人工内耳友の会−東海−
「人工内耳」ある家族の選択

平成14年4月3日

【文字版】日本テレビ ズームイン SUPER
ズームアイ!!
 【ママと呼んで… “人工内耳”ある家族の選択】

【文字版】 制作&配信 ☆宮下あけみ☆ akemizo@beoge.ocn.ne.jp
【協  力】 人工内耳友の会 [ACITA(アシタ)]


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【皆さまへ。】
こんにちは。☆宮下あけみ☆です。

2002年4月1日(月)午前7時58分〜8時22分に放送されました、日本テレビ「ズームイン SUPER」の中の、『ズームアイ!!  【ママと呼んで… “人工内耳”ある家族の選択】』の、【文字版】を作成いたしました。

「聞こえてくる限りのもの」を「文字化」させていただきましたので、会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま打たせていただきました。不明な点は、「+++」と記しております。

【制作・著作権】は、【日本テレビ】様です。聴覚障害者の方々がこの番組を視聴なさる時は、ご活用下さいませ。

この文字版は、私、宮下が個人的に作成し、掲載していただいているものです。

最後になりましたが、【文字版】として文字化し、配信する事に対し、ご相談に応じてくださった【日本テレビ】様に、心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。

なお、インターネットによる【文字版】の転送転記はできませんので、こちらのURLをご紹介するという形でお伝えくださいませ。

今後とも、宜しくお願い申し上げます。

    <文字版制作&配信>  ☆宮下あけみ☆
         【E-mail】   akemizo@beige.ocn.ne.jp



平成13年4月1日放送

7:58a.m.【タイトル映像:「ズームアイ!! 人工内耳」】
 【ママと呼んで… “人工内耳”ある家族の選択】

(映像:スタジオ)
スタジオアナウンサー:福沢 朗 氏 / さ、続いては8時の特集、「ズームアイ!!」です。

(映像:特集、はじまり。)
ナレーション(以下、「ナ」と記す。)/頭部につけられた機械によって、子ども達は、音の世界の住人(じゅうにん)になりました。 「人工内耳」。それは聴覚に障害を持つ人々の、新しい光です。 全ては、これを耳の後ろに埋め込む事からはじまります。<映像&スーパー:頭部に埋め込まれる人工内耳>

(スーパー:音→電気信号→聴神経)
音が聞こえない原因の一つに、耳の奥の神経の障害で、音が伝わらない事があります。 人工内耳は、これを補(おぎな)い、聞こえを取り戻そうとするものです。人工内耳を受け入れる…。 それは家族にとって、大きな決断(けつだん)でした。

(映像:ある家族)
父親 / 「タン!!!」<タンバリンをバチで叩く音。>

(スーパー:揺れる想い 未来への希望)
ナ / 幼いわが子は、高度の難聴(なんちょう)。 補聴器を使っても、ほとんど音を聞き取る事ができません。 2歳9ケ月になる、松村凌我(まつむら りょうが)くんには、母、邦子(くにこ)さんの声も届きません。 どんどん言葉が遅れてしまう…。 「ママ」と言う言葉を知らない。 人工内耳への期待を、幼いわが子が受ける手術への不安…。 揺(ゆ)れ続けた母の想い…。 聴覚障害者にとって、一つの可能性を開く、人工内耳。 母の声は、幼いわが子に届くのでしょうか…。

(映像:人工内耳)
ナ(堤 信子) / こちらが、「人工内耳(じんこうないじ)」と呼ばれるものです。 個人差はありますが、この、シリコンでできたこちらの機械を耳の裏側に埋め込む事によって、聴力を取り戻せるかもしれないという、最新鋭(さいしんえい)の機器なんです。

これは平成6年に健康保険が適応されて以来、現在ではおよそ年間400人の人たちが手術に踏み切っています。 今回は、その人工内耳の手術に望んだ2歳の男の子と、その家族を見つめました。

(映像:埼玉県立大宮ろう学校)
ナ / 埼玉県立大宮ろう学校。 聴覚に障害を持つ二十歳(はたち)までの生徒、およそ200人が通っています。 重度の難聴を抱える松村凌我(まつむら りょうが)くんも、週に1回、ここに通う一人です。 ここでは遊びを通じて、音や言葉があるという事を教えています。

太鼓の音 / ドンドン!!

ナ / 太鼓(たいこ)の音を感じたら、オモチャを箱に入れる。凌我(りょうが)くんは補聴器をつけても、大きな音を感じるのがやっとなのです。この子に本当に人工内耳は必要なのか…。 補聴器でもいいのでは…。 母、邦子さんは迷っていました。

(映像:凌我くんの写真)
ナ / 平成11年生まれの凌我くんは、もうすぐ3歳。 1歳半の時に受けた聴覚検査で、重度の難聴であると知らされました。 邦子さんはその時の事を、ショックで覚えていないと言います。 

松村さん一家は4人家族。 4つ上の兄、大我(たいが)くん(6歳)の耳は全く異常はありません。 どんどん、新しい言葉を吸収していきます。 

大我くん / パパ、やってよ。

パパ / ++、やれよ。<父:弥寿浩(やすひろ)さん)>

ナ / 凌我くんだけが家族の中で、音の無い世界にいるのです。

(映像:東京新宿 東京医科大学病院)
ナ / 凌我くんの障害がわかってすぐに、東京医科大学病院への通院がはじまりました。 「人工内耳の手術を受けさせる。」 担当の医師と繰り返した話し合い。 母、邦子さんは、決心したつもりでした。

主治医 河野 淳 医師 / いろんな聞こえの検査をしていますけれども、まぁ、あの、100dB(デシベル)、高度難聴(こうど なんちょう)で反応がないという事。これが「人工内耳」というもので…。<人工内耳を机に置く。>

ナ / 決断を迫るように、人工内耳は示されました。 はじめて目にする機器。 長さ6センチ。 こんな異物が、わが子の頭に埋め込まれるのです。 しかもそれは問題がない限り、一生、取り出される事はありません。

母 / 一生(電極を)、入れっぱなしですよね…。

ナ / 母にうつる、迷いの色。

母 / 普通の手術と、またやっぱ違うんで、勝手にやってもいいのかなぁ…。 小さいから、まだわからないから、親の判断ですよね。 いいのかなぁ…と思ったり。

ナ / 「これは親の勝手だろうか…。」 ここ1年、いつも心には、この問いかけがありました。 言葉を認識できる脳神経の成長は、3歳ごろまでに決まると言います。 凌我くんはもうすぐ3歳。 母、邦子さんに、迷っている時間はありませんでした。

(映像:人工内耳)
ナ / なぜ、人工内耳で音は聞こえるようになるのでしょうか? 通常、耳から入った音は鼓膜をふるわせます。 中耳(ちゅうじ)を伝わり、かたつむり状の蝸牛(かぎゅう)で、振動は電気刺激として脳へと伝わるのです。 しかし、蝸牛にある有毛細胞(ゆうもう さいぼう)が損傷(そんしょう)していると、音は電気信号に変えられず、脳に伝わりません。 人工内耳は蝸牛に電極を埋め込み、音を電気信号にして刺激し、聞こえを取り戻そうとするのです。 つまり人工内耳は、3〜4万あるといわれる有毛細胞のかわりをするのです。

(映像:人工内耳販売メーカー 日本コクレア)
日本コクレア 渡辺 真一 さん / これはですね、人工内耳の仕組みを、光で見えるように作られたものです。 

ナ / 3〜4万の細胞のかわりをするのが、わずか22個の電極。 
「あー」 <「あ」に値する所が光る。>
「いー」 <「い」に価する所が光る。>
「うー」 <「う」に値する所が光る。>
「えー」 <「え」に価する所が光る。>
「おー」 <「お」に値する所が光る。>
22個の電極のうち、平均6個を音により使い分け、それを「言葉」として認識するのです。 

(映像:手術前日)
ナ /凌我くんの手術を明日にひかえて、入院道具と不安を抱えた、母、邦子さん。 その背中には、悲壮(ひそう)な決意がありました。
<泣く、凌我くん…。>
なれない病院と、母の悲痛(ひつう)な思い…。

母 / 思いやられるわ…。 一人で入院なんだよ。 

ナ / 凌我くんは、気持ちを身振りでしか伝える事ができません。その動きが言っています。 「一緒に帰りたい!!」

消灯時間。
「母親としてこうするしかなかった…。」 必死に自分に言い聞かせる邦子さんがいました。

母 / 次、会うのは、明日の朝じゃないですか。 「もう、引き返せないんだなぁ…」と思ったら… やっぱり… 「このまま連れて帰っちゃおうかなぁ…」って、やっぱり、思ってしまいましたけど…。(涙)

ナ / 凌我くんの手術は明日です。

<C.M.>

(映像:手術当日)
ナ / その日はやってきました。 わが子に人工内耳が入ります。 

凌我くん / あぁーん!! えぇーん!!(泣き声)

母 / 凌!! <走っていく。>

ナ / 母、邦子さんには、昨夜、一緒にいられなかったわけも、今日、手術を受ける意味も、凌我くんに話して聞かせる事はできません。 親子の会話ができる未来のために、人工内耳の手術を決心しました。

母 / がんばれ! がんばれ!

凌我くん / うん!

母 / よし!! がんばるんだもんね!

母 / <耳の後ろを指差す、凌我くん。>そうね。 ここね。 チョキ チョキ チョキ…。 ここもチョキチョキするの? がんばれ! がんばれ!

ナ / 手術の予定時間は、2時間です。<時計が8:25をさしている。>
名前を呼んでも、こっちを向いてくれない息子。 重度の難聴を告げられて、目の前が真っ暗になった日。 邦子さんにはここまで、長い道のりでした。 

凌我くん / あ゛―ん!! <泣く、凌我くん。>

父 / 大丈夫!

母 / がんばれ!

凌我くん / あ゛―ん!! <エレベータが閉まって、動き出しても泣き声が聞こえる…。>

ナ / 手術を受ける怖さよりも、母と離れるつらさに泣き叫ぶ凌我くん。 大好きなママとは、しばしの別れです。

母 / <閉まったエレベータに耳をつけて…。> 声、する…。 まだ、する…。(涙)

(映像:午前9時 手術開始)
ナ / 人工内耳の埋め込み手術がはじまりました。 電極を挿入(そうにゅう)する場所を想定し、耳の後ろを切開(せっかい)します。 決して難しくないといわれる、この手術。 しかし、まれに、めまいや顔面マヒ等の後遺症が一時的に出る事もあるそうです。 凌我くんの未来のために、邦子さんは祈ります。 

手術開始から1時間。 いよいよ電極が挿入されます。 頭に設置された、「インプラント」と呼ばれる電極。 

手術開始から2時間。 2歳のわが子が全身麻酔の手術に耐えました。 
<涙の母、邦子さん。> 駆け寄りたい!! 抱きしめてあげたい!! でも…。ほっとした気持ちの一方で、凌我くんの姿に胸がつまります。「この子はいつか、私の決断をわかってくれる。」 …そう、母は思いたい。人工内耳の手術は、邦子さんの“たたかい”でもありました。

母 / <夫に。>もう、入っちゃってんだねぇ…。 入っちゃってんだ…。

ナ / 1時間後、凌我くんが麻酔(ますい)から目覚めました。 

凌我くん / あ゛―!! <泣き声>

母 / <声と手話で> 痛い? 痛い?

ナ / 「淋しかったよ、ママ!!」 凌我くんは訴えます。

母・父・凌我くん / <手話と声で> 「一緒!!」 <両手の人差し指を平行にくっつける。>

ナ / 手話で確かめ合う、親子の絆(きずな)。 つらい思いを1つ、乗り越えた。 しかし、親子にとって本当のたたかいは、これから。 人工内耳を入れてから、どう、音を覚えていくかが勝負なのです。

(映像:静岡大学情報学部大学院 情報学研究科)
ナ / 人工内耳の音について研究している、静岡大学情報学部の北澤教授を訪ねました。 

女性 / <ドアをノックする音。>トントン。 失礼しまぁ〜す。 こんにちはぁ〜。 どうぞよろしくお願いしたしますぅ。

情報学部 北澤 茂良 教授 / よろしくお願いします。

ナ / わずか22個の電極で音を聞き取る人工内耳。 ある言葉を人工内耳を通したら、どう、聞こえるかを再現していただきました。 

(スーパー:人工内耳装用者が聞いていると思われる音)
コンピュータから聞こえる音 / 「私は、ズームインスパーの++ノブコです。」<宮下→すっごく聞きづらい、タクシー無線のような音。>

堤 / 「私は、ズームインスーパーの、堤 信子(つつみ のぶこ)です。」

コンピュータから聞こえる音 / <字幕スーパー入りで。>「私は、ズームインスパーの堤信子です。」<宮下→字幕が出たので、氏名がわかった。>

ナ / 言葉がわかって、やっと聞き取れる程度なのです。

(映像:東京中野 チルドレンセンター)
ナ / 東京中野にある、チルドレンセンター。 人工内耳をつけた子ども達にリハビリを行っています。 人工内耳から入ってきた音を「言葉」としてとらえ、話せるようになるには、長期の訓練が必要となります。 

先生 / じゃぁ、最初、ちょっと緊張を取るためにね、カルタからやろうか。 ここで座ってやろう。

ナ / 手術して1年。 小堀 花(こぼり はな)ちゃん(4歳6ヶ月)は4度目のリハビリです。

先生 / おはよう。

花ちゃん / おはよう。

先生 / そうだね。 じょうずだよ。 これは? 「シー」。

花ちゃん / 「シー」。

先生 / そうだね。 

(スーパー:視覚に頼らないよう、手で口を隠す。)
先生 / よく聞いてね。 ママ、よく聞いてね。 「パンダ」

花ちゃんのお母さん / 「パンダ」。<口を隠して。>

先生 / 「パンダ」。<口を隠して。>

花ちゃん / 「パンダ」。

先生 / そう。 「パンダ」だよぉ〜。

ナ / リハビリ後は、その日の成果と今後の課題について、家族とスタッフが話し合います。 

先生 / だから、花ちゃんは、そう言った「聞く態度」とか、そう言う部分がちゃんとできれば、伸びていくと思うんですよね。 今、基礎作りっていうか、そういう部分がちょっと、まぁ、まだできあがってなかったんで。

ナ / 言葉の習得は、親も、その方法をともに学ばなければなりません。

4年間、ここに通い、リハビリを続けてきて、今年普通小学校に就学する、伊藤 奈恵(いとう なえ)ちゃん。(6歳9ヶ月、リハビリ歴4年。)

奈恵ちゃん / 「歯をみがく。」

先生 / そう、じょうず。 これは?

奈恵ちゃん / 「ゴミ箱に捨てる。」

先生 / そう。 「ゴミ箱に捨てる」だね。 「ゴミを、捨てる」。 もう一回、言って。

奈恵ちゃん / 「ゴミをステイル」

先生 / 「ステイル」じゃなくて「すてる」。 

奈恵ちゃん / 「すてる」

先生 / そうそうそう。

チルドレンセンター 船坂 宗太郎 所長 / その子にとっては、まず、「音」っていうのをはじめて体験するわけでしょ。 人工内耳をつけたときにですね。 で、一般には音を嫌がるんですね。 要するに今まで自分の感覚になかった感覚でしょう。 それがイヤじゃなくて、お母さんが一生懸命、口を動かして、私に何か意味のある事をしてるんだ、という事を、まず、悟ってもらって、言葉そのものに興味を持ってもらわなくちゃいけないんですね。 ですからそういう訓練は是非必要なわけです。

ナ / 凌我くんが人工内耳の手術を受けて、10日がたちました。この日、埋め込まれた電極を通し、はじめて音が伝わります。 人工内耳をつけても、しっかり音が聞こえるかは、個人差があります。 はたして凌我くんに、どんな反応があるのでしょうか? 頭に埋め込まれた電極に、外部機器が取り付けられます。

凌我くん、何がおこるか、ちょっと、戸惑い気味です。

まずはパソコンにつなぎ、電子音を送り、反応を見ます。 耳元で叩いた太鼓の音にしか反応しなかった、凌我くん。 電子音が聞こえたら、おもちゃを箱に入れる事になっています。

医師 / これから音、出します。

ナ / はじめて音が入ります。<この音は、テレビからは聞こえない。>

<目を“キョロ!!”っとさせて、オモチャを箱に入れる、凌我くん。>

医師 / 聞こえる?

医師・母・父 / わぁ〜。 (拍手)

ナ / 反応がありました。 凌我くんに新しい音が伝わっています。そしてついに、集音マイクを使い、母の肉声が入ります。

母 / 「凌ちゃん」 <ちょっと、振り向く> 「凌ちゃ〜ん」。

父 / 「凌」。

母 / あ、聞こえてる!

凌我くん / あ…。 

ナ / はじめて聞く母の声。 凌我くんには、どう、聞こえたのでしょうか。

母 / 凌、凌。 <自分を指さしながら。> 「ママ」。 凌くん、凌くん。 「ママ」。

母 / あとはちょっとづつ(音)を入れていって、それが終わってからですね。 本人はちょっとね、不安だけだろうけれども、はじめだけだからね。 がんばってね。 ね。

ナ / はじめて覚える言葉は、やっぱり、「ママ」なのでしょうか。

(映像:東京医科大学病院)
ナ / 今朝は、凌我くんが手術を受けた、東京医科大学病院の耳鼻咽喉科にお邪魔しております。 松村さん親子にもご出演を依頼していたんですが、お母さんの邦子さんが風邪をひいてしまって、今朝はやむなく、自宅のほうにいらっしゃいます。 かわりにお手紙をお預かりいたしましたので、ちょっと、紹介いたします。

(映像:凌我くんのお母さんからの手紙)
「凌我の耳が重度の難聴と聞いた瞬間、目の前が真っ暗になりました。 それ以来、自分を責め、現実を受け止める事ができず、ただただ悲しむだけの毎日が続きました。そんな中、ろう学校で出会った先生には、様々な思いをぶつけてしまいました。 けれども先生は、そのたびに励ましてくれて、そのお陰で私は現実を受け止め、凌我の将来について考えられるようになったのです。 そして人工内耳を知った時は、希望と言う光が、空から降り注いできたかのように救われた気持ちになったのを覚えています。

ただ、決断へのあと一歩が踏み出せませんでした。 すでに手術を受けられた親御さんたちに話を伺ったりして、迷いを振りほどき、ようやく決心しました。<この2行は、文章がまとめられています。>

凌我は手術から1ヶ月たち、今は確かに聞こえています。 まだ凌我には、意味のある音というよりも、雑音のように聞こえているのかもしれません。 それでも以前より意識して、多くの音や言葉を聞かせるようにしています。

あんなに悩み苦しんだのがうそのように、今は、希望と楽しみに満ちています。 私達を、どんな時でも強く励まし、本当に親身になって支えてくれた多くの友人に、心から深く、感謝しています。 私達はいつか、『親子の会話』ができる日を楽しみに、凌我と共に、頑張っていきます。」

と言う、お母様のお手紙でした。そして、今朝はですね、執刀医(しっとう い)でもあります、河野(かわの)先生にも、お越しいただいています。 おはようございます。河野先生、凌我くんのその後の経過はいかがですか?

東京医科大学病院耳鼻咽喉科 河野 淳 講師 / そうですね。 いろんな音が入って「戸惑い」と「発見」の時期にあると思います。

ナ / はぁー、そうですか。 まだまだ、これからという事ですね。 あの、凌我くんの「今後の課題」というのは、どういうとこになるんでしょうか?

河野講師 / まずやることはですね、凌我くんの聞き取りの能力にあわせて、プログラムをセッティングする事です。 機械から入る音をちゃんと入るように、プログラムを設定する。 そうする事によって、いろんな音が更に入っていきます。 それを理解して、最終的には、ちゃんと言葉が、話しができるようにできると思います。

ナ / なるほど。 これは少しづつ、あせらずに、ゆっくりと言う事なんですね。

河野講師 / そうです。

ナ / 経過も順調という事で、えぇ。 コミュニケーション手段の1つとしての人工内耳なんですが、やはり、希望が持てる選択肢(せんたくし)が確実に1つ増えたという事になりますね。

河野講師 / そうです。 選択肢の1つです。

福沢アナウンサー / 先生、あの、1つ、お伺いしたいんですが、人工内耳を埋め込むと、それは生涯、再手術の必要とかないんですか?

河野講師 / えーっと、今の所は、「半永久的」と言われております。

福澤アナウンサー / そうなんですか。 しかし、乗り越えるべき精神的なハードルがいくつかあると思うんですけども、きっと、今、テレビをご覧の中でも、この、人工内耳に関して悩んでいるご家族、多いと思うので、もし、そう言ったかたには、どのような言葉をかけますか?

河野講師 / えーっと、特にですね、お子さんの場合には、ご両親さま、いろいろとお悩みになってるかと思いますが、一度、専門の病院でよく相談されて、いろんな現状を聞いていただいて、お子さんのために、一番何が良いか、考えていただければいいかと思います。

福澤アナウンサー / 現状とういうのは、安全性も含めてという事ですね。

河野講師 / そうですね。 

福澤アナウンサー / なるほど。 いやぁー、工藤さん、いかがでしたか?

工藤氏 / 手術はそれほど難しくないという事なんですけれども、しかし、頭の部分にメスを入れるんですからね。 それは凌我くん自身は全くその意味がわからないわけで、両親の決断にかかっているわけですけれどもね。 それだけに、はじめて反応ができた時のご両親の喜びって言うのは、どんなだっただろうと思いますよ。 

福澤アナウンサー / 心待ちにしていらっしゃると思いますけども。 久保さんも。

久保氏 / これからのね、粘(ねば)り強いね、あせらずに、今、おっしゃってたように、本当にじっくりと子どもの能力に応じてですね、やっていただきたいなと。 是非、成功していただきたいと思います。

福澤アナウンサー / 須藤さんは、いかがでしょうか?

須藤 / スポーツの場合でもね、リハビリは焦(あせ)りが一番いけないのよ。 だから、根気(こんき)よく、根気よく、相手の気持ちと一緒になってね、やってほしいと思いますね。

福澤アナウンサー / そうですね。 焦らない事ですね。先生、今日は朝早くからどうもありがとうございました。このあとは、最新のニュースをお伝えいたします。
(8:22a.m.)


平成14年4月1日(月)放送
「ズームイン SUPER」
『ズームアイ!!  【ママと呼んで… “人工内耳”ある家族の選択】』
制作・著作 : 日本テレビ

   <文字版制作&配信>  ☆宮下あけみ☆
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