人工内耳友の会−東海−
人工内耳による聴覚の回復

平成13年12月20日

【文字版】 MX-TV ガリレオチャンネル
【 よみがえる音の世界
〜人工内耳による聴覚の回復〜 】


【皆さまへ。】
こんにちは。☆宮下あけみ☆と申します。

東京地区で2001年12月9日(日)午前8時00分〜8時30分、(再放送=12月16日)に放送されました、東京メトロポリタンテレビジョン MX-TV(14チャンネル)『ガリレオチャンネル 【よみがえる音の世界〜人工内耳による聴覚の回復〜】』の、【文字版】を作成いたしましたので配信させていただきます。

「聞こえてくる限りのもの」を「文字化」させていただきましたので会話もそのままです。また、聞き取りにくい声や音は、自分に聞こえたまま、打たせていただきました。不明な点は「+++」、補足解説は< >で記しております。

【企画制作】は【ワック株式会社】様です。

この番組には「字幕(オープンキャプション)」がついており、聴覚障害者の方々も内容を把握できるものでしたが、【文字版】としても、配信させていただく事にいたしました。

尚、この【文字版】と「字幕」とは、異なります。

この文字版は、【ワック株式会社】様より、私、宮下が個人的に了解を得たものです。

この【文字版】の個人、団体等への【インターネットを利用しての転送・転記、ホームページや会報への掲載、及び、FAX・プリントアウトしての配信・配布】等、「自由」です。

最後になりましたが、【文字版】として文字化する事に対して、快くご了承して下さいました【ワック株式会社】様に、心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。

尚、【文字版】に対するお問合せ、ご意見、ご感想がございましたなら、宮下まで、直接ご連絡下さいませ。また、この【文字版】は、「Word」にて作成しております。プリントアウト、転送等のため、「Word」での配信をご希望される方は、宮下までD.M.にて、ご連絡下さいませ。

今後とも、宜しくお願い申し上げます。

      <文字版制作&配信>  ☆宮下あけみ☆
           【E-mail】     akemizo@beige.ocn.ne.jp



平成13年12月9日

(映像:「GALILEO CHANNEL ガリレオチャンネル」
【 よみがえる音の世界
〜人工内耳による聴覚の回復〜 】


(映像:手や足をたたいて音を出している、男女4名)
ナレーター 向坂真弓 (以下、「ナ」と記す。) / 「洗足学園(せんぞくがくえん)パーカッションフレンズ」。 このアンサンブルは、人工内耳装用者が楽しめる音楽を演奏しています。 音楽を聞いているのは、人工内耳をつけている人たちです。 人工内耳とは、外の音を直接聴神経に伝え聞こえるようにする、難聴者のための医療機器です。 

人工内耳装用者の一人、真野(まの)さん。 真野さんは高度難聴をわずらい、両耳が全く聞こえませんでした。 しかし、人工内耳埋め込み手術によって、みごと、聴覚の世界を回復し、音楽を聞けるようになったのです。

【タイトル :よみがえる音の世界〜人工内耳による聴覚の回復〜】

(映像:東京医科大学病院)
ナ / 2001年11月、東京医科大学病院。 手術を明日にひかえた真野さん。真野さんの耳が突然聞こえなくなったのは3年前です。 原因不明の突発性難聴(とっぱつせい なんちょう)でした。 

真野守之さん / そうですね。 3年前に突然聞こえなくなった時には、ま、その時もちょっと、聴力、落ちてたので、補聴器つけたんですよね。 それが、「補聴器がこわれたんだ。」と思うくらい静かになって。 補聴器をあれこれ、いじったんですけども、全く違っていたんですね。 急に静かになったと言いますか。 

ナ / 人工内耳の手術を執刀するのは、耳鼻咽喉科の河野先生。 いったい、難聴にはどのような原因があるのでしょうか?

東京医科大学病院 耳鼻咽喉科 河野淳先生 / 一般的には進行性の原因不明の難聴と言われているもの。その他には、髄膜炎(ずいまくえん)で難聴になるものですね。 成人の方に多い、最近特にストレス等でですね、男性の働き盛りの方に多い、いわゆる、突発性難聴。 なんらかの仕事で忙しいとか、寝不足、過労、精神的ないろんな悩み等があって、知らない間に難聴になると言うケースが多いですね。 

ナ / 真野さんは道路の騒音(そうおん)も聞こえません。 突発性難聴になって以来、仕事や家庭に、大きな影響がありました。 

真野守之さん / 「仕事(営業)について」 コミュニケーションというのが結構大事でしたので、打合せと言うものが、もう、全くできないですね。 まぁ、筆談(ひつだん)と言う手もありますけども、いわゆる、その、お客様<の所>に行った所での、現場、現場では、筆談は相手に負担をかけますのでね。 会話って言うものがなりたたないんですね。 単語、単語だけを。 筆談になると、単語だけを並べますし。 あと、あのぉ、少し、口話(こうわ)って言いますか、口を読めますんで、まぁ、なんとか…。 ですけども、「家族のコミュニケーション」とは言えないですね。 

ナ / 難聴の苦しさは、音が聞こえないというだけでなく、コミュニケーション不足によって、孤独感や疎外感(そがい かん)がつのる事だと、真野さんは言います。 また、車や自転車の音が聞こえないために、危険を察知(さっち)して、身を守る事ができません。 

(映像:手術の説明を受ける、真野さん)
ナ / 手術の前日。 河野先生に手術の説明を受けます。 全身麻酔や体に機械を埋め込む事に不安はありましたが、それ以上に、「音を回復したい。」という、強い思いがありました。 


(映像:耳のしくみの絵)
ナ / 音は空気の振動です。 耳はこの振動を鼓膜(こまく)によって受け取り、中耳(ちゅうじ)の耳小骨(じしょうこつ)を震わせ、さらに、内耳(ないじ)の蝸牛(かぎゅう)に伝わります。 

蝸牛をみたすリンパ液は、伝えられた音によって振動し、この「揺れ(ゆれ)」が、2万本を超える有毛細胞(ゆうもうさいぼう)を揺らします。 これが細かく分析されて、神経に伝えられます。 その後、聴神経を通って脳に送られ、はじめて、音として認識されるのです。

高度難聴の場合、有毛細胞が機能していないことが多く、大きな音を入れても、聴神経に伝わらないという難点がありました。 

この壁を乗り越えたのが、「人工内耳」です。 現在、日本で認可を受けている人工内耳は、オーストラリアとアメリカの製品のみ。 今回、真野さんが選んだコクレア社(オーストラリア)製品は、1985年から世界中で使われています。 


日本コクレア副社長 渡辺真一さん / 世界中では3万4千人のかたが使われております。 そのうち約半分がお子様ですね。 18歳以下のお子様に使われています。
 

(映像:人工内耳友の会ACITA)
ナ / 日本での装用者はおよそ2,200人。そのうち、子供が500人です。 全国60ヶ所以上の病院で手術が行われています。

日本コクレア副社長 渡辺真一さん / 中途失聴のかたは、年配の方も勿論、たくさんおられてですね、そう言う方が、失聴された時点から手話を習っていくのは、なかなか大変なものですから、そう言った意味で、やはり、今までのような音声言語を使える人工内耳というのは、非常に有効かと思います。

ナ / 人工内耳は手術費などを含めると、およそ400万円かかります。 しかし、1994年から健康保険が適用され、患者の費用負担はほとんどなくなっています。

人工内耳による方法は、外界の音を大きくして耳に入れる補聴器とは、根本的に違います。 人工内耳は、内耳が行っていた機能を、機械が代行しようと言う、大胆な発想から生まれました。 いったいそれは、どのようなしくみなのでしょうか。


(映像:人工内耳のしくみ)
ナ / 人工内耳は、4つの部分にわかれます。 まず、外部の音を拾う、耳かけ式のマイク。 マイクから拾った音を電気信号に変換するスピーチプロセッサ。 側頭部につけられた送信コイル。 体内に埋め込まれ、電気信号を蝸牛へ送る、インプラントです。 

日本コクレア副社長 渡辺真一さん / これが内部に埋め込まれるインプラントですけれども、この外部の送信コイルと受信コイルが皮膚(ひふ)を介して、こういう形でくっつきます。 そうしますと、信号が送受信によって、中のインプラントに伝わる、と言う事になるわけです。 

ナ / マイクに入った音は、スピーチプロセッサで電気信号に変換され、送信コイルに送られます。 体内のインプラントが信号を受信し、蝸牛の中に入った22個の電極に伝わります。 これが聴神経を電気刺激し、脳へ音を届けるのです。 人間の蝸牛は、音の周波数によって刺激を受ける部分が違い、入り口付近は高い音、奥のほうは低い音をとらえています。 

人工内耳では、小型のコンピュータで音声情報をデジタル変換し、蝸牛のしくみに合わせて、音を周波数ごとに分析します。 そして、外界の様々な音の中から、エネルギーの高いものだけを選び出し、周波数ごとに決められた電極から信号を送り出します。 こうして、高い音は蝸牛の入り口へ、低い音は奥へ送られるのです。


(映像:東京医科大学病院 手術室)
ナ / 東京医科大学病院、手術室。 真野さんには既に全身麻酔(ぜんしん ますい)が、かけられています。 

東京医科大学病院 耳鼻咽喉科 河野淳先生 / 耳の後ろの所から切開しまして、耳の後ろにある側頭骨(そくとうこつ)という骨をけずっていきます。 その中に内耳と言う所、そこに蝸牛と言う、いわゆる、聞こえの神経細胞がある場所がありますので、そこの所まで骨をけずって、そこの所に電極を入れる、という手術をします。

ナ / 内耳の近くには顔面神経が通っているため、傷つけないよう、慎重(しんちょう)に手術が行われます。 埋め込まれるインプラント。 電極の太さは、わずか0.6ミリしかありません。 蝸牛は直径1センチにもみたない、小さなきかんです。 その内部<蝸牛>に細い電極の先を挿入するため、手術は顕微鏡を使った、非常に細かいものになります。 

およそ3時間で手術は無事、成功しました。 はたして真野さんの耳は、聞こえるようになったのでしょうか。 傷が癒(い)えるまで、10日間ほどの辛抱(しんぼう)です。


医療テクノロジーの最先端、人工内耳。 しかもその進歩は、電極の先端を、脳にまで伸ばして行くほど、さらに高度なものになっています。 

(映像:虎ノ門病院)
ナ / 虎ノ門病院の熊川先生に話を聞きました。

虎ノ門病院 耳鼻咽喉科 熊川孝三先生 / 人工内耳はご存知のように、内耳が両方、だめになったかたのために開発されたものですね。 ですから、内耳がだめになったかたには、それ(人工内耳)でよろしいと。 しかし、もっと、更に脳に近い部分、例えば聴神経が切断されてしまった、傷害されてしまったかたには、人工内耳を埋め込んでも役に立たないのですね。 そういうかたのために開発されたのが、「聴性脳幹(ちょうせい のうかん)インプラント」。 我々は「ABI」と呼んでいますけれども、そういうものなんですね。 

(映像:聴性脳幹インプラント ABI : auditory brainstem implant)
ナ /「聴性脳幹(ちょうせい のうかん)インプラント」。 日本ではまだ二人の患者にしか使われていません。 人工内耳の電極が一列に並んでいたのと違い、これは線の先に電極が集中しています。 

虎ノ門病院 耳鼻咽喉科 熊川孝三先生 / 人工内耳というのは、側頭骨という骨の内部に埋め込んで、ここでまわりの神経を電気刺激するものですね。 

(映像:人工内耳のシステム)
ナ / ところが、聴神経の腫瘍摘出(しゅよう てきしゅつ)手術などで聴覚を切断した場合、人工内耳を埋め込んでも音は伝わりません。 そこで開発されたのが、「聴性脳幹インプラント」です。 

(映像:聴性脳幹インプラントのシステム)
ナ / 聴神経を通さずに、直接、脳幹(のうかん)の上にインプラントの電極を置き、電気信号を直接、脳に伝えるのです。 これは、外界の音が耳を通らずに、直接、脳に伝わるという、非常に画期的(かっきてき)なものなのです。 

虎ノ門病院 耳鼻咽喉科 熊川孝三先生 / そうですね。 基本的には今の成績は、やっぱり、人工内耳のほうが優れています。 ですが、ABI(聴性脳幹インプラント)もですね、今後、数年間、ハードとソフトの進歩が伴ってくればですね、最初に我々が人工内耳を見た時と、ほぼ現在と同様の成績が得られていますので、今後、数年間には、現在の人工内耳の成績に、ほぼ匹敵(ひってき)するようなものが得られると期待しています。 

ナ / 人工内耳、聴性脳幹インプラントなど、聴覚に対するテクノロジーの進歩には、目を見張るものがあります。 最近は、音を電気信号に変換する、「スピーチプロセッサ」を小型化し、「耳かけ式のマイク」と一体化した人工内耳も開発されています。 しかし、装用者の中には、「全く目立たないようにしたい。」という声も、少なくありません。 

虎ノ門病院 耳鼻咽喉科 熊川孝三先生 / 全てを、側頭骨、頭の下に、頭皮(とうひ)の下に埋め込んでしまうと言う事も、開発されています。 もしこれが可能になれば、見た目には全く難聴であるかどうかということは、わからないわけですね。 そのほうが、障害者のかたにとっても、いいはずなんですね。 

ナ / テクノロジーが生み出す、聴覚の未来。 人工内耳で聞こえる音の世界とは、どういうものなのでしょうか。


<C.M.>


(映像:富士見台 聴こえとことばの教室 三才児クラス)
♪(ピアノ)+先生の歌声 / ♪タイトル「森の音楽家」
     ♪ わたしゃ 音楽家 山の小鳥
       上手にフルート ふいてみましょう 

ナ / 東京都練馬区にある、難聴幼児のための通園施設です。 0歳から5歳までの、人工内耳をつけた多くの子供達が通っています。 

先生 / トマトかな?

男の子 / トマト。

先生 / 赤いトマト、あるかなぁ〜? トマト。 あ!! 違う? どれ? さつまいも。

男の子 / さつまいも

先生 / じゃ、マー君は、何?

ナ / 子供達は、人工内耳を通して先生の声を聞き、発音の訓練を繰り返しています。 

先生 / ようちゃんは、何?

ようちゃん(多分) / だいこん。

先生 / ゆみちゃんは?

ナ / 人工内耳を積極的に取り入れ、難聴幼児の言語教育に役立てている、徳光先生に話を聞きました。

富士見台 聴こえとことばの教室理事長 徳光裕子先生 / 小さい子どもの場合は、生まれた時から聞こえが悪いわけですから、聞こえないと言うより、聞こえが悪くて、それで言葉も発達しないわけですから。

ナ / 子供の体は、3歳の頃までに神経が急速に発達し、言葉をあやつる能力が発達していきます。 しかし、十分に耳から言葉を聞くことのできなかった子供は、カ行やサ行などの発音が難しくなります。 

富士見台 聴こえとことばの教室理事長 徳光裕子先生 / 今まで補聴器だけでやってたんですけれども、それよりも、よっぽど効果がある。 人工内耳にした場合には、だいたい平均して、低いほうから高いほうまで、「ダー!!」っと入るんですよ。 それでね、一番最初に「サ行」が出てくるの。 「サ」とか「シャ」とかですね。 こういう音が、随分、苦労して教えなくちゃいけなかったのが、スラっと言えるようになるんですね。

先生 / もう一回、教えて。

子供 / もう一回、教えて。

先生 / どこに来たの?

女の子 / わたしのうちだよ。

ナ / 人工内耳を子供につけるかどうか。 その判断は家庭によって様々です。 子供の将来を考え、人工内耳を選んだ親に、話を聞きました。

父親 / 補聴器だったら、このレベルにしかできない、ならない。 だけど人工内耳をつけると、もっと聞こえるようになるから、発音もきれいになるし、今まで発音できなかった言葉が発音できるようになる。

ナ / 勿論、人工内耳をつければ、それで良いわけではありません。 その後の教室や家庭での教育が大事だと、先生達は語ります。 手術からおよそ2年を経た、5歳児クラスのこの子たちは、徐々に発音が良くなっていきました。 

子供たち / 「ゆ」(湯)!

先生 / 「湯」って、なんでしょう?

子供たち / ゆでること。

先生 / ゆでる事? 「湯」って、お水の事かな? 

子供たち / 「お湯!!」

先生 / 「湯」って、「お湯」の事だよ。

子供たち / お湯のことだよぉ〜。 


(映像:東京医科大学病院)
ナ / 人工内耳手術を終えて、10日後の真野さん。 いったん退院した後、今日、はじめて音を聞くために、病院を訪れました。 再び音が聞こえるようになるのでしょうか。

真野守之さん / 「どんな音がはいるのかなぁ〜?」と言う気持ちと、「本当に聞こえるのかなぁ…。」と。

ナ / さぁ、真野さんの耳に、はじめてマイクが装着されます。なかなか、送信コイルの磁石がつきません。 埋め込んだインプラントは、いったい、どこへ消えたんでしょう? 冨澤先生はコンピュータから音を入れて、インプラントの場所を探り当てることにしました。 真野さんの胸に、不安がよぎります。 

冨澤文子先生 / くっついてなんだけど、場所さがす。 場所、さがす…。

真野守之さん / あ…!!

冨澤文子先生 / 聞こえる?

真野守之さん / 聞こえるけど、うるさい。

冨澤文子先生 / くっついた!!

ナ / 磁石が安定しないため、帽子をかぶる事にしました。音の調整が終わり、実際に「外の音」を聞く瞬間です。

冨澤文子先生 / 真野さん。

真野守之さん / あ!!

冨澤文子先生 / 聞こえますか?

真野守之さん / はい。

冨澤文子先生 / 聞こえますか?

真野守之さん / えぇ。

冨澤文子先生 / うるさくないですか?

真野守之さん / ちょっと…。

冨澤文子先生 / ちょっと?

真野守之さん / ちょっと、なんて言うかな。 ラジオの同調(どうちょう)が、合っていないような音。

冨澤文子先生 / ふむふむふむ…。 なるほど。 私の声は聞こえますか?

真野守之さん / わかる。 <笑顔>

冨澤文子先生 / わかる?

真野守之さん / うん。

冨澤文子先生 / 自分の声はどうですか?

真野守之さん / 自分の声もわかる。

冨澤文子先生 / わかる?

真野守之さん / わかります。 だから、多分、<自分が>大きな声でしゃべってないと思う。

冨澤文子先生 / そうですね。 ドナルドダックの声みたいとかね。

真野守之さん / そうそうそうそうそう。

冨澤文子先生 / 宇宙人の声みたいとかね。

真野守之さん / 宇宙人の声、聞いた事がないから、わからないけど。 (笑)

冨澤文子先生 / 聞いたことないけどね。(笑) そんな風に言いますけれども。 奥さんの声は、どうでしょう?

奥さん / 聞こえる?

真野守之さん / うん?

奥さん / 聞こえますか?

真野守之さん / うん。 聞こえる。

冨澤文子先生 / <奥さんの声> 前の声と比べて、どうですか?

真野守之さん / 違いますね。 全然、違う。 もうちょっと…、もうちょっとどころか、全然、違いますね。 

(映像:外を歩く、真野さん)
真野守之さん / うん。 明るく見える。 なんでもオーバーだけど、気持ちがたかぶってるみたい。<笑顔>

ナ / 3年ぶりに音の世界を回復した、真野さん。 取り戻したのは、音だけではなく、精神的なやすらぎでした。 しかし、人工内耳の音に慣れるまでは、地道なリハビリが必要です。


(映像:人工内耳友の会ACITA)
ナ / ざわついた場所での会話や、電話の聞き取り等、人工内耳には多くの課題があります。 そして、「もう一度、音楽を楽しみたい。」というのも、装用者の望みです。

真野守之さん / オペラ、好きだったんですけどね。 んー…。 音楽は、どうなんでしょうね。 

(映像:洗足学園大学)
ナ / 洗足学園大学付属打楽器研究所では、人工内耳装用者に聞きやすい音楽の研究をしています。 はたして、どのような音が聞きやすいのでしょうか?真野さんと、「人工内耳友の会」の皆さんに聞いてもらいました。

♪ / タンバリン 単独
♪ / 小太鼓 トライアングル シンバル タンバリン 等、合奏。

人工内耳友の会ACITA会長 小木保雄会長 / リズムはそれらしくわかりますけれども、楽器が一緒に鳴り出すと、なんか、まざって、ただ、うるさいだけ。 騒音に近い音ですね。

♪ / ティンパニー シンバル 中太鼓 <低めの音>

真野守之さん / 厳か(おごそ か)なね。 なんか、荘厳(そうごん)な感じで。 一番、こちら側のシンバルですか? あれが、いい感じで響いて、聞きやすいというか、イメージがつかみやすい。

打楽器研究所 所長補佐 松本祐二先生 / オーケストラの音は雑音にしか聞こえないという風に聞いたんですね。 私達、職業がオーケストラとかなもんで、ちょっと、ショックだったんですけども。 じゃ、オーケストラは何でかな?と考えた所、楽器の種類が、すごく、多いわけですよね。 人数も多いし。 そうすると、やっぱり、混ざると、聞き分けにくいと言う事から、雑音に聞こえてしまうのかなぁ…という気はしますね。 


ナ / それぞれ、聞き取りには個人差がありますが、大きな金属音や、スピードの速い音楽は、耳障り(みみざわり)であるようです。 まだ、この研究も、まじまったばかりです。 いつの日か、人工内耳装用者の楽しめる音楽を聞かせてくれることでしょう。

医療テクノロジーの最前線を行く、人工内耳。 機械を通して外界の音を聞かせる技術には、驚くべきものがあります。 しかし、まだまだ人間の耳にはかないません。 こうして、人工内耳を使った会話や音楽の聞き取りを探っていくと、いかに人間の耳が繊細(せんさい)で、複雑な構造を持っているかが、思い知らされます。 

普段、意識する事のない音の世界に、あなたも耳を澄ませてみてはいかがでしょうか?


平成13年12月9日(日)放送
『ガリレオチャンネル 【よみがえる音の世界〜人工内耳による聴覚の回復〜】』
   企画著作 : ワック株式会社

      <文字版制作&配信>  ☆宮下あけみ☆
            【E-mail】     akemizo@beige.ocn.ne.jp




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