人工内耳友の会−東海−
夢への旅立ち

テレビ朝日(系列)
テレメンタリー2001
「見えます、心の音が…〜難聴のダンサー、夢への旅立ち〜」


平成13年3月29日

【文字版】テレメンタリー2001
「見えます、心の音が…〜難聴のダンサー、夢への旅立ち〜」

【文字版制作】宮下あけみ akemizo@beige.ocn.ne.jp

※このメールは、転送・転記自由です。


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【皆さまへ。】

こんにちは。☆宮下あけみ☆と申します。

関東地区では2001年3月29日(木)午前10時00分〜10時30分に放送されました、テレビ朝日(系列)『テレメンタリー2001「見えます、心の音が…〜難聴のダンサー、夢への旅立ち〜」』の、【文字版】を作りました。(全国で放送されますが、日程が地域によって異なります。)

「聞こえてくる限りのもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま、打たせていただきました。


この番組の【文字版】のホームページへの掲載、M.L.、D.M.等のインターネットでの配信・転送・転記、及びFAX、プリントアウトしての配布は【九州朝日放送】様と【テレビ朝日】様より、ご了解を得ております。

【制作・著作】は、【九州朝日放送】様です。

聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時は、ご活用下さいませ。

この文字版は【九州朝日放送】様、及び【テレビ朝日】様より、私、宮下が個人的に了解を得たものです。

しかし、著作権を持つ【九州朝日放送様】より、「今回の放送は、字幕スーパー(デコーダがなくとも、テレビをつければ、そのまま文字が出ている。)により、内容が十分伝わるように作られてはおりますが、今回、この様な形、(インターネット及びFAX等)で、多くの方々に番組を知っていただける事は、こちらとしても嬉しい事です。」と、とてもあたたかいお言葉をいただく事ができました。


従って、この【文字版】の個人、団体等への【インターネットを利用しての転送・転記、ホームページへの掲載、及び、FAX・プリントアウトしての配信・配布】は「自由」です。

自由ですが、もし、「団体あて」に転送、或いは「ホームページへ掲載」されたような事がございましたら、恐れ入りますが、宮下まで、ご一報下さいませ。勿論、事後連絡で結構です。(事前確認は不要です。)


最後になりましたが、【文字版】として文字化する事に対して、快くご了承して下さいました【九州朝日放送】様、【テレビ朝日】様に、心から御礼申し上げます。
本当に、ありがとうございました。


尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。

また、この【文字版】は、「Word」にて作成しております。プリントアウト等のため、「Word」、又は「テキスト」のまま配信をご希望される方は、宮下までD.M.にて、ご連絡下さいませ。

今後とも、宜しくお願い申し上げます。

【放送予定表】
◆全国で放送日時、時間帯が異なります。
◆ 予定のため、各局により、変更があるかもしれません。
  ご了承くださいませ。

<3月>
  テレビ朝日     29日 (木) 10:00〜10:30
  北海道テレビ    25日 (日) 24:25〜24:55
  青森朝日放送   25日 (日) 25:30〜26:00
  岩手朝日放送   28日 (水) 24:54〜25:24
  東日本放送     25日 (日) 24:25〜24:55
  秋田朝日放送   26日 (月) 24:54〜25:24
  山形テレビ     28日 (水) 25:26〜25:56
  福島放送      26日 (月) 11:00〜11:30
  新潟テレビ21   25日 (日) 24:25〜24:55
  長野朝日放送   26日 (月) 10:55〜11:25
  静岡朝日テレビ  25日 (日) 24:55〜25:25
  北陸朝日放送   31日 (土) 11:15〜11:45
  名古屋テレビ    25日 (日) 25:10〜25:40
  朝日放送      31日 (土) 25:50〜26:20 
             <再放送>
             4月6日(金) 10:30〜11:00
  広島ホームテレビ25日 (日) 24:30〜25:00
  山口朝日放送   30日 (金) 25:26〜26:56
  瀬戸内海放送   25日 (日) 25:00〜25:30
  愛媛朝日テレビ 25日 (日) 6:30〜7:00
  九州朝日放送 31日 (土) 7:30〜8:00
  長崎文化放送 30日 (金) 11:00〜11:30
  熊本朝日放送 25日 (日) 6:30〜7:00
  大分朝日放送 25日 (日) 25:30〜26:00
  鹿児島放送 25日 (日) 24:30〜25:00
  琉球朝日放送 30日 (金) 9:55〜10:25
  朝日ニュースター25日 (日) 23:30〜24:00


      <文字版制作>  ☆宮下あけみ☆
        【E-mail】   akemizo@beige.ocn.ne.jp


テレビ朝日(系列)
テレメンタリー2001
「見えます、心の音が…〜難聴のダンサー、夢への旅立ち〜」


平成13年3月29日

(映像:「テレメンタリー 2001」)

(映像:踊る女性)
ナレーション(以下、「ナ」と記す。):スポットライトを浴びて踊る
一人の少女、その類(たぐい)まれなる表現力に、観客は賞賛
の拍手を送ります。しかし、彼女の耳には、音楽も、そして、
観客の拍手も届いてはいません。

西畑絵里(にしはた えり)18歳。
彼女は重度の難聴という障害を持って、この世に生まれてき
ました。

音楽を聞き取る事ができない彼女は、スピーカーから伝わる
振動でテンポをつかみ、振り付けをカウントで完璧に体に叩
き込んで踊るのです。仲間達は手を握ったり、体に触れたり
して、踊り出しのタイミングを教えます。

心を一つにした少女たちのダンス。高校時代、全国大会で
何度も優勝を果たしました。

1歳になった我が子の耳が聞こえない事を知った、父と母。
つきっきりの訓練で、口の形を読み取って、言葉を理解できる
ようになりました。彼女には、一つの夢がありました。


(映像:西畑絵里さん)
絵里さん:高校を卒業したら大学に行って、勿論、ダンスをまた
続けたいと思います。で、それから、社会人になったら、子供た
ちに生徒達にダンスを教えたいなぁ…と、思っています。

ナ:「子供たちにダンスを教えたい。」その夢を叶えるために、
関東の大学を受験する事に決めました。仲間たち、そして両親
の温かい心の音に支えられ、彼女は今、夢への一歩を踏み出
そうとしています。

(映像:「見えます、心の音が… 難聴のダンサー 夢への旅立ち」)

(映像:1999年2月 体育館)
ナ:絵里さんのもとに、嬉しい知らせが届きました。筑波大学体
育学部への合格を決めたのです。

学生:イェ〜!!!(宮下→拍手と歓声) スゴイ!! スゴイ! 絵里ちゃん。
あんた、スゴイ!!

父(俊男さん):おめでとう!!やったねぇー!!良かったねぇ、ついに。

母:おめでと!!

父:眠れんかったろ? 良かったね。良かったねぇ〜。

母(泰子さん):良かったね。
これで、安心して、安心して眠れるし、勉強できるね。

絵里さん:良かった。

(映像:2000年3月 学校正門→九州女子高校卒業式)
ナ:音楽に合わせられず、苦しんだ事。みんなと一緒に踊った喜び。
たくさんの思い出を胸に、絵里さんは高校を卒業しました。

歌声:「仰げば尊し 我が師の恩…」

ダンス部顧問 松尾京子教諭:きつくなったらね、帰ってきていい。
帰ってきなさい。そして、なぁーんも言わんから、踊ればいい。
いーっぱい踊ればいい。ここで。

絵里さん:はい。

松尾教諭:あきらめないでね。

絵里さん:はい!!

松尾教諭:夢を私もあきらめないわ。

絵里さん:はい。

松尾教諭:がんばって行こうね!!

絵里さん:はい!!

友人:がんばってね。

絵里さん:はい。

友人:応援してるからね。

絵里さん:はい。

友人:がんばって。

絵里さん:はい。ありがとうございます。

(映像:友人たちの手のアーチをくぐる、絵里さん。)
友人:がんばってください。

(映像:4月 桜)
ナ:出発を3日後に控えて、絵里さんはお母さんから料理を習
っていました。大学では一人暮らしをはじめます。高校時代で
はダンスづけの毎日。親子でゆっくりと時間を過ごすのは久し
ぶりです。

母:切りくいやろ?(包丁の音。「トントントントン…。」

絵里さん:お母さん!!

絵里さん:あぁ〜!! 入れたかったぁ〜。

母:もう、早く、早く。もう、野菜が煮えすぎ。これ。

(映像:出発前夜 西畑さん宅 福岡市南区)
家族:乾杯!!

父:がんばってね。がんばってね。明日から。おったら(宮下→
「家にいたら」の意。)、うるさいけどね、いないと、ちょっとさみ
しいね。

母:漬け物、どうぞ。ちょっと若いけど。

父:しょうがないね。

絵里さん:その代わり、犬、飼っとったら?

父:ん?

家族:(笑)

母:今までお母さんが起こしょったけど、もう、絶対、起こされけん。
間に合わん。

絵里さん:わかってます。

(映像:絵里さん)

絵里さん:ありがとうって、言いたいんですけれども、なんか、素
直になれなくて、なんか、自然に、口から、なんか、文句ばっかり、
ちょっと言ってしまうので。

やっぱり昔は、「生まれて来なければよかった。」って、いろいろ
あったんですけど。私は言葉が上手く話せないので、体で相手
に伝えたい事を伝えればできるっていうのが、ダンスで。
障害を持っていても、みんなと一緒に踊れるって言う事を、喜び
を感じて、嬉しかったです。

質問:「18年間で一番の思い出は?」(字幕スーパーのみ)

父:いっぱいあったからね。印象が強いのは、障害者センターに
行って、初めて、こう、補聴器をつけた日がですね、なんか、こう、
今、昨日の日のように思い出しますですね。
 「えぇ〜?!今から何年もかけて、この子に子言葉を教えて、
  ずぅーっとついとかないかんかな。」
と、そんなことが、ちょっと最初、よぎりましたねぇ。

でも、もう、あの、「聞こえないから、しょうがないしに、自分ら親が
一生懸命せんかったら、誰がするやろか?」と思ったから。

母:「お母さん、今度、若くなってね。」って言われました。絵里から。
もう、自分の、こう、身なりかまわず、こうねぇ、やってきたから。
 「今度、お母さん、自分のこと、して。若返ってね。
  もうちょっとダイエットしてね。」
って。(笑)


(映像:出発の日)
父:わぁー、重てぇー、こらぁ〜。重てぇーよ。これ。

母:持てる?

父:大丈夫?これ。

弟:がんばって。

母:じゃーねー。

(映像:車の窓から外を眺める、絵里さん)
母:絵里ちゃん。さみしい?さみしくない?

絵里さん:(うなづく)懐かしいなぁ〜って。

母:あ、懐かしいなぁ〜って。懐かしいなぁ〜ってみよ。

絵里さん:だって、18年間もいたんだから。

母:そうね。

(映像:茨城県つくば市)
ナ:茨城県つくば市。筑波大学をはじめ、多くの研究機関が集
まる、学園都市です。絵里さんは、キャンパス内の寮で、一人
暮らしを始めました。

(映像:振動目覚まし時計で起きる、絵里さん)
ナ:絵里さんは毎朝、タイマー式のバイブレーターを枕の下に
置いて、起きています。

(宮下→携帯電話の着信メロディーの音楽:曲名「夜空ノムコウ」SMAP)
ナ:念のため、胸には携帯電話。振動と音で時間を知らせてくれます。

(映像:筑波大学 体育専門学群→手書きノートテイクを受ける様子)
ナ:筑波大学 体育専門学群は、スポーツの指導者を養成する
学部です。大学の講義では、ボランティアの学生が、講義や黒
板の筆記を助けてくれます。

講師:これはどうしたらいいんだい?まず最初、スポーツ心理学、
或いは体育スポーツ心理学の中で・・・。

学生ノートテイク ボランティア:手話通訳とちがってノートテイクっ
ていうのは、先生の言ったことを、同じ速さで書くわけじゃないで
すか。けど、だいたい書けるのは5分の1なんですよ。

質問:「絵里さんの印象は?」(字幕スーパーのみ)

学生ノートテイク ボランティア:かわいいなぁ〜と思いました。
今日、はじめて会ったんですけどぉ。かわいいがんばり屋さんだな。


(映像:筑波大学ダンス部)
ナ:絵里さんは早速、関東地区の大学の中でも強豪といわれる、
筑波大学ダンス部に入部しました。部員たちにとって、聴覚に
障害を持つ人と踊るのは、はじめての事です。

部員:タタタターン。(宮下→声と手拍子)やって。そこで。せーの、
「タタタン、タタタン、タタタン、タタタン。タタタ ターン タターン」

部員:ここと。

絵里さん:はい。

部員:あと、もうちょい、このへん(肩)、楽にして。

絵里さん:はい。

質問:「今後、絵里さんが直面する問題は、ありますか?」
(字幕スーパーのみ)

ダンス部主将 朝倉千絵さん 3年:まだ、なんか、大変な事って
いうのはわからない…って言ったほうが正しいですね。
まだ全然…。それなりに成果を、“学校が”上げてるダンス部に
いた子っていうのは、結構、自分は中で自力でやってるつもり
でも、外に出てみたら、先生の言う事を、ただ、聞いてただけっ
ていうのに気づいて、いざ、自分がどうやっていいか、わかんな
い時もあるんですけど、その時に人に聞くのもいいんですけど、
自分でどれだけ考えて、自分が正しいと思った方向に進めるか。

(映像:寮)
ナ:午後9時。練習が終わって、遅い夕食の準備です。
(餃子を焼く音:ジュー・・・・・)

絵里さん:すごい運動したら、おなかすくので、夜はおかわりし
てます。一杯めはふりかけで食べて、二杯めは納豆かけて食
べるとか。

質問:お友達とか作るのは大変?(声、あり)

絵里さん:はい。大変ですねぇ。ハハ…。なんか、あのぉ、高校
時代とかは、自然に友達ができたんですけど、大学は、私以上
に周りが、もう、すごい、すごい人がいっぱいいるので。
難しいですね。友達を作るのに…。難しいです。

ナ:一人の夜は、お母さんとFAXで話します。
(FAX送信の音:ズーーー・・・・・)

絵里さん:自分が“ぼぉ〜…”っとした時(落ち込んだ時)に、
(FAXが)来たことがありますので、すごく、励みになります。

(映像:お母さんからのFAX 音:ズルルル ズルルル ズルルル)
絵里さん:(母のFAX)「ダンスの勉強がんばって、体に気をつけて、
しっかり食べてね。神戸大会で逢うのを、楽しみにしています。
母より。


(映像:7月→体育館で練習する、絵里さん)
ナ:土曜日の誰もいない体育館に、絵里さんの姿がありました。
体をいっぱいに使って、ダンスのイメージをふくらませていきます。
高校時代は仲間と一緒に、厳しい練習で、お互いを高めあって
きました。
しかし、大学では、自分を高めるのは、自分ひとりの闘いです。

絵里さん:えー、例えば団体になった時に、
 「“木”というイメージをして。」
と言われたら、すぐできるようになりたいので。
あの、考えないで、すぐにできるように。
体を。自然にできるようにするのが、ちょっと遅いので、そういう
ところが難しい。

男子学生:テスト、生理学、落とした?

絵里さん:(笑いながら、うなづく。)

男子学生:落とした?うそ。(笑)

ナ:絵里さんのダンサーとしての実力が試される時が迫っていま
した。ソロの創作ダンスを発表するのです。


<C.M.>


(映像:寮で料理をする様子)
ナ:一人暮らしをはじめて、4カ月になりました。

絵里さん:わぁー!! 焦げてる!

ナ:隣部屋の山下裕子さんは、高校時代、全国大会で戦った、ラ
イバル校のダンス部員でした。

山下裕子さん:最初は見てる時に、「スゴイなぁ〜。」っていうだけ
で、すごい、近寄りがたい…じゃないんですけど、そういうところが
あったんですけど、やっぱり、こう、一緒に生活したり、部活一緒
にやってく中で、やっぱり、今までやってきた過程は、やっぱり、
経験してきた事は違っても、どこかで、こう、通じている部分とかが
沢山あるっていう事に気づいて、すごい、今では何でも相談したり
とか、こう、二人で“イイ感じ”でやっていけてるっていう所が。

(映像:テレビを見るふたり)
(テレビ/歌:“焼けたサンタンの肌に 胸がジンジンと響く
夏の太陽が 嗚呼 燃え上がる…”「パシフィック ホテル」
サザンオールスターズ)=歌に合わせて振り付けをする二人


(映像:9月 体育館)
ナ:ダンス部恒例の、1年生による、ソロ発表会の日です。
「生命(いのち)」という作品を発表します。
今回は音楽は使わずに、無音で踊ることにしました。

絵里さん:「生きる」っていうことを大切にして、私は生きているん
だと言う事を表現してみたくて。音楽がいらなくても、踊れるん
じゃないか?っていうのが、私の中には思っているので、音楽
無しでも踊れるっていうことを、多くの人々にわかってもらいた
いなぁ…と、思いました。

音の無い世界… 「まるで音の無い世界」っていうのを教えたい
と思います。
 

(映像:音楽とともに踊る、学生。それを見る、皆の様子。)
(映像:無音で踊る、絵里さん。それを見る、皆の様子。)


質問:「絵里さんのソロを見て、どうでしたか?」(字幕スーパーのみ)

学生:音楽はいつもあるものだという固定概念があったんですけど、
音楽が無くても、物足りなさを感じなかった。

筑波大学 村田芳子助教授:むしろねぇ、彼女が、聞こえるとか聞こ
えないとねか、音があるとかないとか、あの、多分、そういうことをね、
見てる人に、あの、思わせないっていうことが彼女のいい所だと思う
んですよ。今まで自分が身につけたもの、持っている動き、それから
表現力、全てを結集した、いい作品だったと思います。

(映像:部屋)
ナ:先輩や教授の評価は高く、満足の行く発表だったというのに、
その日の夜、絵里さんにはいつもの元気がありませんでした。

絵里さん:あんまりムリにしすぎると、なんか、前に進めないな…
って、はじめて実感しました。今までは、つらいめにあった時に、
「でも、がんばれる!!」という気持ちがあったけど、なんか、今回は、
なんか、ちょっと。大学は、やっぱ、一人で進む、自分の力で進む
じゃないですか。だから、高校の時は、みんなで一つの目標に向
かっていくので、一人がだめだなぁと思っても、残りの人が支えて
くれて、こう、あったんですけど(宮下→ジェスチャー:みんなで集
まって目標に進んでいく様子)、大学は一人じゃないですか。
そういうのを感じて、重みが。

ダンスも集中してるんですけど、ダンスよりも家族の事が大きくな
ってきて。例えば、耳が聞こえなくなった時に、なんか、普通は入
園してもあずけられる所だったんですけど、私の場合はできなくて
(宮下→「そこの幼稚園に入れなくて。」の意。)、(入園)できる所
を探してくれたり、幼稚園とかを。靴も小さかったみたいで、サイズ
がどこに行ってもなかったんですよ。見つかるまでがんばって探し
てくれたし。

みんなはどんどん、自分の仲間を作って、その仲間と楽しんでいく
感じなんですけど、自分は家族から離れられないですね。
なんか、頭に「家族」っていう…。なかなか離れられない。


(映像:駅)

ナ:「どうしても前に進めない」「家族に会いたい」
絵里さんは3日間だけ、ふるさと福岡に帰ることにしました。

(映像:騒々しい、駅構内)
絵里さん:ただいまぁ〜。

父:お帰りぃ〜。遅くなったけ、乗ってないのかと思った。

絵里さん:は?

父:乗ってないのかと思った。

絵里さん:もどってない?

父:乗ってないのかと思った。

絵里さん:あぁ〜。乗ってるよ。

父:さみしかったの?

絵里さん:あぁ〜…、さみしかった。

父:お父さんに会ったら、安心やろ?

絵里さん:はっ?

父:お父さんに会ったから、安心やろ?

絵里さん:安心って?いや…、福岡に…。お父さん?…。まぁね。

(映像:車の窓から外を見る、絵里さん→自宅。家族の会話)
父:かわいい。かわいい。

絵里さん:はっ?

父:かわいいの。子どもは。

絵里さん:子どもは…

ナ:絵里さんが向かったのは、近所の焼き鳥屋さんです。

焼き鳥屋さん:あれぇ?帰ってきたん?

絵里さん:はい。

焼き鳥屋さん」あらぁ、お帰り。

絵里さん:さみしくて、帰ってきたわ。

焼き鳥屋さん:ちょっと待て。おっちゃん、抱いてあげる。
いいじゃないかぁ〜、おまえ。

絵里:(笑)

ナ:溝田さん(焼き鳥屋さん)は時々、故郷(ふるさと)を離れて
暮らす絵里さんを、FAXで励ましているのです。

溝田さん:筆不精やけんさぁ、書ききらんたぁ。

溝田さん:自分の道を行け。わかるか?

絵里さん:はい。

溝田さん:だから、ストレス、たまるたい。ね。 がんばれや。

(映像:母校のダンス場)
ナ:翌日、母校のダンス場に、絵里さんの姿がありました。
自分が踊っていた作品を、つきっきりで後輩に教えます。
絵里さんに笑顔が戻っていました。

(映像:駅)
父:絵里ちゃん、絵里ちゃん。卒業式までもてたらね、

絵里さん:はっ?

父:卒業式までもてたらね、一緒に行こうねって。

絵里さん:卒業式まで?

父:うん。

母:お父さんとお母さん、卒業式は二人で行こうねって。
(笑)卒業できたらね。

絵里さん:あの、遠い時はどうしてるかなぁ…とかいろいろ思っ
てたんですけど、ほんとに、「みんな、がんばっているんだー!!」
と思って、自分に負けたらいけないなぁ〜と、思いました。

(映像:2001年3月 自転車に乗る、絵里さん)

ナ:4月のリサイタルに向けての作品作りがはじまりました。

(映像:学生の話を聞く、絵里さん)
学生:+++。で、下はパンツスタイルって決めている事だから。

絵里さん:手とか、もっと使えばできるかもしれないって言うことで、

学生:(笑)

絵里さん:えっとねぇ、何て言えばいいんだろう。

(映像:絵里さん、アップ)
絵里さん:あの、小さい頃は、私だけどうして耳が聞こえないのか?
っていうのを不思議に思っていたんですけども。
でも、今、その、耳が聞こえないっていう事は、素晴らしいものだ
なぁ〜って、思いました。はい。思ってます。

例えば、「音楽が聞き取れない」って言う事を、今まで苦しんでき
たんですけれども、でも、それを乗り越えれば、きっと必ず、「何
かが見えてくる」というものを、神から与えられたんじゃないか?
と思うので。

まだまだ乗り越えてないですけども、でも、何かが見えてくるもの
ではないか?と、私は感じてます。

もっともっと、自分らしい生き方を、もっとしていって。
あのぉ、まだ、時間はかかると思うんですけれども、両親を安心
させたいと思います。


(映像:絵里さんのソロダンス作品)

ナ:「生命(いのち)」 西畑絵里 (宮下→音楽なし。)

ナ:「たくさんの人達に 生命(いのち)を与えられて
私は今 ここにいる 
聞こえない私にできることは…
生きることの意味を求めて
今を大切に生きたい

平成13年3月29日(木)放送

      制作・著作:九州朝日放送

       <文字版制作>  ☆宮下あけみ☆
         【E-mail】   akemizo@beige.ocn.ne.jp




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