内耳の装用閾値を測定していただければ良いかと思います。

Q41−10 失聴期間の長い(17年)私としては他の人(外国でも可)がどのくらいかかって言葉が言葉として分かるようになるのか気になります。
A41−10 言葉が言葉として分かるにはどのくらいかかるか?ということと、失聴期間が長いので聴き取り具合がどうか?という質問と解釈いたしました。まず聴き取り具合に関しては、年齢、難聴になった原因、電極の数など様々な要因が関与します。そのため一つの要因だけとって一概にどうだとは言えませんが、一般に失聴期間が長ければ長いほど、人工内耳を介した聴き取りは良くないと考えられます。しかし、私どもの病院で手術をした方で20年以上の失聴期間でも、なかなか良い聴き取りができている方もいらっしゃいますので、あなたの場合も失聴期間17年であるがために聴き取りがどのくらいということは言えません。次に、言葉が言葉として分かるのにどのくらいかかるか?ということですが、これも個人差があります。音入れ後すぐにかなり聴き取れる人もいれば、なかなか聴き取りが上達しない人、そして途中で聴き取りが徐々に上達する人などがいます。最終的には個々のケースで異なると言えます。大事なことですので、現在私どもの病院では調べているところです。

Q41−11 失聴期間が長い程デメリットが多いということですが、例えばどういうことがあるのか、具体的に発表して頂きたいと思います。今後手術を受ける方達もそれを納得して受けられると、こんなはずじゃなかったと落胆したりしなくてすむと思います。
A41−11 まず聴き取り具合に関しては、年齢、難聴になった原因、電極の数など様々な要因が関与すると言われております。失聴期間が長い程デメリットが多いとお書きになっているように、一般に失聴期間が長ければ長いほど人工内耳を介した聴き取りは良くないと考えられますが、中には失聴期間30年以上の方でも聞き取りがよい方がいらっしゃるのも事実です。現在では、手術の前に様々な条件からある程度手術後の聞き取りの予測は可能ですので、担当の先生に聞かれたらよいかと思います。しかし、例外的(まだ分かっていない点があること)な方もいらっしゃいますから、実際には説明しにくいことがあるのも否定できません。

Q41−12 自宅でできるリハビリ(聞き取り練習)マニュアルのようなものをつくってみてはどうでしょうか。自分のききとり能力を客観的に把握できるようなくわしい内容であればより役立つと思います。
A41−12 マニュアルと言えるかは分かりませんが、家庭でできるドリルの方法の参考にしていただくための本(著者がそう言っておりました)が、そろそろ学苑杜から出版されます。タイトルは「難聴児と人工内耳装用者の学習:家庭でできるドリルブック」と言うそうです。客観的評価として各施設で「ビデオによる評価」を行っているかと思いますが、この結果を自分の聴き取り能力に結びつけるには現段階ではまだ難しいものがありますので、不十分な点や良い御意見がありましたら教えていただければ幸いです。[注:発売されています。]

Q41−13 長い間コイルをつけていると、埋め込んでいる機械が皮膚と一緒に引っぱられるような感じがして痛いのですが、みなさんはなんともないのでしようか。毎日17時間くらいつけています。
A41−13 現在の送信コイルの磁石は強さが二段階に分かれております。実際には経験しておりませんが、一番強い磁石を使った場合には、確かに装着部の皮膚が凹んだりすることがあるので、あまり長期には使用しないようにとの話を聞いたことがあります。いずれにせよ、急に変形したり引っ張られたりすることはないと思いますので、ご質問のように痛いような感じがあるようでしたら、担当の先生によくチェックしてもらってください。

Q41−14 術後二年目です。失聴期間が長かったせいか(50年間)音のみで言葉として理解できません。言葉として聞こえる方の記事を読むにつれ、落ち込んでしまいます。失聴期間が長くても言葉として聞くことが出来るようになるのでしょうか?現在、読話で少々分かるのですが、音より唇の動きに頼ってしまいます。リハビリの期間はどのくらい必要でしょうか?
A41−14 聞こえの善し悪しを決める要素のひとつに、確かに失聴期間の長さがあります。失聴期間の長い方は確かに聞き取りがあまり良くないことがあります。この理由は、おそらく言葉を判断する大脳の働きによるのかもしれません。リハビリの期間がどのくらい必要かをおこたえすることは難しいのですが、装用後5年以上たったときでも、少しずつ聞き取りが良くなっているようです。この意味から、いつまでがリハビリの期間と考えるより、長く使っていればいるほど聞こえが良くなってゆく、と考えていただいた方がよいと思います。

Q41−15 96年11月に手術。音入れ後4カ月半。頭痛などはないが血圧上昇、身体がしんどさが2カ月続いてやや安定してきた。装着は1日7時間を限度としていた。血圧は今も高め。安定して1カ月後、複数の会話を3時間聞いた後、しんどさがぶりかえした。時間が長かったり騒音や複数会話でしんどくなるのか?
A41−15 使用時間が長くなることで全身に影響を及ぼすことは少ないと考えます。ただ、騒音やいやな音を長く聞くことで、ふつうの方でも疲れたりすることはありますので、そういう意味では影響はあると考えます。

Q41−16 もっと長い時間使いたいと思う一方、知人に電極をつぶした人、減少した人もいる。聞く程に上達するというのでしんどくならない程度に時間を延ばした方がいいのか無理せずひとの半分でも自然がいいのか?AISやラペルマイクを使い分けするより、プロセッサだけで馴らすのがよいと聞いたがどうか?
A41−16 長い時間使ったから電極が壊れるというようなことはありませんので心配しないでください。人工内耳の音に慣れるためには、できるだけ装用する方がいいと思いますが、本人が苦痛になるほど無理をする必要はありません。もともと個人差のあるものですからリハビリはマイペースがいいと思います。また、プロセッサだけで慣らした方が聞き取りが良くなるということはないと思います。AISやラペルマイクなどの補助装具は状況と必要に応じて使い分けると便利です。補助装具の使い方がわからなかったり、試聴してみたいという場合にはご相談ください。

Q41−17 手術して一年になるが、依然としてマイクでの話、テレビ、電話はなかなか分かりません。また、3〜4人の話ではわかりにくいのですが、皆さまどのようにしてわかるのか、良い方法を教えて下さい。・完全失聴後42年目で装用。50歳。音入れ後2ヵ月目。静かな所でリハビリの先生の話は80%読話併用で理解できるものの、電話は10%程度。私のような例で電話がだいたい理解できるようになるまで何年かかったか前例があれば知りたい。
A41−17 残念ながら聞こえの良い人と、聞き取りの悪い人とかなり個人差があります。マイクの話やテレビの音はやはり難しいようですが、電話に関してはいろいろの工夫が考えられています。例えば、マイクの場合、ループが備わっている部屋では、AISを使用したりテレビの場合はAISやラペルマイクなどを用いて、また、電話の場合は電話アダプターやAISを使用したり(自宅)テレホンエイドを使用したり(外出時)工夫をしている方がいらっしゃいます。また、3〜4人の話の場合はラペルマイクや指向性マイクを使う工夫をなさっている方がいます。

Q41−18 平常の会話も一対一で10%分かる程度。3人以上の会話に途中からでは内容をつかむこととは質問しない限り困難。人工内耳での会話の聞き取りの上達の早道があれば知りたい。
A41−18 一対一の会話は良いのですが、数名の会話の聞き取りの上達は、むしろスピーチプロセッサのソフトの向上によると言っても過言でありません。何年かに一度のスピーチプロセッサの変更がありますが、これに期待するのが一番かもしれません。この新しい機械の購入に関しては、健康保険等の問題があり、金銭的な負担の問題があります。この問題は何とか解決していきたいと思っています。

Q41−19 スピーチプロセッサからスペクトラにグレードアップして若干聞き易くなったが中途失聴者にはまだまだ肉声には遠い感じがする。もっと肉声に近くなるような改良は成されているのか。リハビリも短期間ですむようになるのですか。
A41−19 人工内耳による聞き取りには限界がありますが、肉声に近づける研究・開発は進めております。オープンセットでの聞き取り成績の平均値でみますと、1982年のWSPでは12%だったものが、1985年のWSPでは30%、1989年のMSPでは58%、1994年にスペクトラが登場して78%まで向上されました。将来はこれ以上の良いものをめざしております。

Q41−20 3人以上になると、あとの2人が横を向いて互いに話しているときは、話の内容も分からず、言葉がほとんど入ってこない、こんなとき、どのように解決しますか。
Q41−20 現在の人工内耳では難しいと思われます。

Q41−21 TCレベルがまだ少ないので声としてはよく聞き取れません。もっとよくなりますか?お知らせください。
A41−21 6ヶ月〜1年間は良くなる可能性があります。

Q41−22 音入れ後、1年半を経過したが話す人の声によって個人差があり、又磁気ループやアシストホーンを使うと比較的良く聞こえるのですが、人工内耳で聞こえる声(音)でも、その周波数によって、聞こえの程度が違うのでしょうか?
A41−22 話し方による差と思われます。

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4−2.磁気ループ等

Q42−01 眼が悪くTV画面はよく見えません。せめて音声くらいは聞きたいと思います。パンフレットに説明はありますが、他にもっと良い方法はありませんか。
A42−01 テレビを音声だけで楽しむのは、実は健聴者でも難しいかも知れません。他の雑音をカットする、煩わしいケーブルは使いたくないという場合は、赤外線システムの利用や本格的なループシステムの設置という方法もあります。

Q42−02 懇談会では磁気ループを使用しているので、大勢でもよく話が分かります。携帯用のものもあるのですか。
A42−02 家庭用の磁気ループもあり、TVの音を聞く事もできます。小さい会合では家庭用等の利用の良い方法だと思います。いずれ[ACITA]の会報で紹介したいと思います。
◎ 電話専用の磁気ループもあります。これは電話の形に関係なく利用でき、公衆電話でも大丈夫です。補聴店や眼鏡店で扱っています。【リオン叶サ、品名:テレホンエイド、約9,000円。他社にも同様のものが数種類あります、自分に合ったものを。】

Q42−03 補聴器のための磁気誘導ループを設置してある場所に行くことが多いが、このループの中に入っても埋め込み装置に影響はないか。
A42−03 磁気誘導ループの中に入っても問題ありません。オーデオインプットセレクタを使って、積極的に磁気誘導ループを使うことができます。

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4−3.電話

Q43−01 電話による会話やテレビの聞き取りは、どうしたらいいでしょうか。
A43−01 ここでは電話による会話を成立させる初歩的な方法を紹介します。「人工内耳で電話が使えるようになりますか。テレビはわかりますか。」の質問が多いですが、端的な答えは「イエス」であり「ノー」でもあります。「わかる」程度の期待度が質問者によって異なりますし、聞き取りの能力も個人差が大きいからです。初歩的な段階での使用は人工内耳装用者すべてが電話は使用可能です。「はい」と「いいえ」が聞き分けられれば成り立ちます。それが不可能なら、「はい」と「ちがいます(だめです)」の聞き分けができることが条件ですが、これならすべての方が可能です。
次に一例をあげます。発信者は人工内耳装用者Aで、受信は友人のBとします。
A もしもし、めぐみさんですか。
B いいえ。(ちがいます)
A めぐみさんはいらっしゃいますか。
B はい。
A めぐみさんですか。
B はい。
A ハイキングに行こうと思いますが、一緒にいらっしゃいませんか。
B はい。
A 今度の土曜日はいかがですか。
B いいえ。(だめです)
A そうですか、来週の土曜日ならいいですか。
B はい。
A 八時に、駅前の喫茶店で待ち合わせますか。
B いいえ。(だめです)
A 八時では早すぎますか。
B いいえ。(だめです)
A えっ?おそいですか、それでは七時にしますか。
B はい。
A それでは、来週の土曜日、七時に駅前の喫茶店でお会いしましょう。
B はい。
この方法は、相手が「はい」か「いいえ」で答えられるように人工内耳装用者が会話を進めなくてはいけませんので、やや一方的ではありますが、この方式でも結構用件は足せるものです。名前、数、曜日、常套句(挨拶語、わかりました、そうですね、いいですよ、ちがいます等)が聞き分けられると上記の例などで、Bさんの方から曜日や時間を指定されても理解できるようになります。判らない時は自分からヒントを求めます。恐れないで身近な方と練習してみてください。

Q43−02 電話が全く不可能ですが、電話が自由にできる方法はないものでしょうか。
A43−02 一般には電話が自由に可能となる人工内耳装用者は多くありません。私どもの施設ではだいたい3割程度でしょうか。また電話の使い方も様々で、もちろん知らない人からかかってきた電話に自由に応対できるに勝ることはありませんが、例えば外出先から家にかけるときなど、家族の人との問で、良く使う言葉を繰り返し話したり、また暗号ではないですが何か聴取しやすい言葉を決めておきこれを使用するとかされて、電話を使うのも有効的かと思います。

Q43−03 現在では電話の聞きとりがもっと明確になるように機器の開発に取り組んでいるのか、否か?知りたい。仕事上自分で電話が使えるようになるともっと仕事に意欲が湧いてくると思う。
A43−03 人工内耳による聞き取りには限界がありますが、より良い機器の開発は進めております。また、現状でもテレホンアダプタ等の活用によって電話がより良く使用できるようになります。電話の訓練についてはリハビリの先生にご相談ください。

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4−4.マッピング

Q44−01 音が大き過ぎる時、ボリュウムを変えた方がいいのか、NをSにした方がいいのか。言語訓練士の方は、NをSにしてといいますが。
A44−01 音がいつでも全体的に大きいのか、特別な音だけが大きく感ずるのか等を言語訓練士の方に話した方がいいと思います。いつでも大きいようであれば、マップを変更した方がいいでしょう。

Q44−02 良く聞こえるようになるためには、マッピングは大きめの音を聞き慣れていく方がよいのか、小さめの音を聞き取っていく方がよいのか。又、マッピングの数値データ打ち出し表をもらって在宅時にこの辺の音を少し小さくしたい等、自分でチェックを入れておいたら次回のマツピングの時の参考になるのではないか。
A44−02 通常マッピングの時には、音の大きさを表す図を指さしながら、最小可聴閾値と最大快適閾値を測定していきます。最小可聴閾値というのは、聞こえはじめの音です。これは聞こえているのか聞こえていないのかわかりにくいですが、提示した音の数を数えられる位の大きさが目安です。また、最大快適閾値というのは大きいけれども不快ではない軽度の聞き易い大きさのことです。この測定の時に、「前回の音は少しやかましかったので今回まこの辺りでやめておこう」とか、反対に「前回のは少し聞こえにくかったので、もう少し辛抱しておこう」という個人的な手心は加えない方が、この後での調整がしやすいです。また、電極1本の閾値の上下だけで聞こえが変わるのではなく、全体のバランスも重要です。もし、マッピングをしても、慣れずにどうも不都合な場合には、その様子をできる限り詳しく、説明してもらうのが一番いい方法だと思います。しかし、失聴期間が長い患者さんでは、なかなか音に関する表現を言葉でするのは難しい場合が多いです。マッピングをしても具合が悪いときには、次回病院にいくまで音に関する日記を付けて持っていくのも一つの方法かと思います。

Q44−03 今年三月に手術をした。音入れ時より会話が出来ているのですが、CG→BP+1のマップに変えたところ、アイウエオのイとエがジィーという音に聞こえ(キ、ケ、シ、セ・・・ンも)とても聞き取りにくいのです。CGに比べ聞き取りは半分以下に落ちています。現在電流量が多いということでBP+3を使っています。人の声よりTVの声の方がジィージィーが少ないため聞き取りやすいです。次回は電流量を落としたBP+1を作って試聴してみる予定ですが、CGのマップの方がよく聞こえるので続けて使用したい。
A44−03 ストラテジーは閾値に大きな偏りのない場合、一般的にはBP+1を使用することがほとんどです。しかし、この方の場合、当初はCGを使用しており、その後、BP+1、BP+3とストラテジーを変更したということは、何らかの理由があったためと考えられますので、病院の先生とよく相談されてマップを調整していくのがいいのではないでしょうか。

Q44−04 @人工内耳をしてから聞こえる範囲が広がり喜んでいるが、鼻にかかった声に聞こえる。A調整してもらったら、肉声に近く声の質も生活音も良くなり喜んで帰宅した。(バスで六時間)ところが、人間の声が小さくて聞こえない。不安ですぐに病院へ戻り医師にコンピュータで私の「聞こえの範囲」は記録されているのでしょうからAのデータの「音質」はそのままにして@の「聞こえの範囲」まで広げてほしいと頼んだ。しかし、マップの合成はむずかしいのでAのマップで聞こえなければ@のマップに戻して使ってくださいといわれ、人工内耳の限界かと思いつつもAの素晴らしい音質が忘れられず何とか自分の願いがかなえられないものかと考えている。やはり不可能ですか?関係各位の理解とお勉強を切にお願いします。
A44−04 前のマップと今回のマップのいいところだけを合わせてくださいというのは、患者さん誰しもよく言われることです。ところが、これがなかなか難しいのです。この方の場合Aのマップですばらしくよく聞こえたのはおそらく騒音の影響のない場所だけでのことだったのでしょう。ところがこれが町中にでると通用しなかったということでしょうか。ということはこのAの聞こえというのは本当はすばらしくはなかったわけです。これはよくあることで、遠くて頻繁には通院できないというこういう傾向のある患者さんは、一度マッピングした後ですぐには帰らずに、院内若しくは病院周辺を一時間ばかり散歩してみて様子を見ることをお勧めします。

Q44−05 埋め込み後6カ月でわからないことが多いのですが、聞こえが今一つといった感じがぬぐえない、人の話しているのがわからない、言われても一度でわからず聞き返すと言った具合です。リハビリではNにしてよく聞こえるのですが、実際には今一つの感じです。あまり大きな声もエコーがかかり甲高い声に聞こえるのです。電話も同じ様にエコーがついて聞き取り難いです。何か良い方法はないですか。
A44−05 聞こえの改善にはその方の失聴期間、失聴年齢、手術時年齢、失聴原因などが複雑に絡み合っております。音入れ直後から言葉がわかる人もいれば、人工内耳装用一年後くらいから聞き取りが改善してくる人もおりますので、焦らず、諦めず、人と比較しないで、前の自分と今の自分を比べながらリハビリに励んでいただきたいと思います。また、エコーがかかり甲高いように感じる件に関しては病院の先生と相談してマップの調整を行ってみるのがいいと思います。

Q44−06 スペクトラを使用しております。もう少しひびきがなくはっきり聞こえるようにと願います。
A44−06 MSPからスペクトラにバージョンアップした患者さんは、音が大きい、響く、鼻にかかるような感じがするという方が多いようです。これは音声処理の方法が異なるのである程度は慣れていただくことが必要ですが、マッピングによっては幾分か改善することもあります。

Q44−07 通常はスピーチプロセッサのボリューム「3」にしていますが、「4」にして使用し大きな音が入ったとき、頭に痛みを感ずる事があります、何故でしょうか。
A44−07 スピーチプロセッサには目盛りが1〜8までありますが、どの位置がいいかはマップとの相性で決まります。普通は3〜4位でしょう。マップでどの位の電流にするかを決めるわけですから、それが少し大き過ぎたと言う事です。マップを変更すればいい事で、あまり心配する必要はありません。

Q44−08 先天性聴覚障害児です。マップの時に電極の一番のレベルを上げると、のどにひびくというのですが、他にもこういう例がありますか(音入れから半年たった頃からです)。
A44−08 患者さんによってはこのようなこともあり得ます。これは人工内耳の電極の端の方で、中耳粘膜に近いところでは、中耳の中にある舌咽神経を刺激することがあるためです。

Q44−09 声の大きさを調整してもらってもすごく太い声で聞こえます。なおると言われていますが、20日くらいたちますが、いまだに太い声で聞こえます。声の大きさは普通の健聴の時のように聞こえないのですか?
A44−09 人工内耳では、「小さな音」から「大きいがちょうどよく聞こえる」範囲の大きさの音を入れるようにプログラムされます。音の大小だけに限れば、音源から約1〜2メートルの範囲であれば、ほぼ健聴に近い状態で聞こえると思います。ただし、その音が何の音か、あるいはどんな言葉かの区別をするのは、各人違います。また自分にとって身近な音は意識的に聞き分けることで違いがわかってきます。太い声ということに関して、全体的な電極の測定値のバランスで変わってきますので、プログラム調整で修正が可能かと思います。プログラムは、あなたの音の大きさに対する感覚的な反応に基づいて作られますので、高い音(大きさとは違い、細くてキーキーした感じの音)の測定時の自分自身の反応の仕方も考慮してください。低くて太い音の時の反応は、いくらでも我慢でき、逆に高い音は「うるさい」と思いすぎかもしれません。プログラムを作る方は、あなたが言わなければ、どのように感じているかわかりませんので、話して作り直してもらってはいかがでしょうか?

Q44−10 リハビリは大事です。人工内耳手術を行う病院はもちろんのこと、もっと身近にSTの方がいらして、居住地でも手術を受けた病院と連携を持ちながら無理なくリハビリが受けられるようになればと願っております。また、マッピングは家の近くで受けられないのでしょうか。
A44−10 現在ではすでに日本で30以上の施設で人工内耳の手術を行っています。人工内耳の手術が日本で始まって11年目になりますが、ここ5年ほど前までは施設も限られ、はるばる遠方へ行かれて手術を受けられた方もいらっしやるかと思います。もちろんリハビリは大事ですので、定期的に診察を受ける必要がありますし、突発的に具合が悪くなったりすることもありましょうから、これらの点を考えると、もし近くに人工内耳の施設があるということであれば、連絡をとっておかれるのは意味があることでしょう。しかし、この際ぜひ忘れてはいけないことは、元々手術を受けられリハビリを受けていらっしやる病院の担当の先生から、直接近くの施設の担当の先生に連絡をとってもらう必要があります。現在の担当の先生にご相談されてはいかがかと思います。[注:1998年6月現在、全国で47の施設で手術が可能です。リハビリ専用の施設を合わせると50以上になります。詳しくは巻末の病院一覧をご参照ください。]

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4−5.聞こえの不具合

Q45−01 4カ月経過し現在体調を崩しているせいか、たまに埋め込みした耳が、何か風船が割れた音(パーンと)がし、とても不気味な感じです。今後もこわい感じです。人工内耳装用者が病院で検査してもらえたら少しは安堵すると思います。
A45−01 なにか不具合が生じた場合、すぐに病院の方に問い合わせてください。なおこの方の場合、不具合の原因はケーブルの断線ということが判明しました。

Q45−02 突然パチパチと音がし、思いもかけなかったので心配しました。今は十位の音で頑張っています。リハビリで大きな音がする時があるので今はリハビリがこわいです。原因がわかればといつも思っています。でも毎日人工内耳はつけています。
A45−02 突然パチパチ音がする場合は次のようなことが考えられます。
@ケーブルが切れかかっている時
A電池が切れかかっている時(電池にもよる)
B静電気に反応した時
Cある電極の電流値が高いか、電極のショートがある時
D電極が何らかの理由でずれかかっている時
パチパチ音がリハビリの時にあると書いてありますが、プログラム調整ということか、言葉の聴き取りの練習の時かによっても原因が大きく異なる可能性があります。大切なことですから、パチパチ音が起きる頻度と、どんな状態のときか詳しく記録して病院のリハビリ担当の先生に相談してください。十位の音と書いてありますが、大きさのことでしょうか。音の感じ方は人によって違います。例えば、十kgの石があったとして、それを大きいと思うか、小さいと思うか、重いと思うかは人によって違いますし、同じ人でも何を基準にするかによって感じ方が違ってきます。いずれにしても、医学的な問題か、機器の問題かを含め総合的に判断する必要がありますので、病院の先生にご相談ください。

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5.その他

Q50−01 手術後、障害者手帳の等級は?
A50−01 障害者手帳の等級は変わりません。

Q50−02 もっと詳しいことが知りたい。また、実際に人工内耳を使用している人の話を聞きたい。
A50−02 病院または下記のところにお問い合わせください。
 〒113−0033 東京都文京区本郷3−3−12 木津(K’s)ビル
 株式会社 日本コクレア
      Tel:(03)3817−0241
      Fax:(03)3817−0245
また、人工内耳友の会「ACITA(アシタ)」という会があります。
連絡先は下記のとおりです。
 〒228−0015 神奈川県庫間市南栗原6−8−21
 小木保雄
      Tel・Fax:(0462)55−0628

Q50−03 運転免許(原付・バイク・自動車など)は取得できるでしょうか?
A50−03 運転免許を取得するには、まず最寄りの自動車試験場で適性検査を受けます。これは10メートル後ろから90デシベルの音(クラクションを想定)が聞こえるかどうか(勿論人工内耳をつけて)の検査です。適性検査に合格すると証明書がもらえますので、あとは自動車学校に行って決められたコースで学科と実技の訓練を受けるか、練習場にいって練習するかです。実際に実技の教習を受ける際にはいろいろと工夫が必要だと思いますので、教官とよく相談するほうが良いでしょう。アシタの会報30号に「自動車免許に再挑戦」という手記がありますので参考にしてください。

Q50−04 日本のろうあ運動組織に入っている多くの会員は、人工内耳を正しく理解していないようです。原因は世界ろうあ連盟の「人工内耳はろうあ者には不要である」との見解によるようです。これらの人々に[ACITA]として人工内耳について啓蒙運動をすべきではないかと思います。
A50−04 各種団体の政治的主張に左右されることなく、人工内耳を正しく理解して頂く運動を展開する必要があります。これには装用者による難聴者(失聴者)のための説明会や、文字によるアピールも大切です。各種団体への会報の謹呈や、新聞や雑誌などへの投稿なども活動の一つと考えています。上部団体の主張に惑わされず、人工内耳も、手話や読話や筆談などと同様に、コミュニケーションの一手段と認め、個人個人が自分に適したものを選択できるようにして頂きたいと祈念します。

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