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ヒアリングインターナショナル総会 シンポジウム 1999年11月2日〜3日 京都市 難聴・失聴 社会的側面に焦点 難聴の予防や聴力障害者の早期発見と支援・治療をWHOと協力して行っている国際的ボランティア組織、ヒアリングインターナショナル(HI)の総会と京都シンポジウムが、11月2、3日、京都市で開催された。 プログラムは、 1)聴覚 2)補聴器、人工内耳、耳手術 3)世界の現状報告 4)人工内耳 5)難聴 6)難聴者 報告として、下記のようなものが予定されていた。 ・国際中途失聴者連盟のCH・ショウ氏 「聾と高度難聴はどこがちがうか」 ・愛媛大学耳鼻科の暁清文氏 「人工内耳による聴力改善について」 ・横浜国立大学教育学部の中川辰雄氏 「人工内耳か補聴器の選択」 ・大阪大学耳鼻科・言語聴覚士の井脇貴子氏 「小児の人工内耳を使用した聞き取りについて」 ・聴覚障害者教育福祉協会 今西孝雄氏 「聴覚障害者の社会参加と学力」 ・帝京大学耳鼻科 田中美郷氏 「われわれの臨床からみた難聴児の早期対策の結果と課題」 ・全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 小野宏氏 「難聴でも活力のある人生を」 また、このほかに外国(ヨーロッパ、アジア諸国)からも報告がある。 参加者は、耳鼻科の専門研究者ばかりでなく、工学や言語学の専門家、障害児教育 関係者、聴覚障害者自身の参加もあり、非常に幅広い。要約筆記付き。 平成11年11月3日 京都 「ヒアリングインターナショナル」レポート(小川隆久) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「人工内耳による聞こえと脳の働き」 京都大学の内藤先生 補聴器では側頭葉の動きは変化がないものの、中途失聴が人工内耳を装用。3年後には側頭葉の働きは活発になり、新しい神経細胞が生まれている事が確認された。 言語獲得前の先天性聾の場合、人工内耳装用から1年半では側頭葉の活動は無し、但し、3〜5年後には、読唇を併用すると側頭葉が活動する。中途失聴も含め、装用後7年経過して経過が望ましくない人の場合でも読唇を併用すると側頭葉が活動するというデータが得られたという。 人工内耳は静かなところで読唇を併用することが大前提のものであるという事、また、装用後の訓練の年月の経過と共に徐々に脳が可塑性を持って活動しはじめる事という話でありました。特に私共の様な、言語獲得前の先天性高度難聴児に対しては、3歳までに手術し、3年後の5〜6歳までの努力がまず大切であり、その経過が望ましくなくても、7年後の9〜10歳でも読唇を併用してゆけば脳の可塑性はあり、成長してゆけるという事になると理解し、歴史の浅い先天性難聴児への適用と経過が少しずつ確立されてゆくのだな・・・と感じました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「人工内耳と補聴器の選択−親はどこに判断基準を求めたのか」 中川辰男 横浜国立大学 教育人間科学部 63名の聾学校の父兄に質問形式のアンケートを実施。 難聴の発見は平均生後19ヶ月、補聴器の装用は平均23ヶ月。その内、 人工内耳を装用:6%、人工内耳をしらない:2%、知っているが興味なし:37%、興味あり:45% という結果で、半数以上は興味を持っている。 ★「静かなところでの呼びかけ」に対して いつも反応あり:25%、たまにあり:20%、だいたい:40% との回答は人工内耳に興味の有・無に関わらず、ほぼ同等。 ★「補聴器をつけると発声量に変化があるか?」に対して 人工内耳に興味ありとした親は、変化あり:50%、変化なし:35% 人工内耳に興味なしとした親は、わからない:50% と逆の結果になっており、人工内耳に興味を示している親は子供の発声の変化に敏感であるといえる。 ★「難聴児が自分への注意を引くために声を出すか?」に対して 人工内耳に興味ありとした親は、声を出す:90%、 人工内耳に興味なしとした親は、声を出す:70% ★「子供の発声を理解できるか?」に対して 興味ありなし、どちらも50%は理解できるとの回答 ★「話が通じない事があるか?」に対して 人工内耳に興味ありとした親は、通じない時があり不便あり:45%、 人工内耳に興味なしとした親は、通じないことはない:80% ★興味ありとした親に「人工内耳手術するか?」に対して 検討中:3%、迷っている:15%、たぶんしない:75% 以上の様に、半数以上の親が興味を持ちコミュニケーションで不便を感じている。しかし、実際に手術に踏み切る親は実に少なく、親は紆余曲折を続けているといえる。今後は親の心理にも研究をすすめ てゆくとのこと。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「小児の人工内耳について」 大阪大学耳鼻科 井脇貴子先生 小児の人工内耳の装用は96年:5人、97年:15人、98年:20人、99年:10人となっている。手術の実施を決定するにあたっては、事前調査、STとの面談、リハビリの見学、親の会への入会の順で進められ、特に親に対して、人工内耳の原理、手術について、副作用について、リハビリについて、利点と限界についてカウンセリングをする。教育機関と医療の連携はもとより親の心理サポートを大切にしている。 ・プロモントリーテストは小児には実施しない。 ・補聴器の周波数圧縮変換型補聴器で効果のないことを確認するが、このテストについては省略される場合もある。 ・人工内耳聴取能は個人差が大きいので、何人かの子供のリハビリの見学をする。 ・写真、日記、塗り絵、手作り人形、ダミーのプロセッサ、ヘッドセットで練習。 (手作り人形がOHPに映し出され紹介された。これは、こーすけ人形といいます・・と。ということはあれはこーすけ?と後で思い返しても、松坂似は???でした。とてもかわいい人形と一緒の元気そうな写真でした。) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「人工内耳による聞こえの回復」 京都府難聴者協会 山口武彦氏 28歳でストレプトマイシンの副作用で失聴し、徐々に電話の音などが聞き取りにくくなる体験談。情報が入れば何でも出来るのにそれが入らないと何もできない葛藤。障害の受容は健聴者が考えるより簡単なものではない・・・。失聴33年後、人工内耳手術し、3年が経過した。手術直後はダミ声で不安であったが読話は驚くほど簡単になった。日時の経過と共によく聞こえ、駅の案内、体温計の電子音車のキー綴じ込み防止アラームも聞こえ、今では純音で40dB迄聞き取れるようになった。ただ、多数での会話は補聴器よりも聞き難い。電話は聞き易くなった。雨の傘を打つ音など、狂っているとしか思えない音もあるが、イメージ、付近の環境、イントネーション集中力によって、聞き取りは異なってくる。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「中途失調・難聴者の社会参加について」 香川県中途失聴・難聴者協会 黒木敏昭 氏 22歳でストマイ注射で聴力を失い、補聴器も使えず40年を過ごした。3年前に人工内耳手術を受け、リハビリを続けている。手術後1年は音は聞こえるが言葉はダメ。2年後には対面会話はOK。3年後の現在は騒々しいところ、複数会話以外はOKとなっている。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− クラリオン人工内耳 1980年単チャンネル人工内耳 カミオ先生 1985年多チャンネル人工内耳 舩坂先生 1999年クラリオン認定 2000年保険適用 コクレア22、24 コクレア社 クラリオンS バイオニクス社 combi40+ メデル社 アドバンスドバイオニクス社 4250例 北米シェア45% らせん形状(蝸牛の形)により外傷を防ぐ。電極16個、ヘッドセット+マイク一体型(ヘッドピースと呼ばれる)により耳かけ部なし。 ポジショナーを挿入することで630度まで挿入でき、これによりコクレアの1回に対して1.5回と深く挿入される。但し、電極0.7mmに対して、挿入ツールが1.5mmのため大きく穴をあける必要がある。 3.5〜4.7(平均3.98mm)の位置に顔面神経があるため、若干手術の危険度が増す。電極は神経細胞に近い内側壁によっている方がよく、クラリオンのポジショナーはそれを可能にする。 フィッティングシステムがウィンドウズでノートパソコン対応で検査室以外の病棟に持ち込んで検査できる。CISモノポーラ(高頻度順次刺激)、SASバイポーラ(超高頻度順次刺激)、他CAもあり。それらを一つのプロセッサで選択できる。同時アナログ刺激はクラリオンのみ。 日本ではクラリオンは10例。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 大阪大学 久保先生 近未来では、人工内耳の生体適合性のupによりMRIなどの規制は緩和される。スピーチプロセッサもなくなり永久電池化となり最低10年はもつという。マイクもプロセッサも全て埋め込み型の人工内耳も5〜10年で開発されるという。厚生省の認可問題もあるが、両耳装用が普及し、雑音下でも聞き取りは向上するであろう。また、聞き取り能力向上の新薬の開発など・・・。 全埋め込み型の5〜10年後の開発について、私は初耳でびっくりし、講演が終わり台上から降りてこられる久保先生に思わず駆け寄り直接お話を伺いました。だいたい5年周期で開発されているため、おそらく、5年後、もしくは次の10年後にはでてくるといわれる。現在の人工内耳装用者が、それが開発された時に手術して取り替えることが出来るのかという問いに対しては、むしろ再手術の方が簡単であり「可能」という、うれしいお答えを戴きました。頭部、耳、プロセッサ等の煩わしさが幼児にはかわいそうだと考える親にとって、なんだかとても肩の荷が下りるような、嬉しい気分になりました。我が息子100dBの話もしたところ、70dB以上は人工内耳が望ましい。といわれ、まずは3歳までに現在の人工内耳を装用し、やがて新しい埋め込み型を考えてもいいのではとアドバイスを貰えました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「聴覚障害者の社会参加と学力」 (財)聴覚障害者教育福祉協会 今西孝雄 氏 身体障害者雇用促進法実施から39年経過後も法定雇用率は達成されていない。聴覚障害者の雇用がためらわれる理由の一つに学力不足があげられる。一般に基礎学力が低いというのは一概に表現できないが聾学校の教科書は2〜3年遅れているのは確かである。中学で96%が進学、高校で36%が進学する学歴社会で、聾学校の高等部が中学レベルでは間に合わない。 学力遅滞の原因は情報入手、言語獲得の困難があることはいうまでもないが、長年の口話法による聾学校教育が期待通りの成果をあげ得なかったことも否めない。ようやく文部省も手話の導入に前向きとなり、新しい歩みが始まったといえる。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「われわれの臨床からみた難聴児の早期対策の結果と課題」 帝京大学耳鼻科 田中美郷 氏 週1回の講義、毎日の親の日記の提出から分析し、(リ)ハビリテーションの確立を目指している。聴能とは、言葉や音楽、環境音などを知覚し、認知し、理解する能力のことで、この能力は学習によって発達する。しかし、実際は子供が成長してみて初めてわかるのが実状である。 70%が普通校に通っているが、必ずしもうまくいっているわけではない。普通校に行く傍ら、難聴者の集団の中で過ごすことも必要である。必ずコミュニケーションのギャップは生まれるものである。 単感覚法は重度の子供には厳しく、多感覚法といわれる聴覚口話法も指導法によっては聴覚活用が不満足になるケースもある。コミュニケーションは聴覚のみでは難しく、手話への関心もたかまりつつある。 脳の可塑性は年齢と共に低下する。聴能と手話の同時習得は困難であるため言語獲得前の子供には、まず聴能発達のために耳を傾けるという姿勢を能動的に導く必要がある。人工内耳は一つの手段であり、その手法の何れを選んでも「子供をハッピーにしうる」と確信する事が大事である。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「難聴と遺伝子の関わりについて」 東北大学耳鼻科 池田勝久 氏 先天性難聴の発症は1000分の1であり、その半数が遺伝子(DNA)の異常による。親が健聴であっても遺伝子に異常があれば難聴児が生まれることとなる。また、難聴者の配偶者にも遺伝子に傷があれば難聴者が生まれる。 採血で遺伝子を検査すると ・難聴の原因が遺伝であるかどうかがわかる。(原因) ・その聞こえが将来進行してゆくものか否かがわかる。(予後の推察) ・人工内耳の有効性、治療法、効果判定も推察できる(診断) 以上の3つについて遺伝子分析が活用できるようになってきた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「親の参加が望まれる幼児期の言語指導」 (財)聴覚障害者教育福祉協会 広田文範 氏 聴覚障害児には、まず基礎学力、社会常識、倫理、協調性中でも言語力の教育が大事である。そのためには教師と親指導者との緊密な連携協力が必須である。 親は不憫さもあり盲愛、過保護、放任、逃避になりがちであるが、大事なのは家庭であり、子供の自立、知的発達を図ることが必要。まず、親としての自信を持ち家庭間の関係、意思統一、秩序、教育基盤を整理する必要がある。親も学習し、教師の教育に協力できること。家庭では学校で出来ない物の名前、生活用語を教えなければならない。学校で覚えた言葉の定着は家ですること。お使い、遊び、等を通して社会のルール、協調性忍耐力、健聴者を含めての教育をする。子供は親と教師を選べないのである。一生懸命指導することが子供とその親自身の為であり、親の姿勢と情熱にかかっている。 障害者とその親は手だてがわからない、医師、教師は指導者としての使命感をもってほしい。子供はもとより親への助言がほしい。難聴者の知能の啓発が遅れるという報告があるが、それは教育者としては、いってはならないことである。 難聴者に大切なこととして、言葉の発達と知能の習得の二つがある。とかく、コミュニケーションにだけとらわれがちであるが、後者の知能の習得や思考の面について更なる研究と工夫を望む。愛情と根気と英知を持つことが大事である。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 難聴幼児通園施設香川こだま学園で療育を受けた重度難聴児 野中信之 氏 1歳2ヶ月で重度難聴(110dB)が発覚し補聴器装用(55dB)。 屋外で実物にふれ、見て、言葉をかけることを行った。子供が何かを表現するとき、母親の顔を見るまで待ち、身振りと言葉で応えるようにした。3歳、買い物、料理、屋外遊び、ことばの意味を自然に会得させる。役割分担、ごっこあそび。4歳、近所の子と遊ぶ。社会性を育てると共に親がわからない言葉を通訳する。5歳、友人と遊べるように保母に協力依頼。6歳小学校では普通校に入学、一部手話も併用して貰い授業。現在中学3年生で普通高校に進学希望。 ・子供は何かをしようとして、必ず親の顔を見あげる瞬間がある、 それまで待ち、タイミング良く応えること。 ・実物を通してのごっこあそびが大切 ・健聴の幼児とあそばせ、不自由な部分は助けてやること が大事である。人工内耳でも教育法は基本的にかわらない。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日本の難聴幼児の早期教育について/難聴幼児通園施設とは 徳光裕子 氏 難聴幼児通園施設とは0〜6歳までの乳幼児を対象として全国に26カ所があるが、国の認可を受けているにも関わらずあまり知られていない。週5日母子で通園し個別言語訓練、集団指導、母親指導を含めて行っている。1〜2歳児では一緒にお食事の訓練や5歳では30名の健聴者をふくめた集団活動などを行う。父親講座両親講座をする。療育修了者の8割はインテグレーションしている。 初期治療から、人工内耳の術後のフォローをしていることを特に医療関係者と一般の方にも知って貰いたい。 |
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