人工内耳友の会−東海−
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耳鼻咽喉科の病気と治療のトピックス

◆人工内耳

 耳は解剖学的には体の外側から、外耳、中耳、内耳に別れます。これを聴覚の面からみると外耳・中耳は伝音系、内耳は感音系に属します。音は伝音系の入り口である外耳から入り中耳(ここには音を伝えるだけでなく、音圧を増大する機構が存在します。)を経て感音系の入り口である内耳(ここには音のエネルギ−を電気エネルギ−に変えるエネルギ−変換機構が存在します。)に到達し、ここで聴神経の活動を電気的に促し大脳に音感が伝えられます。難聴はこの聴覚経路のどの部位に障害が生じてもおこる訳ですが、伝音系に障害のある難聴を伝音性難聴、感音系に障害のある難聴を感音性難聴と言います。伝音性難聴に対する聴力改善法としては、慢性中耳炎における鼓室形成術をはじめとする手術的手法があります。補聴器は音のエネルギ−を増幅させる器械であり、伝音性難聴に対しては非常に有効な手段であるばかりか、軽度・中等度感音性難聴に対しても弱っている内耳のエネルギ−変換機構を動かせるだけの音エネルギ−を与えられる場合は有効な手段となります。しかしこれまでは、内耳障害で生じた高度感音難聴や聾に対しては適切な手段はありませんでした。
 人工内耳はこのような内耳性の聾・高度感音難聴の患者に対して聴神経を直接電気刺激することによって音感覚を認知させようとする感覚器としては最初の人工臓器です。人工内耳を使用するにあたり、患者は特殊な電極を内耳に挿入し受信アンテナを側頭部に埋め込む手術を受けます。(体内埋め込み部) また、患者は人工内耳の体外部として送信アンテナと一体となった耳かけ式のマイクロフォンを装着し、これに連なるタバコの箱大の携帯用小型スピ−チプロセッサ−を持ち歩きます。スピ−チプロセッサ−のマイクロチップにはその患者個々に適した電極の作動プログラムがパソコンによって書き込まれています。これらにより、音はマイクロフォンよりスピ−チプロセッサ−に入り分析され、その音に適した電気刺激を聴神経に与えるように内耳に埋め込まれた電極を作動させ、音感を脳に伝えます。
 人工内耳の適応条件は以下の通りです。
 1 補聴器を用いても言語を判別できない両側高度感音難聴者
 2 聴神経の生存が確認されたもの(promontory test 陽性)
 3 画像診断で内耳蝸牛に電極の入るスペ−スのあるもの
 4 言語習得後の難聴であることが望ましい
 残念ながら現在の人工内耳の性能は補聴器を越えるものではありません。しかし音の無い世界に住む人々に対しては、彼らを音の有る世界に呼び戻す画期的な治療法と言えます。(高牟礼 寛)



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